なぜ今、DXは“内製化”が鍵なのか?ベンダーロックインを脱して競争優位を築く方法

ナレッジ
2025.06.30
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DXを推進する企業にとって「内製化」は避けて通れないテーマです。本記事では、DX内製化のメリット・デメリット、具体的な実践ステップ、成功のための戦略、そして実例を通じて、競争力強化のための道筋を示します。特に、弊社(メンバーズデータアドベンチャー)での社内DX推進の取り組みをベースとした事例を紹介しています。

執筆者のご紹介

名前:山本 和音
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャー サービス開発室
業務内容:データストラテジストとして、データ基盤の開発や生成AIの業務適用に注力。ビッグデータ解析、レポーティング、自動化ツールの開発を担当。最近は生成AIを活用した業務効率化とデータ利活用の新たな可能性を探求中。

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01.なぜ今、DXの内製化が重要なのか?

 01-1.DXの内製化とは?

DX内製化とは、外部ベンダーに依存せず、企業自らがデジタル技術を活用して業務やサービスを変革する体制を築くことです。これにより迅速な意思決定と柔軟な対応が可能になります。

 01-2.ベンダーロックインの課題とDXの内製化の必要性

ベンダーロックインとは、一度導入した外部システムやサービスに依存し、抜け出せなくなる状態です。このような状況では、追加開発や仕様変更にコストや時間がかかるうえ、柔軟な改善ができず、競争環境の変化に対応しきれなくなるリスクも生じます。内製化を進めることにより、技術や運用ノウハウを社内に蓄積し、外部依存から脱却することが競争力の維持・強化に直結します。

02.DXの内製化のメリット・デメリット

 02-1.メリット

  • コスト削減:長期的な観点で見ると、内製化によって外注費を大きく削減できます。初期こそ人材育成や環境整備などの投資が必要ですが、一度スキルと仕組みが社内に定着すれば、継続的なアウトソースコストやベンダーとの調整工数も大幅に削減可能です。また、変化への対応スピードも早まり、開発や改善にかかる総コストの最適化が図れます。

  • 組織力向上:内製化の過程でチームの自律性と部門間の連携力が高まり、問題解決能力の底上げにつながります。部門を横断した取り組みや、業務を深く理解した上でのシステム設計が可能になるため、現場に即したDXが実現しやすくなります。

  • ノウハウ蓄積:外部に依存せず業務改善を進めることで、自社独自の知見やベストプラクティスが蓄積されていきます。これは新規プロジェクトや後進育成にも活用でき、ナレッジとして資産化される点が大きな強みです。

  • ベンダーロックイン解消:内製化は、特定のサービスや技術に縛られずに柔軟な技術選定を可能にします。将来的にツールやアーキテクチャを変更したい際にも、技術的負債や切替コストを最小化できます。

 02-2.デメリット

  • 人材確保:DXを内製で推進するには、専門的なスキルを持つ人材の確保が不可欠です。しかし、データ分析やクラウド技術などの人材は市場でも引く手あまたであり、採用競争が激しいのが現状です。育成にも時間を要するため、中長期的な視点での人材戦略が求められます。

  • 品質維持:ベンダーに頼ることで担保されていた品質水準を内製で維持するには、仕組みとガバナンスが必要です。標準化された開発フローやレビュー体制の整備、継続的なスキルアップが求められます。短期間での高品質実現には相応の努力とマネジメントが必要です。

  • 初期投資:人材採用・教育、基盤構築、開発環境整備など、内製化には一定の初期投資が必要です。特に体制が整うまでは効率が低く見えることもありますが、長期的な費用対効果や柔軟性を考慮すれば十分に見合う投資といえます。経営層の理解と中期的な視点での評価が重要です。

03.DXの内製化を成功させるための実践ステップ

 03-1.目的の明確化と仮説設定

まず最初に行うべきは、内製化を進める「目的」と「背景」の明確化です。単なるコスト削減だけでなく、業務効率化、スピードの向上、データ活用力の強化など、企業ごとの課題に即した動機付けが必要です。
次に、経営層の合意形成を図るため、目的に基づく仮説を立て、成果目標やKPIを設計します。ここで重要なのは、業務プロセスや組織構造を俯瞰した上で、内製化によってどのような変化が起きるのかを見通すことです。これがプロジェクトの道しるべとなります。

 03-2.スモールスタートと成功事例の積み重ね

いきなり全社展開を目指すのではなく、小さく始めてスピーディに成果を出す「スモールスタート」が鉄則です。たとえば、社内に散在するExcel業務の自動化、定型レポートのBI化といった、インパクトが大きく実現可能性の高い領域から着手します。
初期フェーズでは、「早く・小さく・効果的に」結果を出し、社内の信頼を得ることが大切です。その上で、得られた成功事例を社内へ展開し、ナレッジとして共有します。これが組織的な内製文化の醸成に寄与します。

 03-3.外部パートナーとの連携

内製化とはいえ、すべてを社内で完結する必要はありません。むしろ、初期段階では外部の知見を取り入れた方がスムーズに進むケースも多くあります。
内製化可能な領域と外注すべき領域を明確に分け、無理なく着実に内製化を推進できます。また、現場メンバーへのスキルトランスファーを通じ、将来的に自走可能なチーム体制を構築することも可能です。

 03-4.効果測定と改善

最後に欠かせないのが、継続的な効果測定と改善です。定期的にKPIをモニタリングし、成果を可視化することで、経営層への報告や現場のモチベーション維持に役立ちます。
また、PDCAサイクルを回すことで、課題の早期発見と改善が図れ、プロジェクトの品質とスピードを両立できます。単なる一時的な取り組みで終わらせず、「継続的な内製化文化」を企業に根付かせることが重要です。

