現代ビジネスにおいて、データ分析は企業成長に欠かせません。しかし、「何から始めればいいか分からない」「社内に専門人材がいない」と悩む企業も多いでしょう。そんなとき、有効な選択肢となるのがデータ分析の外注です。この記事では、外注のメリット・デメリットから、成功するパートナー選び、費用相場まで、データ分析外注のすべてを解説します。
▶目次
データ分析とは、蓄積されたデータに対して統計学や機械学習などの手法を用いて、傾向やパターン、因果関係などを明らかにすることです。得られた分析結果は、業務改善や戦略立案など、組織の意思決定を支える重要な要素となります。
データ分析とデータ活用は混同されがちですが、厳密には異なります。データ活用は、データを収集・蓄積・分析し、その結果を業務プロセスや意思決定に反映させる一連の取り組み全体を指します。つまり、データ分析はデータ活用における重要なプロセスの一つといえます。
データ活用によって、企業は「現状の正確な把握」「業務効率の改善」「精度の高い判断」といった成果を得ることができます。しかし、実際には「データの整備」「分析環境の構築」「人材の確保」など、さまざまなハードルが存在します。そこで注目されているのが、「データ分析の外注」という選択肢です。社内リソースだけでは対応しきれない分析業務を、外部の専門家に任せることで、よりスムーズかつ効果的にデータ活用を進めることが可能になります。そのため、データ分析の外注を柔軟に利用することで、より効率的にデータ活用を進めることが可能です。
企業がデータ分析を行うには、「内製」と「外注」という2つの手段があります:
- ・内製:自社内に専門チームを持ち、ツールやシステムも自前で整備して対応。
- ・外注:外部の専門企業や個人に業務を委託し、知見やリソースを借りる形。
データ分析の外注先としては、以下のような外注先が存在します:
- ・コンサルティング会社
- ・調査会社・マーケティング会社
- ・SIer・ITソリューション企業
- ・フリーランス(専門家)
それぞれ得意分野や料金体系が異なるため、自社の目的や予算に合わせて柔軟に検討することが重要です。また、分析を外注する際には、「ノウハウを自社に残せるか」という視点も不可欠です。単なる丸投げではなく、社内での活用力を高める「伴走型」「内製化支援型」の外注スタイルを選ぶことで、将来的には自社内での分析力強化=筋肉質な組織づくりにもつながります。
- 専門知識・スキルを活用できる
データ分析には、統計学、機械学習、プログラミングなど、幅広い専門知識とスキルが求められます。外注することで、これらの専門知識・スキルを持つ人材の活用が可能となり、高度な分析や精度の高い予測が期待できます。内製の場合、これらのスキルを持つ人材の採用・育成に時間とコストがかかりますが、外注であればすぐに分析に着手できます。
- コスト削減に繋がる
内製化では人件費やツール導入費、教育・研修コストなどが継続的に発生しますが、外注は「必要なときに必要な分だけ」活用できるため、特に短期案件や不定期の分析ニーズには向いています。結果的に、固定費を抑えた柔軟な運用が可能になります。
- 業務効率化に繋がる
データ分析を外注することで、自社の従業員は本来の業務に集中できます。これにより、業務効率の向上や生産性の向上が期待できます。特に、マーケティング部門や営業部門など、データ分析を必要とする部門では、分析業務の負担軽減によって、より戦略的な業務にリソースを集中できるようになります。
- 最新の分析技術を利用できる
データ分析の技術は日々進化しており、最新の技術を常にキャッチアップするのは容易ではありません。外注先の専門企業は、最新の分析技術やツールに精通しているため、常に最先端の分析手法を利用できます。これにより、AIモデルやBIツールなど最先端の技術を使った分析を取り入れやすくなり、競争優位性の確立に繋がります。
- 情報漏洩のリスクがある
データ分析のためには、顧客データや売上データなど、企業にとって重要なデータを外部に提供する必要があります。情報漏洩のリスクはゼロではありません。契約時に秘密保持契約(NDA)を締結したり、セキュリティ体制が万全な外注先を選定したりするなど、情報漏洩対策を徹底する必要があります。
- 社内にノウハウが蓄積されない
データ分析を外注する場合、分析の過程や得られた知見が社内に蓄積されにくいというデメリットがあります。分析結果の解釈や活用には、分析の背景や過程を理解することが重要です。そのため、分析結果の報告だけでなく、分析手法やデータの加工方法などについても、外注先から十分に情報共有を受ける必要があります。外注先によっては内製化を支援しているところもあるので、積極的に活用すると良いでしょう。
