データ分析の前にやるべきこととは?データ利活用で事業上の成果を生むための考え方

ナレッジ
2024.09.16
データ分析の前にやるべきこととは?データ利活用で事業上の成果を生むための考え方

企業活動において成果を出すことは大変重要なことであり、もちろんデータ分析も例外ではありません。
では事業上の成果を出すために何が必要なのでしょうか?

データから事業上の成果を出すためには、分析以外にも「組織」「データ」「業務」の3つのパスが必要です。
世の中には分析や分析前の業務の情報は多くありますが、全体的に「組織」「データ」「業務」についての情報は未だ少ないと考えています。
そこで本日は見落とされがちな3つのパスについて成功ポイントをお話しします。

 

執筆者のご紹介

白井 恵里
株式会社メンバーズ 執行役員
兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長

東京大学を卒業後、株式会社メンバーズへ入社。
大手企業のオウンドメディア運用、UXデザイン手法での制作や、デジタル広告の企画運用に従事したのち、2018年11月に社内公募にてメンバーズの子会社(現、社内カンパニー)社長として株式会社メンバーズデータアドベンチャーを立ち上げ。
データアナリスト、データサイエンティスト、データエンジニアなどデータ領域のプロフェッショナルの常駐により企業のデータ活用を支援し、顧客ビジネス成果に貢献するサービスを提供。
2020年10月から株式会社メンバーズ執行役員兼務。現在カンパニーに所属するデータ分析のプロフェッショナルは約150名。
2024年、一般社団法人Generative AI Japan立ち上げに伴い、理事就任。
X @EriShirai

 

目次
01.|成果を生む第1歩は成果創出に適したチームを作ること
02.|ツールの進化が生みだすユースケースなきデータ。本当に必要なデータを揃えよう。
03.|分析はあくまでも手段。考えるべきはデータ分析の目的。
04.|初めての取り組みに困りごとや悩みはつきもの
05.|まとめ

 

成果を生む第1歩は成果創出に適したチームを作ること

 

データチームの考え方

データ活用を進めるうえで前提としておくべき考え方は、データ分析やデータ活用のみで売り上げや利益を直接生むことはできないということです。
基本的にデータ分析や可視化を行うことで得られるレポート、示唆出しなどは、事業成果において中間成果物であるということを認識しておきましょう。
実際にデータから得られる情報をもとに事業上の成果につなげるのは施策の実行能力を持つ現場であり、データ活用者とは別の立場の部署や人であることが多いです。
そのためデータ活用チームへは、各部署と連携してデータ活用を行うことが求められます。

データチームの編成

前述した「データは単体では成果を出すことができないため、他部署との協力が必要である」点を念頭に置いたうえで、成果創出に適したデータチームを編成していきましょう。
データチームの編成を行うには以下を決定することが必要です。

  • ・目指す姿・役割・価値設計
  • ・業務・人材スキル・マネジメント決定
  • ・組織組成


それではそれぞれの項目を1つ1つ確認していきましょう。

①データチームの目指す姿・役割・価値設計

・チームが目指す姿を決める
チームが目指す姿は以下の順番で考えると決定しやすいでしょう。
理想→理想から逆算したやるべきこと→目指すデータチームの姿

データチームと他部署の関わりは大きく分けて2つあります。
会社の業務や業績全般を俯瞰して考える「経営」と、全体の業績達成のため各事業部ごとにミッションを持っている「現場」です。
「経営」と「現場」でデータチームの関わりも多少変化するため、この2つに分けて目指す姿を設定するのがよいでしょう。

「経営」との関わり方
理想  :経営がデータを経営資源として捉えている
やること:データを経営資源と捉えた全社的なデータ活用戦略の設計
目指す姿:経営のパートナー

「現場」との 関わり方
理想  :現場が業務にデータを活用して成果をあげている
やること:早くから成功体験を積ませ、チームの存在価値を認知させる
目指す姿:現場とともに事業成果を作る仲間

