株式会社トラストバンクさま。2012年4月に設立され、国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営。ガバメントクラウドファンディング®(GCF®)などのwebサービス、様々なイベントなども実施しているIT企業です。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2020年から同社に常駐サービスの提供を開始。データ基盤の構築や整理だけでなく、需給予測などのアウトプットやデータに関わる組織設計・チームビルディングでも貢献しました。

膨大なデータを課題にした時のゼロからの取り組み方やチームの作り方について、ふるさとチョイス事業本部長・和田正弘さま(写真左)、同事業戦略部部長・勝伸司さまにお話を伺いました。

(取材日:2020年10月2日 取材:澤山モッツァレラ 編集:長谷川翔一)

 

経営に「サイエンス」を加えるために

――以前までのデータ活用には、どんな課題があったのでしょうか?

和田 膨大なマーケティングデータがあったものの、それを活かしたアウトプットがなかったことです。「いつ・どこに・どんな」寄付がされたか、そこから逆算した年収予測といったデータはあったのですが、全体観をもって分析し、アウトプットまで落とし込めていなかったんですね。

2019年頃から、弊社はデータに基づいたマーケティング活動や企業運営に取り組んでいます。それまでは「アート&サイエンス」であるべきバランスが、過剰にアート寄りになっていました。より「サイエンス」を作っていく方向を加えるために、データ志向になりました。

ただ、スタート時点ではSQLを扱えるエンジニアが1人しかおらず、専任部署もない状態でした。エンジニアもデータ解析が専門というわけではないので、抽出したデータをどう管理し、どう分析するのか知見もありませんでした。

そこでメンバーズDAから山枡大地さんに来ていただききました。チームは山枡さんとこの分野の経験の浅いメンバーの2名で、彼を中心にチームを作ってきた感じですね。

 

――どんなことから取り組んだのでしょうか?

和田 まずは、データ抽出の前の基盤整理から取り組んでもらいました。

まず、セキュリティを担保するため、個人情報とマーケティングデータを切り分ける必要がありました。設計時のリスク分析について、社内エンジニアと一緒に取り組んでもらいました。共同作業でしたが、非常にスムーズにできたと思います。

 

 

山枡さんの「野心」に惹かれました

――メンバーズDAと接点を持ったきっかけは何でしたか?

和田 営業メールです(笑)。本当に、ちょうどいいタイミングでメールを見たのがきっかけでした。

メンバーズDAさんからのメールで「こういうサービスをやっていて、こういう人材がいます。例えば、こういう人をアサインできます」というご提案があり、その中にいたのが山枡さんでした。

 

――山枡さんについて、どういった点を評価されていますか?

和田 野心的な面ですね。膨大にあるデータの活用について、「自分が何とかする」という野心的な姿勢を最初から持っていました。良い意味で生意気だな(笑)と思いましたし、最初の1人としては理想的なメンバーだと感じましたね。

山枡さんは「データを活用すると、こんなことができます!」と、最初にアウトプットから着手してくれました。通常、新しく立ち上げた部署はアウトプットまで時間がかかると思います。アウトプットから逆算して着手してくれたことで、「あの部署、何をやってるの?」とはならなかった。これは、山枡さんのおかげですね。

 

 

吉川さんは、事業貢献を強く考えている方。

――もう一人の常駐メンバー、吉川寛さんの評価はいかがでしょうか?

和田 吉川さんは、経営企画や事業企画の視点を持っているデータアナリストだと思います。「事業計画をどう立てるか」「数値を作る際に、ユーザーデータをどう活用するか」「KPIをどう分解するか」など、ビジネス観点で組織を見られるのが強みだと思います。

現在はマネージャーのような役割で、事業単位・会社単位でデータに関わる組織設計を構築いただいています。山枡さん同様、得がたい人材だと思いますね。

 

――山枡さんが分析基盤を作り、吉川さんがデータマネジメントをやっている分担なんですね。吉川さんについて、「こういうところが助かっています」というものはありますか?

 経営企画や人事などコーポレート領域を見てきた人なので「データ単体ではなく、組織の中でどう活用するか」を考えられる部分ですね。例えば、データマネジメントチームを作る時に提案してくれた目標設定や意見は、非常にわかりやすかったです。

 

――人物的な面で、印象に残っている部分はありますか?

