AIデータ分析とは?徹底解説|自然言語処理で顧客の潜在ニーズ探索を自動化

ナレッジ
2025.07.07
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本記事では、企業におけるデータ活用の高度化に不可欠な「AIデータ分析」について解説します。その多岐にわたるメリットに加え、導入の具体的なステップと留意点、さらに自然言語処理を用いた顧客分析の自動化事例を紹介します。

執筆者のご紹介

執筆者:石田
株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アカウントマネジメント室所属 データアナリスト
現在は教育業界企業様にてデータ分析業務に携わっています。主にPythonを用いた統計解析や機械学習モデリング、最近では外部サイトからのデータ収集、自然言語処理からモデル作成などを行っています。

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01.AIデータ分析とは?

 01-1.AIデータ分析とは?

近年、ビジネスを取り巻くデータ量は増加の一途をたどり、その活用は企業の成長における重要な鍵となっています。しかし、大量のデータの中から有益な情報を抽出し、ビジネスの意思決定に繋げるには、高度な分析技術と多大な労力が必要とされます。そこで注目されているのが「AIデータ分析」です。

AIデータ分析とは、人工知能(AI)の技術を活用して、大量のデータからパターンや相関関係、潜在的なトレンドなどを自動的に発見し、分析する手法です。人間が行うには困難な複雑な分析や、見落としがちな微細な変化を捉えることが可能になります。

具体的には、機械学習や深層学習といったAIアルゴリズムを用いて、過去のデータから学習し、未来の予測を行ったり、データを特定のグループに分類したり、異常値を検出したりすることができます。SNSの投稿や顧客レビューといったテキストデータを分析することで、最新の顧客ニーズや市場のトレンド、需要の流行をリアルタイムに把握することも可能です。これにより、企業はより迅速かつ精度の高い意思決定を行い、競争優位性を確立することが期待できます。

 01-2.人の手による分析との違い

従来の人手によるデータ分析と比較して、AIデータ分析にはいくつかの明確な違いとメリットがあります。

①処理量の違い
まず、処理できるデータ量が圧倒的に異なります。人間が手作業で分析できるデータ量には限界がありますが、AIは膨大なデータを高速かつ効率的に処理することができます。これにより、これまで見過ごされてきたデータの中に潜む重要なインサイトを発見できる可能性が広がります。

②客観性の高さ
次に、客観性の高さが挙げられます。人間の分析には、どうしても主観や経験によるバイアスが入り込む可能性があります。一方、AIはデータに基づいて客観的に分析を行うため、より公平で信頼性の高い結果を得ることができます。

③スピードとリアルタイム性
さらに、分析のスピードも大きく異なります。AIは複雑な分析を瞬時に行うことができるため、最新データを用いたリアルタイムでの意思決定や迅速な問題解決に貢献します。

 01-3.AIデータ分析の種類

AIデータ分析には、様々な種類があり、ビジネスの目的やデータの特性に応じて適切な手法を選択する必要があります。代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

  • 予測分析: 過去のデータに基づいて、将来の出来事やトレンドを予測する手法です。需要予測、売上予測、リスク予測などに用いられます。
  • ・分類分析: データを特定のカテゴリーやグループに分類する手法です。顧客の属性分析、不正検知、画像認識などに用いられます。
  • ・関連性分析: データ項目間の関連性や依存性を見つけ出す手法です。購買データ分析における併売商品の発見、Webサイトのアクセスログ分析における遷移パターンの把握などに用いられます。
  • ・テキスト分析: 自然言語処理(NLP)などの技術を用いて、文章データから有用な情報を抽出・分析する手法です。顧客レビューの感情分析、SNSのトレンド分析、ニュース記事のトピック分析などに用いられます。

これらの種類は、分析の目的やデータの特性に応じて組み合わせて利用されることもあります。

02.AIデータ分析のメリット

データ活用の高度化が求められる現代において、AIデータ分析は、企業の成長と競争力強化に不可欠なツールとして注目されています。属人化やリソース不足の解消、正確な現状把握と予測、そして新たな洞察の発見など、導入によって得られるメリットは多岐に渡ります。

