【導入事例】
常駐型の柔軟性を変革の力に―― 「アイシティ」を運営するHOYAアイケアリテイリング合同会社、データ活用基盤構築の舞台裏
左からメンバーズデータアドベンチャーカンパニー 中原瑳衣子
HOYAアイケアリテイリング合同会社 柴田英幸さま
コンタクトレンズ専門店「アイシティ」を全国に380店舗(2026年6月1日時点)展開するHOYAアイケアリテイリング合同会社。同社の事業基盤部 ITグループ データ活用推進チームでは、マーケティングの高度化・効率化を実現するため、データ活用基盤の整備を進めています。そして、この取り組みでは、メンバーズデータアドベンチャーカンパニー(以下、DA)が、データ活用基盤の構築や運用支援などに参画。今回は、プロジェクトを統括するマネージャーの柴田英幸さまと、同社に常駐するデータアナリストの中原瑳衣子さんに、取り組みの経緯や成果について伺いました。
(取材日:2026年2月24日 取材・文:本間幹)
現行BIツールに対する不満の解消~社内用語・仕様の統一へ
―― まず、データ活用推進チームの役割と、今回のプロジェクトをスタートした背景を教えてください。
柴田英幸さま(以下、柴田) 私たち、データ活用推進チームは、当社が運営しているコンタクトレンズ専門店「アイシティ」に関するデータ活用基盤の構築と運用を担っています。ここで扱うのは主にコンタクトレンズ販売に関するデータです。
現在利用しているBIツールには社内から様々な不満が寄せられていました。例えば、お客さまの年齢による集計が購入時ではなく現在の年齢になってしまう、主要サービス経由売上の一部が全体の売上に合計されずに別途集計が必要となってしまうといったようなものです。
そんな「必要な切り口で集計できない」という状況を打破するために、BIツールを「Power BI」に移行し、誰でも柔軟にデータ活用できるようにしようと考えたことがプロジェクトの始まりでした。
―― BIツールをPower BIへ移行する際、経営層からの合意はどのようにとられたのでしょうか?
柴田 データ活用プロセスにおける工数削減・生産性向上を試算・収集し、その効果を説明しました。経営層からは、一部の部署での活用に限定せず、全社で利用できるデータ活用基盤にすることが求められました。また、社内で用いられている用語、例えば「単価」のようなことばが意味するところにバラつきがあることを課題として挙げられ、店舗から本部まで全社を通じて用語とその仕様を統一することをミッションとして与えられました。
―― 2024年1月からDAのデータプロフェッショナル人材常駐サービスをご活用いただいておりますが、なぜDAをパートナーに選んだのでしょうか。
柴田 データ活用基盤構築のための充分なリソースが社内に無く、何とかして確保する必要がありました。しかし、データ人材は市場で慢性的に不足していて、募集をかけても求めるレベルの人材は見つかりませんでした。そのため、社外リソースの活用を検討することにしました。しかし、ビジネス環境の変化、ツールの仕様変更など日々変化する状況に柔軟に対応するには、社内で密なコミュニケーションが取れる体制・チームが必要となるため、業務委託では難しいと判断しました。
中原瑳衣子さん(以下、中原) 確かに業務委託では、急遽プロジェクトの方向性を変える必要がある場合など臨機応変な対応は難しいと思います。実際、プロジェクト進行中に課題の優先順や取り組みの方向性を変えることは、現場ではよくあることです。密にコミュニケーションを取りながら柔軟に対応できる点は、常駐型サービスだからこそ、提供できる価値だと自負しています。

BIモデル・ダッシュボードの構築から社内向け利用マニュアル・動画の制作まで
―― 中原さんが担当している業務の全体像を教えてください。
中原 業務内容は大きく2つあります。1つはマーケティング担当者や店長など社内のユーザーが自由にデータを集計・分析するためのBIモデルの構築。もう1つは、売上等の状況をひと目で把握するためのダッシュボードの構築です。
前者は、具体的にはデータマートからデータを読み込み、「売上」「商品」「顧客」などのテーブルに正しく紐付け、あらゆる角度で集計ができるルールをPower BIに組み込んでいく仕事です。従来のBIではできなかった集計が、今回構築したモデルでは実現できています。
そのほか、操作マニュアルの整備なども担当。BIでできることが増えて複雑化する中、理解しやすいように動画のマニュアルも制作しています。実際にBIを操作している画面の動画に音声解説を加えたもので、静止画によるマニュアルよりも理解しやすいのではないかと考えています。
――新たなBIモデルの構築は、技術的に難しいところがあったのではないでしょうか?