 お会いする前は「ゴリゴリにデータを扱って、最新技術でモデルを構築する方が来るのかな」と思っていました。実際には会社の業績をいかにドライブさせるか、その観点から有益なデータを作り「事業の役に立ちたい」と強く考えている方でした。良い意味で、予想を裏切られましたね。

和田 山枡さんがアウトプット志向を強め、「こういうことができる」が見えてきたところで、吉川さんは「どう体系的にアウトプットするか」「どこに出すのか」を整理してくれました。山枡さんのデータサイエンティスト的な観点と、吉川さんの組織的・事業的な観点がうまくかみ合っていると思います。

 『ふるさとチョイス』というプラットフォームの特性上、トラストバンクがデータを扱う上でのミッションは、

・ユーザー側のデータをどう作り、基盤をどう構築し、マーケティングにどう活かすか
・自治体側のデータをいかに利用し、自治体に新しい商品やサービスを開発するか

という二点があります。ユーザー側と自治体側双方のデータを取得する必要があり、必然的にデータ量が多くなるため、張り付きで担当できるデータサイエンティストと、組織の中でのミッション設計をする人が必要だったということだと思います。

 

 

「見える化」が一番の成果。

――数字的な成果はありましたか?

和田 部署として具体的な数字は追わないのですが、いろいろな部門のマーケティングの需給予測やデータ基盤の整理などが成果として大きいですね。

大きな成果としては、Tableauを通じて見える化できるところまで来たのが一番かなと思います。このTableauの導入も、山枡さんに担当いただきました。

 

――山枡さんからの提案で、印象に残っているものはありますか?

和田 ふるさと納税の需給予測ですね。今年は新型コロナの影響もあり、これまでよりも寄付が増えています。しかし、その増加は例年よりも寄付の時期が早まっている可能性もあります。例えば去年12月に寄付していた人が、前倒しで寄付しているケースといったものです。

寄付の増加が例年より早いのか「新しいユーザー」なのか、はたまた「これまで上限まで寄付していなかった人が額を増やした」のか、「他社サービスから移動してきた」のか、そういった緻密な分析をゴリゴリ見える化してくれて非常に助かっています。

 

 

今後、メンバーズDAに期待すること

――今後、メンバーズDAに何を期待していますか?

和田 期待することは、山枡さん吉川さんをアサインし続けていただくことですね。一番嫌なのは「2人を戻して」と言われることです(笑)。

 今は、当たり前のレベルに取り組んでいる段階です。次は「どんなデータを見るべきか」「気象データなど外部データとの組み合わせから、こういう示唆ができる」といった提案を期待しています。

和田 データを活用したアウトプットに、より軸足を移すことを期待しています。例えばサジェストやリコメンド、アルゴリズム設計などで「ユーザーへの最適な答えをどう返していくか」という部分ですね。

ふるさと納税の場合、通常のECに比べて行動分析やペルソナを通してインサイトを知るのは難しい部分があります。ふるさと納税では、

・欲しいものを選ぶ
・地元に寄付する

とインサイトが分かれます。単純にユーザーモデルに落とし込もうとすると

・お得なものを追求する層
・地元に貢献したい層
・社会貢献したい層

という別々のペルソナができるのですが、この3つの行動が実は同じ人だったということはよくあるんですね。

「お得なものがほしいけど、それだけでは寄付の上限額が余る。余った分を地元に寄付するけど、まだ余る。調べてたら、競走馬のセカンドキャリアを作るというGCF(ふるさと納税制度を活用するクラウドファンディング)をたまたま見たので、残りを全額寄付する」といったケースがあります。

ユーザーが「どのタイミングで、何を欲していて、どんなユーザー行動や意思決定をするか」をペルソナモデリングで定義するのは難しいと考えています。

シナリオベースでは、本当に顧客を見ていくことはできないと考えています。データの活用や分析だけよりも、具体的なアウトプットから見ていく方向に期待しています。

和田 あとは、山枡さんにずっと聞きたいことが一つあって。なんでリモートの壁紙が猫なんでしょうね?