上記の目指す姿を実現するために重要な点は、「経営」と「現場」の双方に早い段階でデータチームの存在価値を認識させることです。
基本的にデータ活用は、業務効率の改善や事業成果の創出など業務において付加価値的な要素であり、必要不可欠とは言い難いものです。
そのため組織設立の時点で大きなミッションを達成しようとすると、他部署からはデータチームが行おうとしている業務やそれによって得られる成果が見えづらく、協力を得られにくくなってしまいます。
まずはデータチームがそれぞれの部署にとってメリットのある存在である、ということを認識させるため、小さな成果を早期に生み出すことを意識しましょう。
徐々に全社へデータチームの存在価値を認知させることにより、経営のパートナーや事業成果を尽くす仲間となれるのです。

・役割
データチームの持つべき役割とは一言でいうと、データを使って解決できる問題の中で、解決することで事業上価値がある問題を見つけ、解決することです。
例えば、「データを分析、可視化してBtoBのマーケティング施策のボトルネックを特定したことで商談化率が上昇した」といった場合は、マーケティング部の事業成果をあげることとなり、事業上価値がある問題といえます。
また事業部に合ったダッシュボードを構築することで、担当者が週次で作成していたレポーティング作業がなくなるといった場合も業務効率の改善につながり、事業上価値のあるものと言えるでしょう。
反対に「レポートを作成したが誰も見ていない、または見ていても数字を追うのみで数字を読み解きアクションに反映することがない」といった場合は、事業部の成果創出や業務効率化などネクストアクションへ繋がらないアウトプットとなり事業上価値がないと言えるでしょう。


・全社に提供する価値
全社に提供するデータチームの価値は、目指す姿と役割を実現するものです。
データ活用は基本的に以下の流れで行われます。

上記の流れから鑑みて、データ活用が全社に提供する価値とは、個々の企業が抱えているビジネス課題と施策の間をデータでつなぐこととなります。

 

②業務・人材スキル・マネジメント決定


目指すべき姿・役割・価値設計まで完了したら、次は以下の観点で業務・人材・マネジメントを決定しましょう。


Ⅰ 業務
・データチームで想定される業務  
Ⅱ 人材
・業務を達成するために必要なスキル感
・人材調達方針(自社採用かアウトソーシングか)
Ⅲ マネジメント 
・意思決定までのフロー
・データチームのKGI、KPI
・コミュニケーションの方針
・データ人材のキャリアパス
・データ人材の評価、報酬

ここで重要となるのは、キャリアパスや評価、報酬をどのように決定するかです。
一般的な営業や人事などの、どの会社にも必要なポジションのキャリアパスは実例も多く、想定しやすいでしょう。


しかしデータ人材のようなスペシャリストのキャリアパスについては、想定している企業の方が少ないのではないでしょうか?
データ人材は依然高い需要があり、評価や報酬を低く見積もりすぎると人員の獲得に苦戦するでしょう。
かといって報酬を高く設定しすぎることにより、既存社員との軋轢が生まれる可能性もあります。
どのような観点でデータ人材を評価し報酬を決定するのか、その報酬が市場のデータ人材の価値と見合っているかは慎重に精査する必要があります。

③組織組成

ここまで設計できれば、あとは組織の組成を行いましょう。


①データチームの目指す姿・役割・価値設計
②業務・人材スキル・マネジメント決定

上記の枠組みに沿った仕組みづくり、仕組みづくり、制度づくり、人材調達などを通して
自社にあったデータチーム作りを実現していきます。

 

ツールの進化が生みだすユースケースなきデータ。本当に必要なデータを揃えよう。

データ活用の相談を受ける際、「データは既にたくさん溜まっている」「必要なデータは用意している」というお客様は多数いらっしゃいます。
しかし実際のところ、いざ活用をしようするとデータを取り直すケースが多く発生します。
なぜデータの取り直しが発生するかというと、データの使い道(ユースケース)を想定しないままデータを溜めているからです。
技術やツールの進化によりデータ取得・蓄積が容易になり「とりあえずデータを溜めておく」ことが可能となり、「ユースケースなきデータ基盤」が多数構築されるようになりました。
そうした状況が生まれることで、「データはある」ものの、成果を生むのに必要なデータはない状況が頻発するのです。

