データ活用の効果的な方法とその重要性:ビジネス優位性の獲得に向けて
総務省(2020)「デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究※1」によると、データ利活用の効果を享受するには、データ活用を高度化することが有効であるとの分析結果が得られています。高度化とは、難解な分析手法を用いることでは必ずしもないと思っています(手法を知っていることは大事ですが)。難解な手法を用いるというよりかは、適切な課題設定とそれに対応した分析手法とデータ選定を行い、分析結果を解釈して意思決定することだと考えています。本記事では、データ利活用を効果的に行うために何をどのように行うべきなのかを以下6つのステップで紹介していきます。
①データ活用とは
②データ活用のメリット
③どのように利用するデータを決めるのか
④データ生成過程を確認する
⑤分析手法ってどうやって決めるの?
⑥分析結果をどのように解釈し意思決定に活用するのか?
※1 出典:「令和5年版情報通信白書」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/pdf/n2100000.pdf
licensed under CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
執筆者のご紹介
所属
サービス開発室 秋山
業務内容
データ利活用に関する試験研究/新規事業開発案件における企画・推進をリードしています。GIS(地理情報システム)や機械学習・深層学習モデルなどの技術を活用したり、評価指標設計をしたり、プロジェクト方針の意思決定をしたりしています。
経歴
経済学部卒業後、外資系SIerにて生命保険事業におけるEUCシステムの設計・構築とプロジェクトリードを経験しました。社会人経験後、一橋大学経済学研究科にて産業組織論や応用ミクロ経済学、計量経済学を専攻し、ジョイントベンチャーなどの企業組織形態の最適化に関する理論分析や企業カルテル・談合に関する実証分析などを行ってきました。大学院卒業後、株式会社メンバーズ データアドベンチャーカンパニーに入社した。
目次
01.|データ活用とは
データ活用の目的
具体例
02.|データ活用のメリット
意思決定の精度向上
コスト削減
顧客満足度の向上
イノベーションの促進
03.|どのように利用するデータを決めるのか
目的の明確化
関連性のあるデータの特定
データの信頼性と品質の確認
データのコストと入手方法の評価
04.|データ生成過程を確認する
データの収集
データの処理とクレンジング
データの保存
監査と記録
05.|分析手法を決定する
目的の明確化
データの特性評価
手法の選択
モデルの構築と評価
モデルの適用とチューニング
06.|分析結果の解釈と意思決定への活用
結果の確認
結果の解釈
意思決定への反映
フィードバックと改善
コミュニケーション
07.|まとめ
データ活用とは
データ活用は、組織や企業が日々の活動で収集したデータを活用して、ビジネス戦略や意思決定に役立てるプロセスです。
現代のビジネス環境では、データを単に保存するだけでなく、それを分析し、具体的なアクションに反映させることが重要視されています。
データを適切に活用することで、組織は競争力を高め、業務の効率化や顧客満足度の向上を図ることができます。
データ活用の目的は、以下のように多岐にわたります。
- 業務プロセスの最適化:データを活用して、業務効率を向上させる方法を見つけます。
- 市場トレンドの理解:顧客の行動パターンや消費者の嗜好を把握し、マーケティング戦略に役立てます。
- リスクの最小化:データから得た知見を使い、予測精度を高め、リスクを最小限に抑えた意思決定を行います。
- 顧客データの分析:顧客の購買履歴や行動データを分析し、効果的なマーケティング施策を実行します。
- 製造プロセスの改善:センサーや機械の稼働データを基に、生産工程を効率化し、コスト削減や品質向上を図ります。
データ活用のメリット
データ活用のメリットは、ビジネスのあらゆる領域において効果を発揮します。データを活用することで、企業はよりスマートな意思決定を行い、持続的な成長を促進することができます。
- 客観的なデータに基づいた判断:データ分析を基にした意思決定は、直感や過去の経験に頼る意思決定と比べて、信頼性が高まります。
- リスク軽減:売上データや市場トレンドのデータを活用して予測を行うことで、投資の失敗やリスクを軽減できます。
- 在庫管理の最適化:需要予測を行うことで、過剰な在庫を抱えるリスクを軽減し、在庫コストを削減できます。
- 効率的なリソース配分:効果的なリソースの投入により、無駄を最小限にし、コストを抑えることができます。
- パーソナライズドなアプローチ:顧客の購買履歴や嗜好に基づいたサービスを提供することで、顧客満足度が向上します。
- リピーターの獲得:満足した顧客は、再度サービスを利用する可能性が高まります。
- 新しいビジネスチャンスの発見:市場や消費者の行動データから、新しいトレンドや機会を早期に察知し、新製品やサービスの開発に活かせます。
どのように利用するデータを決めるのか
データ活用を成功させるためには、適切なデータを選ぶことが重要です。すべてのデータが有用というわけではないため、目標に合致したデータを選定することが鍵となります。
まず、何を達成したいのかを明確にします。例えば、顧客満足度を向上させたいのか、売上を最大化したいのかによって、必要なデータが異なります。
次に、目的に関連するデータを特定します。顧客のフィードバックや購買履歴、ソーシャルメディアでのコメントなどがその一例です。
データの正確性と信頼性を確保するため、データソースが信頼できるものであるかを確認します。最新かつ信頼性の高いデータを使用することが、正確な分析に不可欠です。