 

――会社のアイコンも猫です(笑)。Twitterも猫ですし、しかもそれぞれ違う猫なんですよ。

和田 それ、記事の最後に載せておいてください(笑)。

株式会社AOKIホールディングスさま。「洋服の青木」として1958年に創業され、現在はビジネスウェア専門店「AOKI」「ORIHICA」、ウェディングの「アニヴェルセル」、シェアリングスペース「快活CLUB」、カラオケ「コート・ダジュール」、セルフフィットネス「FiT24」など約1,300の店舗を運営する企業です。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2019年から同社に常駐サービスの提供を開始。分散していたデータを統合し、マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入支援や購買・顧客満足度データを分析、経営層から現場まで会社全体がデータに注目する文化作りに貢献しました。

経営層や現場への提案・アウトプット事例について、同社デジタル・CRM推進室の吉田亮氏(写真右端)・高木優氏(同右から2番目)、比嘉真鈴氏(同右から3番目)、同社に常駐しているデータアナリストの岩間祐樹さん(左端)・大坂冬子さん(左から2番目)に伺いました。

(取材日:2020年10月23日 取材:澤山モッツァレラ 編集:長谷川翔一)

 

データの重要性を、誰も認識していなかった

――メンバーズDAが入るまで、御社にはどのような課題があったのでしょうか?

AOKIホールディングス・吉田さま(以下、吉田) データがブラックボックス化していたことですね。すでにBIツールに取り込まれている情報は表示できますが、それ以外の出力は外部ベンダーに依頼する必要がありました。データ自体もどんな状態で、どこに保存されているかわからない状況だったんですね。

メンバーズDAさんの岩間さん・大坂さんが来てからは、スピーディーにデータを取り出せるようになり、分析の精度も格段に上がりました。

――そもそもデータの分析基盤が存在していなかったのですね。以前はどんな体制だったのでしょうか?

吉田 基本的に専任担当がおらず、情報システム部がなんとなく担当している状態でした。データはどこにあるのか、どこに集約して分析するのか、管理できていませんでしたね。

2016年にはSalesforceのMAツール「Salesforce Marketing Cloud」を導入、必要なPOSデータや顧客データなどを集約することになりました。ただ、同サービスはもともとデータ保管を目的としたものではないため、出力に時間がかかっていました。

そこで、岩間さんと大坂さんから「BigQueryを使えば、簡単に出せるようになりますよ」とご提案いただきました。今、ほとんどのデータはBigQueryで管理できています。

 

――専任の担当がいなかった理由はなんだったのしょうか?

吉田 誰もデータの重要性を認識していなかったことですね。「できないからしょうがない」と諦めていた部分もあります。集客施策も基本的にチラシと紙のDMで、分析もシンプルな指標しか注目していませんでした。

 

 

「オールマイティな人がほしい」とリクエスト

――メンバーズDAとの接点は、いつ頃生まれたのでしょうか?

吉田 MAを回すチームが形になり、データ回りを整理する必要ができたタイミングですね。

加えて、アプリを通したコミュニケーションの改善のために「もっとデータをきれいな状態にして活用しやすくした方がいい」となり、「それなら顧客単位でデータを集約して分析できないか」と相談したのがきっかけです。

 

――当時、どんなリクエストをしたのでしょうか?

吉田 「オールマイティな人がほしい」とリクエストしました。何をどうやっていいかわからない状態でしたので。

データの受け皿を作り、散らばっているデータを集め、構造を整理しながらデータを格納した上で、さらに「こういうデータがある」「こういう施策をした方がいい」という起案までできるオールマイティな人ですね。

 

――そうしたリクエストを踏まえて常駐に入った岩間さんは、当時の状況をどう感じましたか?

メンバーズDA・岩間祐樹(以下、岩間) 「想像以上に散らばっていた」という感じですね(笑)。事前面談で「データがない・整備されていない」状況は伺っていたんですが。データがあっても、各ベンダーさんでブラックボックスになっていて。説明すれば最終的には連携してくれるのですが、時間がかかりすぎる状態でした。

 

 

衝撃的だった、経営陣への提案

――岩間さんから受けた提案で、印象に残っているものはありますか?