そのためここでは使い道(ユースケース)を決めてデータを取得することが重要です。

ユースケースの作り方フレームワーク

上記の項目を埋めてデータを集積し、それらに適合するデータ収集実行・基盤構築を行うことで、必要なデータがそろっている状態を作り出せるでしょう。
データを取得する以前に、データを使ってどう成果を出すか、成果までの道筋を立てておくことが必要となるでしょう。

 

分析はあくまでも手段。考えるべきはデータ分析の目的。

前述したデータの使い道(ユースケース)を決めておくことと同様に、データ分析の目的を設定しておくこともデータ活用において成果を出す重要な要素です。

前述では何のためにデータを取得するか、という観点でお話ししましたが今回は何のためにデータを取得していて、データから分析を行った結果、どのようなアクションを起こすかという観点でお話しします。

問題設定

前述したユースケースにも重なる部分ですが、まずはデータ活用によってどのような情報を得たいかの問題設定が必要です。
分析するということは、何か知りたい情報があるはずです。その情報を知りたい理由が問題設定となります。

以下を例としてこの後のアクション設定と方針策定を行いましょう。

例)
知りたい情報:自社サービスのLTVと顧客獲得単価
問題設定  :直近、新規顧客獲得とLTV向上どちらに投資すべきか判断したい。資金ショートしそうなのでなるべく早く。

分析後のアクション決定

次は分析後のアクションを決定します。
分析によって前述の情報を得た後、どういったアクションを行う想定か明らかにしておきましょう。

例)
LTVが顧客獲得単価を下回っていれば、顧客獲得投資を停止。
LTV向上のためにサービスを改善し、購買頻度・購買単価・利用継続期間の向上を狙う施策を行う。効果は週次定例会でモニタリングする。

分析方針策定

分析後のアクションまで定まれば、アクションに見合う分析方針を決定します。
納期と精度、重さと更新頻度、情報量の多さとコストなど、多くのトレードオフのなかから必要十分な設計を行いましょう。

例)
素早い決定が必要な状況なので、サービス開始時に遡った全数調査はせず、現アクティブユーザーのみ対象とする。
ドリルダウンはしない。効果検証を週次定例会で行うので、レポートデータのリアルタイム更新は行わず、定例会前日に更新するようバッチを組む。

 

初めての取り組みに困りごとや悩みはつきもの

データから成果を生むには、分析以外に3つのパスが必要です。
以下の全てのパスが嚙み合って初めて成果が出ます。

しかしこれらを自社内で行うとなると、データ領域に関する幅広い知見が必要となります。
またデータチームに求められるスピードに間に合わなくなりデータチームの組成自体が頓挫してしまうケースもあります。


あくまでも最終のゴールとしては、自社内でデータ活用が円滑にでき成果を創出できることですが、その道筋の途中に外注を挟むことも1つの方法です。
弊社では今回の記事でお伝えした分析前に行うべき部分を包括的にご支援しております。
もしデータ分析、データ活用に関して何かしらの課題を抱えていらっしゃるようでしたら必要に応じてご活用くださいませ。 

 

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まとめ

 

ここまで、データから事業上の成果を生み出すためにデータ分析の前にやるべきことについて記述してきましたが、いかがでしたか?
企業が何か新しいことを始める際には、必然的に事業成果が伴わない限り、継続は難しいです。
もし今年度からデータ活用組織を立ち上げたもののうまくいっていない、または組織組成には成功したものの全社的な価値提供まで拡大することが難しいなどございましたら弊社メンバーズデータアドベンチャーカンパニーへご相談いただけますと幸いです。
弊社の100名ものデータのプロフェッショナルが、高いビジネス貢献思考をもって貴社のデータ活用を支援いたします。

 


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白井 恵里

 

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