【導入事例】

分析から、データに関わる組織設計まで。
トラストバンク社の場合

株式会社トラストバンクさま。2012年4月に設立され、国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営。ガバメントクラウドファンディング®(GCF®)などのwebサービス、様々なイベントなども実施しているIT企業です。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2020年から同社に常駐サービスの提供を開始。データ基盤の構築や整理だけでなく、需給予測などのアウトプットやデータに関わる組織設計・チームビルディングでも貢献しました。

膨大なデータを課題にした時のゼロからの取り組み方やチームの作り方について、ふるさとチョイス事業本部長・和田正弘さま(写真左)、同事業戦略部部長・勝伸司さまにお話を伺いました。

(取材日:2020年10月2日 取材:澤山モッツァレラ 編集:長谷川翔一)

 

経営に「サイエンス」を加えるために

――以前までのデータ活用には、どんな課題があったのでしょうか?

和田 膨大なマーケティングデータがあったものの、それを活かしたアウトプットがなかったことです。「いつ・どこに・どんな」寄付がされたか、そこから逆算した年収予測といったデータはあったのですが、全体観をもって分析し、アウトプットまで落とし込めていなかったんですね。

2019年頃から、弊社はデータに基づいたマーケティング活動や企業運営に取り組んでいます。それまでは「アート&サイエンス」であるべきバランスが、過剰にアート寄りになっていました。より「サイエンス」を作っていく方向を加えるために、データ志向になりました。

ただ、スタート時点ではSQLを扱えるエンジニアが1人しかおらず、専任部署もない状態でした。エンジニアもデータ解析が専門というわけではないので、抽出したデータをどう管理し、どう分析するのか知見もありませんでした。

そこでメンバーズDAから山枡大地さんに来ていただききました。チームは山枡さんとこの分野の経験の浅いメンバーの2名で、彼を中心にチームを作ってきた感じですね。

 

――どんなことから取り組んだのでしょうか?

和田 まずは、データ抽出の前の基盤整理から取り組んでもらいました。

まず、セキュリティを担保するため、個人情報とマーケティングデータを切り分ける必要がありました。設計時のリスク分析について、社内エンジニアと一緒に取り組んでもらいました。共同作業でしたが、非常にスムーズにできたと思います。

 

 

山枡さんの「野心」に惹かれました

――メンバーズDAと接点を持ったきっかけは何でしたか?

和田 営業メールです(笑)。本当に、ちょうどいいタイミングでメールを見たのがきっかけでした。

メンバーズDAさんからのメールで「こういうサービスをやっていて、こういう人材がいます。例えば、こういう人をアサインできます」というご提案があり、その中にいたのが山枡さんでした。

 

――山枡さんについて、どういった点を評価されていますか?

和田 野心的な面ですね。膨大にあるデータの活用について、「自分が何とかする」という野心的な姿勢を最初から持っていました。良い意味で生意気だな(笑)と思いましたし、最初の1人としては理想的なメンバーだと感じましたね。

山枡さんは「データを活用すると、こんなことができます!」と、最初にアウトプットから着手してくれました。通常、新しく立ち上げた部署はアウトプットまで時間がかかると思います。アウトプットから逆算して着手してくれたことで、「あの部署、何をやってるの?」とはならなかった。これは、山枡さんのおかげですね。

 

 

吉川さんは、事業貢献を強く考えている方。

――もう一人の常駐メンバー、吉川寛さんの評価はいかがでしょうか?

和田 吉川さんは、経営企画や事業企画の視点を持っているデータアナリストだと思います。「事業計画をどう立てるか」「数値を作る際に、ユーザーデータをどう活用するか」「KPIをどう分解するか」など、ビジネス観点で組織を見られるのが強みだと思います。

現在はマネージャーのような役割で、事業単位・会社単位でデータに関わる組織設計を構築いただいています。山枡さん同様、得がたい人材だと思いますね。

 

――山枡さんが分析基盤を作り、吉川さんがデータマネジメントをやっている分担なんですね。吉川さんについて、「こういうところが助かっています」というものはありますか?

 経営企画や人事などコーポレート領域を見てきた人なので「データ単体ではなく、組織の中でどう活用するか」を考えられる部分ですね。例えば、データマネジメントチームを作る時に提案してくれた目標設定や意見は、非常にわかりやすかったです。

 

――人物的な面で、印象に残っている部分はありますか?