 02-1.属人化の解消

従来のデータ分析は、特定のスキルを持つ担当者に依存する「属人化」が課題でした。担当者の異動や不在によって分析精度やスピードに影響が出てしまうケースも少なくありません。AIデータ分析を導入することで、分析プロセスが標準化・自動化され、専門スキルを持たない担当者でも扱いやすいインターフェースを通じて、データに基づいた意思決定が可能になります。

 02-2.リソース不足解消

ビッグデータ時代において、手作業でのデータ分析は限界があり、時間や労力の増大、人的リソースの不足が課題です。AIデータ分析は、大量のデータを高速かつ効率的に処理できるため、人的リソースの負担が大幅に軽減されます。分析に費やしていた時間をより戦略的な業務に充てることができ、組織全体の生産性向上に貢献します。また、24時間稼働可能なAIは、人間では対応しきれない量の分析タスクをこなし、リソース不足による機会損失を防ぎます。

 02-3.正確な現状把握と迅速かつ高精度な予測

AIデータ分析は、過去のデータだけでなく、リアルタイムで更新される最新のデータも迅速に分析し、常に変化する市場や顧客の動向を正確に把握することを可能にします。高度なAIアルゴリズムを用いることで、人間では気づきにくい複雑なパターンや相関関係を発見し、高精度な将来予測を行うことができます。

例えば、以下のような予測に活用できます:

  • ・顧客の購買行動や離脱リスクの予測
  • ・売上や需要のトレンド予測
  • ・オペレーション上のリスクや異常検知

こうした予測は、在庫管理の最適化、プロモーション施策の精緻化、リスクヘッジなど、経営判断のスピードと質を大きく引き上げます。

 02-4.新たな洞察の発見

AIデータ分析の大きなメリットの一つは、人間では思いつかないような新たな洞察を発見できる可能性を秘めていることです。大量のデータを様々な角度から分析することで、これまで見過ごされてきたデータ間の関係性や潜在的なトレンドが明らかになることがあります。これらの新たな洞察は、新商品やサービスの開発、新たなターゲット顧客の発見、ビジネスプロセスの改善など、革新的なアイデアを生み出すきっかけとなります。

特に近年注目されているのが、自然言語処理(NLP)を用いた顧客の潜在ニーズを探る分析です。レビューデータ等の大量のテキストデータから、顧客の潜在的なニーズや不満を把握し、製品開発やサービス改善に活かすことで、企業はこれまで以上に顧客ニーズに合致した価値を提供し、持続的な成長を実現することができます。

03.AIデータ分析×自然言語処理:顧客分析事例

 03-1.自然言語処理とは?テキストデータ分析の可能性

自然言語処理(NLP:Natural Language Processing)とは、人間が日常的に使用する言葉(自然言語)をコンピュータが理解・分析・生成するための技術の総称です。AIの一分野であり、言語の文法構造や意味、文脈などを解析し、コンピュータが情報を抽出したり、質問に答えたり、翻訳したりすることを可能にします。

自然言語処理(NLP)は、主に以下の特徴と利用目的があります。

  • ・意味理解による感情・話題の把握: NLPは文章や会話の内容を理解するための技術であり、感情分析やトピック抽出などが行われます。これにより、大量のテキストデータから、顧客の感情の推移や話題となっているキーワードなどを把握することができます。
  • ・非構造化データからの知見抽出 NLPは膨大な非構造化データ(テキストデータ)を効率的に処理し、有用な知見を抽出します。これまで活用が難しかった自由記述形式のデータから、ビジネスに役立つ情報を引き出すことが可能になります。
  • ・自然な対話インターフェースの実現 NLPは人間とコンピュータのインターラクションを円滑にし、自然な言葉でのコミュニケーションを可能にします。顧客との対話型インターフェースの開発や、社内コミュニケーションの効率化などに貢献します。

NLPの特徴と利用目的をまとめた図図1:NLPの特徴と利用目的をまとめた図

インターネットやSNSの利用が日常となった現代において、テキストデータは増大の一途を辿っています。自然言語処理を活用することで、こうした膨大なテキストデータから、顧客の意見や感情、市場のトレンド、潜在的なニーズといった有益な情報を効率的に抽出し、分析することが可能になります。

