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2022.03.30
申込終了:ふるさとチョイスが目指すOne to Oneマーケティング ~ニーズを可視化するデータ分析の裏側~
昨今はSNS、オンラインでの情報提供・販促が当たり前になり、顧客と企業の距離が近くなりました。 そのため、顧客一人一人に合わせたマーケティングを強く求められるようになり、各企業のマーケティング担当者様においては改めてユーザー分析やデータ価値を見直す機会が増えたのではないでしょうか?
ふるさと納税を通じて地域の自立を支援する「ふるさとチョイス」では、寄付者一人ひとりのニーズに沿った情報や機能を提供するOne to Oneマーケティングを実現しようとしています。 本セミナーではふるさとチョイスを企画・運営しているトラストバンクの勝 伸司様をお招きし、ふるさとチョイスが目指すOne to Oneマーケティングやその背景から、実現しようとしている施策に対してどのようなアクションをしていくのかをお話しいただきます。
One to Oneマーケティングを実現するためには、データの利活用が不可欠です。そのためにはまずデータを整備する、土台を作ることが重要となってきます。 セミナー後半では、ふるさとチョイスのマーケティングを支えるためトラストバンク様の業務にコミットし、データ領域の第一線で活躍している弊社吉川が実際にどのようなデータ整備が必要だったのか技術者目線で解説いたします。
セミナー内容
ふるさとチョイスが目指すOne to Oneマーケティング ~ニーズを可視化するデータ分析の裏側~
- ふるさとチョイスの目指すOne to Oneマーケティングとは
- 何故そこを目指そうと思ったのか
- 目指す所に対してどのようにアクションをしていくのか
ふるさとチョイスが目指すOne to Oneマーケティング ~ニーズを可視化するデータ分析の裏側~
- トラストバンクのマーケティングを実現するためにすべきこと
- どのようにデータ整備をし、分析する環境を整えていったか
- 理想を現実にしていくには?
登壇者紹介
勝 伸司(かつ しんじ)氏 株式会社トラストバンク ふるさとチョイス事業本部 事業推進室 室長
メーカー・Sierで官公庁営業とマーケティング職を経験後、Web・AI系スタートアップにて経営企画やディレクションに従事。 2020年9月より現職。吉川 寛(よしかわ ひろし) 株式会社メンバーズ データアドベンチャーカンパニー アナリスト事業部 クリエイティブコーチ
専門コンサルティング企業の経営企画において、サービス開発・分析システム開発を経験後、2020年にメンバーズ入社。 現在はアナリストとして、データ分析実務・データ分析基盤構築・データマネジメントチームビルディングを通してクライアントを支援。[セミナーレポート:第1部] トラストバンク 勝 伸司様
はじめに
みなさん、こんにちは。トラストバンクの勝と申します。本日は「ふるさとチョイス」という事業が目指すマーケティング、それらを実現するために必要なデータ活用の裏側についてお話ししたいと思っております。自己紹介
本編に入る前に、私の自己紹介と弊社の紹介をさせていただきます。
改めましてトラストバンクのふるさとチョイス事業に携わっております、勝 伸司と申します。
私は新卒から3年ほどSIerで営業や商品企画といった経験をした後に、Web系のスタートアップに転職しました。Web系のスタートアップではHR系企業様のWebサイトディレクションなどといったクライアントワークに従事しつつ、自社の方では経営企画や経営管理の経験を積んできました。
その後2020年に現職につきまして、現在ではふるさとチョイスというサービスの事業推進及びデータ分析部門の責任者を担っております。
なお、私はマーケティングのプロフェッショナルではございませんので、今回は具体的なマーケティングの手法というところはお伝えできません。経営企画や事業企画といった部門の観点で「我々のマーケティングはどうあるべきか」ということを考えたり、データサイエンスの部門の観点で「その実現に必要なデータ基盤はどのようなものなのか」ということについて考えてまいりました。本日はそういったものについてお伝えさせていただきます。
会社の紹介
次に会社の紹介をさせていただきたいと思っております。
当社トラストバンクは2012年に設立した会社で、今年でちょうど10年を迎えます。
「自立した持続可能な地域を作る」ということをビジョンに掲げまして、事業を展開しております。2022年現在、会社の核として運営している事業が大きく4つあります。
①ふるさと納税プラットフォームを中心とする「ふるさとチョイス事業」 ②行政・自治体業務のDX推進を担う「パブリテック事業」 ③地域内でのお金の循環を促進する「地域通貨事業」 ④エネルギーの地産地消を通じた持続可能なまちづくりを担う「エネルギー事業」