 お会いする前は「ゴリゴリにデータを扱って、最新技術でモデルを構築する方が来るのかな」と思っていました。実際には会社の業績をいかにドライブさせるか、その観点から有益なデータを作り「事業の役に立ちたい」と強く考えている方でした。良い意味で、予想を裏切られましたね。

和田 山枡さんがアウトプット志向を強め、「こういうことができる」が見えてきたところで、吉川さんは「どう体系的にアウトプットするか」「どこに出すのか」を整理してくれました。山枡さんのデータサイエンティスト的な観点と、吉川さんの組織的・事業的な観点がうまくかみ合っていると思います。

 『ふるさとチョイス』というプラットフォームの特性上、トラストバンクがデータを扱う上でのミッションは、

・ユーザー側のデータをどう作り、基盤をどう構築し、マーケティングにどう活かすか
・自治体側のデータをいかに利用し、自治体に新しい商品やサービスを開発するか

という二点があります。ユーザー側と自治体側双方のデータを取得する必要があり、必然的にデータ量が多くなるため、張り付きで担当できるデータサイエンティストと、組織の中でのミッション設計をする人が必要だったということだと思います。

 

 

「見える化」が一番の成果。

――数字的な成果はありましたか?

和田 部署として具体的な数字は追わないのですが、いろいろな部門のマーケティングの需給予測やデータ基盤の整理などが成果として大きいですね。

大きな成果としては、Tableauを通じて見える化できるところまで来たのが一番かなと思います。このTableauの導入も、山枡さんに担当いただきました。

 

――山枡さんからの提案で、印象に残っているものはありますか?

和田 ふるさと納税の需給予測ですね。今年は新型コロナの影響もあり、これまでよりも寄付が増えています。しかし、その増加は例年よりも寄付の時期が早まっている可能性もあります。例えば去年12月に寄付していた人が、前倒しで寄付しているケースといったものです。

寄付の増加が例年より早いのか「新しいユーザー」なのか、はたまた「これまで上限まで寄付していなかった人が額を増やした」のか、「他社サービスから移動してきた」のか、そういった緻密な分析をゴリゴリ見える化してくれて非常に助かっています。

 

 

今後、メンバーズDAに期待すること

――今後、メンバーズDAに何を期待していますか?

和田 期待することは、山枡さん吉川さんをアサインし続けていただくことですね。一番嫌なのは「2人を戻して」と言われることです(笑)。

 今は、当たり前のレベルに取り組んでいる段階です。次は「どんなデータを見るべきか」「気象データなど外部データとの組み合わせから、こういう示唆ができる」といった提案を期待しています。

和田 データを活用したアウトプットに、より軸足を移すことを期待しています。例えばサジェストやリコメンド、アルゴリズム設計などで「ユーザーへの最適な答えをどう返していくか」という部分ですね。

ふるさと納税の場合、通常のECに比べて行動分析やペルソナを通してインサイトを知るのは難しい部分があります。ふるさと納税では、

・欲しいものを選ぶ
・地元に寄付する

とインサイトが分かれます。単純にユーザーモデルに落とし込もうとすると

・お得なものを追求する層
・地元に貢献したい層
・社会貢献したい層

という別々のペルソナができるのですが、この3つの行動が実は同じ人だったということはよくあるんですね。

「お得なものがほしいけど、それだけでは寄付の上限額が余る。余った分を地元に寄付するけど、まだ余る。調べてたら、競走馬のセカンドキャリアを作るというGCF(ふるさと納税制度を活用するクラウドファンディング)をたまたま見たので、残りを全額寄付する」といったケースがあります。

ユーザーが「どのタイミングで、何を欲していて、どんなユーザー行動や意思決定をするか」をペルソナモデリングで定義するのは難しいと考えています。

シナリオベースでは、本当に顧客を見ていくことはできないと考えています。データの活用や分析だけよりも、具体的なアウトプットから見ていく方向に期待しています。

和田 あとは、山枡さんにずっと聞きたいことが一つあって。なんでリモートの壁紙が猫なんでしょうね?

 

――会社のアイコンも猫です(笑)。Twitterも猫ですし、しかもそれぞれ違う猫なんですよ。

和田 それ、記事の最後に載せておいてください(笑)。