データ活用におけるデータ分析|課題設定からデータ収集と分析、意思決定支援までの進め方

ナレッジ
2024.06.28
データ活用におけるデータ分析課題設定からデータ収集と分析、意思決定支援までの進め方

この記事ではデータ活用の一つであるデータ分析について、データ分析をするとわかること・データ分析の進め方・具体的な手法の一例をお伝えします。データを何かに使えないか、分析したいけどあまりイメージがわかないような方の参考にしていただけると嬉しいです。

執筆者のご紹介

加藤洋介
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アナリスト事業部 データアナリスト
常駐による顧客企業のデータ分析支援を行いWebサービスやアプリのユーザー・PVの向上のための意思決定に貢献し、現在はデータマネジメントやダッシュボードの学習中。
経歴
中古自動車のオークション運営会社、健康保険組合の運営支援会社を経て2021年8月にメンバーズ入社
顧客企業にデータ分析者として常駐し要因分析・効果検証による効果的なコンテンツ制作の意思決定の支援を実施。ただ分析するのではなく、課題や分析の目的を整理して、意思決定を支援するデータ分析をしてきました。

目次
01.| データ活用とデータ分析
02.| データ分析をするとわかること
  現状把握
  効果検証
  顧客ニーズの把握
03.| データ分析の進め方
  課題を設定する
  その課題に対してどのような意思決定をするかを想定しておく
  何がわかると意思決定できそうかを考える
  分析設計を考える
  分析をする
  分析結果をまとめる
  レポートを作成する
     意思決定者に報告をしてフィードバックをもらう
04.| 具体的な分析手法
  施策の効果検証
     テキストアナリティクス
        機械学習による意思決定支援
        アンケート分析
05.|まとめ

データ活用とデータ分析

近年、デジタルデータを中心に多くのデータが取得可能になりました。そのため、ビジネスや日常生活においてデータ活用の機会が飛躍的に増え、データ活用が身近になっていると思います。ビジネスにおけるデータ活用ではレコメンドシステム・業務自動化と効率化・意思決定支援のためのデータ分析、日常生活でも天気予報やゴールデンウイークの高速道路渋滞予測、またスマートウォッチによる脈拍の異常検知など、データ活用の恩恵が浸透しています。

このようにデータ活用の用途は多くありますが、ビジネスにおいて最も重要な活用方法の一つは、意思決定支援のためのデータ分析です。データ分析とは、収集されたデータを整理・加工をして、統計学や機械学習を用いて規則性・傾向・違い・相関関係を明らかにし、因果関係を推定することで、意思決定に役立つ知識を提供することです。例えば、市場動向の把握、顧客ニーズの理解、商品開発、マーケティング戦略の立案、リスク管理などに役立ち、様々な意思決定を支援します。

データ分析は、これまでわからなかった新しい知見や興味深い発見も重要ですが、それだけではビジネス課題の解決には不十分です。 データ分析は、意思決定の判断の1つにデータ分析の結果が活用され、ビジネスにおける課題が解決されることが重要です。以前はデータ分析を活用せずに課題を解決してきたことも多いと思います。しかし、近年では複雑な問題も増えています。 例えば、 顧客ニーズの多様化です。顧客のライフスタイルや価値観が多様化し、画一的なマーケティング戦略ではなく、顧客一人ひとりに最適化された商品やサービスを提供する必要性が高まっています。また、気候変動や資源枯渇などの環境問題は企業にとってリスクであり、持続可能な社会の実現に向けて環境に配慮したサービスが求められています。こうした状況下では、データ分析を用いて、より迅速かつ効果的に課題を解決することが必要となります。データ分析は、ビジネス課題の解決と意思決定の質向上に不可欠なツールです。 適切な活用によって、企業の競争力強化に大きく貢献することができます。

 

データ分析をするとわかること

データ分析をすることでわかることはたくさんあります。今回は現状把握・効果検証・顧客ニーズの把握の3つをご紹介します。

現状把握

  • 顧客の属性や行動パターン
    年齢、性別、地域、購買回数や購入商品の種類などの購入履歴、Webサイトやアプリの閲覧履歴など、顧客に関する様々なデータを分析することで、顧客像を明らかにすることができます。顧客像を把握することで、より効果的なマーケティング施策を立案することができます。
  • 商品・サービスの売れ行き
    商品ごとの売れ行き、利益率、在庫状況などを分析することで、人気商品や不人気商品を特定することができます。また、季節や天候、イベントなどの影響も分析することができます。これらの分析結果を踏まえて、商品開発や販促活動に活かすことができます。
  • Webサイトのアクセス状況
    アクセス数、PV数、平均滞在時間、離脱率などを分析することで、Webサイトの利用状況を把握することができます。また、どのページが人気なのか、どこでユーザーが離脱しているのかなどを分析することができます。これらの分析結果を踏まえて、Webサイトの改善に活かすことができます。
  • コールセンターの利用状況
    コール件数、平均通話時間、解決率などを分析することで、コールセンターの利用状況を把握することができます。また、顧客からの問い合わせ内容を分析することで、顧客満足度や製品・サービスの課題を特定することができます。これらの分析結果を踏まえて、コールセンターの運営効率化や顧客満足度向上に活かすことができます。

