データを可視化!BIツール導入によるデータドリブンの促進

ナレッジ
2025.03.10
タイトル:データを可視化!BIツール導入による データドリブンの促進

近年、企業活動においてデータの利活用が経営の意思決定や企業の競争力に大きく寄与する要素として重要視されています。
本記事では、企業が保有する多種多様のデータを適切に分析・可視化を行うために活用される「BIツール」について、概要やツールの種類、導入メリットや注意点などを解説します。

執筆者のご紹介

氏名:谷 寧々
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アナリスト事業部
経歴:4年制大学(経済学部)を卒業後、2022年に株式会社メンバーズに入社。
新卒から約2年間メガバンクに常駐し、Tableauによるデータの利活用推進による業務効率化をサポート。お客さまに対しTableauリテラシー向上のために研修の企画運営やスキルトランスファーを実施。

 

目次
01. |BIツールとは
   BI(ビジネス・インテリジェンス)
   BIツールでできること
   ExcelやETLなど類似ツールとの違い
02. |主要なBIツールの例
   Tableau
   PowerBI
   Looker Studio
   Domo
   Amazon QuickSight
03. |自社導入のメリット
   意思決定の迅速化
   業務効率化
   競争優位性の確立
04. |自社導入に際する注意点
   明確な目的を持ったツール選定
   データの整備とクリーニング
   従業員の教育とトレーニング
05. |BIツールの最新動向
   AIの活用
   複数のBIツールの併用
06. |BIツールの導入事例


01.|BIツールとは

 01-1. BI(ビジネス・インテリジェンス)

BIとは「Business Inteligence(ビジネス・インテリジェンス)」の略称です。
ビジネスにおける知能となる企業内外の様々なデータを収集し分析や可視化を行い、客観的にビジネスの意思決定を行うことを指します。

 01-2. BIツールでできること

一般的に企業活動により日常的に蓄積されるデータは「ビッグデータ」とも呼ばれ、企業内外複数のシステムに横断して蓄積されています。
BIツールは、それら複数のシステムからデータの集計・分析・可視化を一元的に行うことで客観的な意思決定を可能とします。
BIツールはデータ分析プロセスの中でも可視化を得意とし、帳票型のような羅列したデータをグラフや図としてビジュアライゼーションすることで、視覚的にデータを捉えることが可能です。データが可視化されることで、データに精通していない人であっても、直観的に課題や事象の発生を分析でき、ネクストアクションとなる意思決定を迅速に行うことができます。
そのためBIツールをうまく活用することで、企業活動のあらゆる場面でデータに基づいた意思決定が可能になり「データドリブン経営」の実現を推進することができます。

BIツールの代表的な機能を4つに分類し紹介します。

・レポーティング
業務上追うべきKPIや実績などの数値をリアルタイムで取得し可視化することで、KPIの進捗や全体的なトレンド、課題の早期発見など数値の羅列では読み取りにくい情報を直感的に把握することが可能です。
加えて、月次報告や四半期報告といった定期報告資料の作成にかかる負担を大幅に軽減できます。データの更新を行うだけで自動的に最新データをグラフや表に反映することができ、定例作業の削減や業務効率向上が期待できます。

・OLAP分析(オンライン分析処理)
データが可視化されることで顕著になった問題や事象に対して、要因を深掘りして分析・検証を可能とします。エンドユーザーは多角的に柔軟性をもって分析を行うことができます。

・データマイニング
マイニングは「発掘・採掘」という意味の単語で、複数のデータや蓄積されたデータに対して統計的な処理(相関分析やクラスター分析など)を行い、新たな角度からの調査を可能とすることで、データの関係性や傾向を分析します。

・プランニング
蓄積された過去実績のデータやシミュレーションのデータから予測数値の算出を行います。例えば予算編成や次年度等の経営計画、売上や在庫の予測の根拠などを示すことが可能になります。

サンプルデータを用いてTableauで作成したダッシュボード実際のダッシュボード例(サンプルデータをもとにTableauを用いて作成)

 