- コミュニケーションコストが発生する
データ分析の目的や必要なデータ、期待する成果などを外注先に正確に伝える必要があります。また、分析の進捗状況の確認や結果の報告を受けるためのコミュニケーションも必要です。内製に比べてコミュニケーションの手間や時間がありますが、その分自社メンバーのデータ分析に対する知見が深まる副次効果もあります。また常駐サービスを展開する企業も多くあり、コミュニケーションコストを削減することも可能です。
まず注目すべきは、過去の実績と得意領域です。特に、自社と同じ業種や類似の課題に取り組んだ経験があるかを確認しましょう。たとえば以下のようなチェックポイントが有効です:
- ・顧客分析や購買データに強みがあるか
- ・機械学習モデルの構築実績があるか
- ・BIツールや特定の統計ソフトに精通しているか
経験値の高いパートナーは、分析の精度が高いだけでなく、業界特有の課題に対する理解も深いため、より実効性のある提案が期待できます。
外注において最大のリスクは機密情報の漏洩です。安心してデータを共有するためには、以下のようなセキュリティ対策が取られているかを確認しましょう:
- ・プライバシーマークやISMS認証の有無
- ・データ管理ポリシーやアクセス制限の明示
- ・専用ネットワークや暗号化の実施状況
また、契約時に秘密保持契約(NDA)を締結することも必須です。万が一に備え、契約書面での取り決めを怠らないようにしましょう。
分析の成否を左右するのは、パートナーとの連携の質です。以下の点をチェックすることで、信頼できるコミュニケーションパートナーかを見極められます:
- ・担当者の対応が丁寧か
- ・フィードバックや修正依頼への反応が早いか
- ・難解な分析内容をわかりやすく説明してくれるか
初期打ち合わせや見積もりの段階で相手の姿勢を見極めましょう。
単に「安いから」「高いから」ではなく、費用と成果のバランスを見極めることが重要です。複数の候補から見積もりを取り、以下を総合的に比較しましょう:
- ・分析スコープと成果物の品質
- ・分析期間と進行スピード
- ・サポート体制(報告頻度・アフターフォローなど)
費用対効果の高い企業は、単に分析を行うだけでなく、その成果の「使い道」まで考えてくれるパートナーであることが多いです。
長期的には、自社で分析できる体制を構築したいという企業も多いはずです。その場合、以下のような支援が可能な外注先を選ぶことで、将来的な内製化がスムーズになります:
- ・分析手法やツールの使い方をドキュメント化
- ・社員向けの研修やレクチャー提供
- ・分析テンプレートやレポートフォーマットの共有
こうした「伴走型パートナー」を選べば、一時的なアウトソースではなく、ナレッジを蓄積しながら中長期的な分析力強化が実現できます。
データ分析プロジェクトを外注する際は、「依頼して終わり」ではありません。外注先と協力して成果を最大化するためには、プロジェクトの進め方にも工夫が必要です。ここでは、外注プロジェクトをスムーズに進めるための3つの重要ステップを紹介します。
なぜデータ分析を行うのか、何を明らかにしたいのかという目的を明確にすることが、プロジェクト成功の第一歩です。目的が曖昧なままプロジェクトを進めると、期待した成果が得られない可能性があります。
また、データ分析プロジェクトの背景を外注先に伝えることも重要です。課題の背景や関連する情報も共有することで、外注先はより深い理解を持って分析に取り組むことができます。
分析の対象となるデータ、必要な分析手法、求める成果物の形式や納期など、具体的な要件を外注先に明示することが重要です。要件が曖昧だと、外注先との認識のズレが生じ、手戻りが発生する可能性があります。
主な要件の例:
- ・分析対象データの詳細:種類、期間、形式、件数、提供スケジュール
- ・分析手法の希望:クラスタリング、回帰分析、予測モデルなど
- ・成果物の仕様:レポート形式(PDF/Excel/ダッシュボード)、納品物に含めるグラフや指標
- ・納期・マイルストーン:初回提出、中間レビュー、最終納品のスケジュール
- ・関連事例の共有:過去の取り組み・成果物がある場合は添付して参考にする
また、過去に同じようなプロジェクトに取り組んだケースがあれば、その事例を共有することも重要です。過去の取り組みにおける分析手法や成功、失敗を共有しておくことで、期待する結果をより得やすくなるでしょう。