特に現状把握では、関係者間の齟齬をなくすために、用語の定義と共通認識の醸成が不可欠です。例えば、アクセス数やページビュー数においては、対象となるURLと対象外となるURLを明確に定義し、関係者全員が共通認識を持つことで、データ分析の信頼性と整合性を高めることができます。具体的には、〇〇ページを除外する、△△ページのみを対象とするなど、具体的な基準を設けることが重要です。


施策の効果検証

施策の効果検証をすることで、施策が当初の目的を達成できたかどうか、どの程度達成できたのか、達成できていない場合はその原因が何かを明らかにすることにつながります。効果検証を実施するメリットとして、効果的な施策立案や経営資源をより効果的に配分することができます。
効果検証に求められるもっとも重要な性質の1つは再現性です。施策の効果検証をした結果、このような効果があると結論付けても、実際に実行した際に同じような効果が再現されなければビジネス課題の解決と意思決定の質向上に貢献することはできません。再現性のある効果検証を行うためには適切な比較をすることが重要です。

顧客ニーズの把握

  • アンケートの分析
    アンケートをすることで、顧客の要望や意見を把握することができます。アンケートではWebやはがき、電話などの方法があります。アンケートを実施することで、「なぜこの顧客層は購入しないのか」といった購入しない理由や、「購入した顧客はなぜ購入したのか」といった購入した理由を把握することができます。商品のパッケージや価格、アプリのUIや機能など、どこに課題がありどこが良いかなどを把握することが可能です。結果をクロス集計することでどの商品がどの性年代で満足度が高いか低いかなどを把握することができます。また、NPSという指標をアンケートで測ることで、顧客満足度を調査することができます。
  • 顧客によるレビューの分析
    ECサイトや様々なプラットホームには顧客によるレビューがあります。このレビューをテキスト分析することでどのようなキーワードが多く使われているか、関連性の高い単語は何かを明らかにすることができます。
    またソーシャルメディアにもレビューがあります。ソーシャルメディアの分析では、どのようなトレンドが生まれているか、どのような商品やサービスが人気を集めているかを把握することができます。
    これらを活用することにより、顧客の要望や意見を把握することで、顧客満足度を向上させるための商品やサービスを開発することができます。
  • 顧客の履歴の分析
    顧客の購買履歴やWebサイト閲覧履歴などを分析することで、顧客が顕在化させていない潜在的なニーズを把握することができます。例えば、バスケット分析では、顧客が一緒に購入する商品を分析して、関連する商品を発見し顧客が潜在的に必要としている商品を発見することができます。これにより、関連商品のレコメンド・商品セット販売・関連商品の購入促進のためのクーポン発行などに役立ちます。

 

データ分析の進め方

データ分析をビジネスに活かすためには、どのようにデータ分析を進めればよいでしょうか。理想にはなりますが、下記の順番で進めるのがよいのではないかと考えています。

課題を設定する

まずは課題を設定する必要があります。できれば具体的な課題を設定するとよいです。例えば、「施策の効果がわからない」よりも「施策実行によるDAU・PVへの影響がわからない」、「予算削減により施策のターゲットを絞りたいが、施策の最も効果的なターゲットの集団がわからない」などできるだけ課題を詳細にする必要があります。
課題設定にあたっては、以下の5W1Hを意識すると効果的なケースもあります。

  • What: 何が課題なのか
  • Why: なぜそれが課題なのか
  • Who: 誰にとって課題なのか
  • When: いつ課題が発生しているのか
  • Where: どこで課題が発生しているのか
  • How: どのように課題を解決すればよいのか

その課題に対してどのような意思決定をするかを想定しておく

意思決定は非常に複雑で様々な要因に鑑みて総合的にすることが多いと思います。そのため、様々な角度からデータ分析を行い結果が出そろってからどのような意思決定をしようか考えたくなります。しかし、データ分析は時間もコストもかかります。そのため、どのような意思決定をするかをあらかじめ想定しておくことが重要です。例えば、施策を実行してもDAU・PVが予算に対して目標を達成していない場合は中止する、またはより効果的な施策の改善案を考えるなどです。