この4つの事業が当社の大きな4つの核となる事業となっております。
ふるさとチョイス事業によって、地域の外から地域の中へ資源(ここでいう資源はお金だけではなく人・モノ・金・情報など含みます)をもたらし、そこでもたらした資源を地域の中で循環させるのが地域通貨事業です。
そしてエネルギー事業では発電施設などを地域に作ることによって、地域の中から地域の外へ資源が漏れることを防ぐことができます。
またパブリテック事業に関しては、DX推進などによって地方行政を効率化して市民の方々へのサービスの向上、そしてより良い住みやすい地域を作るための支援をしております。
なお、こういった事業ができるのも、ふるさと納税事業で得た全国9割の自治体様とのネットワークがあるからという風になっております。この後のお話に関しては、ふるさとチョイス事業にフォーカスしたものになります。ここで少しだけふるさとチョイス事業について触れておきたいと思っております。
「ふるさとチョイス事業」とは先ほど申し上げた通り、地域の外から地域の中へ資源をもたらす事業です。その中でふるさと納税という制度を使って主にお金をもたらしているという、ふるさと納税Webプラットフォームとしてのふるさとチョイスがあります。
本日はこのふるさと納税プラットフォームとしての「ふるさとチョイス」の取り組みについてお話をしていきたいと思っております。
当社の取り組み紹介
では本題に入っていきたいと思っております。 先に本日のお話の要点を2点お伝えいたします。
1つは自社の売上利益だけではなく、ビジネスドメインやサービスの思想、社会情勢などを重視したOne to Oneマーケティングに弊社は取り組んでいるということです。
もう1つはデータを蓄積するだけでは不十分で、組織的に活用できる状態にすることがデータ分析基盤の構築であることです。
本日のウェビナーを通して今後のみなさんのビジネスやサービスのお役に立てるエッセンスが1つでもご提供できれば幸いです。
取り組みの背景
我々の取り組みの詳細に入っていきたいと思っております。
まずは今回の取り組みに至った背景をお話ししたいと思っております。
この取り組みに至った背景には
①「ふるさと納税」という制度の特性 ②「ふるさと納税」という市場の急速な成長 ③「Covid-19」によるライフスタイルの変化
が大きく影響しております。
まず「ふるさと納税」という制度の特性についてです。
本日参加されている方の中にも、ふるさと納税について既にご存知でいらっしゃって「ふるさと納税はECとほとんど同じ」という風に考えていらっしゃる方もおられると思います。しかしながら、これらは決定的に異なる部分がいくつかあります。
1つ目は「制度の理念・意義が明確にある」ことです。
こちらは総務省がふるさと納税ポータルサイトに記載しているものです。こちらにはふるさと納税が導入された理念について記載しています。
こちらにはふるさと納税の意義について記載しています。
今回、細かい内容に関しては割愛するのですが「納税を通じて、ふるさとへ貢献する仕組みを作りたい」という思いを持って、
①税金の使われ方を考えるきっかけにする ②納税を通じて応援したい地域の力になれる ③地域のあり方を改めて考えるきっかけにする
このような3つの意義があるということが、総務省のポータルから分かります。
裏を返せば導入された思想や意義が大きく崩れてしまうことがあれば、制度存続の危機につながる可能性があるということです。これが取り組みに至る背景の1つ目です。
2つ目は「ふるさと納税」という制度は1年という期間で一区切りとなり、また制度適用になる寄付金額には人ごとに異なる上限値があることです。
例えばECを含む普段の買い物では、仮に所得がなくてもお金という資産さえあれば、いつでもいくらでもお買い物ができます。一方でふるさと納税というのは、その年にふるさと納税の制度適用を受けられる金額はその年のその人の所得に大きく影響します。
つまりどれだけ多くの資産を持っていても、その年の所得が少なければその年にできるふるさと納税の制度適用額というのは少なくなります。その逆もしかりです。
毎年1月1日にその年の制度適用が一斉に開始され、毎年12月31日にその制度適用の期限を迎えるということがあります。
このような金額の上限であったり、制度適用がされる1つの区切りとなる期間があることによって、どのような寄付者の方々にいつどのようなコンテンツを提供するかによって、寄付者の方々の寄付意欲であったり、あるいは「ふるさと納税」という寄付を通じて提供できる体験が大きく変わります。
ちなみにふるさと納税というもの自体は上限であったり、寄付期間の定めがあるのですが、所得税や住民税の還付・控除といった制度適用を受けない形で寄付をする分には金額の上限であったり、期間の条件はございません。
次に3つ目です。ふるさと納税市場の急速な成長についてです。