中原 データの種類によって粒度が異なるため、その違いを踏まえて、データを最適化するのには苦労しました。
例えば予算データのディメンションにはカレンダー、購入チャネルなど、いくつかの限られた粗い粒度のディメンションしかありません。一方で、実績データのディメンションには社内で分析ニーズがある様々な切り口が多数揃っています。このように異なる粒度のディメンションを持つデータをひとつのBIモデルで扱うには工夫が必要です。
柴田 現行BIに対する主要な不満は、新しいBIによってかなり解消されてきました。例えば、購入チャネル別のリピート集計などは簡単に行えることが増えてきています。先行して活用を始めているマーケティング部門では現行BIからの移行が進み、「速い」「使いやすい」と高い評価をいただいています。

一いえば十やってくれる――DA常駐メンバーの心強さ
―― 業務を進める上で、工夫したことはありますか。
中原 予算データの元となるExcelデータはそのままではBIモデルに投入ができませんが、予算担当部門としては精緻化が必要なために、我々の手元に届くのは期限直前になります。そのため、データのチェックから整形・投入までを毎月正確かつ迅速に行えるよう前処理含め自動化しています。多少のExcelフォーマットの変更があっても柔軟に対応ができるよう工夫しています。
柴田 中原さんが自ら考えて設計・効率化を進めてくださると、その分の工数が他のリソースとして充てられますから助かっています。
――自動化によって、工数はどれほど削減できましたか。
中原 手作業だと1週間ほどかかっていた作業が、半日から1日程度で完結できるようになりました。しかもほぼ人手をかけずに、ワンクリックで処理できるのがポイントです。
―― 柴田さんから見て、中原さんの仕事ぶりにはどのような印象をお持ちですか。
柴田 「一いえば十やってくれる」印象です。こちらのオーダーに対して、自らリサーチして「何ができるか」や「何が必要か」を整理し、構築後の展開まで見据えた提案をしてくれる。私たちはBI製品仕様やデータ構造の詳細までのすべてを把握したうえで依頼できるわけではないため、その辺りのリサーチから進めていただけるのは非常に心強いです。さらに、報告や提案内容はこちらが判断しやすい形にまとめてくれるので、意思決定しやすいのもありがたいです。
ひとつエピソードを挙げます。Power BIのダッシュボードを作る際、ある項目を表示するために、当初の設計では100ページ以上のレポートを作成しなければならなくなる想定でした。ところが中原さんがPower BIの当時の最新仕様を調査し、「フィールドパラメータ」を使えば1ページに集約できることを見つけてくれました。それによって画面設計を抜本的に見直すことができ、開発・保守コストを大幅に圧縮できたのです。
中原 依頼をいただいた際には、背景や目的を確認するようにしています。そして、依頼の裏にある「何を実現したいのか」という思いを想像し、そのゴールに向かう最適なルートを意識しながら作業に取り組んでいます。
また、新機能を導入する際には、想定外の挙動が起きないかを丁寧に検証することを欠かしません。実際にフィールドパラメータを導入した際には Microsoft に直接確認しましたが、必要であればサービス提供元への問い合わせも積極的に行うようにしています。
―― 中原さんは、常駐が決まってから常駐開始までの間に準備したことはありますか。
中原 Power BIを本格的に活用する業務に携わるのが初めてだったので、できる限りPower BIについて学びました。そのおかげで、実際の業務はスムーズに進めることができたと思います。
柴田 中原さんに実際に常駐していただくまでは、Power BIの実務経験がないということで、正直なところ、少し不安はありました。しかし、業務に入っていただくと、Power BIの仕様や当社特有のデータ構造に対する理解が非常に早く、当初の不安は杞憂であったことがすぐに分かりました。
今後の展望 データ活用基盤の改善・拡張
――今回の取り組みで、具体的にどのような成果が生まれていますか?
柴田 先ほどお話した通り、すでにマーケティング部門では新しいBIを積極的に活用し始めてくださっています。以前はできなかった分析――例えば購入当時の年齢での分析、購入チャネル別のリピート分析、その他様々な分析が、即座にできるようになったことは、インパクトが大きかったようです。
―― 最後に今後の展望をお聞かせください。
柴田 まずは新しいBIをエリアマネージャーから店舗まで全社に展開する計画があります。そのためにはマニュアルの拡充など多くの準備が必要な状況です。
また、すでに店舗にまで展開しているダッシュボードについては、まだまだ画面や機能が不足しており、UIにも改善が必要であるため、これらの改善も進めていきます。
基盤に格納するデータについては、社内外データ、構造化/非構造化データ問わず、BI・ダッシュボード・MAツール・生成AI等から利用できるかたちに収集・整備していく必要があり、これらも我々の重要な仕事となります。
さらに、売上に関する精度の高い着地見込みなど、予測に関するニーズも社内で非常に高く、現在、機械学習モデルを用いた取り組みが進行中で、こちらでもDAのデータアナリストにご活躍いただいています。
データ活用基盤を構築し、社内に浸透させていくことで、経営層が目指している社内用語・仕様の統一に一歩ずつ近づき、会社全体の生産性向上に大きな貢献ができるものと考えています。
今後もDAにはデータ活用基盤構築に関する幅広い領域で、より一層のご支援を期待しています。