例えば、顧客レビューの分析を通じて製品改善の糸口を見つけたり、SNSの投稿分析によって流行を把握したり、アンケート回答の分析から顧客満足度を深く理解したりすることができます。このように、自然言語処理は、蓄積され続けるテキストデータという宝の山をビジネスの成長に繋げるための強力な武器となります。

 03-2.自然言語処理で分析業務をほぼゼロに自動化

次に、自然言語処理を活用して分析業務を自動化し、大幅な作業工数削減と最新データからの迅速な顧客ニーズの把握を実現した事例をご紹介します。

ある企業では、ホットトピックを商品内容に反映するため、サイト内検索ワードの分析を実施していましたが、その一部をExcelでの手作業で行っていました。この作業は担当者に大きな負担を与え、工数短縮と効率化が求められていました。検索データなどのテキストデータは、重要な情報を含む一方で、単語表記や日本語・英語表記のばらつきが多く自動化の壁が高いために、なかなか自動化に着手できずにいるケースが少なくありません。

そこで、背景課題である「類似検索語の手作業による集約」を自動化し、効率的な検索ワード分析を実現するため、自然言語処理技術を用いた分析業務自動化を実装しました。具体的には、深層学習とNLPを活用したホットトピック分析モデルを構築し、その結果をダッシュボード化することで、誰もが定期的に最新の検索ワードの動向を容易に把握できる環境を構築しました。

実装の流れは以下の通りです。

  1. ディープラーニングモデルを用いて、抽出した検索クエリをベクトル化
  2. 単語ベクトル間の類似度を、コサイン類似度を用いて算出(ベクトル検索)
  3. 設定した閾値以上の類似度を持つ単語を、類似語としてまとめ集計
  4. 集計データをPower BIでダッシュボード化し、分析結果を可視化
  5. 集計データの定期更新設定により、ダッシュボードを自動的に最新の状態に維持

深層学習とNLPを活用したホットトピック分析モデルの実装フローを示す図図2:深層学習とNLPを活用したホットトピック分析モデルの実装フローを示す図

この事例の成果として、月間40時間の作業工数をほぼゼロに削減。さらに、ダッシュボードの導入により、専門的な分析スキルを持たない担当者でも最新の検索ワードからホットトピックを容易に把握できるようになりました。このように、自然言語処理を用いて業務効率化を実現し、最新の検索データに基づいた顧客ニーズに関するインサイトの迅速なビジネス活用を推進することができます。

04.AIデータ分析の導入ステップと注意点

AIデータ分析を効果的に導入し、その恩恵を最大限に引き出すためには、計画的なステップと検討が不可欠です。ここでは、導入前の準備、分析環境の構築、導入時の注意点の3つのフェーズに分け、それぞれのポイントと注意点を詳しく解説します。

 04-1.導入前の準備

  • 目的の明確化と仮説設定
    分析において最も重要なのは、具体的なビジネス目的と、それを達成するための分析目的、活用方法(ネクストアクション)を明確にすることです。

例えば、「顧客満足度を10%向上させる」というビジネス目的に対し、「過去1年間のレビューデータから、低評価レビューに共通するキーワードと頻出パターンを特定する」という分析目的を設定します。

次に、そのビジネス目的を達成するために、どのようなデータ分析が有効であるかの仮説を立てます。「顧客のレビューにおいて、製品の特定機能の操作性の悪さが低評価の主要因ではないか」といった具体的な仮説を持つことで、データ分析の方向性が定まります。

そして、分析結果に基づき、「低評価レビューで指摘された機能の改善優先度を上げ、改善案を一部の顧客にプロトタイプとして提供し、A/Bテストを実施する」といった具体的なネクストアクション(分析の活用方法)を定義します。このように、ビジネス目的、分析目的、具体的な仮説、そして活用方法までを明確にすることで、分析結果が具体的なアクションに繋がらず、活用されないという事態を防ぐことができます。

  • データの収集
    明確になった目的に基づき、分析に必要なデータを収集します。社内に蓄積された顧客データ、購買データ、Webアクセスログ、アンケートデータなどに加え、必要に応じて外部データやオープンデータなども検討します。

収集するデータの形式(構造化データ、非構造化データ)、量、鮮度、信頼性などを十分に確認することが重要です。データの品質が分析結果の精度を大きく左右するため、データのクレンジング(欠損値の処理、ノイズの除去、形式の統一など)や前処理を適切に行う必要があります。