ご存知の方も多いかと思いますが、ふるさと納税市場の寄付金額や控除適用者(利用者)は急速に数字を伸ばしてきました。つまりここから言えることは、ふるさと納税の利用者、ニーズも多種多様になっているということです。
そして最後はCovid-19によるライフスタイルの変化です。先ほどの市場成長にも関係するのですが、特に2020年に関してはおうち時間が増えたことによって、ふるさと納税の市場は大きく成長しました。
しかし寄付金額であったり、寄付者数、利用者数という数字の伸びだけではなく、様々なWebコンテンツとの接触機会・接触時間が増えたことがライフスタイルの変化としてあります。またこのようなCovid-19によって、経済的・精神的な被害を受けた方々への支援の思いであったり助け合うことの大切さが拡大したのも、大きなライフスタイルの変化だと考えております。
以上のようなことを踏まえまして、私たちは制度の思想であったり、市場の成長、あるいはCovid-19など含む社会情勢など様々なことを考慮しながら、ふるさと納税を通じてより良い地域を作るためにマーケティング活動を行う必要があると考えました。そしてそのために必要なものがOne to Oneマーケティングだと考えております。
取り組み
次に具体的な取り組みの方に入っていきたいと思っております。
現時点で既に取り組んでいるものであったり、これから取り組んでいくことというものが混在してしまうのですが、ご容赦いただければと思っております。それらを踏まえまして、私たちが取り組んだことは大きく2つあります。
①マーケティング活用データの増築 ②データ分析部門の社内プレゼンスの向上
まずは1点目のマーケティング活用データの増築です。
今まではこちらにプロットしている通り、寄付者(ユーザー)の方々についてクラスタリングを行うには、ごくわずかなデモグラ情報、そして分析に活用するのはコンバージョンデータを利用することがメインでした。
つまりなかなか精度の荒いマーケティングしかできていなかったと言えます。しかしこの取り組みを機にインタビューによる定性的なヒアリングデータを取り入れて、より細かいクラスタリングができるようになりました。
また行動ログデータを取り入れることによって、限りなく一人一人の寄付者さんの特性を分類することができるようになりました。
分析や施策の活用にも行動ログを用いることで「どのようなお礼の品を返すか」「どのような使い道を推薦するか」ということだけではなく
・「ふるさと納税」という制度にまつわるコンテンツ
(寄付者さんがどういった情報を必要としているのか)
・地域にまつわるコンテンツ
(一人一人の寄付者さんがどういった地域に思い入れがあるのか)
ということを紐解きながら、マーケティングのアウトプットとして活かすことができるようになります。
より具体的にお話しさせていただきますと、
今まではAさんという寄付者さんが仮にいた時に、Aさんという寄付者さんは1年を通じて同じペルソナであることを前提にマーケティングコミュニケーションを取ってきました。
しかしこれからに関しては、Aさんはふるさと納税と触れるタッチポイントが1年間に複数回ありまして、そのタッチポイントごとにAさんのペルソナが変わることを前提にその時々に最適なコミュニケーションを取るということができます。
例えば今までで言えば、
Aさんという方は ・だいたい年収がこれくらいの方ではないか ・このような思想を持って、ふるさと納税をしているのではないか
ということを1年を通じて同じ方だと断定して、マーケティング活動のコミュニケーションを取ってきたわけですが、これからに関しては例えば、
1月は確定申告やワンストップ申請といった手続き周りのコンテンツを見ていたので、この人はきっとそこに興味があるのかもしれない。
5月に特定の市区町村のコンテンツを見ていた時に、おそらくこの人はその前に旅行であったり、ふるさと納税を通じてそこの地域とのつながりがあり、この地域に強い興味を抱いているかもしれない。
9月に災害が起きた時に災害支援をしたら、この災害支援という文脈でふるさと納税を通じた体験をしたり、地域を支援したいのかもしれない。
12月に関しては、ふるさと納税の一番お尻の時期になりますので、もしかしたらあと残り何日しかない中でふるさと納税が終わってなくて焦っているのかもしれない。
このように寄付者さんがその時々どういった思いを持ってふるさと納税と関わっているかというものを考えながら、我々はコミュニケーションを取りに行くことができます。
取り組みの背景で申し上げた通り、ふるさと納税というのは制度の思想や意義が明確にあるものです。私たちはプラットフォーマーとしてAさんが欲しいお礼の品というコンテンツを提供するのはもちろんのこと、Aさんがふるさと納税を通じて地域に心を寄せた瞬間にそれを絶やさないように適切にコンテンツを提供して、Aさんの寄付体験をより良いものにするとともに、地域を元気にするきっかけを創出する必要があると思っております。