吉田 最初に衝撃的だったのは、経営陣への提案でした。

競合他社が大々的なキャンペーンを始めた時、追随して同じような施策を打ったことがありますが、成果が全く出なくて。売り上げを落とした層を分析すると「ロイヤルカスタマー層がごっそり減っている」と指摘されました。

「実施前に分析しておけば、やらない方がいいとわかっていたはず。何をしているんですか?」と言われて。みな黙り込んでしまいました(苦笑)。

それ以降、競合の動向に一喜一憂せず、データを見つめて適切に対処する体制を取れるようになりました。目の前にいるお客様が大事だと、改めて気づかされましたね。

 

――岩間さんは、必要だと思えば忌憚ない意見を伝えられる人なんですね。

吉田 そうですね。提案資料が出てきた時「どうやって経営陣に説明しよう…」とショックを受けました(苦笑)。しかし新しい施策を打つときの視点の甘さ、「何が問題なのか」「どんな対策を打つのか」「なんでそのKPIなのか」といった部分を追求できていない状況に、一石を投じることができました。

 

――他に、良い変化はありましたか?

岩間 ホールディングス全体で「よりデータに着目しよう」という機運を醸成できたのは、一つの貢献だと思っています。例えば、ダッシュボード構築の依頼は大幅に増えました。デジタル・CRM推進室の方向けに作ったダッシュボードが、部署を超えてひとりでに広まり、30人以上に使われるようになったということがあります。

 

――ダッシュボードや分析指標がそろったことで、チームの目指すベクトルが同じになったということはありますか?

吉田 そうですね、皆の目線が同じになってきて、「データを活用して経営を変えていこう」という方向になってきました。これまで「分析できないだろう」と諦めていたデータも、「顧客の声の裏返し」として求めるようになりましたね。「実は分析できるんじゃないか」「分析できたら、新しい施策を打てるんじゃないか」と。

接客や商品のアンケートを誰でも見られるようにダッシュボードで整理してもらい、販促や商品の部署までお客様の意見を取り入れるようにしました。「データをもとに、来期の商品はこうしよう」という取り組みにも繋がっています。

 

―― 他に、プロダクトに関わるような示唆を受けることはありましたか?

岩間 ご提案したのは、ワイシャツの分析とAOKI・ORIHICAの顧客分析ですね。これまでワイシャツは「ノーアイロン」のような、機能面だけで訴求するプロモーションが多かったんです。しかし、ビジネスエリアのユーザーにアンケートした結果、機能性では差別化できていないとわかりました。

例えば「シワが付かない」といった機能だけではなく、「手入れがラク」といった情緒的な価値のような「お客さまが感じる価値や便益で訴えていかないと、差別化できない」「AOKIは、どんなポジショニングにいたら良いのか?」という部分まで提案させていただきしました。

 

 

メンバーズDAさんを辞めて、ウチに来てほしい(笑)

――御社における、岩間さんと大坂さんの評価を教えていただけますでしょうか。

吉田 メンバーズDAさんを辞めて、ウチに来てほしい(笑)。それは冗談ですが、それぐらい無くてはならない存在です。

 

――大坂さんについては、どんな点を評価いただいてますか?

吉田 大坂さんの役割は、分析にあります。岩間さん1人体制の頃はデータ整理だけでリソースが一杯になり、アウトプットまで出せなかったのがジレンマでした。

大坂さんが入ることで、岩間さんがデータ整理、大坂さんが分析という分担が生まれました。大坂さんが切れ味鋭い指標を反映しながら提案してくれるので、良いサイクルができましたね。

 

経営を変えるようなアウトプットが出てきたことで、データの重要性がきちんと理解されるようになりました。以前は「データ活用したい」と思っても外部のベンダーさんにお願いするしかなかったのですが、現在は「デジタル・CRM推進室に相談すればいい」という流れができていますね。

岩間 もっとも、単純に1人増えただけではアウトプットを出せないジレンマは解決しなかったと思います。キャッチアップが素早い大坂さんが入ったからこそ、早いサイクルでアウトプットが出せるようになりました。

メンバーズDA・大坂 ありがたいことに外部データも使いながら、いろいろなデータを扱い、さまざまな種類のレポートを作ることができています。そのおかげで、多くの要素を組み合わせて考える機会が増えましたね。