 01-3. ExcelやETLなど類似ツールとの違い

BIツールと類似として認識されるものにExcelやELT・DWHがあります。
ご存じの通りExcelでも、ピポットや関数、グラフの挿入などの機能を用いることでデータの集計や分析、可視化が可能です。
しかし、BIツール・Excel・ELT・DWHでは本来主軸機能として持つ役割や強みが異なります。
そのためそれぞれの特徴を理解し、Excelや既存のツールで苦手とする部分を、BIツールの強みで補うことで、よりよいアウトプットや業務改善が可能になります。
それぞれの強みと役割は以下の通りです。

<BIツール>
BIツールはビッグデータを集計し分析・可視化を行うことを目的としたツールです。
多様なデータソースからデータを組み合わせた分析を可能とするため、複数のデータから自由度高く多角的な分析や可視化を実現できます。

<Excel>
上述の通りExcelは多機能なツールですが、本来は「表計算ソフト」であり、データの入力や蓄積などのインプット・数値の集計を得意とします。一方でグラフによるデータの可視化や分析に特化したツールではないため、ビッグデータを扱うにはデータ量への制限があり作業コストやパフォーマンスの低下が懸念されます。
また、他者への共有という観点では、ExcelファイルをメールやGoogleドライブ内に添付したり、PowerPointにグラフをコピーして報告書を作成したりなど、他のツールとの併用が必要となるケースがあります。

<ELT>
ELTとは「Extract(抽出)Transform(変換)Load(書き出し)」の略称で、企業の基幹システムなど企業内外に分散された複数のシステムからデータを抽出し、適した形に加工し、DWHやデータベースに受け渡すためのツールです。そのためデータの可視化や分析の役割はありません。

<DWH>
DWH(データウェアハウス)は、ELTが抽出したデータを保管・蓄積する役割を担います。DWH自体に抽出機能や可視化の機能が備わっているわけではありません。

上記の通り、各ツールにより役割が異なるため、それぞれの強みや役割を理解し、特徴を生かしたデータ活用が必要となります。

 

02.|主要なBIツールの例

ここでは主要なBIツールを紹介し、それぞれの特徴を記します。

 02-1. Tableau

・提供企業:Salesforce
・特徴:導入シェア率がトップレベルで高く、国内でもTableau導入企業事例が多くBIツールの代表的製品の一つです。ノーコードかつドラッグアンドドロップを主にした簡易的な操作によってデザイン性の高いデータのビジュアライゼーションが可能です。BIツールの代名詞ともいわれるほどメジャーで初心者向けのツールとなっています。
また、約100種類のデータソースに接続可能で、膨大なデータ量でも高速に処理することを得意とします。その他機能として、データのリアルタイム更新や自動更新が可能なため、最新のデータへのアクセスすることも容易です。
・公式サイト:Tableau (タブロー) | BIと分析のためのソフトウェア


 02-2. PowerBI

・提供企業:Microsoft
・特徴:約120種類のデータソースに接続でき、中でもMicrosoft 製品であるExcelやWordなどのOffice365サービスへの連携を得意とします。グラフの描画はチャートタイプを選択したのちにデータを貼り付ける仕様のため、柔軟性にはやや欠けますが、画面設計が決まっている場合や、ベーシックなチャートによる分析であれば簡易な操作のみで使用できます。また費用も比較的廉価なのも魅力の一つです。
・公式サイト:Power BI - データの視覚化 | Microsoft Power Platform


 02-3. Looker Studio

・提供企業:Google
・特徴:Googleアカウントを持つ誰もが利用できるGoogle Cloudサービスです。Google提供サービスであるスプレッドシートやアナリティクス、BigQueryとの連携を得意とし、Googleサービスを活用するユーザーに最も有効なツールとなっています。平均や中央値、標準偏差など基本的な記述統計の算出と可視化が可能な一方、高度な統計分析には制限があります。また、膨大なデータの処理はブラウザを含むパフォーマンス負荷が大きいため注意が必要です。
・公式サイト:Looker Studio: ビジネス分析情報の可視化 | Google Cloud


