コミュニケーションが提案力のもと。マネーフォワードのパートナーとして、金融業界のデータ活用に貢献。画像1

株式会社マネーフォワードさまは、2012年に設立された日本のFintech(フィンテック)を牽引する企業です。「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに、家計簿・資産管理アプリ『マネーフォワードME』をはじめ様々な事業を展開しています。

Money Forward Xは、マネーフォワードの中で主に金融機関向けのサービスを提供するドメインです。BtoBtoB、BtoBtoC双方の領域でサービスを展開していますが、BtoBtoCの領域で手掛ける事業は主に2つ。
家計簿アプリなどのパッケージ化されたアプリをカスタマイズし、クライアント企業の個人顧客向けに提供する「ASP事業」と、ユーザーが持つ様々な金融機関のデータを収集するアグリゲーション技術などを活用したオリジナルのアプリをイチからクライアントと共に創る「共創事業」です。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、DA)は、数年前から同社に常駐を開始。共創事業でリリースしたサービスのデータ分析によるグロースハック支援に携わっています。
DAは、同社やクライアントとどのように関係性を築き、課題解決に貢献してきたのか。マネーフォワードエックスカンパニー デジタル推進本部 カスタマーアナリティクス部 部長の小野裕明(おの ひろあき)さま(写真右側)と、同社に常駐するデータアナリストの篠崎幹典(しのざき みきのり)さん(左側)に話を伺いました。

(取材日:2022年12月21日 取材・文:長岡萌以)

 

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マネーフォワードに寄り添った人材提案と迅速な対応がDAを選んだ決め手

――はじめに、DAの導入に至った背景をお聞かせください。

小野裕明さま(以下、敬称略) 私たちの共創事業では、クライアントと共にアプリを作って終わりではなく、リリース後にユーザーの行動データを見ながら改善していくグロースハック支援まで行っています。こうした活動を拡大するうえで、社内の人間だけでグロースハックのプロジェクトを回していくことが難しくなり、外部の方にサポートいただきたいと考えたことが導入のきっかけでした。
検討の際は複数の会社にお声掛けさせていただいたのですが、そのなかでも御社は我々に寄り添ってフィットしそうな方をご紹介いただけたことと、対応がとても速かったため、お願いすることにしました。

 

――今日お話しいただく篠崎さんの前任者も、DAの方だったと伺いました。

小野 はい、前任の方は分析力に長けている方でした。データ分析支援に携わる方は、分析力に長けた方とビジネス的な視点に長けた方に分かれると思っているのですが、前任の方は前者、篠崎さんは後者だと思います。もちろんどちらの能力もみなさん一定レベルは持ってらっしゃると思いますが、御社には様々な能力をお持ちの方がいると感じています。
元々は弊社メンバーだけで対応していましたが、ありがたいことに手掛ける案件が増え、手一杯な面がありました。私の部門ではグロースハック支援事業のほかに、ASP事業も担当しているのですが、なかなかASP事業の方に携わる時間が取れない状況で。DAにデータ分析の支援をお願いしてからは、バランスよく両方の事業にリソース配分ができるようになりました。

 

コミュニケーションを基に、目的に沿ったアクションを提案

――篠崎さんの現在のお仕事を教えてください。

篠崎幹典さん(以下、敬称略) 具体的な業務としては、ユーザー分析やダッシュボードの作成、定例ミーティングの資料作成等です。毎週開かれるクライアントとの定例会議に合わせて資料を用意するのですが、事前に小野さんと内容をすり合わせて、認識や、伝え方等についてフィードバックをいただき、修正・改善をしています。

小野 クライアントにはプロダクトを作る目的があります。それに対し今の状況や達成率、未達の原因といった点を分析し、改善プランを提案するのが私たちのミッションです。
入社当初、篠崎さんには、“この数字を抽出する”という作業単体で動いてもらうことが多かったのですが、今は目的を理解したうえで分析アクションの提案までしてくださるのでとても助かっています。

 

――篠崎さんは元々データ分析の経験がなかったとのこと。小野さまから見て、篠崎さんの成長や仕事ぶりはいかがですか?

小野 最初の面談でデジタル系サービスの分析経験がないことは伺っていたのですが、コミュニケーション能力が高く、ストイックに自分で勉強されている方なので、業務に必要な分析スキルはすぐにキャッチアップしてもらえそうだなと思っていました。
プロジェクトの途中から参加していただいたこともあり、分析スキルの獲得に加えて、プロジェクトの進め方や過去の経緯などのキャッチアップも必要だったので、最初のうちは多くの時間を使ってお互いの考えをすり合わせていましたが、数カ月経つ頃には篠崎さんに大部分をお任せできるようになりました。いまでは直接クライアントとやり取りもしていただいていて、環境適応の速さに驚きつつ大変感謝しています。

篠崎 ありがとうございます。小野さんはそうおっしゃってくれますが、私は元々コミュニケーションには自信がなかったんです。相手の言っていることを正しく理解できているのかどうか自信がなくて。それに加え、業務はテレワークが中心になるため、なるべくコミュニケーションの量を増やすことで、小野さんの考えを理解するように努めました。

小野 会社同士の受発注の関係ですと気を遣って、質問などをしにくいという場合もあるかと思います。ですがDAの方は篠崎さんも前任の方も、会社の垣根なくコミュニケーションをとってくださいます。
篠崎さんは積極的に、「今回のプレゼンは何点でしたか?」とか「ここはどういう意味で言っていたか、伝わっていましたか?」といったことを聞いてくれるんです。
プロジェクトは、関係者全員が社内外の区別なく1つのチームとしてまとまってこそ成功するものだと思うので、DAさんはチームに溶け込んでくれるところがいいなと感じています。

篠崎 小野さんにプレゼンの点数を聞くことは、小野さんの考え方を理解するのに役立つんです。たとえば点数が60点だった場合、残りの40点についてフィードバックをいただいて、認識のすり合わせをすることで小野さんの考えを理解して、次のアクションに活かすことができます。

 

――では、最近のプレゼンの点数は……

小野 もちろん、とても高いですよ! 最初は緊張でガチガチでしたし、資料もだいぶ手直しさせていただいていました(笑)。

篠崎 今でも覚えているのは、分析チームの方針を決める初期の打ち合わせのときに、小野さんにイメージを頂いてつくったものが大外れで、かなり修正したことです。自分の力不足を痛感しました……。

小野 いまは大きな修正はありません。目的を理解して、ご自身で考えて動いてくださっています。

 

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「やりたいことをぼんやり伝えれば、何を分析すべきか考えてくれる人」としてクライアントからの信頼を獲得

――そうした成長の裏には、ご自身で勉強される努力もあったとのことですが。

篠崎 コミュニケーションを重視する一方、分析スキルは努力で補おうと考えていました。なので、DAのPCを使ってSQLの練習をしたり、自分が興味を持ったプログラム言語を業務に活かせないか、効率化できないかといったことを模索していました。
特に分析スキルは前任者の強みだったため、まずはそこに追い付こうと。その次は小野さんの言っていることを理解する、という段階を踏んでいきました。

小野 一緒に働き始めて三カ月くらいで、同じ視点で議論できるようになりました。入社前の期待値と実際の活躍が良くない意味で乖離してしまうことはあると思うんですが、篠崎さんは期待値を超える活躍をしてくれています。
分析スキルが高いメンバーは他にもいるので、高度な分析はそのメンバーに振ることも想定していたのですが、基本は篠崎さん一人で担当していただいています。

 

――クライアントと篠崎さんとの関係性はいかがですか?

