データ分析を失敗しないためのSaaSツール導入:選定基準と活用法
今回の記事では、数多くあるSaaSツールから自社に合った適切なSaaSツールの選定〜導入までの過程について解説していきます。
この記事を通して、自社に合ったSaaSツールの選定〜導入ができることを目的としています。
執筆者のご紹介
村上
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー エンジニア事業部
経歴:理系大学院を卒業後、株式会社メンバーズに入社
データエンジニアとして不動産ディベロッパーのクライアント様に常駐
Excelを用いたデータ整理の手法を提案し、開発し、運用しています。
またクライアント様のDX化とデータ基盤構築開発のアドバイスを担当しています。
續
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー エンジニア事業部
経歴:情報系高専を卒業後、株式会社メンバーズに入社。
2024年9月までイベントプラットフォーム運用企業にてデータ関連業務の支援を行いました。
現在は、Azureを用いた検索拡張生成 (RAG) システムの開発を行っています。
目次
01.| そもそもSaaSツールとは?
SaaSの定義
一般的にどのようなツールが対象となるのか
02.|SaaSツールを使用するメリット
インターネットが接続できる環境があれば、どこでも利用できる
初期投資のコストを削減できる
スケーラビリティが高い
クラウドサービス事業者による管理
03.|データの専門家が考える、何を基準にSaasツールを選定すべきか
ニーズの明確化
業務で使用するツールとの適合性・統合性
ユーザビリティ(ツールの操作性)
セキュリティとコンプライアンス
コストパフォーマンス
04.|データの専門家が利用する代表的なSaaSツール
Amazon Redshift
Google BigQuery
Snowflake
Azure Synapse Analytics
05.|Saasツールは導入してからの活用が本番
06.|まとめ
そもそもSaaSツールとは?
SaaSの定義
SaaSは『Software as a Service』の略称で、サースまたはサーズと呼びます。
SaaSは、クラウドサービス事業者が提供するソフトウェアをインターネット経由でユーザーが利用できる仕組みです。利用契約を結ぶことで即座に利用できることが大きな特徴です。無料版やトライアル版を提供しているサービスも存在します。
一般的にどのようなツールが対象となるのか
代表的なツールとして下記のものが挙げられます。(一部ご紹介)
・オンライン上でオフィス環境を提供する
Google Workspace(Google社提供)
Office365(Microsoft社提供)
・Web会議
Zoom(Zoom社提供)
Skype(Microsoft社提供)
Google Meet(Google社提供)
・ビジネスチャットツール
Slack(Salesforce社提供)
Gmail(Google社提供)
Teams(Microsoft社提供)
SaaSツールを使用するメリット
SaaSツールの導入には、様々なメリットがあります。
1.インターネットが接続できる環境があれば、どこでも利用できる
SaaSツールはインターネット経由でアクセス可能なため、インターネット接続ができる環境であれば、どこでも利用できます。リモートワークなど、従業員の柔軟な働き方を実現する一助ともなります。
2.初期投資のコストを削減できる
SaaSツールは、既に開発されているサービスを利用するため、独自に開発する必要がなく、開発費用や設備追加などの初期投資のコストを削減できます
基本的に買い切り型の購入ではなく、定額で一定機能を利用できるサブスクリプション型の課金や、利用量や機能に応じて料金も変動する従量課金があります。一般的にはどの利用形態でも必要なくなればすぐに解約可能です。また、コスト管理の観点(特に従量課金制)では、上限を設定してアラートをあげる・サービスを止めるなどの仕組みは存在しているため、使いすぎも防げます。
3.スケーラビリティが高い
SaaSツールは、ユーザーのビジネス用途に応じてリソースや機能を容易に拡張・縮小できるため、突発的な需要の増減に柔軟に対応しながらシステムを運用できます。必要な機能があれば簡単に追加し、不必要な機能は削除することが可能です。
4.クラウドサービス事業者による管理
