建設×データ活用で現場は変わる:生産性・コスト・安全・品質を高める進め方(事例付き)

建設業界では「2024年問題」や人手不足、技術継承の難しさが一段と深刻化しています。こうした課題に対し、現場データを味方にする「データ活用」は、再現性のある解決策になり得ます。
この記事で分かること
- ・建設業でデータ活用が急務な理由
- ・データ活用がもたらす4つのメリット
- ・明日から進められる実践4ステップと事例
▶目次
01. 建設業でデータ活用が急務とされる背景
01-1. 待ったなしの「2024年問題」と働き方改革
建設業では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、従来のように「残業で吸収して納める」設計が難しくなりました。言い換えると、工期・品質を守るために必要な条件が、これまで以上にシビアに“数値で問われる”局面に入ったと考えます。
出典:「建設業の時間外労働の上限規制は2024年4月から」(全国建設労働組合総連合)https://daiku-sodateru.mlit.go.jp/data/807e5605b217ca2cd09298d9a4a25c62.pdf(2026年02月04日に利用)
この状況で効いてくるのが、現場に散在する情報を、意思決定に使える形で整える「データ活用」です。例えば、出来高、稼働、検査結果、工事写真、段取り変更の履歴などを時系列でつなぐだけでも、どこに手待ちや手戻りが生まれているかが、驚くほどクリアになります。結果として、残業を減らしながら生産性を保つための打ち手(段取り、配員、資材搬入、検査の前倒し)が、より現実的に設計できるようになるでしょう。
01-2. 深刻化する人手不足と技術継承の課題
建設業は、担い手不足と高齢化が同時に進む産業構造の中にあります。2024年時点の年齢構成では、建設業は55歳以上の割合が36.7%、29歳以下が11.7%と示されており、次世代への技術承継が大きな課題であることが読み取れます。
出典:「直面する課題(国土交通白書)」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r06/hakusho/r07/html/n1111000.html(2026年02月04日に利用)
ここでデータ活用が効くポイントは、熟練者の「勘」や「経験」を、単なる精神論ではなく、施工データと紐付いた“再現可能な知識”として残せる点です。施工条件、写真、検査の指摘、出来形、作業手順、判断の分岐点を記録し、後から参照できる形にすれば、若手の学習スピードと品質の安定性がじわじわ効いてきます。技術継承を「属人性の継承」から「組織資産の蓄積」へ寄せていくための、現実的なアプローチとなります。
01-3. 複雑化するプロジェクトと利益率の圧迫
近年の建設プロジェクトは、施主要求の多様化、関係者の増加、環境配慮、施工制約などにより、計画・調整・管理の複雑度が上がっています。さらに資材価格や労務費の変動が収益に直撃しやすく、従来の“どんぶり”管理では、赤字要因の発見が遅れやすい状況です。
このとき重要になるのが、「工程」「原価」「品質」「安全」をバラバラに持つのではなく、同じ案件IDでつなぎ、早い段階で異常に気付ける状態を作ることです。国土交通省はBIM/CIMの原則適用など、データ連携・共有を前提とした方向性を明確にしています。
出典:「令和5年度BIM/CIM原則適用について」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001510002.pdf(2026年02月04日に利用)
02. 建設業におけるデータ活用の4つのメリット
02-1. 生産性の向上|工程の最適化と手戻りの削減
生産性を上げると聞くと、どうしても「頑張る」「詰める」といった方向に寄りがちですが、データ活用が得意なのは“ムダの正体を静かに炙り出すこと”です。例えば、過去の類似案件や当該案件の工程データ、作業員の稼働、重機の稼働、検査の指摘、天候、資材搬入の実績などを並べると、手待ちが多いタイミングや、手戻りが起きやすい条件が見えてきます。
ポイントは、いきなり高度なAIに飛びつくことではなく、まず「現場が納得できる見える化」を作ることです。
- ・どの工程で、どれくらい手待ちが出ているのか
- ・どの作業条件で、手戻りが増えやすいのか
- ・どの班・協力会社で、検査指摘が多いのか
こうした“当たり前の問い”が、数値で返ってくるだけでも、段取り改善や配員調整が回り始めます。