 

 

アンケートの低評価=ネガティブ ではない。

吉田 顧客満足度の解像度も上がりました。例えばダッシュボード上で、全体の評価を下げている部分が「接客なのか」「品ぞろえなのか」というような細かな違いもわかるようになっています。顧客体験の流れ全体(現場・本社・販促部)を通じた満足度に注目することで、例えば「クーポンを乱発しない販促をしましょう」という考えにも繋がります。

他にも、アンケートの点数が低くても、エンゲージメントが形成できているケースもあり「もっとユーザーの声を聞こう」という姿勢も生まれました。

例えば、ある店舗では「低い評価をつけた方でも、50%以上が半年以内に再来店している」ということがデータからわかりました。低評価は実はネガティブなことばかりでなく、「愛のある言葉をもらえているのだ」という気付きを得られました。

以前はこうした低評価について「現場のモチベーションが下がるので、見たくない」という店舗の反応もあったんです。ですが、「半年後には再来店してくださっている」という事実を示すことで、「きちんと受け止めて接客改善につなげよう」という態度変容に繋がりましたね。

岩間 低評価だったとしても、答えなかった方よりも再来店の見込みがあるというデータでしたね。

AOKIホールディングス・高木さま 私だけでなく、他部署のメンバーも触発されて、データについて学ぶ人が増えてきています。自分でも、データから示唆を導き出さないといけないと思えるようになりました。こうした好循環は、岩間さん、大坂さんに来ていただいたからこそですね。本当に感謝しています。

 

――最後に、今後メンバーズDAに期待することを伺えますでしょうか。

吉田 お二人が来てくださったお陰で、会社全体でデータの重要性に気付けました。今は、データを起点にした経営が徐々にできるようになっています。店舗から本社に異動してきたメンバーからも、SQLを書ける人材が生まれてきました。

現在まだ(お付き合いして)2年目ですが、今後ももっと人をアサインし、データで経営するチームを作りたいと思っています。引き続きご協力のほどよろしくお願いします。

 

――お忙しい中、どうもありがとうございました!

株式会社集英社さま。1926年(大正15年)に設立され、『週刊少年ジャンプ』『週刊プレイボーイ』『non-no』をはじめとする数多くの雑誌・書籍を世に送り出し、近年では『鬼滅の刃』が国民的な大ヒットを記録。名実ともに、日本を代表する出版社です。

一方、同社はファッション・ライフスタイル誌系の公式SNSの総フォロワー数1,969万人、WEBサイトの月間ユニークユーザー数2,103万UUを誇る、デジタル化を強く推進している企業でもあります。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2019年頭から同社に常駐でのサービス提供を開始。「MEN'S NON-NO WEB」「WEBUOMO」を始めとする4サイトの解析を担当し、様々な要因が重なった結果としてPV数を5倍まで引き上げることに成功しました。

こうした成果を出すまでは、どのような紆余曲折があったのでしょうか。雑誌デジタル編集室部次長兼室長の西河淳(にしかわ・あつし)氏と、同社に常駐して1年半になるデータアナリスト・小川さんに話を伺いました。

(取材日:2020年9月17日 構成:澤山モッツァレラ)

 

 

メンバーズDAに発注した理由

――メンバーズDAと取引する以前、御社の課題はどこにあったのでしょうか?

集英社・西河淳さま(以下、敬称略) 活用すべきデータ自体は存在したのですが、アクションに繋げることに課題を抱えていました。

弊社にはMEN'S NON-NO、UOMO、週刊プレイボーイといった男性誌のサイトが複数あり、PianoというDMPを使ってデータマネジメントしています。

ただ、データ解析の専門家が少なく、制作会社さんから週次・月次でレポートを受けてはいましたが、アクションまで有機的につながっていないのが実情でした。

そこで2019年頭に、当時の上司からメンバーズDAさんを紹介してもらったのがきっかけです。

 

――最初は、何から着手してもらいましたか?