それが我々が掲げている会社のミッション・ビジョンと通じておりますので、我々はこのようなマーケティングをしなければならないと考えております。
取り組みの2つ目はデータ分析部分の社内プレゼンス向上です。
そもそも当社でデータ分析部門の専門部門ができたのは2020年の4月です。
それまでも当然マーケティングにデータを活用しておりましたが、組織的・戦略的に活用できていたとは言い難い状況でした。そして2020年の4月にもっとデータを活用する必要性を感じて、専任部門を立ち上げて現在動かしております。
しかしながらデータを活用するということは、マーケティングの文脈であろうとそれ以外であろうと、そんなに簡単なことではないと思っております。
どんなに良いデータがあっても、どんなに見やすいダッシュボードがあったとしても、それを見て「なるほどね」で終わってはデータを活用できているとは言えないのではないかと私は考えております。
それを見て、次は「なるほど、次はこの手を打ってみよう」といったことにならなければ、宝の持ち腐れになってしまうのではないかと思っております。
そのためにはデータ分析部門の担当者というものは、何をしたいのか、なぜそうしたいのか、それならこのデータを蓄積しようといった、いわゆる事業サイドのマーケティングを含めてデータを活用する部門と一緒に突き詰めて考えておく必要があると思っております。
幸いにも当社ではデータアドベンチャーさんがいるおかげで、その文化を少しずつ作り上げることができていると思っております。この点に関しては後続の吉川さんがお話をされると思いますので、私の話はこの辺りで締めくくりたいと思います。
お知らせ
最後に宣伝のお時間をいただきましたので、お知らせをさせていただきたいと思います。大きく2つございます。
1つ目は一緒に働く仲間を絶賛募集しております。
サービスがプロデュースできる方、そしてプロダクトマネージャー、プロジェクトマネージャー、エンジニアといった役割の方々を中心に大募集しております。それ以外にもふるさとチョイス事業以外でも募集しておりますし、ここに書いてある職種以外でも募集しておりますので、詳しくは当社のコーポレートサイトに足を運んでいただければと思っております。
2つ目はふるさとチョイスの中でオウンドメディアのリリースをいたしました。「読むふるさとチョイス」というメディアです。
自治体さんや地域の事業者さん、色々な方々との取り組みに関する情報が集まっております。地域の魅力になる可能性があるのに、まだ世の中にあまり知られていない魅力あるストーリーをお届けして、その地域に興味を持ってもらう、あるいは足を運んでくれるきっかけにする、そういったことを目指しているメディアです。ぜひご覧いただければ幸いです。
以上で私のお話を終わりとさせていただきます。ありがとうございました。
[セミナーレポート:第2部] データアドベンチャーカンパニー 吉川 寛
株式会社メンバーズ データアドベンチャーカンパニーの吉川 寛と申します。よろしくお願いします。本日はトランスバンク様のデータチームとして私がどのようなことを行ってきたかという具体的な内容についてご紹介をしたいと思っております。
今までやってきたこと
大きなテーマとしてはデータを使えるようにするということを最優先に考えております。この表現ですとまだ抽象的ですので、具体的にもう少しだけブレイクダウンしますと、
顧客とのコミュニケーションを行うメンバーが目的に沿って正しくデータを使っている状態
を目指そうと考えておりました。
One to Oneマーケティングを実践していく中で、顧客とのコミュニケーションを行うにあたって正しいデータが使えるというのは、データ分析の観点からもとても重要なことと思っておりますので、重点的に取り組んでまいりました。
一言で「One to Oneマーケティング」と言いましても、色々な関係者が存在する取り組みでして、ざっくりこの3つで分けさせていただきました。
今日のお話のしやすさの観点からこの3つに分けておりますので、この3つは正確なOne to Oneマーケティングでの役割分担ではないことをあらかじめご了承ください。
1つ目が「ビジネスチーム」という関係者です。ここではいわゆるマーケティングであったり、Webサイトの運営・ディレクションを行っていたり、Webサイトでお礼の品を出していただいている自治体様やカスタマーとのやり取りを行っているビジネスチームがあります。
2つ目の「データサイエンスチーム」というのは、データを使ってレコメンドエンジンであったり、サイトコンテンツをスコアリングしたり、寄付者・ユーザーのロイヤリティスコアを算出したりして、One to Oneマーケティングを具体的に行っていくデータを作っていくチームです。
最後の「システム開発チーム」というのは、上の方で色々企画やデータができたとしてもそれを実際にサイト上の機能にしないとコミュニケーションが取れないと思いますので、そういった機能開発を行っていたり、それを具体的に実践するためのスクラムに取り組んでいたり、あるいはWebサービスですので、サービスが止まればOne to Oneマーケティングは必ず達成しません。