 02-4. Domo

・提供企業:ドーモ株式会社
・特徴:1000を超えるデータコネクタによる豊富なデータベースへの接続が可能なため、Webアプリケーションなどへの連携やビジネスデータに直接接続してデータを分析することが得意です。閲覧者が自由にデータを分析できる探索的な分析より、作成者の主張を伝えるための説明的なダッシュボードを作成するときに便利なツールとなっています。また、共同作業を可能にするコラボレーション機能やアラート機能、メール通知機能が備わっているためインサイトを迅速に共有することが可能です。
・公式サイト:Domo - データ活用プラットフォーム


 02-5. Amazon QuickSight

・提供企業:Amazon
・特徴:AWS(Amazon Web Services)のプラットフォームの傘下にある BIツールということが最大の特徴です。また、AWS独自開発のSPICE(Super-fast, Parallel, In-memory Calculation Engine/超高速・並列型インメモリ計算エンジン)を搭載していることで大規模なデータ分析においても高いパフォーマンスを発揮します。費用は従量課金制で、使用した分のコストが発生するため利用規模などを考慮することが必要です。
・公式サイト:Amazon QuickSight(あらゆるデバイスからアクセス可能な高速BIサービス)

 

03.|自社導入のメリット

 03-1. 意思決定の迅速化

BIツールを導入することで、企業内外の膨大なデータをスピーディーに収集・分析・可視化することができ、企業活動における経営や人事、予算管理や販売・購買・在庫管理などあらゆる場面で、迅速な意思決定が可能となります。顕在化したデータの把握のみでなく潜在的なニーズやリスクなどの早期発見も期待できます。
また、従来の「KKD(勘・経験・度胸)」と呼ばれる主観的な判断に頼ることのない、客観的な判断と意思決定が実現されます。


 03-2. 業務効率化

従来多くの企業で散見されたデータ分析の手法は、「Excelでデータを収集し加工・分析を手作業で行う」ものでした。しかし、Excelの手作業では時間も手間もかかる上、担当者のスキルレベルや経験に依存した作業となり、ミスが生じやすく引継ぎやメンテナンスの負荷が高くなる傾向にあります。
BIツールでは形式の異なる複数データの集計や統合を行い、さらには自動化により最新のデータを即座に反映することができ、大幅な作業工数の削減と質の高いパフォーマンスが実現できます。
IoT技術やAIの活用などテクノロジーの進歩により収集されるデータ量が莫大に増加する中、長期的に見て効率化を求める場合にBIツールは有効であるといえます。


 03-3. 競争優位性の確立

デジタル化・IT化が著しく発達する中で企業が長く生き残るためには、データをいかに有意義に活用し経営に役立てられるかが重要なポイントです。
そのため従来の方法のままでは、市場や社会の急速な変化について行けず「昨日正しいとされた手法が今日は使えない」状況が発生し、データドリブン経営を実現している他社に後れを取り、競争優位性を失う可能性があります。
そこで、タイムリーなデータをもとに迅速かつ容易にデータ分析を可能にするBIツールの活用が競争優位性の確立に大きく貢献します。多様化する顧客ニーズや消費者行動を捉え、自社課題に対して迅速に意思決定することが企業の成長と存続につながります。


04.|自社導入に際する注意点

これまでBIツールのメリットや製品について記述してきましたが、BIツールを無闇に導入するのではなく、きちんと自社が抱えている課題を把握し、自社に適したBIツールを導入することが大切です。
自社の状況や課題、目的によってはBIツールを導入しない方がいい場合もあるので以下を参考に導入の検討を行いましょう。


 04-1. 明確な目的を持ったツール選定

BIツールを導入する前に自社の課題やデータ周りの環境、目的を明確にする必要があります。
まず自社のシステムやデータ環境を理解し、誰が、どのようなデータを、誰に、どう活用してほしいのか、またそこからどのような効果をもたらせたいのかという目的を明確にすることが大切です。
また、予算と各ツールの費用を利用する規模などを想定して比較検討を進めることも必要となります。同業の企業で導入されているツールを把握することも検討の際、参考になるはずです。


 04-2. データの整備とクリーニング

自社の持つデータをうまく活用するには既存のデータがシステム連携できるかを確認する必要があります。クラウド環境なのかローカル環境なのかといった違いをはじめ、BIツールに連携する前に、自社のデータが適したデータの持ち方(縦持ち、横持ちなど)に整形する必要があるのかなどを確かめることで導入前後のミスマッチを防ぎ、自社に適したツールの選定が行えます。自社の持つデータやシステム環境を理解することが、導入にあたって失敗を避けるために必要なポイントです。