小野 やりたいことをぼんやり伝えれば、何を分析すべきか考えてくれる人と認知してくれていますよね。「この数字が見たい」といった細かいオーダーではなく、篠崎さんにテーマを伝えれば提案してくれると思ってもらえているなと。
マネーフォワード、DA、クライアントが信頼感を持ってチームとして連携できています。それは篠崎さんのアウトプット量はもちろん、一緒にしっかりと話し合いをしてきた結果です。

篠崎 最初は前任者からの引継ぎだったため、先方に信頼していただけているのかが不安でした。ですが小野さんのご支援もあり、いまは信頼感を持ってもらえるようになったと感じます。

――そんな篠崎さんのご活躍もあり、DAからもう1名データアナリストを追加いただけることになったと伺いました。

小野 同じチームの一員として意見を言ってくれる篠崎さんを見て、次にデータ人材を増員する時もDAにお願いしようということになったため、新しくアサインさせていただきました。いま篠崎さんが入っているプロジェクトには、プロダクトの開発やデザイナーチームのメンバーもいるのですが、篠崎さんはそうしたメンバーとも密に話してくれています。篠崎さんの仕事ぶりは他部署のメンバーも知っているので、追加にあたっては社内の納得感もありました。

 

――具体的に、篠崎さんがしてくれた提案や、篠崎さんが入ったことで起きた変化等があればお聞かせください。

小野 最近は、「次は何を分析するべきか」という点を考えてくれています。最初はアウトプットのクオリティを高めることに注力していたのですが、徐々に、プレゼンに組み込む提案内容や、分析チームとして次何をすべきか、といったことも意見をくれるようになりました。チームとしての活動について篠崎さんと意見交換ができるようになったことで、プロジェクトの質が上がったと感じています。

篠崎 ありがとうございます。でも、自分ではまだまだ上を目指したいと思っています。
提案にも、スピード重視のアイデアからじっくり考え込まれたものまで、様々なレイヤーがあると思うのですが、それを高めていくことが来年(2023年)の目標ですね。

 

社員の一員としてチームを拡大し、会社や業界全体の目標に貢献

――来年の話が出ましたので、小野さまから、今後の篠崎さんやDAへの期待をお願いします。

小野 データ活用に取り組めていない企業が世の中には多くあるので、当社としては、グロースハック支援をどんどん行っていきたいと考えています。その際はぜひ、篠崎さんのような方に入っていただき、共にチームを拡大していけるといいですね。マネーフォワードとDAで、金融業界の支援をしていきましょう。
また、現在は私がプロジェクトのゴールや指標の設計を行っているのですが、それができる方もいるといいなと思っています。

 

――いまの小野さまのお話を受けて、篠崎さんはいかがでしょうか。

篠崎 個人目標は先程の通りですが、いま小野さんがおっしゃった会社や業界全体の目標に私も貢献していきたいです。データを活かせていない、データ活用の取り組みが進んでいない企業さまやユーザーの皆さまに対しても、マネーフォワードさまとともにデータ活用を広げていきたいです。それがこの業界に携わる者の責務だと感じます。
そのためにもまずは自分のスキルを高め、いま小野さんが担っていることを私ができるようになり、小野さんにはさらに活動の幅を広げていただけるといいのではないかと思っています。

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より便利で、より豊かな都市生活・顧客体験の実現を目指し、都市OS「ヒルズネットワーク」の構築を推進。画像1

「都市を創り、都市を育む」を企業理念に掲げ、長期的視野に基づいた街のグランドデザインを描く森ビル株式会社さま。六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズ、表参道ヒルズなどの開発・運営で知られ、 近年では、より便利で豊かな都市生活を実現することを目的とした都市OS「ヒルズネットワーク」の運用で注目される同社に、メンバーズデータアドベンチャーカンパニー(以下、DA)は、2021年10月からデータ人材の常駐サービスを提供しています。

都市のデジタルプラットフォームとして街(ヒルズ)の膨大なデータやサービスを統括し、さらに複数のヒルズを連携させることで新たな顧客体験の創出を目指すこの壮大な取り組みに、DAはどのような形で貢献しているのか。 タウンマネジメント事業部の北尾真哉さま(写真右から2番目)、同・齋藤理栄さま(右端)、同・中嶋俊幸さま(左端)、DA所属のデータアナリスト高橋昭平さん(左から2番目)にお話を伺いました。

(取材日:2022年12月5日 取材:友清 哲)

 

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都市の機能を進化させる「ヒルズネットワーク」

――まずは都市OS「ヒルズネットワーク」とはどのようなものか、簡単にご説明いただけますか?

北尾 より便利で、より豊かな都市生活・顧客体験を実現するためのデジタルプラットフォームです。お客様にヒルズをどれだけ楽しんでいただけるか、どれだけ便利に使っていただけるかという観点を大切に開発しました。

森ビルが手掛ける事業領域は、オフィスや住宅、商業施設、ホテル、文化施設など多岐に渡ります。しかしこれまでは、それぞれの部門ごとに独立した顧客情報を元にサービスを提供していたため、たとえば、ヒルズで住み、働き、商業施設もよく利用されるといった複数の属性をお持ちの方にシームレスなサービスを提供することが難しい状況でした。ヒルズネットワークにより、そのような10年以上前から感じていた課題を解決し、より豊かな都市生活・顧客体験の実現を目指しています。

 

――たとえば六本木ヒルズだけでも、年間に約4000万人もの人流があると言われます。デジタルによってマネジメントすることで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか?

北尾 最もわかりやすいのはヒルズネットワークと同時にリリースしたヒルズアプリです。各事業部門がそれぞれ別々のIDで提供していたサービスに、ヒルズIDという共通IDでシームレスにログインできるほか、飲食や購買に応じてポイントを溜めたり、属性に応じたベネフィットを利用したりといった、さまざまなサービスを受けることができます。

また、ヒルズアプリで得た利用者の属性や施設の利用状況といったデータを活用することで、利用者一人ひとりに最適化した情報をお届けできることも、こうしたアプリを運用する大きなメリットでしょう。

さらにヒルズ内の法人企業に対しては、福利厚生をこのアプリひとつで賄うことも可能です。たとえばヒルズ内での飲食代やフィットネスジムの利用料、美術館の入場料の補助を出したりと、自社で福利厚生施設を持たなくてもサービスを運用できるわけです。

中嶋 コロナ禍によるリモートワーク化で、社員間のコミュニケーション不足を課題とする企業も昨今は少なくありません。その点、こうしたサービスがコミュニケーションを促すきっかけになる側面もあると思います。

 

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他部署からも頼りにされる強力な助っ人に

――こうした仕組みを運用する上では当然、膨大なデータが発生します。そこでデータを取り扱える人材の出番ですね。

中嶋 そうですね。各事業領域のデータは当然各部署が扱いやすいように保持されており、これを統合して活用するには、バラバラなデータのフォーマットを整えたり、必要なデータを持ってきて“見える”状態にする作業が必要です。作業量で言うと、これが7~8割方を占め、残るリソースでそれを分析し、仮説や施策に落とし込んで社内にアウトプットする、というイメージだと思います。この最初の7~8割の部分を社員だけで行うのは現実的ではなく、外部リソースの支援を検討していたところ、ご紹介いただいたのがDAさんでした。

 

――多くの事業者がいる中で、DAとの取引に至った決め手は何ですか?