分析に必要なデータを外注先に提供します。スムーズに受け渡しができるよう、データの形式や提供方法、セキュリティ対策などについて、事前に外注先と協議しておくことが重要です。
データ提供時の留意点:
- ・提供形式:CSV、Excel、クラウドストレージなど、外注先が扱いやすい形式に変換
- ・データの前処理:重複・欠損値の除去、項目説明の付与などで初期工数を削減
- ・セキュリティ対策:個人情報は匿名化やマスキングを施す/暗号化ファイルで提供
- ・提供手段:セキュアな共有手段(SFTP/パス付きクラウド/VPNなど)を活用
加えて、個人情報保護法や業界特有のガイドラインに沿ったデータ取り扱いができるか、外注先との事前確認・契約(NDA含む)を必ず行いましょう。
データ分析を外部に委託する際は、費用の相場感や契約形態の違い、トラブルを防ぐための留意点を理解しておくことが重要です。この章では、発注前に押さえておきたいポイントを解説します。
データ分析の外注費用は、依頼先、分析の複雑さ、データ量、期間などによって大きく変動します。
- 個人(フリーランス)に依頼する場合:
相場: 比較的安価な場合が多く、簡単な集計や可視化であれば十数万円程度、統計解析や機械学習を用いた分析でも数十万円程度が目安となることがあります。
特徴: コストを抑えやすい反面、品質や納期、セキュリティ体制は依頼する個人によって大きく異なるため、慎重な選定が必要です。実績やポートフォリオ、レビューなどを十分に確認しましょう。
- 企業(データ分析会社、コンサルティング会社、IT企業など)に依頼する場合:
相場: 一般的に費用は高くなります。
小規模な分析プロジェクト: ~100万円程度
中規模な分析プロジェクト: 100万円~1000万円程度
大規模な分析プロジェクトや継続的な支援: 1000万円以上
特徴: 高い専門知識や豊富な経験、セキュリティ体制が期待できます。プロジェクトマネジメントやコンサルティング、最新ツールの利用なども含まれる場合があります。
- 費用の内訳例:
人件費: データアナリスト、データサイエンティスト、コンサルタントなどのスキルレベルや稼働時間によって大きく変動します。時間単価は数千円~数万円程度が目安です。
ツール費用: 分析に必要なソフトウェアやクラウドサービスの利用料が発生する場合があります。
コンサルティング費用: 分析戦略の立案やビジネスへの落とし込みに関するコンサルティングが含まれる場合、別途費用が発生することがあります。
初期費用: 環境構築やデータ連携などに初期費用が発生する場合があります。

企業への依頼においては以下のような契約形態があります。それぞれ業務範囲や指示系統に違いがあるため注意が必要です。
- 請負契約:
成果物の完成に対して報酬が支払われる契約形態です。分析結果レポートの作成、予測モデルの構築、BIダッシュボードの開発などが対象となります。
費用イメージ: プロジェクト全体のスコープと難易度によって大きく変動しますが、数十万円~数百万円以上となることがあります。
- 準委任契約:
特定の業務の遂行に対して報酬が支払われる契約形態です。データ分析に関するアドバイスやコンサルティング、分析計画の策定、継続的なデータモニタリングなどが対象となります。
費用イメージ: 月額固定型や時間単価型が多く、月額数百万円程度が目安となることがあります。
- 派遣契約:
外注先の従業員を自社に派遣して業務を行う契約形態です。自社の指示系統の下でデータ分析業務を行うことが可能です。
費用イメージ: 派遣される人材のスキルレベルや期間によって変動しますが、1人あたり月額数十万円~百万円程度が目安となることがあります。
- 契約範囲:
分析の対象データ、分析手法、期待される成果物の種類と形式(レポート、ダッシュボード、API連携など)、報告頻度、対応範囲(データの準備支援、結果の説明会など)を明確に定義します。
- 費用:
見積もりの内訳(人件費、ツール費、コンサルティング費など)を詳細に確認し、追加費用が発生する条件(データ量の超過、追加分析など)についても確認します。支払い条件(着手金、中間金、成果物納品後など)や請求のタイミングも明確にしておきましょう。
- 納期:
成果物の納期を具体的に設定し、遅延した場合の対応(遅延損害金など)についても協議しておきます。プロジェクト全体のスケジュールやマイルストーン、進捗報告の頻度と方法も確認しましょう。
- セキュリティ:
データ提供方法、データの保管場所と管理方法、アクセス権限、情報漏洩時の責任範囲、契約終了後のデータ取り扱いなどを明確に定義します。秘密保持契約(NDA)の締結は必須です。外注先のセキュリティ認証(ISO27001など)の取得状況も確認しておくと良いでしょう。
データ分析を外注しようとしたとき、「どの会社に依頼すればいいのか分からない」と感じる方は少なくありません。実際、データ分析を支援する会社は、それぞれ得意なことや提供するサービスが大きく異なります。自社の課題や目的に合わせて、最適なパートナーを見つけることが成功の鍵となります。
データ分析を通じて、経営戦略や事業課題そのものの解決をサポートしてくれるのが、コンサルティング会社です。彼らは、単にデータを分析するだけでなく、「なぜその分析が必要なのか」「分析結果をどうビジネスに活かすか」といった、より上流の戦略立案から実行までを伴走してくれます。
大手では、アクセンチュアやデロイトトーマツコンサルティングなどが有名です。特定の業界や専門分野に特化したコンサルティングを提供する会社もあり、複雑なビジネス課題をデータドリブンで解決したい場合に頼りになるでしょう。
データ分析の具体的な作業や、それを可能にするシステム・ツールの構築を得意とするのが、こちらのタイプです。データ活用の現場を支えるプロ集団といえます。
- データ分析業務の受託・実行を専門とする企業:
株式会社ブレインパッドなどが代表的です。特定の分析テーマや期間を決めてプロジェクトを依頼でき、分析設計からレポート作成までを任せられます。社内に分析リソースがない場合に特に有効です。
- AI/機械学習モデル開発やデータ基盤構築を得意とする企業:
株式会社ABEJAなどはAIや機械学習の高度なモデル開発に強みがあり、予測や最適化といった最先端の分析を実現します。また、NTTデータ株式会社やTIS株式会社などは、ビッグデータの収集・蓄積・加工を行うデータウェアハウスやデータレイクなどのデータ基盤構築を得意としており、分析以前のデータ環境の整備から相談できます。
- データ分析ツールの導入支援から運用までをサポートする企業:
TableauやPower BI、Looker StudioなどのBIツールの導入支援から、社内での運用トレーニングまでを一貫してサポートしてくれる会社です。ツールを活用して自社で分析体制を構築したい場合に適しています。
データ分析の内製化を進めたい、あるいは一時的に専門人材を確保したい場合に力になってくれるのが、人材の提供や育成に強みを持つ企業です。
弊社メンバーズデータアドベンチャーカンパニーなどがこれに該当し、データサイエンティストやアナリストを顧客企業に常駐の形で提供するサービスを提供しています。これにより、自社内に分析ノウハウを蓄積しながら、継続的にデータ活用能力を高めることが可能です。また、データリテラシー研修や社員向けのデータ分析トレーニングを提供し、企業のデータドリブン文化醸成を支援する企業もあります。
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サービスの詳細、支援内容、導入事例は下記ページで公開しています。
▶︎サービス内容:データ領域 プロフェッショナル常駐サービス
▶︎導入事例:導入事例 | メンバーズデータアドベンチャー
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まとめ
データ分析の外注は、専門知識の活用やコスト効率の向上といった大きなメリットがある一方で、情報漏洩リスクやノウハウが社内に残りにくいといった注意点も伴います。
成功のポイントは、以下の観点で信頼できる外注先を見極めることです。
- ・業界や課題に応じた実績と専門性
- ・十分なセキュリティ体制
- ・双方向でスムーズなコミュニケーション力
- ・将来的な内製化支援の有無
外注先には、戦略を支えるコンサルティング会社、実行を担う分析専門会社・システムベンダー、組織力を高める人材強化型の支援会社など、多様な選択肢があります。
まずは自社の目的や課題を整理し、それに最適なパートナーと連携することが、データ活用による成果創出、ひいてはビジネスの成長加速につながります。
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ベネッセ、メンバーズ、生成AI活用の先駆者が語るデータマネジメントの重要性と未来
ビジネスのDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、いろいろな場面でデータ分析が行われるようになっています。データ分析は上手く使えば大きな武器になりますが、明確な目的がないままデータ分析に着手してしまったり、選んだ分析手法が目的に対して適切ではなかったりするとその効果を最大限発揮できなくなってしまいます。
この記事では、数多く存在するデータ分析手法の中で、ビジネスの現場で頻繁に使われる主要な手法の概要と、それぞれの分析手法がどのような目的で使われるものなのかをご紹介します。
執筆者のご紹介
名前:長山大貴
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アカウントマネジメント室
現在は外食企業に常駐し、データ可視化や商品や顧客の分析、施策の効果検証などのデータ分析を主に担当。ただ数字を扱うのではなく、ビジネスの状況を深く理解してより良い意思決定に貢献できるように意識しています。
▶目次
TableauやPower BIは強力なツールですが、
「元のデータ」が整理されていなければ真価を発揮できません。
✔️「綺麗なグラフが作れない」
✔️「分析が次に繋がらない」
といった課題の根本原因と解決策を、
本動画で現役データサイエンティストが体系的に解説します。
データ分析とは、蓄積された情報から傾向や関係性、洞察を導き出すプロセスです。ビジネスでは日々さまざまな意思決定が行われていますが、主観や過去の経験だけに頼ると、判断にブレや再現性の欠如が生じがちです。そこで活躍するのが、客観的なデータを基にした「分析」です。データという客観的な根拠を活用することでより正確で、再現性のある意思決定を行うことができるようになります。
データ分析の取り組みをビジネス成果に結びつけるためには、ビジネスインパクトの大きい課題に取り組むこと、その課題に対する意思決定を行う中でデータ分析を行う目的を明確にすることが重要です。「データの活用」や「特定の分析手法を使うこと」自体を目的にするのではなく、まずは取り組むべき課題を明確にし、その課題に取り組むために最適な手段を検討します。
明確な目的がないままデータ分析を行うと、「勉強にはなったが、分析結果をどのように行動に移したらいいか分からない」という状況に陥ってしまいがちです。そのため、まずは課題解決のための道筋を立てて、その中で目的に沿ったデータ分析手法を選んで使っていくことが重要です。
データ分析を行う前に、まず理解しておきたいのが「データの種類」です。一般的には、量的データ(数値)と質的データ(カテゴリ)といった分類が知られていますが、ビジネス実務の現場ではそれに加えて、「集めたデータ」と「集まったデータ」という視点も非常に重要です。
「集めたデータ」とは、特定の目的のために自社でアンケートを作成したり、調査会社に依頼したりして収集したデータのことです。これらのデータは調査対象や回収方法を適切に設計することで、データの偏りを抑制することができます。例えば、日本の人口構成比に合わせてインタビュー対象者数を設定することによって、市場全体に近い集団をもとにデータ分析を行えるようになります。
一方、「集まったデータ」は、企業の日常的な事業活動に伴い、自然に蓄積されるデータを指します。例えばECサイトの購買履歴や、Webサイトやアプリ上での行動を記録したアクセスログなどです。この「集まったデータ」を扱う際は、データに意図しない偏りが生じていないか気を付ける必要があります。例えば、自社サイトのアクセス履歴は、自社のことを元々知っている人、もしくは検索ブラウザや広告を通して自社に興味を持った人のデータなので、そのデータを分析した結果は、自社のことを一切知らない人たちには当てはまらない可能性があります。他にも、ヘビーユーザーの方がキャンペーンに参加しやすい傾向がある、店舗の立地や形式によって顧客の行動傾向が異なるなど、各ビジネス/サービス特有の偏りは数多く存在するため、分析者はビジネスやサービスのことを深く理解する必要があります。
ここからは主要なデータ分析の手法をご紹介します。
<目的>
- ・傾向の把握
- ・共通認識を持つ
<詳細>
そもそもビジネス上関心がある情報を数字として見たことがない場合、まずはデータを抽出・集計して可視化することは非常に有効です。テーブルやグラフとしてデータを可視化することで、データの推移や規則性、大小関係など多くのことが明らかになります。また、可視化したデータをチーム内外で共有することで、共通認識を持って業務を進められるようになります。