ですので、サービス保守をしている関係者がおりました。この関係者とどういう風にやり取りをしていたかについて、お話をさせていただければと思っております。
私がトラストバンク様にジョインした頃の状態はこのような状態でした。
データを使いたい人はユーザーです。このユーザーとは先ほどのビジネスチームやデータサイエンスチームにあたります。彼らはデータベースの構造にはあまり精通してはいない状態でした。
今後このデータベースという名前で一元化してお話をするのですが、ここは具体的にはデータベースであったり、データウェアハウス、あるいはデータマート、BIツールによる可視化をしている部分なども全て含めて、このデータベースという一番右のもので集約しております。今回のお話ではここについて深く触れませんので、ここは分かりやすく一元化しております。
このデータを使うユーザーはこのデータベースにはあまり精通していない状態です。ですので、ここからデータを取り出して使おうと思うと、必ずデータベースの構造を理解しているシステム開発チームに依頼が必要でした。「こういうデータを取ってください」という形でお願いして出してもらうわけです。
ただこれを行っていると、大きく分けて3つの問題があります。
1つ目がシステム開発というチームの業務設計上、データを集計を依頼されて対応するといったことは含まれておりませんでした。
加えて依頼して集計するという中では、本当にユーザーが使いたいようなデータがちゃんと出てきているのか一切アセスメントが行われていない状態であったという風にも見えました。
この2つから、おそらくこのユーザー側でもシステム開発側でも、この業務自体に結構なストレスがかかっていたのではないかと思っております。
「本当に自分のやりたいことができているのか」という疑問が常にあるような状態に思えましたし、計画的に来るわけではない依頼に答えているシステム開発側の業務コントロールも、なかなかに難しい状態だったのではないかという風にも見えました。
では、現在はどのような風にしているかと言いますと、このような状態にしております。
このような段階に持っていくまでのプロセスについて今日お話をさせていただければと思っております。
現状どのような良いことが起きているかと言いますと、まずデータチームがユーザーが使いたいデータを集計するといった依頼を受けております。我々は当然それの専属チームですので、納期を約束してデータを計画的に使うことに寄与できると考えております。
加えまして、私たちはデータアナリストとして常駐しておりますので、データ集計が本当に目的に見合っているか、その時にどのデータを使えば良いのかということを考えることができますし、データを利用するときにデータベースの構造をしっかり理解しております。
この2つの要素を持ち合わせておりますので、データ集計に対して適切な説明が行える状態になっています。これが2つ目に挙げられます。
3つ目はデータ利用の目的に対して、そもそもデータベースから事前に使いやすいものが用意できれば最高だと思っておりますので、これが先ほどの2つの強みから実現できるようになってきたのではないかと考えております。
1つ目はデータ分析基盤構築、もう1つはデータカタログの作成です。こちらは後でお伝えします。
ここまで行くのに非常に単純にトントンと進んで行ったわけではなく、色々な試行錯誤がありました。
この状態にするために3つのステップを踏んでいきました。
①データチームのケイパビリティの提示、実践 ②データ分析基盤の構築 ③データ分析基盤の強化
ということを行っておりました。こちらについてお話をしたいと思っております。
まず「データチームのケイパビリティの提示・実践」についてです。
まずここではデータ利用の目的というものを相互理解して行きましょう。どこの話をしているかというのは色で分けておりますので、そこに注目してお話を聞いていただければと思っております。
まずここで一番行いたかったことは現状データをどのような風に使うことにニーズがあるのかを蓄積したいということです。これは後々データベースを強化していくための情報として使うものですが、それをどのような風に行ったかと言いますと、データ集計に関する依頼をデータチームに一元化して集約しておりましたので、データ分析のニーズ自体をそこで一元管理できる状態に持っていきました。
ただこれは簡単には行きません。
「誰かと業務をする」ということをイメージするとお分かりいただけるかと思いますが、関係者がいることによって自分の業務がより良くなるというイメージが湧かないと、その人たちと一緒にやろうという気持ちになりにくいです。
「あの人と一緒にやってください」といくら言われてもすぐにそれができないという感情的な側面も存在すると思っております。