中嶋 端的に言えば、柔軟性です。こちらが求めるオーダー(スキル)に対して、まず複数の候補者と実際に面談をしましたが、決して押し売り的ではなく、「もう少し待てばこういう人材も用意できるかもしれません」「もし契約後にミスマッチがあればまた別の方に変更することも可能です」と、我々の意図に極力寄り添ってくれるスタンスを感じました。

言葉を換えれば、これは意思決定のボールを常にこちらに渡してくれているコミュニケーションでもあって、こちら側の心理としても非常にありがたいんですよ。一度契約したら「3年間は解除できません」みたいなことでミスマッチがあった際には困ってしまいますから(笑)。

それに何より、実際に面談でお会いしてみて、高橋さん(※DA・高橋昭平)が森ビルが目指す世界観と、そのために実際に積み上げていく業務がどのようなものかを、的確に理解していただいていると感じたことも大きいですね。

高橋 私としても、ばらばらに存在していたデータを一元管理することで新たな体験価値を生むというのは、もともとぜひ手掛けてみたかった仕事の1つでした。こうした作業はゴールがあるものではないと思っていますが、ヒルズを訪れる皆さんに少しでも便利に楽しんでもらえるよう、頑張っていきたいですね。

 

――ここまで1年強の期間を経て、高橋に対してどのような評価をされていますか?

齋藤 タイトなスケジュールで無茶なお願いをすることも多いのですが、いつもスピーディーに動いていただき、こちらの期待以上にわかりやすい形にしてアウトプットしてくれるので、本当に助かっています。この1年、膝を突き合わせてコミュニケーションを重ねてきたことで、やり取りはさらにクイックになっているように感じます。

中嶋 たしかに、一緒に働いている私たちからすると、たまに高橋さんが他社の社員であることを忘れてしまうくらい、密なコミュニケーションが取れていますね。今では弊社の他の部署からも頼りにされている、強力な助っ人です。高橋さんも、たぶんそういう感覚ですよね?

高橋 そうですね。たまに、自分の本来の所属先がわからなくなることはあります(笑)。

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ヒルズネットワークのさらなる進化に向けて

――そうした体制で運営されるヒルズネットワークについて、ここまでの成果をどう捉えていますか?

北尾 ヒルズアプリを実際にかなりの方に使っていただけていることが、第一の成果です。年間の商業施設利用額が高いお客様でいえば、すでに大半の方にご活用いただいており、データの活用が進んで適切なマーケティングを実現したことで、お客様はもちろん、商業テナント様にも森ビルにとっても、良い効果をもたらしていると実感しています。

また、弊社の中では、データをメインに取り扱う部門以外でも当たり前のようにBIを見る習慣が生まれてきていることも大きいですね。データの見える化が進んだおかげで、他部署間でも同じ情報をもとに議論することができ、社内のコミュニケーションや意思決定も当然クイックになりますし、社内横断的な取り組みも進めやすくなりました。

 

――ヒルズネットワークは今後、どのように発展していくのでしょうか?

北尾 現在、六本木ヒルズと虎ノ門ヒルズの間に位置するエリアで麻布台ヒルズの開発を進めていて、2023年に竣工・開業する予定です。我々としてはつまり、六本木・虎ノ門・麻布台という連携した1つのエリアが生まれることになります。

そこでは、ヒルズ毎に個別にアプリやサービスが存在するのではなく、ヒルズを超えた新たな経済圏が誕生するため、自ずとヒルズネットワークの適用範囲も拡大されます。その分、これからさらにデータ量は増えますから、データ人材が必要な領域もいっそう大きくなるでしょう。

 

――そうした壮大なビジョンの中で、今後、高橋やDAに期待される役割は何でしょうか?

中嶋 この1年間は、来年開業する新しいヒルズも見据えて、データの活用と施策の実行・フィードバックのサイクルをトライアンドエラーで進めつつ、膨大なデータを社内で見える化するという、環境整備にも注力した期間でした。今後は、新しく開業するヒルズも含めた様々なデータが新たに加わることになるので、今まで以上に施設間、ヒルズ間の連携を促すようなデータの活用も考えていきます。

そこで必要なのは、データだけでなく、各事業のビジネス領域の特性や課題等の正しい認識と、それを元にどのような施策を打ち出すかというアイデアです。ヒルズネットワークを深く理解してくださっている高橋さん、DAさんにはぜひ、今後はそうした活用の部分も含めたさらに広い領域で伴走していただきたいです。結果的にそれが、我々が目指すより豊かな都市生活の実現に繋がると考えています。

 

【導入事例】「これまでWEB受付は難しいと思っていた」。コロナ後、「auでんき」は、DXをいかにして進めたのか?画像1

KDDI株式会社さまが展開するサービス、「auでんき」。auユーザーのためのサービスであり、「電気料金そのまま、ポイント加算システムで、今の電気料金より実質高くなることはない」ということをアピールポイントにしておられます。

一方で、累計契約者数約6,012万900人(2020年12月末時点)というメガブランドゆえ、データの集約と分析に課題を抱えておられる部分もあったようです。

どのような課題があり、メンバーズデータアドベンチャーはどのように解決を試みたのか? 同社パーソナル事業本部サービス統括本部エネルギービジネス推進部課長補佐・谷徳愛さま(写真中央)、同部課長補佐・澤井秀高さま(右端)、同部・原田みな美さま(右から2番目)、同社サービス統括本部UXビジネスプロセス企画部課長補佐・牧田起世子さま(左から2番目)、メンバーズデータアドベンチャー所属のデータアナリスト陳さん(左端)にお話を伺いました。

(取材日:2021年4月5日)

 

【導入事例】「これまでWEB受付は難しいと思っていた」。コロナ後、「auでんき」は、DXをいかにして進めたのか?画像2

 

コロナ禍まで「WEB受付は難しい」でした

――まずは、メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)が支援に入るまでの御社の課題について教えてください。

KDDI谷徳愛さま(以下、KDDI谷) その説明に入る前に、「auでんき」というサービスについて説明させてください。

2016年4月に始まったauでんきは、いわゆる「説明商品」と考えていました。auショップ店頭にお客さまが来店され、ショップスタッフがサービス内容を事細かに説明しないとお申込みいただけないサービスと思っていました。

基本的に我々としては「店頭でしかお申込みいただけない、WEBでのお申込みは難しい」という認識でした。当然、WEBからどうやってお客さまにお申込みいただくか、そもそもどうやって認知いただくか、という意識が全くない状態でした。

それが、今回のコロナ禍において、お客さまにご来店いただくことが一気に難しくなりました。そうするとWEBからの導線が重要となり、改めて「どうすればWEBからのお申込みを認知いただくか、また申込みいただきやすくできるか」と考えるようになり、陳さんにアドバイスをもらいながら改善を始めたのが経緯ですね。

 

――当時、データを専任で扱う担当者の方はいらっしゃいましたか?