必要なデータが社内に存在しない場合、外部から購入することを検討します。データのコストも考慮に入れ、費用対効果の高い選択を行います。
データ生成過程を確認する
データがどのように生成され、管理されているかを確認することは、データの信頼性と品質を保証するために不可欠です。
データはさまざまなソースから収集されます。具体的には、センサー、トランザクションシステム、顧客管理システム(CRM)、ソーシャルメディアなどが例として挙げられます。収集したデータがすぐに使える状態にあるとは限らず、適切な整理や加工が必要です。
収集されたデータは、クレンジングと呼ばれるプロセスを経て、誤りや欠損を修正し、一貫性を持たせます。この作業により、分析に適したデータセットが作成されます。また、必要に応じてデータのフォーマット変換や統一も行います。
クレンジングされたデータはデータベースやデータウェアハウスに保存され、後の分析に備えます。保存する際には、データの整合性やセキュリティを確保するための対策が必要です。
データの生成過程全体を監査し、記録を残すことで、後にデータの出所や変更履歴を確認できるようにします。このステップは、データの信頼性を保つために非常に重要です。
分析手法を決定する
データを活用する際には、目的とデータの特性に応じた分析手法を選ぶことが重要です。以下に、分析手法を決めるステップと代表的な手法を示します。
まず、何を達成したいか、どのような課題を解決したいかを明確にします。例えば、売上の予測を行うのか、顧客のセグメンテーションを行うのか、目的に応じて適用する手法が異なります。
次に、使用するデータの種類や特性を把握します。以下のポイントを考慮します。
- データの種類:数値データ、カテゴリデータ、テキストデータなど、データの種類を確認。
- データの量:大量データか、少量データかで使用するツールや手法が変わることがあります。
- 欠損値の有無:データの欠損部分が多い場合、補完の必要があるか判断。
目的とデータの特性を把握した上で、適切な分析手法を選択します。以下は、代表的な手法です。
- 回帰分析:数値データを使い、変数間の関係をモデル化し、未来の数値を予測するために使用されます。売上予測に非常に有効です。
- クラスター分析:データをグループに分け、特定のパターンを発見するために使用します。顧客セグメンテーションや市場の分析に用いられます。
- 決定木分析:決定木は、データを階層構造で分類・予測するために使われます。顧客行動の分類や商品の売上予測に有効です。
- 時系列分析:時間に沿ったデータを用いて、将来のトレンドや傾向を予測します。売上データや市場の変動を予測する際に使用されます。
- テキストマイニング:テキストデータを分析し、重要な情報やトピックを抽出します。顧客レビューやフィードバックの解析に活用できます。
選択した手法を基にモデルを構築します。モデルの性能を評価する際には、次の指標を使用します。
- 平均二乗誤差 (MSE):予測結果と実際の値の誤差を測定。
- 正確度:予測モデルがどれだけ正確に結果を出しているかを判断。
- F値:分類モデルの場合、精度と再現率のバランスを評価します。
最終的なモデルを選択し、適用します。パラメータの調整やアルゴリズムのチューニングを行うことで、モデルの精度やパフォーマンスをさらに向上させることができます。
分析結果の解釈と意思決定への活用
データ分析の結果を正しく解釈し、それを基に意思決定を行うことが重要です。以下に、結果をどのように活用するかのステップを示します。
まず、分析の結果が予測通りかどうか、正確に確認します。これにはグラフや統計指標を使って、視覚的に結果を表示する方法が有効です。異常値や想定外のパターンがないかをチェックします。
次に、分析結果をビジネスの状況に当てはめて解釈します。たとえば、売上予測モデルの結果から、特定の季節に売上が増加する傾向が見られた場合、その原因を探り、さらなる分析を行います。また、顧客セグメントの結果から、どの顧客層が最も利益を生むのかを考察し、今後の施策に反映させます。
解釈した結果に基づき、具体的なアクションプランを策定します。たとえば、季節ごとの売上増加に備えて、特定の時期に在庫を増やす、または利益率の高い顧客グループに対してターゲットマーケティングを行うといった対応を検討します。
分析結果を基に実施した施策の成果を定期的にモニタリングします。期待通りの成果が得られたか、何がうまくいかなかったかを評価し、次のアプローチに反映させます。このプロセスを繰り返すことで、データ分析の精度と意思決定の効果が継続的に向上します。
最後に、分析結果を関係者に分かりやすく伝えることが必要です。専門用語や複雑な統計情報は避け、シンプルかつ具体的に説明することで、組織全体で共通理解を得られ、意思決定のプロセスがスムーズに進行します。ビジュアル要素(グラフ、チャート)を使ってプレゼンテーションすることも有効です。
まとめ
データ活用は、現代のビジネスにおいて競争力を高めるための必須のプロセスです。収集されたデータを分析し、そこから得た知見をもとに意思決定を行うことで、企業は効率的な業務運営や顧客満足度の向上を実現できます。データの選定から生成過程の確認、適切な分析手法の選択、結果の解釈、意思決定への活用に至るまで、一連のプロセスを体系的に実施することで、企業は持続的な成長を遂げることが可能です。
また、データ活用は一度の取り組みで終わるものではなく、継続的に分析プロセスを改善し、意思決定の精度を高めていくことが必要です。組織全体でデータに基づく意思決定を推進し、競争力を維持・向上させるためには、データ活用の重要性を全員が理解し、実践することが重要です。
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