データを可視化する際は、適切な形式を選ぶことが重要です。例えば棒グラフと線グラフは両方時系列のデータを表現するときによく使われますが、棒グラフのほうが数値の大小比較がしやすく、線グラフのほうが数値の上下が分かりやすいという特徴があります。このように、各可視化手法の得意分野を理解し、適切に使い分けることでより効果的に可視化したデータを使えるようになります。
<目的>
- ・情報を集約して使う
<詳細>
データはそのままだと情報量が多くて扱いにくいことが多いので基本統計量を算出して取り回しをよくすることが有効です。基本統計量はデータ全体を表す代表値と、データのばらつきを表す散布度に大きく分けられます。
代表値は平均値が有名ですが、他にも中央値や最頻値などがあります。平均値は非常によく使われる代表値ですが、極端に大きい/小さい外れ値に影響を受けやすいという特徴があり、注意する必要があります。例えば、1人あたりの購買額などほぼ上限がないといえる値は外れ値の影響を受けて平均が高くなりやすいので、データの分布を確認したうえで外れ値を除外したり、中央値を使うなどの対策を検討します。
散布度はあまり耳にする機会が多くないかもしれませんが、データの散らばりを表す「標準偏差」や、最大値と最小値の差である「範囲」などがあります。データのばらつきも非常に重要な指標で、例えば1日あたりの平均売上額が同じでも、標準偏差が大きければ日によって売上の上下が激しく、逆に標準偏差が小さければ毎日安定した売上を出している店舗と言えます。これは平均値だけを見ていては抜け落ちてしまう情報です。
基本統計量を算出することでデータの取り回しがしやすくなり、効率的に情報を伝えたり、比較がしやすくなるなどのメリットがありますが、同時に抜け落ちてしまう情報もあるので注意して使う必要があります。
<目的>
- ・属性や行動など特定の条件ごとに分解して比較したいとき
<詳細>
年代や性別などの属性や特定の行動の有無などで分けて度数や興味のある指標を算出することで、傾向や特徴を見つけることができます。例えば、キャンペーンへの参加率を性別や年代、過去の購買傾向などの条件ごとに算出することで、キャンペーンに興味を持ちやすいセグメントを特定するなどの分析を行うことができます。
クロス集計は取り組みやすい分析ですが、「集まったデータ」など、その分析のために収集したのではないデータを使う場合、データにバイアスがかかっている可能性があるので注意する必要があります。
<目的>
- ・ある事象が起こったことが単なる偶然か、そうでないかを判断する
<詳細>
ある商品をプロモーションするメールを2パターン作り、送信先をランダムに割り当てて送ったとき、メールAを受け取ったユーザーの方がメールBを受け取ったユーザーよりも多く商品を購入したとします。この場合、ただちにメールAのほうが効果的だったということができるでしょうか。このようなケースでは検定を行うことで、差が偶然によるものかそうでないかを判断することができます。それにより、実際には偶然ではないと言い切れない不明確な差に対して投資してしまうことを避けることができます。検定の手法は数多く存在するため、扱うデータや状況にあった検定手法を選定して使用します。
ただし、検定の結果統計的な有意性があったとしても、その差にビジネス上の意味があるかはまた別の問題です。統計的な有意性だけでなく、ビジネスインパクトも考えたうえで意思決定を行う必要があります。
<目的>
- ・データをグループ分けしたいとき
<詳細>
多くの異なるデータの中から、似た性質を持つものを集めてグループ(クラスター)を作るのがクラスター分析です。例えば、顧客の購買履歴や行動パターン、デモグラフィック情報など、様々なデータを使って「似たような顧客」を分類することができます。これにより、漠然とした顧客層を具体的なセグメントとして捉え、それぞれに合わせたマーケティング戦略や商品開発を行うことが可能になります。
クラスター分析は、明確な正解がない「教師なし学習」の手法の一つです。そのため、クラスター分析によって導き出された分類にどのような意味を見出すのか、分析者の専門知識や解釈力が重要になります。また、クラスタリング手法の選定やクラスターの数、クラスター同士の距離の測り方の定義など、設定によって得られる結果や示唆が変わるため、目的に合った手法や設定を選ぶ必要があります。
<目的>
- ・多くの情報から主要な要素を抽出して理解を深めたいとき
<詳細>