KDDI谷 当時はWEBとアプリを同じチームで担当しており、Google Analytics(以下、GA)を使って実績は取得していましたが、担当者が日次の実績をエクセルに貼り付けて展開している状態でした。その担当者以外に実績を取得できる者はおらず、全体的にデータへの意識が低い状態でした。

KDDI牧田さま(以下、KDDI牧田)「サービス統括本部」では、お客さまのライフスタイルに応じて様々なサービスをご提案するために各サービスの企画・運営を行っていますが、各サービスにおいて、改善をおこなうグロース活動の取組ができていないことが課題でした。2020年度上期からUX・ビジネスプロセス企画部でグロース活動に取組むチームを組成し、サービスグロース活動(UX改善によりユーザーのベネフィットを高め、サービスの継続的な成長を実現する活動)への理解と浸透の取組を始めました。

グロース活動に取組むチーム組成にあたり「グロース活動を推進できる知見・経験を持つ人材が必要である」、というところから貴社にオーダーを出したということですね。

 

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ドメインをまたぐデータ取得を、どうやって実現させたのか?

――そこでメンバーズDAから陳さんが派遣され、牧田さまと陳さん、エネルギービジネス推進部から谷さま、GAを使える派遣社員1名というチーム体制になったのですね。最初は、どういうことから着手されたのですか?

メンバーズデータアドベンチャー陳(以下、陳)最初は、サイトの理解から始めました。まず谷さんにヒアリングシートを送り、サイトの目的、KPI、活用媒体、ドメイン、サイトの範囲など細かくヒアリングさせていただき現状把握から、課題抽出を行いました。

取り掛かるべき課題は2つありました。1つは「GA上でデータが分断され、ユーザーの一連の行動データ(流入〜回遊〜CV)が取れない」ことでした。

もう一つの課題は、「WEB改善のPDCAサイクルを回す体制がない」ことでした。WEB上での申込数向上を意識して取り組んでいなかったため、必然的な課題でした。

KDDI谷 先ほど申し上げたとおり、これまでGAで「ユーザーの一連の行動データが取れる」と言う認識がありませんでした。また当時は陳さん、牧田さんから「KPIは何ですか?」「この数字がほしいです」といった依頼が来ても回答が遅くなることもあり、結果プロジェクトのスタートがどんどん遅れてしまいました。振り返るとデータ取得への意識の低さが現れていたように思います。

 でも、今はレスポンスがとても早くて助かっています。

 

――ありがとうございます。その後、クロスドメイントラッキングについて着手されたのですね。

 そうですね。私が入る1年前ぐらいにも着手しようとして、その時は頓挫したと聞いています。

KDDI牧田 当時の担当者が過去にクロスドメイン設定を試みて社内で相談したそうですが、結果「できない」と回答が来てしまい、相談相手が陳さんほどの知見を持っていなかったから、クロスドメイン設定が進まなかったのだと思います。

 当時実現できなかった理由としては「auID」ページにはGAが設定されているのですが、そのページをクロスドメインの設定範囲に入れると、「auでんき」と「auID」に関するデータをGAで2重計測することになり、課金もダブルで発生することになります。さらに1つのサービスを対応させると「他のサービスも同様に対応してほしい」となり、計測費用が嵩張る懸念もあり、安易にauIDをクロスドメイン設定範囲に入れることはできなかったと思われます。

どのように課題を解決したかというと、「auID」ページに「auでんき」のGAを入れず、クロスドメインで「auID」ページを通過したセッションが切れないように設定して解決しました。

 

――auIDのページを迂回して、「このセッションは別サイトに行っているわけではないよ」という設定をしたのですね。

 そうです、参照元を除外しました。恐らく、当時の担当者はそこまで踏み込めなかったのではないかと思います。

 

――今回のクロスドメイン設定により一連のユーザーの行動データが取得できる環境が構築されたことは見方によってはDXが達成できたとも言えますね。

 そうですね。DXの定義にもよりますが、一歩前進したのではないかと思います。

 

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部署全体のデータに関する意識が高まった

KDDI谷 クロスドメイン設定をしたのは、大きな転機だったと思います。それまでは「ユーザーの一連の行動データは取得できないもの」という前提で考えていました。実現するには何かしら費用をかけて作り込む必要があると思っており、諦めていました。

陳さんに実現してもらったことで、「実は簡単にできるじゃん!」と気づき、その結果これまで申込み数の結果しか見てこなかった人たちが、他の部分(遷移率や離脱率)まで関心を示し始めたことがエネルギービジネス推進部の本部内に現れた、大きな変化だと感じています。

 

――ありがとうございます。陳さんは、他にもいろいろな課題を解決されたようですね。例えばLPのコンバージョンレートの改善や、Googleデータポータル(以下、GDP)を構築して、年間の作業時間を260時間削減したとか。

 そうですね。最初にプロジェクトで提案したのは、クロスドメイン設定だけではなく、並行して最低限のPDCAを回さないといけないと思っていました。
まずは「お得割キャンペーン」の解析を行い、追従型コンバージョンボタンを設置したことでコンバージョンレートを大幅に改善しました。

またGAの実績更新作業に課題があることを聞きましたのでGDPを構築しリアルタイム解析できるようにしたらすごく好評でした。

 

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 下期では申し込みフォームの解析を行い、いくつか改善案を出してABテストを行なった結果、200%ほどの改善率になりました。他にも、「auPayアプリキャンペーン」も2回ほど改善提案をさせていただき、最終的に128%の改善率を達成しました。

これまでWEB改善のPDCAが回っていなかったので、GAの指標の定義が組織内で共通認識されておらず共通言語を持ったほうが良いと考え、GAのレクチャーとGDPのレクチャーを3ヶ月で計10回行いました。
レクチャーを行ったことで組織内のレベルアップに貢献できたと思います。

 

――すごいですね、かなり盛りだくさんですね。

 他にも業務基準書を2つ作成しました。1つは、サイトまたはLPページ公開した際のデザイン、コーディング、GA関連の設定やSEOチェックなどの手順書で、2つ目は施策実績表です。今まで過去のデータが蓄積されていないと伺いましたので、今後施策を企画・実施する時に目標設定や稟議申請前の参考値として活用できるよう「過去のデータから試算できる」仕組みを提案しました。

 

――皆さんから見て、陳さんがプロジェクトに入ったことでどのような変化があったか教えて下さい。

KDDI谷 そうですね、全体の実績をGDPで見られるようになったのが大きいですね。
先ほど年間260時間の作業時間削減という話もありましたが、GDPを設定いただいたことで、その実績更新作業をしていた担当者は別の業務に時間を割けるようになり業務効率の向上にも繋がりました。
さらにエネルギービジネス推進部約50人がGDP閲覧可能となったことで、WEBからの申込数の関心が高まりました。これが、最も大きな効果だと感じています。

KDDI澤井さま 私と原田は、2021年1月からauでんきの担当になりました。通常はユーザーの行動データをもとに施策や販促を検討していくのですが、これまでベースとなるデータが全く取れていなかったことに最初は驚きました(苦笑)。UX観点からお客さまがどれぐらい使って、こういう行動をする、だからこのような施策が効果的であろうと仮説が立てられない状況でした。
でも、陳さんがプロジェクトに参画してから、我々1月異動組から見ても部署全体が「データ」への興味関心が高まり「GAどうなってる?」「昨日の数字は?」という会話が日常で明らかに増え、数字を意識し始めてる空気感は如実に感じました。
また陳さんはレベルの高いスペシャリストなので、私も含め素人が見ても分かるようなGA・GDPのマニュアルを作成してくれたのですが、素人目線にレベルを合わせて情報を落とし込むのは大変な作業だったと思います。