02-2. コストの最適化|資材・労務費の見える化
コスト最適化の本質は、締めてから反省することではなく、進行中に偏差を見つけて、手当てできる状態を作ることです。現場ごと・担当者ごとに分かれていた資材発注、労務費、協力会社支払い、出来高(出来形)を一元的に捉え、予算と実績の差異を、できれば週次、最低でも月次で把握できるようにします。
ここでも重要なのは、最初から完璧な原価システムを作ることではありません。スモールスタートとして、
- ・発注金額(契約・注文)
- ・請求見込み(出来高)
- ・実績(支払い・稼働)
- ・進捗(工程)
を最低限つなぐだけでも、「どこで膨らんでいるか」「いつからズレたか」が早期に分かり、コントロールの精度が上がります。結果として、利益率を守るための打ち手が“後追い”になりにくくなります。
02-3. 安全性の向上|ヒヤリハット分析とリスクの予見
安全は、注意喚起だけでは限界があります。だからこそ、ヒヤリハットや労災データを、場所、作業種別、時間帯、天候、作業密度などの属性と紐付け、傾向を掴むことが有効です。「どのような場所で」「どの作業中に」「どの条件の日に」起きやすいかが見えれば、重点パトロールや動線変更、KYの刷新など、実務的な対策に落とし込めます。
また、遠隔臨場の取組では、移動時間削減などの効果が示されています。安全と生産性を同時に引き上げる選択肢として、検討余地があるでしょう。
出典:「建設現場における遠隔臨場 取組事例集(第二版) 令和5年3月」(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/tec/content/001594457.pdf(2026年02月04日に利用)
02-4. 品質の確保と技術継承|施工データの蓄積と活用
品質の世界では、再発防止と説明責任がセットで問われます。施工写真、各種計測データ、資材ロット、検査記録などをデータとして蓄積しておけば、不具合が起きたときの原因究明が早くなり、施主説明も筋が通りやすくなります。
さらに、熟練者の作業手順や判断基準を、写真・動画・検査指標とセットで残せば、若手向けの教育コンテンツとして機能します。結果として、施工のばらつきが抑えられ、品質の安定と技術継承が同時に進みます。地味ですが、こうした“積み上げ型の改善”こそ、現場で効き続けるデータ活用の強みです。
03. 【事例で学ぶ】建設現場を変えるデータ活用
03-1. 施工データ連携で自動化・省人化を進めた例(統合施工管理)
大林組は、新丸山ダム建設工事の盛土工事において、施工計画と座標情報を建機側へ連携し、施工後に取得した出来形・品質管理情報を施工計画側へ戻して可視化し、翌日の計画へ反映しやすくする取り組みを公表しています。施工の「指示→実行→結果→次の計画」がデータでつながると、現場の判断が速く、かつブレにくくなります。
出典:「新丸山ダム建設工事における盛土工事で「統合施工管理システム」連携性を検証」(大林組)https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20240411_2.html(2026年02月04日に利用)
示唆として分かりやすいのは、入力・転記・確認の“見えない手間”が、連携設計の有無で大きく変わる点です。データが分断されていると、人が走って埋めるしかありません。一方で、データが連携されていると、省人化と品質安定の両方に効果が期待できます。
03-2. 3D点群のリアルタイム共有で遠隔施工管理を高度化した例(トンネル現場)
清水建設は、トンネル建設現場から取得した3D点群データをリアルタイムに伝送し、遠隔地で施工進捗や壁面状況を確認する実証について公表しています。帯域を大幅に削減しつつ高品質な点群伝送を実現した点が特徴で、現場へ行かずとも“判断に足る情報”を共有できる方向性が見えます。
出典:「Starlink活用によるトンネル建設現場からの3D点群データのリアルタイム伝送技術を確立」(清水建設)https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2024/2024034.html(2026年02月04日に利用)
ここでの本質は、単なる遠隔化ではありません。限られた監督・所長リソースを、移動や立会の時間から解放し、「重要判断」と「是正」に集中させやすくなる点です。人手不足の時代に管理密度を落とさず回すための、有力なアプローチと言えます。
04. 明日から始めるデータ活用の4ステップ