多くのSaaSツールは、クラウドサービス事業者が管理するサーバー上に設置されており、バージョンアップやセキュリティ対策も行ってくれます。
また、クラウドサービス事業者は常に最新の機能やセキュリティパッチを適用してくれるため、利用者は常に最新の状態で利用できます。
データの専門家が考える、何を基準にSaasツールを選定すべきか
1. ニーズの明確化
自社の業務課題や目標を明確にし、ニーズを把握することは必要不可欠です。ニーズが明確でないと、適切なSaaSツールを選定することができません。適していないツールを導入すると、課題が解決できず、無駄な労力やコストが発生します。そのため、ニーズを把握することが適したSaaSツールを導入するための重要な第一歩となります。
2. 業務で使用するツールとの適合性・統合性
普段業務で使用しているツールやシステムと連携ができるか、またその連携が容易であるかも重要な観点です。普段使用しているツールや既存システムと連携が取れない場合、導入したSaaSツールを使いこなせず、期待した効果を得られないことがあります。そのため、自社で使用しているツールが検討中のSaaSツールとの連携が可能かどうかは、重要な選定基準となります。
3. ユーザビリティ(ツールの操作性)
当然、使いやすさも選定要素の一つです。操作性が複雑だと、活用する人が少なくなり、せっかく導入しても誰も使わなくなる可能性があります。そのため、操作性が優れたツールを選ぶことが重要です。ツールによってはトライアル版が用意されている場合があるため、事前にトライアル版を使用してみることで選定がスムーズかつ的確になります。
4. セキュリティとコンプライアンス
SaaSツールを導入する上で、セキュリティは重要な要素の一つです。特に個人情報や機密情報を扱う場合、SaaSプロバイダーがどのようなセキュリティ対策を講じているのか、また法令遵守の状況を確認する必要があります。セキュリティが不十分だと、問題が発生した場合に対応が遅れたり、二次被害を引き起こす可能性があります。そのため、コンプライアンス要件とプロバイダーのセキュリティポリシーを照らし合わせて確認することが重要です。
5. コストパフォーマンス
SaaSツールのコストも重要な要素です。初期投資や運用コストだけでなく、導入後の効果(業務効率の向上、売上の増加など)を考慮し、そこから得られる利益や効果を算出することで、適切なコストが判明します。ツールによって料金体系が異なるため、担当者と確認しながら選定することで、無駄なコストを支払うことなく業務効率を高めることができます。
データの専門家が利用する代表的なSaaSツール
Amazon Redshift
機能
- 高速なクエリ処理: Amazon Redshiftは、ペタバイト規模のデータを迅速に処理する能力を持っており、高速なクエリ処理を実現しています。
- AWSシステムとの連携: 他のAWSサービス(S3、EMR、Glueなど)とシームレスに統合できるため、データ連携が容易です。
- 大規模データの分析: 大規模なデータセットをリアルタイムで分析するのに適しており、ビッグデータの処理と分析に最適です。
コスト
- 料金体系: 使用量に基づく従量課金制で、ストレージとコンピューティングリソースに対して課金されます。
特徴
- 高速なデータ処理: 高速なクエリ処理により、大規模データのリアルタイム分析が可能です。
- スムーズなAWSサービスとの統合: AWSシステム内でのデータ連携が容易で、他のAWSサービスとの連携がスムーズです。
- ビッグデータ分析に最適: 大規模データのリアルタイム分析に向いており、ビッグデータの処理と分析に最適な環境を提供します。
Google BigQuery
機能
- サーバーレスアーキテクチャ: インフラ管理が不要で、スケーラブルなデータウェアハウスとして機能します。
- Google Cloudサービスとの連携: Google Cloud StorageやDataflowなどと簡単に統合でき、データの連携がスムーズです。
- リアルタイムデータ分析: リアルタイムでのデータクエリと分析が可能で、迅速な意思決定をサポートします。
コスト
- 料金体系: クエリ実行ごとの従量課金制で、ストレージとクエリ処理に対して課金されます。
特徴
- サーバーレスで管理が不要: インフラ管理の手間が省け、ユーザーはデータ分析に集中できます。
- リアルタイム分析に強い: リアルタイムデータのクエリと分析に優れており、迅速なデータ処理が可能です。