 04-2.分析環境の構築

収集したデータを実際に分析するための環境を構築するフェーズです。適切なツールを選定し、分析に必要な人材を育成または確保することが重要になります。

  • ツール選定
    目的に合ったAIデータ分析ツールを選定します。ツールの種類は多岐にわたり、統計解析に特化したもの、機械学習プラットフォーム、自然言語処理に強いもの、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールと連携できるものなどがあります。

ツールの選定にあたっては、以下の点を考慮する必要があります。

  • 分析の目的と必要な機能: どのような分析を行いたいのか、必要な機能が揃っているか。
  • ・データの種類と量: 扱うデータの形式や量に対応できるか。
  • ・操作性: 既存のITスキルレベルで使いこなせるか、学習コストはどの程度か。
  • ・拡張性: 将来的なデータ量の増加や分析の高度化に対応できるか。
  • ・コスト: 導入費用、運用費用、保守費用などを総合的に評価する。

高機能なツールが必ずしも自社に適しているとは限りません。オーバースペックなツールを導入しても、機能を十分に活用できない可能性があります。まずは、現状の分析ニーズを正確に把握し、必要な機能に絞ってツールを比較検討することが重要です。

  • 人材育成
    AIデータ分析を推進するための人材を育成または確保します。データサイエンティスト、データエンジニア、AIエンジニアといった専門知識を持つ人材だけでなく、ビジネスの現場でデータ分析の結果を活用できる人材も重要です。

社内での育成に力を入れる場合は、研修プログラムの実施やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)などを検討します。外部からの採用も視野に入れる場合は、求めるスキルや経験を明確にし、適切な人材を探す必要があります。また、データ分析の結果をビジネスの意思決定に繋げるためには、データサイエンティストと現場の担当者が連携し、円滑なコミュニケーションを図れる体制を構築することが重要です。

AIデータ分析は高度な専門知識を必要とするため、人材育成には時間とコストがかかります。また、市場におけるデータサイエンティストなどの人材は不足傾向にあります。自社の状況に合わせて、内製と外部リソースの活用をバランス良く検討することが重要です。

 04-3.導入時の注意点

実際にAIデータ分析を導入し、運用していく上で注意すべき点について解説します。

  • プライバシー保護
    個人情報を含むデータを分析する場合は、プライバシー保護に最大限の注意を払う必要があります。個人情報保護法をはじめとする関連法規を遵守し、データの匿名化や非識別化などの適切な措置を講じることが不可欠です。

データの収集段階から利用目的を明確にし、必要最小限のデータのみを収集するように努めます。分析結果の公開範囲についても慎重に検討し、個人の特定に繋がるような情報の取り扱いには細心の注意を払う必要があります。

  • 倫理的配慮
    AIデータ分析の結果が、社会的な偏見を助長したり、差別を生み出したりする可能性がないか、倫理的な観点から十分に検討する必要があります。AIアルゴリズムの学習データに偏りがある場合、分析結果にも偏りが生じる可能性があります。

分析のプロセスや結果の透明性を確保し、バイアスを低減するための取り組みを行うことや、AIの判断が人間の意思決定に大きな影響を与える可能性がある場合は、その影響範囲や責任の所在を明確にしておくことが重要です。

まとめ

本記事では、企業のデータ活用を高度化する手段としてAIデータ分析の基本と活用方法を解説しました。

AIデータ分析は、属人化やリソース不足を解消し、大量のデータを高速かつ客観的に分析することで、正確な現状把握と高精度な予測を可能にします。さらに、人間では気づきにくい新たな洞察をもたらし、企業の革新を支援します。

特に、自然言語処理(NLP)を活用した顧客分析事例では、手作業で行われていた検索ワード分析を自動化し、大幅な工数削減とデータに基づいた迅速な意思決定の推進を実現しました。

また、AIデータ分析の導入には、目的の明確化、適切なデータ収集、分析環境の構築といった準備や、そしてプライバシー保護や倫理的配慮が不可欠です。これらのステップと注意点を踏まえ、自社の課題や目標に合わせてAIデータ分析を導入・活用することで、競争優位性の確立と持続的な成長が期待できます。

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