 04-3. 従業員の教育とトレーニング

BIツールを導入後、「そもそも使用方法がわからない」「導入設定ができずデータを連携できない」などの問題に直面するケースも少なくありません。BIツールの中にはSQLなど一定のプログラミングスキルを要するものもあれば、ノーコードで使用できるものもあります。使用する従業員のスキルレベルやリテラシーがどれくらいあるのかを把握することも、失敗を回避するポイントの一つです。
自社内で課題が解決できない場合はBIツールの知識が豊富な導入支援企業からの支援を受けることも検討にいれることで導入コストを無駄にすることなく、有意義な活用が可能になるでしょう。
また、自社従業員へ運用方法のレクチャーや基礎研修などによるスキルトランスファーなどの実施も、BIツールを活用していくうえで有効です。
これらの運用支援は弊社にて承っておりますので、興味のある方はぜひお気軽にご連絡ください。


05.|BIツールの最新動向

 05-1. AIの活用

上記で紹介してきたBI ツールですが、「AI(人工知能)」と組み合わせて活用することで、担当者の分析スキルに依存しない精度の高い分析や意思決定が可能です。
そもそもAIは、膨大な量のデータの処理や機械学習など高度な情報処理能力があり、データの集計だけでなく、蓄積されたデータから類似パターンや相関関係などを分析し、示唆出しなど分析結果をもとにした施策の判断や実行までを可能とします。
BIツールの中にはAI機能が搭載されたものもあり、例えばデータセットの中から異常値や急激なトレンドの変化などを自動的に検出しリアルタイムでアラートを発信する「異常検知機能」や、過去の売上データから購買パターンを予測したり、事務量データから予算を予測するなどの「予測機能」の活用が可能です。


 05-2. 複数のBIツールの併用

既にBIツールを導入しているものの、既存ツールのみでは対応しきれないアウトプットや活用しきれないデータが生じる場合も想定されます。
その場合は複数のBIツールを併用することで企業内外のビックデータに対し網羅的にデータ活用を促進することができます。
どのツールを併用するかは自社のデータ環境や活用の目的と意図を明確にし、既存のツールの不足部分をきちんと補えるよう補完的な観点から導入を進める必要があります。


併用についての関連記事はこちらにありますのでご参考になれば幸いです→BIツール併用でデータ分析を効率化!Tableau×他BIツール併用のメリットとは


06.|BIツールの導入事例

以下では弊社が運用支援を行ったBIツールの導入事例を紹介します。
・導入企業:金融関連企業
・ツール:Tableau、Domo
・業務課題:BIプラットフォームの整備による全社的なデータ活用推進
・支援内容:顧客のビジネス要求を整理し、環境に応じて機能に優れているもののライセンス料が高価なTableauと、多くの社員がダッシュボードを閲覧できる環境を比較的安価に構築できるDomoを併用することで、既存のデータ環境を保持したまま、わずか2か月でBI環境の整備とユースケースに応じたデータガバナンスの整備を実現。
・成果:企業内データの抽出〜可視化までの業務プロセスが整理され、全社的なデータ活用を円滑化。

 

まとめ

急速に変化するビジネス社会において、BIツールは、企業の多様なデータを迅速的に収集・集計・分析・可視化することを可能とし、経営や事業活動の意思決定を行う際に多くのメリットをもたらします。
また、導入に際し、自社のデータ環境やシステム連携への理解、業務課題の整理と目的の明確化が、適切なツールの選定を行う上で失敗しないための重要なポイントとなります。
あくまで導入することがゴールではなく、導入後の活用・運用を成果に繋げることが目的です。
データ活用による業務効率化はもちろんのこと、BIプラットフォームのスリム化や、社員向けの研修やマニュアル整備、スキルトランスファーによるリテラシーの向上が、持続的なデータドリブン文化の定着を実現します。
BIツールを効果的に選定・活用することが、長きにわたる企業活動や成長にとって重要なカギとなることでしょう。

 

 

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