 

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「業務効率化に貢献した案件として社内表彰」された理由

――今回グロースチームが、「業務効率化に貢献した案件として社内表彰」されたと伺いました。社内でも高い評価を受けている証だと思いますが、お二方から見た陳さんへの評価をお聞かせください。

KDDI牧田 表彰については解析環境の構築から、LPの改善、また定量的な成果に繋がったこと、GDPの構築による業務改善が評価されました。
この取組については、陳さんの功績がとても大きいです。

メンバーズDA・白井 陳がやっていることは単に担当者としてDXを実行していくにとどまらず、KDDIさんのデータ活用文化を底上げし、延いては御社の競争力の底上げに寄与している部分もあるのでしょうか? 聞き方としてやや欲目が出ていますが(苦笑)。

KDDI牧田 あると思います。社内の課題として、各サービスのグロース活動を定着させていきたいと思っています。そのためには、ユーザーの一連の行動データが取得できる環境があってこそ成り立ちますので、でんき以外のサービスで環境構築が出来ていないサービスがあればサポートを行い、取得したデータを分析して当たり前にPDCAサイクルが回せる環境にしていきたいと思っています。
引続き、陳さん、メンバーズDA様にはUX部と共にサービスグロースの理解と浸透活動にお力添えをいただきたいと思っています。

 

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株式会社トラストバンクさま。2012年4月に設立され、国内最大級のふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営。ガバメントクラウドファンディング®(GCF®)などのwebサービス、様々なイベントなども実施しているIT企業です。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2020年から同社に常駐サービスの提供を開始。データ基盤の構築や整理だけでなく、需給予測などのアウトプットやデータに関わる組織設計・チームビルディングでも貢献しました。

膨大なデータを課題にした時のゼロからの取り組み方やチームの作り方について、ふるさとチョイス事業本部長・和田正弘さま(写真左)、同事業戦略部部長・勝伸司さまにお話を伺いました。

(取材日:2020年10月2日 取材:澤山モッツァレラ 編集:長谷川翔一)

 

経営に「サイエンス」を加えるために

――以前までのデータ活用には、どんな課題があったのでしょうか?

和田 膨大なマーケティングデータがあったものの、それを活かしたアウトプットがなかったことです。「いつ・どこに・どんな」寄付がされたか、そこから逆算した年収予測といったデータはあったのですが、全体観をもって分析し、アウトプットまで落とし込めていなかったんですね。

2019年頃から、弊社はデータに基づいたマーケティング活動や企業運営に取り組んでいます。それまでは「アート&サイエンス」であるべきバランスが、過剰にアート寄りになっていました。より「サイエンス」を作っていく方向を加えるために、データ志向になりました。

ただ、スタート時点ではSQLを扱えるエンジニアが1人しかおらず、専任部署もない状態でした。エンジニアもデータ解析が専門というわけではないので、抽出したデータをどう管理し、どう分析するのか知見もありませんでした。

そこでメンバーズDAから山枡大地さんに来ていただききました。チームは山枡さんとこの分野の経験の浅いメンバーの2名で、彼を中心にチームを作ってきた感じですね。

 

――どんなことから取り組んだのでしょうか?

和田 まずは、データ抽出の前の基盤整理から取り組んでもらいました。

まず、セキュリティを担保するため、個人情報とマーケティングデータを切り分ける必要がありました。設計時のリスク分析について、社内エンジニアと一緒に取り組んでもらいました。共同作業でしたが、非常にスムーズにできたと思います。

 

 

山枡さんの「野心」に惹かれました

――メンバーズDAと接点を持ったきっかけは何でしたか?

和田 営業メールです(笑)。本当に、ちょうどいいタイミングでメールを見たのがきっかけでした。

メンバーズDAさんからのメールで「こういうサービスをやっていて、こういう人材がいます。例えば、こういう人をアサインできます」というご提案があり、その中にいたのが山枡さんでした。

 

――山枡さんについて、どういった点を評価されていますか?

和田 野心的な面ですね。膨大にあるデータの活用について、「自分が何とかする」という野心的な姿勢を最初から持っていました。良い意味で生意気だな(笑)と思いましたし、最初の1人としては理想的なメンバーだと感じましたね。

山枡さんは「データを活用すると、こんなことができます!」と、最初にアウトプットから着手してくれました。通常、新しく立ち上げた部署はアウトプットまで時間がかかると思います。アウトプットから逆算して着手してくれたことで、「あの部署、何をやってるの?」とはならなかった。これは、山枡さんのおかげですね。

 

 

吉川さんは、事業貢献を強く考えている方。

――もう一人の常駐メンバー、吉川寛さんの評価はいかがでしょうか?

和田 吉川さんは、経営企画や事業企画の視点を持っているデータアナリストだと思います。「事業計画をどう立てるか」「数値を作る際に、ユーザーデータをどう活用するか」「KPIをどう分解するか」など、ビジネス観点で組織を見られるのが強みだと思います。

現在はマネージャーのような役割で、事業単位・会社単位でデータに関わる組織設計を構築いただいています。山枡さん同様、得がたい人材だと思いますね。

 

――山枡さんが分析基盤を作り、吉川さんがデータマネジメントをやっている分担なんですね。吉川さんについて、「こういうところが助かっています」というものはありますか?

 経営企画や人事などコーポレート領域を見てきた人なので「データ単体ではなく、組織の中でどう活用するか」を考えられる部分ですね。例えば、データマネジメントチームを作る時に提案してくれた目標設定や意見は、非常にわかりやすかったです。

 

――人物的な面で、印象に残っている部分はありますか?

 お会いする前は「ゴリゴリにデータを扱って、最新技術でモデルを構築する方が来るのかな」と思っていました。実際には会社の業績をいかにドライブさせるか、その観点から有益なデータを作り「事業の役に立ちたい」と強く考えている方でした。良い意味で、予想を裏切られましたね。

和田 山枡さんがアウトプット志向を強め、「こういうことができる」が見えてきたところで、吉川さんは「どう体系的にアウトプットするか」「どこに出すのか」を整理してくれました。山枡さんのデータサイエンティスト的な観点と、吉川さんの組織的・事業的な観点がうまくかみ合っていると思います。

 『ふるさとチョイス』というプラットフォームの特性上、トラストバンクがデータを扱う上でのミッションは、

・ユーザー側のデータをどう作り、基盤をどう構築し、マーケティングにどう活かすか
・自治体側のデータをいかに利用し、自治体に新しい商品やサービスを開発するか

という二点があります。ユーザー側と自治体側双方のデータを取得する必要があり、必然的にデータ量が多くなるため、張り付きで担当できるデータサイエンティストと、組織の中でのミッション設計をする人が必要だったということだと思います。

 

 

「見える化」が一番の成果。

――数字的な成果はありましたか?