【Step1】目的の明確化|何のために、何のデータを活用するのか
最初に決めるべきはツールではなく、目的です。例えば、
- ・特定工程の手戻りを20%削減する
- ・若手技術者の独り立ち期間を3か月短縮する
- ・原価の着地精度を上げ、赤字兆候を週次で検知する
のように、具体的で測定可能な目標に落とします。目的が曖昧なままだと、集めるべきデータも、分析の視点も、施策の優先順位も定まりません。
【Step2】データの収集と可視化|まずは身近な情報から始める
いきなり大規模な基盤を作ろうとすると、着手が重くなりがちです。まずは日報、勤怠、工事写真、原価表(Excel)、検査記録など、既に存在するデータを集めて整理し、簡易的に“見える化”するところから始めるのが現実的かと思います。
この段階で意識したいのは、完璧さよりも、現場が使えることです。「見た瞬間に違和感が分かる」「会議で意思決定できる」程度の粒度で十分に価値があります。見える化ができると、次に集めるべきデータや、入力負担を減らす工夫も自然と見えてきます。
【Step3】分析と施策の立案|データから課題の原因を探る
可視化したら、次は“差”を見ます。予定と実績、班ごとの差、協力会社差、曜日差など、差が出ているところに仮説を置き、原因を探ります。例えば「なぜこの曜日は効率が落ちるのか」「なぜこの現場は手戻りが増えたのか」といった問いを立て、関連しそうなデータ(搬入、検査、天候、作業密度など)を重ねて検証します。
ここで大切なのは、分析を難しくし過ぎないことです。現場改善に直結するのは、統計の美しさよりも、納得感のある“原因の特定”と“打ち手の選択肢”です。
【Step4】実行と効果検証|小さく始めて改善を繰り返す
データから導いた施策は、まず1つの現場・1つの工程・1つのチームで試します。施策前後のデータを比較し、効果を客観的に判断します。効果が出たら横展開し、期待ほど出なければ別案を試す。この小さなPDCAを回せると、データ活用は「一度の導入」で終わらず、現場に根付く改善の型になります。
05. データ活用を阻む「人材の壁」と乗り越え方
05-1. なぜデータ活用は「ツール導入だけ」で失敗するのか
高機能なBIツールや管理システムを導入しても、現場の入力負担が増えただけで定着しないケースは少なくありません。原因は多くの場合、ツールではなく設計にあります。
- ・現場課題とKPIがつながっていない
- ・データ定義が現場運用と合っていない
- ・誰が、いつ、何を見て、どう判断するかが決まっていない
ツールはあくまで手段です。業務プロセスと運用設計がセットになって初めて、成果に結び付きます。
05-2. 推進の鍵を握る「データ分析人材」の重要性
建設業のデータ活用で特に重要なのは、「現場を理解し、データで翻訳できる人材」です。分析だけできても、現場の制約や段取りの現実を踏まえられなければ、打ち手が机上になってしまいます。
逆に、業務理解とデータスキルを併せ持つ人材がいると、現場の言葉をKPIに落とし、意思決定できるダッシュボードに整え、改善サイクルを回すことができます。この“翻訳者”の存在が、データ活用の成否を分けます。
05-3. 自社に専門家がいない場合の3つの選択肢
専門人材が不足する場合、現実的な選択肢は3つです。
- ①時間をかけて社内人材を育成する
- ②専門人材を中途採用する
- ③外部の専門家・専門企業に支援を依頼する
育成は中長期で効きますが、立ち上がりに時間がかかります。採用は即戦力が期待できる一方で、採用難度や定着リスクが課題になります。短期で成果を出し、現場に定着する“型”まで作る必要がある局面では、外部の専門人材サービス(常駐支援など)を活用し、初速を高めるのが有効な打ち手になり得ます。
まとめ
建設業界では、2024年4月からの時間外労働上限規制を背景に、生産性向上が待ったなしのテーマになっています。加えて、人手不足と高齢化による技術継承の難しさも重なり、勘と経験だけに依存した運営は限界が近づいています。
こうした課題に対し、データ活用は「生産性」「コスト」「安全」「品質」の4観点で、再現性のある改善を進めやすいアプローチです。目的を明確にし、身近なデータを可視化し、小さく試して効果検証を回すことで、データ活用は着実に前進します。専門人材が不足する場合は、外部支援も選択肢に入れつつ、現場で使い続けられる運用設計まで含めて推進することが成功の近道になるでしょう。
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