【導入事例】
常駐メンバーの高度な技術が「Udemy」事業のさらなる成長に貢献
株式会社ベネッセコーポレーションさまは、2015年より米国Udemy社と包括的業務提携契約を結び、日本国内において、オンライン動画学習プラットフォーム「Udemy(ユーデミー)」のサービス提供を行っています。そんな「Udemy」事業にまつわるデータ分析を行うのが、同社の大学社会人カンパニー マーケティング統括部 データ戦略推進課です。そして、こちらの部署では、2024年2月からメンバーズデータアドベンチャー(以下、DA)の「データ領域プロフェッショナル常駐サービス」をご活用いただいています。
今回は同課の大塚 卓さま(写真左から2人目)と水止洋孝さま(写真中央)、そしてDAの常駐メンバーである下田直一郎さん(写真右から2人目)と木下優人さん(写真左)、石田夏海さん(写真右)に集まっていただき、座談会を実施。DAのサービスを活用する狙い、業務内容などについて語っていただきました。
ベネッセさまは、学習記録データを活用して効果の高い学びを提供するなど、古くから積極的にデータを活用してきたことで知られます。データ活用に対するリテラシーが高い皆さんの目にはDAのサービスはどのようにうつっているのでしょうか。
(取材日:2024年12月9日)
不足する人員とケイパビリティを補うために常駐サービスを導入
―― はじめに大学社会人カンパニー マーケティング統括部 データ戦略推進課のミッションを教えてください。
大塚 卓さま(以下、敬称略) 日本において「Udemy」は、個人のお客さま向けのマーケットプレイスサービスと、法人のお客さま向けにサブスクリプションで提供する「Udemy Business」を展開しています。私たちの部署のミッションは、そんな「Udemy」事業全般のデータ戦略の推進です。具体的には、データ分析やBIツールでのデータの可視化を通じて、KPI管理や営業資料作成の支援、各事業部の施策の効果検証や、将来の戦略策定に向けた知見探索を行っています。
――DAの「データ領域プロフェッショナル常駐サービス」を導入した経緯についてお聞かせください。
大塚 急成長を続けている「Udemy」事業のデータ分析ニーズは増加する一方です。そうなれば当然要員不足が大きな課題になります。この課題を解決するため、すでに弊社と取引のあったメンバーズグループ内のDAが提供する「データ領域プロフェッショナル常駐サービス」の導入を決定しました。必要なタイミングで不足するケイパビリティを補強できるルートを構築する狙いもありましたね。なお、DAの常駐メンバーには、主に個人向けのマーケットプレイスサービスのデータ分析を担当していただいています。
――それでまずは2024年2月から木下さんが常駐を開始したわけですね。木下さんが担当する業務内容について、ご説明いただけますか。
木下優人(以下、木下) データアナリストとして、講座データの分析やBIツールに関連する業務を担当しています。現在、主に取り組んでいるのは、コースレビューの自由回答の分析です。自然言語処理により、文章の内容をスコアリングする仕組みを構築しています。さらにこの分析結果をどのように活用できるかについての検討もスコープの1つです。
水止洋孝さま(以下、敬称略) 新規ユーザーの獲得に注力してきた市場の急成長期を経て、現在私たちが重視しているのは既存顧客のリピート購入を増やすこと。この目的を実現する上で、木下さんにお願いしているアンケートの自由回答の分析は、これまで把握できなかったお客さまのインサイトを知ることができるので、非常に大きな意味を持ちます。実際に分析結果から得られた知見はいくつかあります。例えば、分かりやすいものとして「ユーザーがアプリなどを使って隙間時間に学習していることとリピート購入に相関がある」というものがあります。この結果を受けて、社内でアプリ活用促進に対するプライオリティが上がるようになりました。このような取り組みは、先ほど大塚が説明した知見探索に関するものです。非常に高度な技術力が求められ、社内のスキルだけで対応するのは難しいのでとても助かっています。
――下田さんは、2024年4月から常駐を始めて、プロジェクトリーダーを務めるとともに、データサイエンティストとして分析業務も行っていますね。
下田 直一郎(以下、下田) 私は、売上に直接関係する領域の分析を行うことが多いですね。例えば、「Udemy」の講座には、「システム開発」や「ビジネススキル」のほか、「デザイン」や「健康・フィットネス」など、様々なジャンルがありますが、講座の価格最適化のため、ジャンルごとに売上を最大化する講座の価格を分析しています。また、最近では「マーケティング・ミックス・モデリング(MMM)」を実現するために、ある時系列モデルが成り立つかどうかを分析しました。
――将来のマーケティングの予算配分の最適化に貢献するMMM分析は、現在数多くの企業から注目を集めていますが、こちらも高度な技術力が求められる印象があります。
下田 自分では、高度なことをしている認識はありせんが、データサイエンティスト、アナリストという職種では、そういったモデリングができる人が少ないかもしれません。
――データ分析の結果を、講座の価格設定やCXの改善、マーケティングに生かしているとのことですが、その他、DAの常駐サービスを活用して実感しているメリットはありますか。
大塚 講師をはじめとする社外のステークホルダーに提案や折衝を行う際、データがあるのとないのとではやはり説得力が異なります。社内に分析結果を説明する際も、私たちが分析したというよりは、社外のデータプロフェッショナルであるDAが分析したという方が説得力が増すという場合もあるでしょうね。その際に、これまで自社内のリソースだけでは実施することが難しかった高度な分析手法も利用できるようになり、社内外の意識合わせで役に立っています。