何がわかると意思決定できそうかを考える

より早くより適切なデータ分析をするためには「何がわかると意思決定できそうか」を設定する必要があります。「今まで分析したことがない」や「興味がある」などは面白いかもしれませんが、それを知っても意思決定ができない場合はビジネス課題を解決することはできません。例えば、アプリのユニークユーザ数の向上がビジネス課題を例に考えてみます。ユーザの性別毎のユニークユーザ数を分析した結果、男性3割・女性7割であることが分かったとしても、施策やUIの変更につなげる意思決定をすることができず、ビジネス課題を解決できなければ、データ分析が役割を果たしたとは言えません。また、意思決定者がユニークユーザの性別の割合がどのような結果であっても、それによって何かしらの意思決定をするつもりがなければ分析をしても意思決定には貢献することは少ないです。そのため、データ分析を進める間に「何がわかると意思決定できそうか」を考える必要があります。

分析設計を考える

「何がわかると意思決定できそうか」を考えた後は、どのような分析をしたら知りたいことが適切にわかるかを考えます。これは「適切な分析設計を考える」と同じ意味です。分析設計は重要です。分析設計は、分析結果の妥当性と再現性に影響を与えます。詳細については良書がたくさんありますのでそちらを参考にしてください。また、分析結果を関係者が理解できるかも考慮して分析設計を考える必要があります。難しい分析手法で解釈が難しい場合は関係者が分析結果を正しく解釈できない可能性があります。また、難しい分析手法が優れているわけではなく、簡単な分析手法でも意思決定をするうえで十分であり、ビジネスの課題が解決されれば問題ありません。
分析設計を考える際には取得可能なデータについて調査する必要があります。適切な分析設計を考えても、取得不可能なデータがあり適切な分析設計ができない場合は、別の分析設計を考える必要があります。必要な期間・種類のデータが取得できるかを調査します。また、欠損が多いと分析結果と解釈に大きな影響を与えます。データがあると思っていても欠損が多く分析に耐えられないこともあるので注意が必要です。

分析をする

分析に使うツールは実施予定の分析手法・スケジュール・分析者のスキル・データ量などを考慮して決めると良いです。
代表的な分析ツールの特徴をご紹介します。

Excel:汎用性の高い表計算ソフト。データ集計、グラフ作成・基本的な統計手法を用いるときなどに適しています。Excelは広く利用されており、多くの人との共有が容易です。データ量が多くなると処理速度が遅くなり、複雑な分析が難しいことがあります。
Python:汎用性の高いプログラミング言語。データ加工・データ分析・機械学習などに適しています。プログラミング言語であるため習得までに時間がかかり、利用するために環境を構築する必要があるため、初心者にとってはハードルが高い場合があります。しかし、一度習得して、環境構築もできるようになれば、データ分析専用のライブラリが豊富に揃っており、高度な分析や機械学習にも対応できます。
SQL:大規模なデータセットを扱う場合にも高速・効率的にデータを処理することが可能です。データ量が多くなり、データベース言語といわれるデータベースを操作するためのクエリを記述する必要があり習得まで時間がかかることがあります。Pythonと比較すると習得しやすいと思います。分析対象となるデータがリレーショナルデータベースに格納されている必要があります。
R言語:統計分析に特化したライブラリが豊富で、統計モデリングの構築・評価が容易に行えます。また、活発な統計分析コミュニティが存在し、情報収集や問題解決に役立ちます。R言語を習得する必要があるため、初心者にとってはハードルが高い場合があります。

分析結果をまとめる

分析を実行した後は、結果をわかりやすくまとめます。わかりやすくまとめるためには、簡潔な文章で事実を記載することが重要です。冗長な表現や回りくどい言い回しを避ける、二重否定を使わないようにします。また、相手の専門知識や理解度を考慮することも重要です。結果を表やグラフにまとめることでより理解しやすくなります。グラフを作成するときは認知負荷が低くなるように不要な要素を取りのぞく必要があります。また、相手に伝わりやすい表現を選択することも重要です。円グラフや第2縦軸は認知負荷が高いので選択しないほうが良いです。

レポートを作成する

結果を出しただけでは意思決定はできません。結果から推察や洞察を加えて意思決定に役立つレベルにまで高めたレポートを作成する必要があります。レポートを活用するのは意思決定者です。意思決定者がどのようなことを考えているか、組織の目的や基本戦略を理解して、どのような意思決定をしようとしているかを理解する必要があります。これは、意思決定者の望む結果に沿ったレポートを作成するということではありません。実行可能で組織の目的と基本戦略に合うレポートを作成するというものです。実行不可能なアクションを提案することや基本戦略に合わない結論では意思決定を支援することは難しいです。普段から意思決定者と密にコミュニケーションを取り、組織の目的や基本戦略を理解しておくことが重要です。
また、データ分析の結果を飛躍して解釈しないことも重要です。ビジネスでは様々な制限の中でデータ分析をすることが多いと思います。その制限が意思決定に大きな影響を与えると判断すれば、実施したデータ分析にはどのような制限があるか、その制限が具体的にどのようなことなのかを意思決定者に伝える必要があります。分析に用いるデータの種類が少ないことや偏りのあるデータであること、使用した分析手法の特性や限界点、分析を行った際の前提条件を明確にして条件が変化した場合の影響について意思決定者に伝える必要があります。結果から飛躍した解釈をしないように誠実にデータ分析の結果と向き合う必要があります。