- コスト効率が高い: 使用した分だけ課金されるため、コスト管理がしやすく、予算に応じた利用が可能です。
Snowflake
機能
- クラウドネイティブなDWH: 完全にクラウドベースで設計されており、スケーラブルなデータ処理が可能です。
- 多様なデータソースとの連携: 様々なデータソース(オンプレミス、クラウド)と簡単に統合できます。
- スケーラブルなデータ処理: 必要に応じてリソースをスケールアップ・ダウンでき、柔軟なデータ処理が実現します。
コスト
- 料金体系: ストレージとコンピューティングリソースに基づく従量課金制で、使用量に応じて課金されます。
特徴
- 高いスケーラビリティ: 必要に応じてリソースを柔軟に調整でき、急な需要にも対応可能です。
- マルチクラウド環境でのデータ共有: 異なるクラウドプロバイダー間でのデータ共有が容易で、データの活用範囲が広がります。
- データ統合と分析に優れた性能: 多様なデータソースからのデータ統合と分析に強みがあり、ビジネスインサイトを引き出すのに役立ちます。
Azure Synapse Analytics
機能
- 統合分析サービス: DWH機能とビッグデータ分析を統合したサービスです。
- Azureエコシステムとの連携: Azure Data LakeやPower BIなどとシームレスに統合できます。
- ビッグデータ分析とDWH機能の統合: 大規模データの処理と分析が一体化されています。
コスト
- 料金体系: 使用量に基づく従量課金制で、ストレージとコンピューティングリソースに対して課金されます。
特徴
- ビッグデータ分析に強い: 大規模データの処理と分析に優れています。
- Azureサービスとの統合がスムーズ: Azureエコシステム内でのデータ連携が容易です。
- 複雑なデータ分析に向いている: 機械学習や予測分析など高度なデータ分析に適しています。
Saasツールは導入してからの活用が本番
SaaSツールは導入しても、ツールを活用してくれる人がいないと効果がありません。
活用されない大きな理由として、「社内に浸透していないので活用しづらい」というものが挙げられます。
社内に浸透していない理由として、以下のような例があります。
- SaaSツールの使い方がわからない。または問題発生時の対応がわからない
- 既存の業務に慣れているため、新規で覚えるのが難しい
- ツールを使うのに抵抗がある
これらの理由でSaaSツールが活用されずにいます。
そのため、SaaSツールを導入したら社員に導入の目的やメリットなどを伝える必要があります。
更に以下のことを行うとツールの活用促進に繋がります。
1.SaaSツールのワークショップの開催
ツールの導入時に、社員に対してSaaSツールのワークショップを実施します。実際の業務でどのように使うか、どのようなメリットがあるのかを示してあげることで、不安を解消し活用を促進します。
2.マニュアルを展開
ツールのマニュアルを展開することで、社員が新規で覚える必要がありません。また問題発生時の対応を記載することで社員は安心してツールを活用します。
3.フィードバック対応
SaaSツールは導入しただけでは意味はなく、定期的に社員の意見をフィードバックをしてもらい改善することも重要です。改善した情報を小まめに発信することで、使う環境を整えます。
SaaSツールは導入するだけでは意味がありません。導入して活用されて結果を出してこそ初めて意味があります。計画的な導入と定期的な改善を通じて、社員が使いやすい環境を整えることが重要です。
まとめ
SaaSツールは、インターネット経由で提供されるソフトウェアであり、企業にとって多くのメリットを提供します。導入は容易でインターネット接続があればどこでも利用可能で、業務の柔軟性が向上します。
ツールの選定時には、自社の業務課題や目標を明確にし、ニーズを把握することが重要です。
更に既存の業務ツールとの適合性や統合性、ユーザビリティ、セキュリティ、コストパフォーマンスを考慮する必要があります。
SaaSツールは導入してからの活用が本番です。社内浸透が鍵であり、ワークショップやマニュアル展開、フィードバック対応を通じて、社員が使いやすい環境を整え、そのツールの効果を最大化することが重要です。
このように、SaaSツールを効果的に選定・活用することができれば、企業のビジネスに大きく貢献できるでしょう。
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