主成分分析は、多数の変数を持つデータセットから、それらの変数に共通する「主要な情報(主成分)」を抽出する統計手法です。例えば、顧客アンケートで「商品デザイン」「品質」「価格」「サポート」など多くの評価項目がある場合、相関が高い変数を一つの「主成分」としてまとめることで、次元を削減することができます(例えば、「品質」と「安心感」の相関が高い場合、1つの主成分に集約するなど)。
この分析の主なメリットは、データの次元を削減し、複雑な情報をシンプルな、かつ分かりやすい形に変換できる点です。多くの変数を持つデータでも、数個の主成分に集約することで、データ全体の構造や変数間の関係性を把握しやすくなります。これにより、顧客アンケートのデータから顧客が商品を評価するときの軸を発見したり、作成した主成分を次の分析に活用したりすることができます。
注意点としては、次元を削減することにより情報量が失われるため、複数の変数を主成分に集約したことによりどの程度の情報が失われたのかを把握しておく必要があります。
<目的>
- ・偏りを取り除き、因果関係を捉える
<詳細>
「集まったデータ」を使うときはデータの持つ偏りに注意する必要があると繰り返しご説明していますが、偏りがあるデータを使って出来るだけ純粋な効果を捉えようとする因果推論という考え方があります。因果推論の代表的な分析手法として、差分の差分法、傾向スコアマッチング法などがあります。
差分の差分法では、例えばある施策を行った場合、その施策の影響を受けたグループと施策の影響を受けていない比較対象のグループそれぞれで時系列のデータを準備し、各グループにおける施策前後での数値の差分を算出して、さらにその差分のグループ間での差分を求めることで純粋な因果関係を知ろうとします。施策の影響を受けていないグループの施策前後の変化を見ることで、「施策を行っていなかった場合でも起こっていたと考えられる変化」を加味して純粋な施策による効果を知ることができます。ただし、これは施策の影響を受けたグループと受けていないグループでは施策の影響以外の差がないという仮定のもと分析を行っているため、比較対象のグループをどう設定するかが重要になります。
実務では偏りのあるデータしか手に入らないことも多いため、因果推論を使うことで施策の効果などをより正確に計測し、ビジネスに活用することができます。
<目的>
- ・一緒に買われやすい商品の組み合わせを知る
- ・他商品の購買促進効果を測る
<詳細>
よく一緒に買われている商品の組み合わせを発見し、販売方法などを工夫したり、レコメンデーションに活かしたい場合にはアソシエーション分析を使うことができます。アソシエーション分析では以下の3つの指標を算出し、一緒に買われやすい組み合わせや、他商品の販売促進効果を分析します。
- ・支持度(Support):全データの中で、商品Aと商品Bが一緒に買われた割合
- ・信頼度(Confidence):全ての商品A購入データのうち、商品Bが一緒に買われた割合
- ・リフト値(Lift):商品Aの購入による、商品Bの購入促進効果
仮に信頼度が高かったとしても、商品Aがあまり買われておらず、全体に対する影響度が小さい(=支持度が低い)可能性もあります。また、商品Bが人気商品の場合他の商品と一緒に買われる確率は自然と高くなるため、リフト値も重要な指標です。そのため、それぞれの指標をバランスよく見て判断することが重要です。
例えば支持度が一定以上あり、信頼度も高い場合、商品Aと商品Bを近くに陳列することでセットでの購入を促進する、などの意思決定につなげることが考えられます。
<目的>
- ・予測したいとき
- ・実績を解釈したいとき
<詳細>
回帰分析は将来の予測や実績の解釈などに使うことができ、非常に汎用性の高い分析手法です。過去の傾向から将来を予測したい場合、予測したい数値(被説明変数と呼びます)と、被説明変数に関係のある変数(説明変数と呼びます)を学習させることで、説明変数をもとに被説明変数を予測するモデルを作成することができます。
また、作成したモデルに着目し、被説明変数に対して与える影響が大きい/小さい説明変数を特定することで、実績の解釈に役立てることもできます。
回帰分析を用いた予測では、例えば過去の実績をもとにあるユーザーがキャンペーンに参加する確率を予測するモデルを作成し、参加率が高いユーザーに対してメールを送信するなどの施策に移すことができます。
回帰分析を解釈に役立てたい場合、先述のモデルにおいて被説明変数に対して影響度合いが大きい説明変数を探し、どのような特徴を持ったユーザーがキャンペーンに参加しやすいかを解釈することができます。