そこを最優先に、どうするか考えた結果「我々と一緒にこのデータ集計やデータ分析について考えることによってデータ集計や分析の質が向上させられますよ」というアピールをしながら実践していき、成功体験を持ってもらいました。我々と一緒にその仕事をするとデータが上手く活用できるようになるというイメージを持ってもらえるようにしました。
この取り組みは徐々に成果を上げまして、データ集計や分析の依頼などに関して非常にざっくりとした状態からのご相談も非常に増えてきており、トラストバンクという会社でどのようなデータ利用目的があるのかということが、どんどんと蓄積されてきたフェーズとなりました。
2番目は「データ分析基盤の構築」です。ここではOne to Oneマーケティングを実現するための基本的なデータ分析基盤を作りたいというものです。
先ほどの勝さんのお話の中で、特に「行動ログ」や「ヒアリングデータ」といったものが登場しましたが、そのようなものをどう蓄積して使える状態にするかということに取り組んできました。
私たちはトラストバンクという会社の中で、どのようなデータ利用目的があるかということについてかなりの量を把握しておりましたので、それを実現するための使いやすいデータ分析基盤を作れば良いということが既に分かっている状態でした。
データ分析のニーズの中でより多くあった「顧客1人1人のサイト内体験の横断的な分析」を実現するために、事業部内のトランザクションデータとトラフィックデータを結合したものを提供してきました。
またここでデータ分析基盤の強化を行ったのですが、このあたりでデータの事業内での流通が非常に増えていくフェーズでもありましたので「データの安全な利用」についても考えるようになりました。
流通をある程度制御できないと危険な場合もありますので、安全な利用を目指してセキュリティポリシーを作りました。これによってデータ分析基盤の基礎的なものができてきたように思っております。
最後の「データ分析基盤の強化」です。作ったものがそのまま完成形になることは個々のデータ分析ではなかなかないことであると思います。
常にフィードバックを繰り返しながら我々もデータベースに対して深い理解を進めていき、もっともっと使いやすくするというものを実践していきました。これもOne to Oneを実現するためのデータ分析基盤として進化させていくようなイメージです。
具体的にはどのようなことを行ったかと言いますと、ずっと継続していたデータ集計はまだまだ実践していて、それをまだまだニーズを収集し続けております。これをデータベースの方にフィードバックするという形でデータベースに対する我々の理解もどんどん深めていくということをして行きました。
この「深い理解」というものは、我々もやはりデータベースで膨大なものを1回で理解できるわけではありませんので、実際のデータ利用目的という目線から「こういう風に使えばもっと使いやすくなるのではないか」というアイデアがどんどん出てきますので、この深い理解を行うことでデータ利用目的をさらに洗練化するという好循環につながっていったと考えております。
これらを行ったことによって初めの関係者がどのような風に変わって行ったかと言いますと、とにかくコア業務に集中できるようになったように思っております。
計画されていない業務というのがたくさんあったりですとか、いつ使えるかわからないという状態が続くと、ストレスが溜まってしまって業務に集中できないこともあると思っております。ですが、我々が加入することによって業務に集中できるようになったという風に思っております。
ビジネスチームとしては
・データを計画的に使える 「使いたい時に出して」といった状況では「分かりました」という形で出せる状態になってきました。
・分析能力が担保される ビジネスチームの方は分析能力に長けていたり、そうでなかったり色々な方がいると思っております。どなたでもデータ分析という範囲においては私たちと一緒にすることによってある程度の品質が保証されていくというような状態になってきたように思っております。
・施策の企画立案に集中できる これらが行われるとビジネスチームとしては具体的な施策の企画立案・実行に集中できるようになってきたという風に思っております。
データサイエンスチームとしては
・データ定義の確認がスムーズ こちらはデータサイエンスですので、統計的な解析などを専門に行っている方です。このような方が「このデータの定義はどういうものですか」ですとか、実際に使われている集計ロジック(税抜きor税込、申し込み件数、申し込みの具体的な数など)そういったことを毎回毎回確認されることで本当にやりたいロジック設計に集中できない状態でしたので、それがかなりスムーズに行えるようになったと思っております。
このデータサイエンスチームは、私たちに問い合わせるだけでそれらがほとんど全てわかっている状態になってきたように思っております。
・実際に使われている分析ロジックを使える 実際にそういったことになっているので実際に使われている分析など軸というものをそのコメントなどのロジックに使えるようになってきたと思っております。
