データ可視化はどうして大事なのか? データの単なる分析から、データの活用へステップアップするために
今回お伝えしたいことは、以下です。
- ・ビジネスの現場において優先すべきは、「データの分析」ではなく「データの活用」
- ・「データの活用」のためには、適切にデータを理解し解釈することが必要
- ・データの理解と解釈において力を発揮するのは、「データの可視化」
- ・「データ可視化」を現場で推進していくために必要なこと
執筆者のご紹介
M.H
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー
サービス開発室所属
データマネジメント、データビジュアライゼーション領域を中心に、データ活用におけるコミュニケーション設計と、データ「そのもの」の整備を担当しています。
ディレクター的な立ち回りで、データアナリストやデータサイエンティスト、データエンジニアとビジネスサイドをつなぐ役割もしばしば担います。
目次
01.|データ分析とデータ活用の違い
02.| 実はデータを適切に理解できる人は少ない?
03.|データを適切に理解し、翻訳することの重要性
04.| では適切に理解するとはどのようなことなのか
05.|データを適切に理解するために必要な工程
06.|データを読み解き、適切に示唆をだし業務に落とし込もう
07.|おわりに
データ分析とデータ活用の違い
「データ分析」と「データ活用」は、どちらもビジネスサイドが取りうる手段を示しています。
もっと言うと「データ分析」は「データ活用」の一部分を構成しています。
「データ分析」とは、データから有益な情報や洞察を引き出し、意思決定の根拠(エビデンス)を提供することです。
- ・データの収集
- ・データの加工
- ・統計手法、機械学習、ディープラーニングを活用した分析解析
- ・結果の考察と報告
加工や分析解析の工程で様々な手法を駆使するため(例えばPythonやSQLを用いてデータを整形する、複数の統計手法から最適なモデルを選択するなど)、一定レベル以上の専門的、技術的な知見が求められることが多くあります。
一方、「データ活用」とは、「データ分析」から得られた示唆を基に具体的なビジネスアクションを考案し、実行することで、組織の目標達成や課題解決に役立てることです。
- ・意思決定
- ・ビジネスアクションの策定
- ・プランの実行
- ・モニタリング、効果検証、改善点の反映
プログラミングや統計学の知識はさほど必要とされませんが、代わりに分析結果をビジネスサイドに落とす手腕が問われます。
そこで必要なのは、データと分析結果に対する正確な理解、分析サイド間およびビジネスサイド内でのコミュニケーション円滑化、アクション実行における業務デリバリー等です。
実はデータを適切に理解できる人は少ない?
「分析」に関してはデータサイエンティストやデータアナリストにお任せしましょう。専門知識を持つ彼らであれば、精度の高い分析レポートを提出してくれます。
しかし、いざ結果の「活用」となった段階で躓いてしまうことがしばしばあります。それはビジネスサイドが、データとその分析結果を適切に理解できていないからです。人と組織、それぞれに課題があります。
- ・担当者のスキルに関する課題
ビジネスサイドの担当者は、各々の担当領域に対しての専門知識は持ち合わせているものの、データを扱うということに関する基本的なスキルや知識を持っていないことが多く分析結果から何を読み取るべきか判断できない場合もあります。
また、データサイエンティストやデータアナリストの使う専門用語や技術的な説明がビジネスサイドには普段の業務とは馴染みがなく、理解が追い付かないこともあります。
データとその分析結果を解釈するには、ある程度のデータリテラシーが必要ですが、担当者はあくまでも各領域の専門家でありデータの専門家ではないため、そのようなスキルや知識を持ち合わせていることの方が少ないのです。
- ・組織の課題
企業が、そのミッションとしてデータ活用推進を挙げていたとしても、現場の従業員向けにデータリテラシーの向上を目的とした教育プログラムを提供できる企業はまだまだ少数派です。
加えて、ビジネスサイドの社員は多忙であり、通常の業務を抱えているため、データリテラシーを高める時間的余裕がない場合もあります。
データを適切に理解し、翻訳することの重要性
データを適切に理解し、それをビジネスサイドの言語に翻訳できることはどうして重要なのでしょうか?それは要約すると、「根拠に基づく意思決定から企業としてのパフォーマンス向上につなげることができるから」です。
- ・意思決定の質的向上とその高速化
個人的な経験に基づくカンがすべて悪いわけではありませんが、それを他人と共有するのは困難を極めます。データに基づいた説明は具体的かつ客観的であるため、メンバー間で共通認識を得やすく、合意形成の質的向上とその高速化につながります。
- ・コミュニケーションの改善&業務効率と生産性の向上
メンバー間の共通認識の構築とコミュニケーションの円滑化は意思決定の高速化につながり、また「データ」によって業務フローにおけるボトルネックや非効率な部分が可視化されるため、フローの改善やリソースの最適化が試され、結果的に業務効率の改善と生産性の向上をもたらします。
- ・顧客ニーズの正確な把握
これまでも自社の顧客に対して製品やサービスのアンケート調査を実施した経験のある企業担当者は多いでしょう。アンケート結果もある種の「データ」ですが、果たしてその取扱いは適切なのでしょうか?データは取り扱い次第では宝にもごみにもなり得ます。得られたデータを適切に解釈し、顧客ニーズに接近するためにも、「データをより正確にみるため」のデータリテラシーは欠かせません。
では適切に理解するとはどのようなことなのか
データを適切に理解するとは、データを単に数値や情報の羅列としてみるのではなく、その中に隠れている意味を引き出し、ビジネスにとって有意義な洞察を得ることです。
もちろん、適切に理解することは唯一絶対の真理に到達することではありません。世の中の現象には様々な解釈がありえます。
どの立場に立つかで、解釈が180度変わることも稀ではありません。
ここで大事なのは、現場のニーズ、現場のミッション・ビジョン、現実的に可能な選択肢、これら所与の要件に照らし合わせて、もっとも妥当性の高い、最も望ましい解釈をデータから引き出すことです。
データを適切に理解するために必要な工程
データを適切に理解するためには、3つの段階があると思っています。
第一段階では、分析やビジネスの目的を明確にしたうえで、必要なデータとは何かを定義します。
ある飲食店が来月の売上を予測したいとしたら、客単価と客数、営業日数のデータはもちろんのこと、もし1週間のうち金土の売上が大きいのなら来月に何回金土が含まれているのか、店舗の近くあるいは別の場所で大きなイベントが営業時間内に開催されないか、など、売上に影響してきそうな要素を残らず洗い出すべきです。
第二段階では、データの「品質」を確認します。
あなたの手元にある「データ」はどのように取得されたものですか?取得元は信頼できますか?どれくらいの頻度で、どのように更新されていますか?あなたがビジネス上において達成したい目標や課題に対して、そのデータは利用価値があるといえるでしょうか?項目の定義、とくに指標の算出方法は目的にかなっているのでしょうか?