西河 改善点の洗い出しからお願いしました。4サイトあるため、すごいボリュームでしたね。プリントアウトしたら、A3用紙に文字がびっしり。呆然としたことを覚えています(苦笑)。

当初はデータ分析以外も着手しようとしたのですが、2019年夏ごろから「日々のデータを取得し、深掘りし、提案してもらう」方向性に固まりました。

メンバーズDA・小川(以下、小川) 私は2019年2月から常駐に入り、まずはレポーティングから開始しました。

当初苦戦したのは、データ集計の自動化ですね。プラットフォームの仕様上、CSVデータを一括で取得出来なかったことに加え、分散メディアごとに1つ1つサイトへアクセスしなければならないため、工数がかかっていました。一部は一括で落とせるのですが、最初はどうしても手打ちで対応する必要がありました。

PythonでAPIを叩いて数値を抽出し、エクセルに落とし込むことで徐々に手打ちの頻度を減らしていきました。データ収集の自動化を担うエンジニアさんが入ってからは、より効率よくデータを落とせるようになりました。

 

 

様々なデータが可視化され、深い議論が可能に

――データを自動取得できる環境が整って以降、どのような変化がありましたか?

西河 Google Analytics(以下、GA)のアクセスログやPianoのデータはもちろん、そこでは取れないデータまで網羅できるようになりました。例えばWEBUOMOという動画メインのサイトでは、管理画面でも取得できない数値があります。「何とか取れないか」とお願いしたら、データを自動取得できるプログラムを組んでいただきました。

MEN'S NON-NO WEBでも「訪問頻度別のデータを見たい」「月30回と月1回訪問に分け、行動パターンを解析したい」とお願いしたところ、こちらはGAやPianoを使ったダッシュボードを組んでいただきました。

様々なデータが可視化された結果、より深く踏み込んだ議論ができるようになりましたね。

 

――解析以外で、メンバーズDAから提案したことはありますか?

小川 MEN'S NON-NO BEAUTY(現在はMEN'S NON-NO WEBに統合)では、AI画像検索を用いたヘアカタログをご提案したことがあります。「短い/長い髪型ならこれがオススメ」というものですね。

また、当時あったチャットボットの機能として「顔の形から髪型を提案する」改善案も提出しました。もともとは中国企業が用いた技術で、日本ではZOZOさんが取り入れているものです。MEN'S NON-NO BEAUTYでは髪型ベースの検索しかなかったので、「この顔の形なら、この髪型」といった関連記事を出せるよう提案しました。

他には、関連記事のチューニングを行ないました。例えばユニクロさんやアディダスさんを扱った記事は人気なのですが、関連記事が必ずしも最適化されていないケースがありました。分析画面から「アディダス好きは、アディダスの記事に回遊する」というファクトを提示し、改善に繋げました。

 

メンバーズDA常駐後に起きた、大きな変化

――メンバーズDA常駐後、最も変化した部分はどのあたりですか?

西河 編集部全体で、データを重視するようになったことですね。

表面的なPVやUUで一喜一憂するのではなく、流入経路や検索KWを意識したり、訪問頻度別で行動パターンを見たり、インサイトを深読みしたり。

WEBサイト、SNS、SEOなどデジタル施策全般について多面的に見られるようになったことは大きな変化ですね。

小川 常駐開始のころと比較しても、オーダーの粒度が変化した感はあります。当初は手探り感がありましたが、最近では「何が要因で数字が変わったのか」といった細かい視点からのオーダーが増えました。「GAを自分で観たい」という相談も増えています。

もちろん編集部の皆さま、関係各所の頑張りあってのことですが、常駐開始から1年半で各メディアの数字はすべて伸びており、PVは最大で約5倍になっています。スマートニュースやヤフーニュース等、分散メディアからの集客も大きく伸長しています。

西河 地道にデータをとり、改善を重ね続けてきた結果だと思っています。(WEBメディア運営において)至極当然なことと思いますが、ウチの男性誌メディアではできていませんでした。

 

「小川さんなら、形にしてくれる」

―― 小川さんについての評価は、いかがでしょうか?