・ビジネスチームの要件を反映できる このようなものを行えることでスムーズにビジネスチームの要件を反映できるようになってきたように思います。
最後にシステム開発チームとしては
・アドホックなデータ集計依頼が減る アドホックなデータ集計依頼について、ビジネスチーム要請に応じて、というようなものはかなり減ったように思っております。
加えて「この集計だとこうなりますよ」といったことをシステム開発員の方も丁寧に行っていただいていたのですが、やはりそれを行いながらシステム開発チームの本業をやるというのはかなり難しいですし、時間が足りなくなっていくと思っております。
・DBの翻訳業務が減る 我々データチームがいることで、このようなデータベースを具体的なビジネスの言葉に翻訳する業務も減ってきたように思っております。
・機能開発など付加価値業務に集中できる これらが行えることで、開発の付加価値業務に集中できるようになってきたのではないかという風に考えております。
ここまでが今までやってきたことです。
今後やりたいこと
次に今後やりたいこと、今も取り組んでいることなのですが、
ここではまず我々が今のデータ集計をユーザーから依頼され、それに対して答えるという状態になっているのですが、やはり人を挟むために遅くなってしまっております。
One to Oneマーケティングの観点ではあまりよろしくないことではないかと思っておりますので、これを自動化あるいはセルフ化していくということができればと思っております。
また、専用のデータマートやダッシュボードを作ることによって、ユーザーが自分でデータを利用できる状態を作っていこうと考えております。
2つ目は我々が施策貢献や利益貢献に対して、次はアクティブに動いていく、我々データ利用の目的とか分析ニーズをかなり収集しております。
各チームではなく事業部の横断的に、それらの全てを総合したようなものを我々は有しておりますので、これが強みになって有用な施策を出せるようになるのではないかと考え、このような取り組みを現在進めております。
データチームを作っただけでは、人が増えて誰かが肩代わりしていたり、行っていた業務を引き取ったり、そういうことだけではやはり利益貢献は生まれないと思っております。
我々としましては、あらゆる部署と交流を重ねて、利益を生む付加価値業務をどのような風に作っていくか上手くデザインしていくことができたために今回の成功があったのではないかと考えております。
私からは以上となります。ありがとうございました。
Q&A
Q1:データ活用のお話をお伺いしていると、One to Oneマーケティングに必要なデータを手動で集計しているような印象を受けました。ある程度自動化が必要なように思っておりますが、ツールとのデータ連携などはされているのでしょうか
吉川 自動化しているものはかなりたくさんございます。ただ人でないものを自動化する必要はないと思っております。どういう風に判断して、実際の自動化まで持って行ったかというようなデータを使うニーズの側のお話をさせていただきましたので、そこで当然ニーズが強かったり、自動化する要件が出てくれば自動化をどんどんと進めております。
勝 具体的なツールの名前は控えるのですが、色々な接客ツールといったものは利用しておりまして、その中身とどう連携するかといったところはデータサイエンスチームの方で考えて実行しております。
Q2:根本的な質問で恐縮ですが、One to Oneマーケティングを目指そうと思ったきっかけを教えていただけたらと思っております。
勝 私のパートでお話しさせていただいた取り組みの背景というところと重複する部分は往々にしてあります。
やはりふるさと納税という制度の特性であったりだとか、市場の急成長の具合であったりとか、あるいは社会情勢、今回で言えばCovid-19を例に出させていただきましたけれども、それだけではなく、例えば災害支援ですね。
災害が発生した時にそれを支援する形でふるさと納税を使うこともできますし、あるいは沖縄の首里城が火事になった時、その復興のためにクラウドファンディングでお金を集める手段は色々ありましたけれども、その中でもふるさと納税も1つの手段としてありました。
そういった世の中の社会情勢、ふるさと納税の制度の特性、ふるさと納税のマーケットの伸び方、このようなものを色々勘案した上でよりふるさと納税というものを使っていただいて、寄付者の方々にとって自分たちに物がもらえるという単純な形だけではなく、それを通じて地域に興味関心を持ってもらうためにはOne to Oneマーケティングではないとできないのではないかというところで、今回このような取り組みに至っているところです。
Q3:One to Oneマーケティングを目指していく過程で苦戦した部分について、組織的な面やデータ分析の面で教えていただけたら幸いです。