04.DXの内製化を成功させるための戦略とポイント

DX内製化を企業に根付かせるには、「人材」「技術」「組織」という三位一体の戦略が欠かせません。それぞれの視点から、実効性のある取り組みポイントを整理します。

 04-1.人材戦略:スキルとマインドを持った人を育てる

内製化の第一歩は「人材」の確保と育成です。外部ベンダーに頼らず、自社でプロジェクトを遂行できるスキルを持ったメンバーの存在が不可欠です。
まず、データ分析やシステム開発、クラウド、AIなどのスキルを持つ人材を採用するとともに、既存社員への教育・育成体制にも力をいれることが重要です。OJTや社内勉強会、社外研修などを活用し、「学びながら実践する」文化を醸成します。
また、内製化にはマインドも重要です。自ら学び、課題を主体的に解決していく姿勢を持ったメンバーが活躍します。内製化を担う人材が孤立しないように、チーム化してノウハウを共有する体制を整えましょう。

 04-2.技術戦略:拡張性・保守性の高いアーキテクチャ設計

次に必要なのは「技術戦略」です。単なるツール導入ではなく、将来的な拡張性と保守性を見据えた技術選定とアーキテクチャ設計が求められます。
たとえば、ローコード/ノーコードツールやGCP、AWS、Azureなどのクラウド基盤は、コストや開発速度の面で優位です。重要なのは「どの技術を選ぶか」だけでなく、「誰が使えるか」「誰が保守できるか」です。
さらに、セキュリティやガバナンス、データ品質など、運用フェーズを意識した技術設計が必要です。内製化が進むほど、開発の自由度は上がる反面、標準化・ルール化しなければ属人化のリスクが増大します。

 04-3. 組織戦略:経営層の支援と文化づくり

最後に重要なのが「組織戦略」です。どれだけ優秀な人材や技術があっても、組織がそれを後押ししなければ内製化は定着しません。
経営層が内製化の意義を理解し、継続的な支援を約束すること。さらに、現場主導の自走を促すための権限委譲と失敗を許容する文化づくりが重要です。
また、横断的な情報共有の仕組み(ナレッジ共有、振り返り、失敗事例の共有など)を整備することで、組織内に内製文化を根付かせることができます。

05.完全内製化に成功した弊社事例:人材リソース可視化基盤の構築

<背景と課題>

弊社では、社内の人材情報とマーケティング情報が複数のスプレッドシートに散在しており、統一されたデータ管理が行えないという課題を抱えていました。部署ごとに管理が分かれ、情報の整合性を取るのに多大な時間がかかっていたほか、現場からは「全体を俯瞰したい」「更新のたびに連携ミスが起きる」といった声も上がっていました。

<プロジェクトの特徴>

このプロジェクトは、弊社サービス開発室のメンバーのみで構成され、完全に内製で進行された点が最大の特長です。さらに、特定の外部可視化サービスや高額なSaaSに依存することなく、汎用性の高いGoogleCloudと無償・社内リソース中心の技術スタックを用いて構築されました。

<取り組み内容>

以下の構成に基づき、Googleスプレッドシート → GoogleCloud → Looker Studioという一連の流れを自動化し、日々の業務で使えるダッシュボードとして運用可能にしました。

  • ・データ収集:Google Apps Scriptによりスプレッドシートの内容を定期収集し、Cloud Storageにアップロード
  • ・データ蓄積:Cloud StorageからBigQueryへデータ転送(Data Transfer Service)
  • ・データ加工・集計:Cloud Functionsを利用し、業務用途に合わせた整形・マート化を実施
  • ・可視化:Looker StudioでグラフやKPIの可視化ダッシュボードを作成
  • ・保守と拡張性:Cloud StorageとBigQueryによるバックアップとバージョン管理体制も内製で整備

<成果と効果>

  • ・完全内製によるスキル蓄積と属人性の排除:全メンバーが設計から運用まで関わったことで、属人性のないドキュメントとナレッジが社内に蓄積されました。
  • ・意思決定スピードの向上:リアルタイムで人材情報やマーケティング状況を確認できる環境を構築。
  • ・保守性と汎用性:ツール依存がなく、社内の他業務や他部署にも展開しやすい構成により、高い再利用性を実現。
  • ・コスト削減:外注コストゼロ、SaaS利用費不要で年間30%以上の費用削減につながりました。

<今後の展望>

この仕組みは、現在別部署や他プロジェクトへの横展開が進められており、「社内DXの共通基盤」としての可能性を広げています。今後は、生成AIの活用やより高度な分析機能の内製追加など、さらなる進化を視野に入れています。

まとめ

DXの内製化は、コスト削減やノウハウ蓄積に加え、外部依存からの脱却によって企業の競争力を高めるための有効な手段です。ただしその実現には、人材確保や体制構築など、計画的な取り組みが必要です。本記事で紹介したステップと戦略を参考に、自社に合った内製化の道筋を描き、必要に応じて外部の力も借りながら取り組むことが成功への鍵となるでしょう。
「内製化を進めたいがどこから手を付けてよいか分からない」──そんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社のフェーズやリソース状況に応じて、最適な伴走支援をご提案いたします。
メンバーズデータアドベンチャーでは、こうした内製化の推進を伴走型で支援するサービスをご提供しています。データ活用基盤の構築から、実践的なスキルトランスファーによる人材育成支援まで、貴社の課題に応じた最適な支援体制を構築します。まずはお気軽にご相談ください。
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