西河 こちらの無理難題や(苦笑)ふわっとした疑問を、丁寧にデジタル言語化して応えてくれますね。頼りにしています。

弊社は関係者が多いため、全体として小川さんに何を聞けばいいかわかるのが会議前日といったケースもあります。1人常駐体制なので、負荷はそれなりに高いはずです。

ただ、厳しい条件であってもデータが取れる取れないを明確にしたり、A方式で無理ならB方式を試したり、課題が見えないときは気づきを共有したり、現状使える範囲のツールを探してくれたり。

スキル面はもちろん、そうした粘り強さや頑張りといった部分も信用しています。「大変だけど、小川さんなら形にしてくれる」と思っています。

 

――ありがとうございます。事前のヒアリングでは「発想力、情報感度の部分が得難い」という評価も頂戴しています。

西河 そうですね。年齢的に若く女性である点においても、男性誌サイトの内部では貴重な視点になっています。

例えば、Twitterではテキストを画像化したものを添付し、URLへ誘導する施策を提案いただきました。画像+URLという形でツイートし、興味を持った方をWEBサイトに来ていただくものです。ユーザー習慣をよく掴んだ、SNSネイティブならではの発想だと思いますね。

また、MEN'S NON-NO Twitterのフォロワーは専属男性モデルのファンである女性が多い傾向から、記事内容紹介ではなく、より男性モデルをフィーチャーした更新にしていただいたり。直接のターゲット向けではないですが、認知向上を達成することで結果的に本来のターゲットにも届かせる狙いで行なっていただいています。

データアナリストでありながら「人間が読む」視点も持ったうえで、WEBなりSNSなりのユーザーに刺さる提案をいただいています。

 

 

今後、小川さんに期待すること

――今後、小川さんにどのようなことを期待しておられますか?

西河 先ほども述べたとおり、データ解析に加えインサイトやトレンドを加味した提案をいただき、感謝しています。

強いて課題を挙げれば、ある種の遠慮というか「ひょっとしたら、自分の提案は間違っているのでは」と考えている部分もあるのかなと。勝手な言い分ですが、過度に恐れることなく、硬軟取り混ぜた意見をいただけるとうれしいですね。

 

――常駐者の小川さんは今後、どういう貢献をしていきたいですか?

小川 引き続き、データ解析とともにアイデア面での貢献もしていきたいです。体制面が今後どうなるかわからない部分もありますが、分析依頼が増えていけば、後輩たちもこの案件に関わらせていただいて、一緒により深いご提案をできればと考えています。

理想は、1メディア1アナリストの体制ですね。メディアごとに企画制作のスペシャリストの皆さんがいる状態で、データのスペシャリストもいるような体制にできれば。メディアの特性やブランドを理解した上で、既存の人気記事をさらに伸ばすことはもちろん、伸びしろがある記事をさらに引き上げるなどして人気記事を増やしていければ、メディアとして理想的な状態にしていけるのではと思います。

 

2023年10月20日(金)に開催される、一般社団法人データサイエンティスト協会主催『10thシンポジウム〜データサイエンスの最前線』に弊社社員が登壇します。

登壇概要

登壇セッション:サービスを育てるデータサイエンスチームのつくりかた
セッション概要: データの利活用はこの10年間で大きく進み、様々な技術が発達しました。またそれらの技術を活かした製品やソリューションが多く生み出され、ビジネスにおけるデータ活用は十分に定着してきたといえます。
しかしながらそれらの技術を使うにはいまだハードルが高く、人材育成が追いついていません。
各企業様ではDX人材やデータ分析人材の確保に急いでいます。しかしその確保したメンバーが十分に活躍できる組織になっているのでしょうか?
今回は、いくつかの事例をもとにデータサイエンスをビジネスで活かすための組織作りについてご紹介します。
日時:2023年10月20日(金)15:20~15:35
場所:ウェスティンホテル東京 ※現地およびオンラインによるハイブリッド方式で開催予定。
詳細:https://www.datascientist.or.jp/symp/2023/

 

登壇者紹介

吉川 寛(よしかわ ひろし)

Yoshikawa Hiroshi

株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー
サービス開発室 室長

大学で計量経済学を専攻。
店舗マネジメント、事業開発、経営企画を経験する中で一貫して意思決定にデータ分析を活用してきた。
現在はその経験を活かしデータ活用に関する新規サービスの開発責任者を務めながら、データサイエンティストとして企業のデータ活用リテラシー向上とデータ分析基盤構築、施策効果検証による意思決定支援にも従事。