勝 期待される答えと若干ずれてしまう部分はあるのかもしれないのですが、データ分析にとどまらず大きな会社とか組織という観点で言いますと、やはり我々はふるさと納税という制度を軸に自立した持続可能な地域を作っていくということを主として行っておりますので、どうしてもマーケティングをする際に、我々のビジョンやミッションといったものをユーザーに若干押し付けがちになってしまうという部分は過去にはあったように思っております。
そこは今も若干残っている部分があるのですが、あくまで1人1人のユーザーを理解して、我々の思いを押し付けるだけではなく、いかにユーザーの方々にもそれぞれに楽しみ方があって、我々も制度を守るとか地域を元気にするためにこのような思いがあるという、良いバランス感でお互いにふるさと納税という制度を活用していくためにはどうしたらいいだろうというところは、今でも引き続き今後も考えていく必要がある部分であると思っております。
ある地点で答えが出るわけでもないものだと思っておりますので、ずっとここは研究していかなければならないという風には思っております。
吉川 データ分析の面からでいくと、例えば先ほど勝さんからお話のあった通り、ECサイトとは違います。
見た感じは似ておりまして、行動とかトランザクションのログを見ると似ているのですが、裏に持っているユーザーの行動や控除額の上限がなどがあり、通常のECの考え方が通用しなかったりもしますので、なかなかシャープにこの地点で顧客付けすれば良いといったことが決めにくい、これは先ほどのビジネスチームのユーザー側も同じで、具体的には「この範囲で1回分析してみましょうか」ということを1つ1つ詰めていくのは、苦戦もしておりますが、同時にオリジナリティがあって非常に面白くも感じます。
Q4:「押しつけがちな部分」を感じたきっかけはありますか?弊社もWebという特性上 toCの企業ですので、気になっております。
勝 先ほど申しました我々のビジョンや思想を押し付けがちというところについてでしょうか。
我々はその地域にお金を一番残したい、そういった思いをふるさと納税を通じて実現していきたいと思っています。なるべく地域にお金が残るように、なるべく地域に資源がいくようにという形でふるさとチョイスというプラットフォームを運営しておりました。
そこにはやはりユーザーさんへの配慮というものが若干欠けている部分があるという風に思っております。当然我々は地域にお金を残したい、地域に対して関心を持ってもらいたいと考えておりますので、ユーザーの人たちにこういうコンテンツを見せれば地域に関心を持ってもらえるのではないか、より地域に貢献してもらいたいと思ってもらえるのではないかというコンテンツを作ってマーケティングコミュニケーションとして取ってきました。
それでは上手く行かない部分も当然ありまして、ユーザーの方々も寄付者の方々も1人1人ふるさと納税の楽しみ方は異なります。地域に貢献したいと考える方も一定数ございますし、財テクとしてのふるさと納税だと考えている方もいます。そういったこともありまして画一的な弊社の思いを押し付けるのは難しいのかなと思っております。
それを転換するために1人1人の特性を見抜いたマーケティングをしないといけないと思って動き出したというところがあります。
Q5:データ分析において、チーム内で総合理解を深めるために吉川さんが気をつけていることを教えていただきたいです。
吉川 チーム内ということで、どういう風に答えようかって感じですけども、ビジネスチームとのやり取りのようなお話という前提で回答させていただくのですが、データ分析はみなさん多分ご存知だと思っておりますが、統計的なものであったりとかそういった最終的には数学のやり方に落とし込んでいきますので、どうしてもデータ分析担当としてはそこに直接落とし込める状態で分析目的が設計されていると、とてもありがたいしやりやすいと思っております。
それはすごくデータアナリスト都合と言いますか、我々が欲しいものを求めているに過ぎないので、ではそのビジネスチームの依頼要件や今困っていることなどをまずどのような風に解像度を上げれば数学的に落とし込めそうなのか、統計的な落とし込めそうなのかということを一緒に話したり、本当にそれが最適解なのかということも当然あると思っておりますので、本当にその方法が今一番良いのかということも含めてコミュニケーションを取っていくのが一番大事であると思っております。
我々に依頼されたからといって、無理にデータ分析をする必要がない場合もあると思っております。逆に行ったとしてもすごく時間がかかる、制度が悪いなどといったどうしようもない理由で止まってしまうのは大変申し訳ないと思っておりますので、そういった形で相互理解を深めていくということはとても気をつけております。
良い状態を一緒に作れると良いかなと思います。どちらかの都合で話をするとそこで止まってしまいますので、せっかく専門家が2人いるなら、より良いものもできるのではないかというのはいつも気をつけております。