和田 部署として具体的な数字は追わないのですが、いろいろな部門のマーケティングの需給予測やデータ基盤の整理などが成果として大きいですね。

大きな成果としては、Tableauを通じて見える化できるところまで来たのが一番かなと思います。このTableauの導入も、山枡さんに担当いただきました。

 

――山枡さんからの提案で、印象に残っているものはありますか?

和田 ふるさと納税の需給予測ですね。今年は新型コロナの影響もあり、これまでよりも寄付が増えています。しかし、その増加は例年よりも寄付の時期が早まっている可能性もあります。例えば去年12月に寄付していた人が、前倒しで寄付しているケースといったものです。

寄付の増加が例年より早いのか「新しいユーザー」なのか、はたまた「これまで上限まで寄付していなかった人が額を増やした」のか、「他社サービスから移動してきた」のか、そういった緻密な分析をゴリゴリ見える化してくれて非常に助かっています。

 

 

今後、メンバーズDAに期待すること

――今後、メンバーズDAに何を期待していますか?

和田 期待することは、山枡さん吉川さんをアサインし続けていただくことですね。一番嫌なのは「2人を戻して」と言われることです(笑)。

 今は、当たり前のレベルに取り組んでいる段階です。次は「どんなデータを見るべきか」「気象データなど外部データとの組み合わせから、こういう示唆ができる」といった提案を期待しています。

和田 データを活用したアウトプットに、より軸足を移すことを期待しています。例えばサジェストやリコメンド、アルゴリズム設計などで「ユーザーへの最適な答えをどう返していくか」という部分ですね。

ふるさと納税の場合、通常のECに比べて行動分析やペルソナを通してインサイトを知るのは難しい部分があります。ふるさと納税では、

・欲しいものを選ぶ
・地元に寄付する

とインサイトが分かれます。単純にユーザーモデルに落とし込もうとすると

・お得なものを追求する層
・地元に貢献したい層
・社会貢献したい層

という別々のペルソナができるのですが、この3つの行動が実は同じ人だったということはよくあるんですね。

「お得なものがほしいけど、それだけでは寄付の上限額が余る。余った分を地元に寄付するけど、まだ余る。調べてたら、競走馬のセカンドキャリアを作るというGCF(ふるさと納税制度を活用するクラウドファンディング)をたまたま見たので、残りを全額寄付する」といったケースがあります。

ユーザーが「どのタイミングで、何を欲していて、どんなユーザー行動や意思決定をするか」をペルソナモデリングで定義するのは難しいと考えています。

シナリオベースでは、本当に顧客を見ていくことはできないと考えています。データの活用や分析だけよりも、具体的なアウトプットから見ていく方向に期待しています。

和田 あとは、山枡さんにずっと聞きたいことが一つあって。なんでリモートの壁紙が猫なんでしょうね?

 

――会社のアイコンも猫です(笑)。Twitterも猫ですし、しかもそれぞれ違う猫なんですよ。

和田 それ、記事の最後に載せておいてください(笑)。

株式会社AOKIホールディングスさま。「洋服の青木」として1958年に創業され、現在はビジネスウェア専門店「AOKI」「ORIHICA」、ウェディングの「アニヴェルセル」、シェアリングスペース「快活CLUB」、カラオケ「コート・ダジュール」、セルフフィットネス「FiT24」など約1,300の店舗を運営する企業です。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2019年から同社に常駐サービスの提供を開始。分散していたデータを統合し、マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入支援や購買・顧客満足度データを分析、経営層から現場まで会社全体がデータに注目する文化作りに貢献しました。

経営層や現場への提案・アウトプット事例について、同社デジタル・CRM推進室の吉田亮氏(写真右端)・高木優氏(同右から2番目)、比嘉真鈴氏(同右から3番目)、同社に常駐しているデータアナリストの岩間祐樹さん(左端)・大坂冬子さん(左から2番目)に伺いました。

(取材日:2020年10月23日 取材:澤山モッツァレラ 編集:長谷川翔一)

 

データの重要性を、誰も認識していなかった

――メンバーズDAが入るまで、御社にはどのような課題があったのでしょうか?

AOKIホールディングス・吉田さま(以下、吉田) データがブラックボックス化していたことですね。すでにBIツールに取り込まれている情報は表示できますが、それ以外の出力は外部ベンダーに依頼する必要がありました。データ自体もどんな状態で、どこに保存されているかわからない状況だったんですね。

メンバーズDAさんの岩間さん・大坂さんが来てからは、スピーディーにデータを取り出せるようになり、分析の精度も格段に上がりました。

――そもそもデータの分析基盤が存在していなかったのですね。以前はどんな体制だったのでしょうか?

吉田 基本的に専任担当がおらず、情報システム部がなんとなく担当している状態でした。データはどこにあるのか、どこに集約して分析するのか、管理できていませんでしたね。

2016年にはSalesforceのMAツール「Salesforce Marketing Cloud」を導入、必要なPOSデータや顧客データなどを集約することになりました。ただ、同サービスはもともとデータ保管を目的としたものではないため、出力に時間がかかっていました。

そこで、岩間さんと大坂さんから「BigQueryを使えば、簡単に出せるようになりますよ」とご提案いただきました。今、ほとんどのデータはBigQueryで管理できています。

 

――専任の担当がいなかった理由はなんだったのしょうか?

吉田 誰もデータの重要性を認識していなかったことですね。「できないからしょうがない」と諦めていた部分もあります。集客施策も基本的にチラシと紙のDMで、分析もシンプルな指標しか注目していませんでした。

 

 

「オールマイティな人がほしい」とリクエスト

――メンバーズDAとの接点は、いつ頃生まれたのでしょうか?

吉田 MAを回すチームが形になり、データ回りを整理する必要ができたタイミングですね。

加えて、アプリを通したコミュニケーションの改善のために「もっとデータをきれいな状態にして活用しやすくした方がいい」となり、「それなら顧客単位でデータを集約して分析できないか」と相談したのがきっかけです。

 

――当時、どんなリクエストをしたのでしょうか?

吉田 「オールマイティな人がほしい」とリクエストしました。何をどうやっていいかわからない状態でしたので。

データの受け皿を作り、散らばっているデータを集め、構造を整理しながらデータを格納した上で、さらに「こういうデータがある」「こういう施策をした方がいい」という起案までできるオールマイティな人ですね。

 

――そうしたリクエストを踏まえて常駐に入った岩間さんは、当時の状況をどう感じましたか?

メンバーズDA・岩間祐樹(以下、岩間) 「想像以上に散らばっていた」という感じですね(笑)。事前面談で「データがない・整備されていない」状況は伺っていたんですが。データがあっても、各ベンダーさんでブラックボックスになっていて。説明すれば最終的には連携してくれるのですが、時間がかかりすぎる状態でした。

 

 

衝撃的だった、経営陣への提案

――岩間さんから受けた提案で、印象に残っているものはありますか?

吉田 最初に衝撃的だったのは、経営陣への提案でした。

競合他社が大々的なキャンペーンを始めた時、追随して同じような施策を打ったことがありますが、成果が全く出なくて。売り上げを落とした層を分析すると「ロイヤルカスタマー層がごっそり減っている」と指摘されました。

「実施前に分析しておけば、やらない方がいいとわかっていたはず。何をしているんですか?」と言われて。みな黙り込んでしまいました(苦笑)。

それ以降、競合の動向に一喜一憂せず、データを見つめて適切に対処する体制を取れるようになりました。目の前にいるお客様が大事だと、改めて気づかされましたね。

 

――岩間さんは、必要だと思えば忌憚ない意見を伝えられる人なんですね。

吉田 そうですね。提案資料が出てきた時「どうやって経営陣に説明しよう…」とショックを受けました(苦笑)。しかし新しい施策を打つときの視点の甘さ、「何が問題なのか」「どんな対策を打つのか」「なんでそのKPIなのか」といった部分を追求できていない状況に、一石を投じることができました。

 

――他に、良い変化はありましたか?