2023年10月18日(水)に開催される、翔泳社主催『Biz/Zine Day 2023 Autumn』に弊カンパニー社長の白井が登壇します。

登壇概要

Biz/Zine Day 2023 Autumn
データとデザインによる両利きの経営

登壇セッション:データから競争力を生む組織をつくる~専門支援会社を活用した最新技術内製化の考え方~
セッション概要: DXが進展し、今やデータは取れてしまう・溜まってしまう時代に。データから売上や利益を生み出す組織能力の有無によって、企業間の競争力に差がついてしまいます。
しかし、多くの企業にとってデータ活用能力は新規獲得しなければならないもので、R&D的探索要素を含むものになります。
メンバーズデータアドベンチャーは、500社以上の企業を支援するメンバーズの知見を背景に、データのプロの常駐サービスを提供するなかで、データ活用能力獲得の成功パターンを蓄積して参りました。
本セッションでは、データから競争力を生む組織づくりのポイントと成功パターンをお伝えします。

日時:2023年10月18日(水)13:30~14:00
場所:オンライン
参加費:無料
事前登録締め切り:2023年10月17日(火) 13:00まで
詳細:https://event.shoeisha.jp/bizzday/20231018/

登壇者紹介

白井 恵里(しらい えり)
Kawamura Haruka

株式会社メンバーズ 執行役員
兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長

東京大学を卒業後、株式会社メンバーズへ入社。
大手企業のオウンドメディア運用、UXデザイン手法での制作や、デジタル広告の企画運用に従事したのち、2018年11月に社内公募にてメンバーズの子会社(現、社内カンパニー)社長として株式会社メンバーズデータアドベンチャーを立ち上げ。
データアナリスト、データサイエンティスト、データエンジニアなどデータ領域のプロフェッショナルの常駐により企業のデータ活用を支援し、顧客ビジネス成果に貢献するサービスを提供。
2020年10月から株式会社メンバーズ執行役員兼務。現在カンパニーに所属するデータ分析のプロフェッショナルは約100名。
Twitter @EriShirai

2023年10月12日(木)に、株式会社データビークルとの共催セミナー データ分析業界屈指の専門家が明かす、失敗しないデータ活用組織のつくり方 を開催します。

seminar20230627

セミナー概要

セミナータイトル:データ分析業界屈指の専門家が明かす、失敗しないデータ活用組織のつくり方
セミナー概要:ビジネスでデータやAIの活用が進む中、多くの企業がデータサイエンティスト育成に取り組み、分析ツールに投資していますが、組織が上手く立ち上がらず、データ分析の成果もまだ見えてないという問題に直面しています。
このセミナーでは、データ領域プロフェッショナルの常駐により企業のデータ活用を支援するメンバーズデータアドベンチャーカンパニーと、数多くのデータサイエンス支援実績のあるデータビークルが、企業がデータを「役立つ」レベルまで活用するデータ活用組織のつくり方について解説していきます。

こんな方におすすめ:・データを組織内で効率的に活用する方法を摸索している方
・データサイエンティスト等の育成や分析ツールへの投資を検討しているが、具体的に進め方が見えていない方
・データ分析からマーケティング戦略までを考えたい方
日時:2023年10月12日(木)14:00~15:00
場所:オンライン
参加費:無料
お申込み・詳細はこちら:https://www.dtvcl.com/seminar-20231012-m/

登壇者紹介

白井 恵里(しらい えり)
Kawamura Haruka
株式会社メンバーズ 執行役員
兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長

東京大学を卒業後、株式会社メンバーズへ入社。
大手企業のオウンドメディア運用、UXデザイン手法での制作や、デジタル広告の企画運用に従事したのち、2018年11月に社内公募にてメンバーズの子会社(現、社内カンパニー)社長として株式会社メンバーズデータアドベンチャーを立ち上げ。
データアナリスト、データサイエンティスト、データエンジニアなどデータ領域のプロフェッショナルの常駐により企業のデータ活用を支援し、顧客ビジネス成果に貢献するサービスを提供。
2020年10月から株式会社メンバーズ執行役員兼務。現在カンパニーに所属するデータ分析のプロフェッショナルは約100名。Twitter @EriShirai

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