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2025.12.02
東京農業大学総合研究所主催『第5回 食・農データサイエンス 公開シンポジウム』弊社登壇要旨を公開しました
2025年11月7日(金)に開催された、東京農業大学総合研究所主催『第5回 食・農データサイエンス 公開シンポジウム』に弊社のデータサイエンティスト 武藤 賢悟が登壇しました。
登壇内容については以下をご確認ください。
東京農業大学総合研究所主催『第5回 食・農データサイエンス 公開シンポジウム』にて弊社の武藤 賢悟が登壇します
登壇要旨は下記のとおりです。
ECマーケティングの戦略設計に対する時系列モデリングの適用
武藤賢悟(株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー サービス開発室)
演者は企業常駐型のデータサイエンス業務に従事しており、ECサイトを保有するクライアントの戦略策定のために時系列モデリングを構築した事例を紹介する。
テナント運営型のECプラットフォームを運営する某クライアントは、年間売上に達成目標を設け、その構成要素(人数×購買率×平均注文額)を細分化したものをKPIとした。統括部署が進捗管理や適切な意思決定を行うためには、各KPIの将来のふるまいを予測するモデルの構築が必要であった。
当該KPIの原系列には年単位の周期性や突発的なピークが見られたほか、その性質上、変数間の相関が想定される状態であった。これに対応するため、複数の時系列間の関係を表すVAR(Vector AutoRegression)モデルの適用を試みることとした。さらに、ある指標を動かした際の年間売上への影響をインパルス応答関数で推定することを目指した。
各原系列は非正規分布かつ非定常成分が含まれるものと考えられたため、そのままではVARモデルへの入力に適さない。そのため、各変数に応じた変数変換後、加法分解モデルであるProphetによりトレンド・季節性・外生変数といった非定常成分と定常な残差を分離した。これらの処理を組み合わせ、原系列変換→Prophetによる非定常項と残差の分離→残差にVARモデル適用、というハイブリッドモデルを構築した (Fig.1)。
モデルの精度評価にはwalk-forward法を用いた。既存の管理体制では点推定値として昨年同月の値を用いていたため、当該モデルによる予測確率分布と精度を比較するためにCRPSを用いた。結果、多くのKPIで既存の点推定より良好な精度が確認された。
予測モデルの活用例として、直交化インパルス応答関数により各指標に1偏差の増分を与えた場合の年間売上増分の期待値をヒートマップ化し、投資対効果の高い施策ターゲットを可視化した。

Fig.1 ProphetとVARによるハイブリット時系列モデルの概念図