ここでおさえなければいけないのは、そのデータが活用に値する品質を担保できているのか、という点です。
第三段階では、データから示唆を得るために最適な手法を選択します。
ここで有用なのが「可視化」という手法です。数字の羅列を見るよりも、グラフとして表現されたほうが、一般的に理解速度は上がります。
数字は「文字」でしかありませんが、グラフは、形、大きさ、高さ、色彩など様々な要素で「データ」を表現することができるからです。
データをちょっと「可視化」するだけで、データの持つパターンやトレンド、さらには異常値の混入まで一瞬で判断できるようになり、データへの理解と解釈が向上し、結果としてデータを介したコミュニケーションが改善され、意思決定が迅速化します。
「可視化」の効果を高めたいのであれば、データの種類とそこから得たい「情報」によって、最適なグラフ選択を行うと良いでしょう。
例えば、属性の時系列推移を見たいのであれば、基本的な折れ線グラフ、構成比の推移も一緒に見たいなら面グラフや棒グラフが最適です。
シンプルに売上のランキングを出したいなら棒グラフが最もわかりやすいでしょう。
二つの指標の相関関係を見たいなら、量的データどうしなら散布図、質的データどうしならヒートマップ(クロス集計表に色をつけたもの)が活用できます。
売上のばらつきを見たいならヒストグラムや箱ひげ図、地理的分布を見たいなら地図、というように。
第一段階と第二段階も「データ活用」に必要不可欠な前提ですが、「データ活用」によりフォーカスすると第三段階がメインとなってきます。「可視化」によって「データ」の適切な理解と解釈が促進されるのです。
データを読み解き、適切に示唆をだし業務に落とし込もう
前段では、「データ活用」の中心が「可視化」にあるとお話ししました。では最後に、組織内でデータ「可視化」を推進するためにはどのようなしくみが必要なのか、見ていきましょう。
- ・明確な目標設定とデータマネジメント体制の構築
これは前段の第一段階、第二段階のことです。
何のためにデータを活用するのかの前提が明確であること、および使用するデータの品質担保、この2点が揃っていることが前提として挙げられます。
- ・組織にあった最適な可視化ツールの選択
エクセルやスプレッドシートでも「可視化」は可能です。しかし、「可視化」の力をフルパワーで発揮したいのなら、ぜひ「可視化」に特化したBIツールの活用をお勧めします。
代表的なBIツールは、Tableau、PowerBI、LookerStudio、DOMOなどです。無償版で性能や動作環境を試してみて、総合的に最適なBIツールを選択してみてください。
- ・データ「可視化」の技術を高める
まずは、データの型と目的に応じて最適なグラフが選択できるように、基本的な可視化のお作法を学習しましょう。
次に、データを解釈し、その解釈を人に伝える「ストーリーテリング」の技術、思いついた切り口でスマートにデータを「可視化」する「インタラクティブ」な操作、これらの応用技術も習得できると望ましいでしょう。
- ・他部署を巻き込み、日常の業務に落とし込む
IT部署やDX部署だけではなく、できれば営業や企画、経理、人事も含め全社横断的にBIツールを日々の業務で活用する土壌を作る、これも大事です。
全社横断的なプロジェクトとして共感を集め、仲間を増やしましょう。
また日常の業務に、どれほどBIツールを落とし込めるかが活用推進と継続のカギになります。
朝会や社内会議のパワポ資料をBIツールの画面で共有する、KPIモニタリングのエクセル帳票(VBA更新)をダッシュボード化して自動更新化する、などなど。
最初の一歩はなかなか困難ですが、それさえ踏み出すことができれば、「データドリブン文化」への道は大きく開けるのです。
おわりに
「データ分析」と「データ活用」は、ビジネスにおいて重要な手段ですが、それぞれ異なる役割を持っています。
「データ分析」は、データから価値ある情報や洞察を引き出し、意思決定の根拠を提供するプロセスです。
一方、「データ活用」では、分析から得られた示唆を基に具体的なビジネスアクションを実行し、課題解決や目標達成を図ります。
ビジネスにおいて重視するべきは分析結果を活用につなげることであり、そのためにはデータを正しく理解し、解釈するスキルが必要なのです。その中軸をなすのが「可視化」です。
「可視化」は、データを数値として見るだけでなく、その背後にある意味を引き出すために、非常に優れた手段です。
データ可視化を推進するためには、明確な目標設定やデータマネジメント体制の構築が必要です。全社でのデータ活用を促進するためには、日常業務にBIツールを取り入れ、データドリブン文化を醸成することが求められます。はじめは難しいかもしれませんが、実行に移すことで大きな成果を得ることができるでしょう。
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