岩間 ホールディングス全体で「よりデータに着目しよう」という機運を醸成できたのは、一つの貢献だと思っています。例えば、ダッシュボード構築の依頼は大幅に増えました。デジタル・CRM推進室の方向けに作ったダッシュボードが、部署を超えてひとりでに広まり、30人以上に使われるようになったということがあります。

 

――ダッシュボードや分析指標がそろったことで、チームの目指すベクトルが同じになったということはありますか?

吉田 そうですね、皆の目線が同じになってきて、「データを活用して経営を変えていこう」という方向になってきました。これまで「分析できないだろう」と諦めていたデータも、「顧客の声の裏返し」として求めるようになりましたね。「実は分析できるんじゃないか」「分析できたら、新しい施策を打てるんじゃないか」と。

接客や商品のアンケートを誰でも見られるようにダッシュボードで整理してもらい、販促や商品の部署までお客様の意見を取り入れるようにしました。「データをもとに、来期の商品はこうしよう」という取り組みにも繋がっています。

 

―― 他に、プロダクトに関わるような示唆を受けることはありましたか?

岩間 ご提案したのは、ワイシャツの分析とAOKI・ORIHICAの顧客分析ですね。これまでワイシャツは「ノーアイロン」のような、機能面だけで訴求するプロモーションが多かったんです。しかし、ビジネスエリアのユーザーにアンケートした結果、機能性では差別化できていないとわかりました。

例えば「シワが付かない」といった機能だけではなく、「手入れがラク」といった情緒的な価値のような「お客さまが感じる価値や便益で訴えていかないと、差別化できない」「AOKIは、どんなポジショニングにいたら良いのか?」という部分まで提案させていただきしました。

 

 

メンバーズDAさんを辞めて、ウチに来てほしい(笑)

――御社における、岩間さんと大坂さんの評価を教えていただけますでしょうか。

吉田 メンバーズDAさんを辞めて、ウチに来てほしい(笑)。それは冗談ですが、それぐらい無くてはならない存在です。

 

――大坂さんについては、どんな点を評価いただいてますか?

吉田 大坂さんの役割は、分析にあります。岩間さん1人体制の頃はデータ整理だけでリソースが一杯になり、アウトプットまで出せなかったのがジレンマでした。

大坂さんが入ることで、岩間さんがデータ整理、大坂さんが分析という分担が生まれました。大坂さんが切れ味鋭い指標を反映しながら提案してくれるので、良いサイクルができましたね。

 

経営を変えるようなアウトプットが出てきたことで、データの重要性がきちんと理解されるようになりました。以前は「データ活用したい」と思っても外部のベンダーさんにお願いするしかなかったのですが、現在は「デジタル・CRM推進室に相談すればいい」という流れができていますね。

岩間 もっとも、単純に1人増えただけではアウトプットを出せないジレンマは解決しなかったと思います。キャッチアップが素早い大坂さんが入ったからこそ、早いサイクルでアウトプットが出せるようになりました。

メンバーズDA・大坂 ありがたいことに外部データも使いながら、いろいろなデータを扱い、さまざまな種類のレポートを作ることができています。そのおかげで、多くの要素を組み合わせて考える機会が増えましたね。

 

 

アンケートの低評価=ネガティブ ではない。

吉田 顧客満足度の解像度も上がりました。例えばダッシュボード上で、全体の評価を下げている部分が「接客なのか」「品ぞろえなのか」というような細かな違いもわかるようになっています。顧客体験の流れ全体(現場・本社・販促部)を通じた満足度に注目することで、例えば「クーポンを乱発しない販促をしましょう」という考えにも繋がります。

他にも、アンケートの点数が低くても、エンゲージメントが形成できているケースもあり「もっとユーザーの声を聞こう」という姿勢も生まれました。

例えば、ある店舗では「低い評価をつけた方でも、50%以上が半年以内に再来店している」ということがデータからわかりました。低評価は実はネガティブなことばかりでなく、「愛のある言葉をもらえているのだ」という気付きを得られました。

以前はこうした低評価について「現場のモチベーションが下がるので、見たくない」という店舗の反応もあったんです。ですが、「半年後には再来店してくださっている」という事実を示すことで、「きちんと受け止めて接客改善につなげよう」という態度変容に繋がりましたね。

岩間 低評価だったとしても、答えなかった方よりも再来店の見込みがあるというデータでしたね。

AOKIホールディングス・高木さま 私だけでなく、他部署のメンバーも触発されて、データについて学ぶ人が増えてきています。自分でも、データから示唆を導き出さないといけないと思えるようになりました。こうした好循環は、岩間さん、大坂さんに来ていただいたからこそですね。本当に感謝しています。

 

――最後に、今後メンバーズDAに期待することを伺えますでしょうか。

吉田 お二人が来てくださったお陰で、会社全体でデータの重要性に気付けました。今は、データを起点にした経営が徐々にできるようになっています。店舗から本社に異動してきたメンバーからも、SQLを書ける人材が生まれてきました。

現在まだ(お付き合いして)2年目ですが、今後ももっと人をアサインし、データで経営するチームを作りたいと思っています。引き続きご協力のほどよろしくお願いします。

 

――お忙しい中、どうもありがとうございました!

株式会社集英社さま。1926年(大正15年)に設立され、『週刊少年ジャンプ』『週刊プレイボーイ』『non-no』をはじめとする数多くの雑誌・書籍を世に送り出し、近年では『鬼滅の刃』が国民的な大ヒットを記録。名実ともに、日本を代表する出版社です。

一方、同社はファッション・ライフスタイル誌系の公式SNSの総フォロワー数1,969万人、WEBサイトの月間ユニークユーザー数2,103万UUを誇る、デジタル化を強く推進している企業でもあります。

メンバーズデータアドベンチャー(以下、メンバーズDA)は、2019年頭から同社に常駐でのサービス提供を開始。「MEN'S NON-NO WEB」「WEBUOMO」を始めとする4サイトの解析を担当し、様々な要因が重なった結果としてPV数を5倍まで引き上げることに成功しました。

こうした成果を出すまでは、どのような紆余曲折があったのでしょうか。雑誌デジタル編集室部次長兼室長の西河淳(にしかわ・あつし)氏と、同社に常駐して1年半になるデータアナリスト・小川さんに話を伺いました。

(取材日:2020年9月17日 構成:澤山モッツァレラ)

 

 

メンバーズDAに発注した理由

――メンバーズDAと取引する以前、御社の課題はどこにあったのでしょうか?