データ分析の結果を利用する人のことを常に考えながらアウトプットを行う
――業務を遂行する上で心掛けていることがあれば教えてください。
下田 ビジネス目的を分析目的に適切に変換することを心掛けています。平たくいうと、どのようなアプローチによって、どのような分析結果を出せば、次の意思決定につながるのかを意識するということです。いくら統計的に素晴らしいアウトプットが出ても、現場で活用する方が、それを見て「へー、なるほど」で終わってしまったら意味がありませんから、この点はとても重要だと考えています。例えば、私たちは主に個人向けのマーケットプレイスサービスを対象とした分析を行っていますが、時折「Udemy Business」に関する仕事をすることもあります。その際は「Udemy Business」を活用する企業さまが最初にどのような講座を受講すれば継続的に利用していただけるかについての分析でしたが、最終的に結果を活用する法人営業の方を意識してアウトプットしました。
――これまでの業務で大変だったことはありましたか。
木下 情報セキュリティを重視しているベネッセさまでは、私たちが扱える環境では外部との通信ができないようになっています。そのような環境下でどのように分析環境を構築すればよいかについては、ずいぶん頭を悩ませました。一般的には「Python(データの収集やデータ分析領域でよく利用されるプログラミング言語)」のライブラリを適用する際には、コマンドプロンプトからインストールを実行すればよいのですが、それができない。そこで、通信可能な分析環境にアクセスできる水止さまにライブラリの導入をお願いして、ご対応いただいています。
――この課題は、密なコミュニケーションで乗り越えたということですね。
水止、木下 結局、それしかないですね(笑)。
ビジネスやサービスの深い理解が正しい分析結果を生む
――DAの常駐メンバーの仕事ぶりについて率直な感想をお聞かせください。
大塚 いま木下さんからお話あったように、弊社のセキュリティを守るうえでデータ分析環境の面でご苦労をおかけしていますが、それでも忍耐強く対応頂き、高いクオリティのアウトプットを出し続けていただいている印象です。とても頼りにしています。
水止 社内のナレッジだけでは対応できないような高度な技術力が求められる要求に応えていただけて、本当に助かっています。また、BIツールの改善点やチーム内のスキルアップを図る勉強会の開催を提案していただくなど、本来の業務以外でもアドバイスや知見をいただけるのはありがたいですね。いずれにせよ、私たちのデータセットやビジネスに対して、皆さんが深く理解いただいているので心強い限りです。例えば、同じような分析でも、分析対象となるユーザーの設定を間違えると、思ったような結果が得られないことがあるので、この点は特に重要だと考えています。
――ビジネスを深く理解しているというお話がありましたが、そのために工夫したことはありますか。
木下 私は日頃から「Udemy」を利用していたのですが、これまであまり使ったことがなかった機能を改めて1つずつ確認しました。製品を開発している部署の方とのディスカッションの場を、水止さまにご用意いただいたこともあります。おかげで、求められているアウトプットのイメージを明確にできました。
――その他に事前に準備したことはありますか。
下田 現在の分析環境はシステムが重いので、一般的に「Python」のテーブル操作を実行するライブラリである「pandas」ではなく、高速な処理が可能な「polars」を用いています。木下も含め、処理が高速なライブラリについて、事前にリサーチや学習は行いましたね。
木下 あと事前に行ったことというと、自然言語処理やマーケティング関連のタスクの学習でしょうか。書籍はもちろん、「Udemy」で学んだことも多いです。
石田夏海 私もデータアナリストとして、木下さんと一緒にデータ分析業務に携わっていますが、コーディングや統計の知識の一部は、木下さんがおすすめしてくれた「Udemy」の講座で身につけることができました。
下田 私もMMM分析の初期知識などは「Udemy」で学びましたね。
――皆さん「Udemy」で学んだ経験があるんですね。
木下 品質が高いので、「Udemy」で学んだナレッジは実際の業務にも役に立っています。
社会人の成長を支援する環境実現に向けて、さらに積極的なデータ活用を
――今後の展望についてお聞かせください。
大塚 「Udemy」事業についてはさらなる成長を目指していきます。そのためにはユーザーの皆さんに対してより細かいサポートを提供することや新規事業開発なども求められるでしょう。ユーザーのインサイトを深掘りするためのデータ分析など、より高度な技術が必要になってくると考えられます。また、最終的に私たちが目指すゴールは「Udemy」事業の成長にとどまりません。ベネッセの社会人教育は、“学び”を起点に、個人や組織の可能性を引き出し、それを生かせる社会づくりを目指しています。今後は、このビジョンを実現するために、社会人の成長を後押しする取り組みに事業をシフトしていく考えです。だとするとやるべきことはラーニングだけではありません。恐らく幅広い領域での取り組みが必要になる。そのためにも、引き続きDAにはご支援いただきたいと思います。
――今の話を聞いて、ベネッセさまの期待にどう応えていきたいですか。
木下 ご依頼いただいている業務を完璧にこなすのはもちろんですが、その他にもベネッセさまのためになることはたくさんあると思うので、積極的にご提案をしていければと思います。
下田 大塚さんがおっしゃった社会人のリスキリングを後押しする事業を展開することは、人手不足が深刻化している日本の社会課題を解決するのに大きな意義があります。そのような事業に携われることに大きなやりがいも感じています。これからもご期待にそえるような仕事をしていきたいですね。