意思決定者に報告をしてフィードバックをもらう

意思決定者など関係者に報告をします。報告の際に気を付けることの1つに「分析結果に対する説明を十分に行う」があると考えます。分析の目的と背景の明確化、分析手法とデータソースの明記などです。特に分析手法は専門的な内容になり、使用した手法の基本的な考え方や仕組みを簡潔に説明することや、分析対象にその手法が適切であることを説明する必要があります。
また、報告で終わるのではなく、意思決定者や現場の方から分析のフィードバックをもらうことが重要です。レポートは実際に役に立ったのか、役に立たなかった場合はなぜなのか、どのような分析をしたら役に立ったのかをヒアリングします。良かった点、悪かった点をまとめて、もう一度修正して分析をする、または次回の分析に活かすことが重要です。

 

具体的な分析手法

データ分析をビジネスに活用するためには、適切な分析手法を選択する必要があります。一例にはなりますが、代表的な分析手法について紹介します。

施策の効果検証

キャンペーンなどの施策の効果検証にはA/Bテスト・回帰分析・傾向スコアを用いた分析・差分の差分法・回帰不連続デザインなどがあります。これらは正しい比較をするうえで、何が妨げになっているかによって使い分けます。適切な効果検証の分析手法を用いることで施策の効果を適切に評価することができます。

テキストアナリティクス

VOCやサービスの口コミなど文章で記載されているデータに対する分析がテキストアナリティクスです。テキストアナリティクスを用いることで顧客のニーズや要望をより理解することができ、サービス向上やマーケティングの意思決定に貢献します。


機械学習による意思決定支援

施策を行う上で十分な予算があれば良いですが、限られた予算の中で施策を実施することが多いと思います。そのため限られた予算の中で効果の高いと予測されたお客様を優先して施策を実施したいときは、機械学習と呼ばれる手法を用いることで実現できます。また、施策がなければ購入するが、施策を実施すると購入しなくなるお客様もいます。このようなお客様の特徴を明らかにすることも機械学習を用いることで実現できます。


アンケート分析

アンケート調査で得られた回答データを分析し、調査対象となる集団の特徴や傾向を明らかにすることを目的に行われます。市場調査、マーケティング、顧客満足度調査、社内アンケートなど様々な場面で用いられます。
アンケート分析には様々な分析手法があります。代表的な手法をいくつか紹介します。

  • 単純集計
    各質問項目に対する回答の頻度や割合を集計します。回答者の人数、回答割合も重要な算出項目です。
  • クロス集計
    複数の質問項目を組み合わせた分析を行います。例えば「年代別と性別ごとの購入頻度」をクロス集計することで年代や性別による購入頻度の違いを分析することができます。単純集計ではわからない、属性や別の質問項目との関連を分析することが可能です。
  • クラスター分析
    回答者をいくつかのクラスター(グループ)に分類して、各クラスターの特徴を分析します。分類方法として階層型クラスター分析やKMeans法などの非階層型クラスター分析があります。

 

まとめ

データ活用の一つであるデータ分析について、メリット・進め方・具体的な手法の一例をお伝えしました。
データ分析をビジネスに活用するためにはビジネス課題は何か・どのような意思決定をしたいかを考えて、適切な分析手法を選択し、結果から推察や洞察を加えて意思決定に役立つレベルにまで高めたレポートを意思決定者に提供することが重要です。
データアドベンチャーカンパニーは、ビジネス課題を解決するという強い気持ちをもってデータ分析をするデータアナリスト・データサイエンティストが在籍しています。もし、データ収集~分析~活用までお困りごとやご相談などあればデータアドベンチャーカンパニーにご相談ください。

 


\ データ活用についてのご相談はメンバーズデータアドベンチャーまで /

 お問い合わせはこちら > 

\ 相談する前に資料を見たいという方はこちら /

 資料ダウンロードはこちら > 

 

加藤洋介

 

自走力が高く、“中の人”目線で動ける
データ活用のプロフェッショナルを提供します

お問い合わせ

データ活用のプロになるための
学習・実践環境を用意します

採用情報