集英社・西河淳さま(以下、敬称略) 活用すべきデータ自体は存在したのですが、アクションに繋げることに課題を抱えていました。

弊社にはMEN'S NON-NO、UOMO、週刊プレイボーイといった男性誌のサイトが複数あり、PianoというDMPを使ってデータマネジメントしています。

ただ、データ解析の専門家が少なく、制作会社さんから週次・月次でレポートを受けてはいましたが、アクションまで有機的につながっていないのが実情でした。

そこで2019年頭に、当時の上司からメンバーズDAさんを紹介してもらったのがきっかけです。

 

――最初は、何から着手してもらいましたか?

西河 改善点の洗い出しからお願いしました。4サイトあるため、すごいボリュームでしたね。プリントアウトしたら、A3用紙に文字がびっしり。呆然としたことを覚えています(苦笑)。

当初はデータ分析以外も着手しようとしたのですが、2019年夏ごろから「日々のデータを取得し、深掘りし、提案してもらう」方向性に固まりました。

メンバーズDA・小川(以下、小川) 私は2019年2月から常駐に入り、まずはレポーティングから開始しました。

当初苦戦したのは、データ集計の自動化ですね。プラットフォームの仕様上、CSVデータを一括で取得出来なかったことに加え、分散メディアごとに1つ1つサイトへアクセスしなければならないため、工数がかかっていました。一部は一括で落とせるのですが、最初はどうしても手打ちで対応する必要がありました。

PythonでAPIを叩いて数値を抽出し、エクセルに落とし込むことで徐々に手打ちの頻度を減らしていきました。データ収集の自動化を担うエンジニアさんが入ってからは、より効率よくデータを落とせるようになりました。

 

 

様々なデータが可視化され、深い議論が可能に

――データを自動取得できる環境が整って以降、どのような変化がありましたか?

西河 Google Analytics(以下、GA)のアクセスログやPianoのデータはもちろん、そこでは取れないデータまで網羅できるようになりました。例えばWEBUOMOという動画メインのサイトでは、管理画面でも取得できない数値があります。「何とか取れないか」とお願いしたら、データを自動取得できるプログラムを組んでいただきました。

MEN'S NON-NO WEBでも「訪問頻度別のデータを見たい」「月30回と月1回訪問に分け、行動パターンを解析したい」とお願いしたところ、こちらはGAやPianoを使ったダッシュボードを組んでいただきました。

様々なデータが可視化された結果、より深く踏み込んだ議論ができるようになりましたね。

 

――解析以外で、メンバーズDAから提案したことはありますか?

小川 MEN'S NON-NO BEAUTY(現在はMEN'S NON-NO WEBに統合)では、AI画像検索を用いたヘアカタログをご提案したことがあります。「短い/長い髪型ならこれがオススメ」というものですね。

また、当時あったチャットボットの機能として「顔の形から髪型を提案する」改善案も提出しました。もともとは中国企業が用いた技術で、日本ではZOZOさんが取り入れているものです。MEN'S NON-NO BEAUTYでは髪型ベースの検索しかなかったので、「この顔の形なら、この髪型」といった関連記事を出せるよう提案しました。

他には、関連記事のチューニングを行ないました。例えばユニクロさんやアディダスさんを扱った記事は人気なのですが、関連記事が必ずしも最適化されていないケースがありました。分析画面から「アディダス好きは、アディダスの記事に回遊する」というファクトを提示し、改善に繋げました。

 

メンバーズDA常駐後に起きた、大きな変化

――メンバーズDA常駐後、最も変化した部分はどのあたりですか?

西河 編集部全体で、データを重視するようになったことですね。

表面的なPVやUUで一喜一憂するのではなく、流入経路や検索KWを意識したり、訪問頻度別で行動パターンを見たり、インサイトを深読みしたり。

WEBサイト、SNS、SEOなどデジタル施策全般について多面的に見られるようになったことは大きな変化ですね。

小川 常駐開始のころと比較しても、オーダーの粒度が変化した感はあります。当初は手探り感がありましたが、最近では「何が要因で数字が変わったのか」といった細かい視点からのオーダーが増えました。「GAを自分で観たい」という相談も増えています。

もちろん編集部の皆さま、関係各所の頑張りあってのことですが、常駐開始から1年半で各メディアの数字はすべて伸びており、PVは最大で約5倍になっています。スマートニュースやヤフーニュース等、分散メディアからの集客も大きく伸長しています。

西河 地道にデータをとり、改善を重ね続けてきた結果だと思っています。(WEBメディア運営において)至極当然なことと思いますが、ウチの男性誌メディアではできていませんでした。

 

「小川さんなら、形にしてくれる」

―― 小川さんについての評価は、いかがでしょうか?

西河 こちらの無理難題や(苦笑)ふわっとした疑問を、丁寧にデジタル言語化して応えてくれますね。頼りにしています。

弊社は関係者が多いため、全体として小川さんに何を聞けばいいかわかるのが会議前日といったケースもあります。1人常駐体制なので、負荷はそれなりに高いはずです。

ただ、厳しい条件であってもデータが取れる取れないを明確にしたり、A方式で無理ならB方式を試したり、課題が見えないときは気づきを共有したり、現状使える範囲のツールを探してくれたり。

スキル面はもちろん、そうした粘り強さや頑張りといった部分も信用しています。「大変だけど、小川さんなら形にしてくれる」と思っています。

 

――ありがとうございます。事前のヒアリングでは「発想力、情報感度の部分が得難い」という評価も頂戴しています。

西河 そうですね。年齢的に若く女性である点においても、男性誌サイトの内部では貴重な視点になっています。

例えば、Twitterではテキストを画像化したものを添付し、URLへ誘導する施策を提案いただきました。画像+URLという形でツイートし、興味を持った方をWEBサイトに来ていただくものです。ユーザー習慣をよく掴んだ、SNSネイティブならではの発想だと思いますね。

また、MEN'S NON-NO Twitterのフォロワーは専属男性モデルのファンである女性が多い傾向から、記事内容紹介ではなく、より男性モデルをフィーチャーした更新にしていただいたり。直接のターゲット向けではないですが、認知向上を達成することで結果的に本来のターゲットにも届かせる狙いで行なっていただいています。

データアナリストでありながら「人間が読む」視点も持ったうえで、WEBなりSNSなりのユーザーに刺さる提案をいただいています。

 

 

今後、小川さんに期待すること

――今後、小川さんにどのようなことを期待しておられますか?

西河 先ほども述べたとおり、データ解析に加えインサイトやトレンドを加味した提案をいただき、感謝しています。

強いて課題を挙げれば、ある種の遠慮というか「ひょっとしたら、自分の提案は間違っているのでは」と考えている部分もあるのかなと。勝手な言い分ですが、過度に恐れることなく、硬軟取り混ぜた意見をいただけるとうれしいですね。

 

――常駐者の小川さんは今後、どういう貢献をしていきたいですか?

小川 引き続き、データ解析とともにアイデア面での貢献もしていきたいです。体制面が今後どうなるかわからない部分もありますが、分析依頼が増えていけば、後輩たちもこの案件に関わらせていただいて、一緒により深いご提案をできればと考えています。

理想は、1メディア1アナリストの体制ですね。メディアごとに企画制作のスペシャリストの皆さんがいる状態で、データのスペシャリストもいるような体制にできれば。メディアの特性やブランドを理解した上で、既存の人気記事をさらに伸ばすことはもちろん、伸びしろがある記事をさらに引き上げるなどして人気記事を増やしていければ、メディアとして理想的な状態にしていけるのではと思います。

 

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