<目的>
- ・結果を予測し、その予測に至るプロセスを知りたいとき
<詳細>
決定木分析は、ある結果(例えば「顧客が商品を購入するかしないか」)が、どのような条件の組み合わせで起こるのかを、樹形図(決定木)を使って分析・予測する手法です。データの規則性やパターンをツリー状に分岐させながら可視化するため、予測に至るプロセスが非常に分かりやすいという特徴があります。
例えば、Webサイトの訪問者が商品を購入するかどうかを予測したい場合、決定木分析を使うと、「訪問経路が〇〇で、滞在時間が△△分以上なら購入する確率が高い」といった具体的なルールを発見できます。これにより、顧客がなぜその行動を取るのか、その理由を直感的に理解し、ビジネス戦略に活かすことができます。
ただし、決定木分析は、データに過剰に適合(過学習)しやすいというデメリットもあります。複雑な木を作りすぎると、学習データにはフィットしても、未知のデータへの予測精度が落ちる可能性があるため、適切な木の深さや枝の剪定が重要になります。
<目的>
- ・過去の変動パターンから将来を予測したいとき
<詳細>
時系列分析は、時間とともに変化するデータ(時系列データ)のパターンを分析し、将来の動向を予測する手法です。売上、株価、気温、アクセス数など、時間の経過とともに変動するデータに適用できます。この分析では、データの「トレンド(長期的な傾向)」「季節性(周期的な変動)」「不規則変動(ランダムな動き)」といった要素を分解して捉えることで、より正確な予測を可能にします。
例えば、過去数年間の商品の売上データから、季節ごとの需要の変動パターンや、長期的な売上の成長傾向を把握し、来月の売上を予測することができます。これにより、在庫管理の最適化、生産計画の立案、マーケティング施策のタイミング決定など、多くのビジネスシーンで役立ちます。
時系列分析の課題は、予測が過去のデータパターンに依存するため、予測期間が長くなるほど不確実性が増す点や、予測不能な突発的なイベント(自然災害や経済危機など)には対応しにくい点です。また、データの収集間隔や粒度によって分析結果が大きく変わるため、適切なデータ準備が不可欠です。
まとめ
この記事では、データ分析をビジネス成果につなげるために重要な視点と、主要な分析手法、その使用目的や特徴をご紹介しました。
データ分析をビジネス成果につなげるためには、目的が明確でないままデータ分析を始めるのではなく、まずは取り組むべきビジネス上の課題を決め、その課題に対して取り組む中で目的に合ったデータ分析手法を選んで使う必要があります。また、自然に蓄積した「集まったデータ」を使う場合、データの中に存在する偏りに注意して分析を進める必要があります。これにはビジネスやサービスのドメイン知識が必要なため、分析者もビジネスへの理解を深めることが重要です。
データ分析には数多くの手法が存在しますが、それぞれの目的や注意すべきポイントを正しく理解したうえで活用することで、その効果を最大限発揮させることができます。データ分析を活用することで、経験や直感だけに頼るよりもより質、再現性が高い意思決定が行えるようになります。
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データを可視化!BIツール導入によるデータドリブンの促進
物流業界では、「2024年問題」や人手不足、燃料費や人件費などのコスト高騰といった構造的課題が顕在化しています。効率化と競争力維持の両立が求められる中で、今、改めて注目されているのが「データ活用」です。本記事では、物流現場やサプライチェーン全体の最適化を目指す企業・担当者向けに、今回は以下をお伝えします。
- ・物流業界におけるDX推進の必要性
- ・データ活用の具体的メリット
- ・サプライチェーン最適化と4PLの役割
- ・実際の物流システム活用例
- ・DX推進に向けた実践ステップ
執筆者のご紹介
名前:川口翔太
- 所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー サービス開発室
- 現在はエンタメ業界でのデータ活用支援に従事。過去には金融業界での機械学習モデルの開発やBIダッシュボード構築など、幅広い分析業務を経験している。
- 統計検定2級/E資格/ITストラテジスト/プロジェクトマネージャなどを保有
▶目次
多くの企業がDXを掲げる一方、「データをどう事業成果に繋げるか」という最も重要な壁に直面しています。データ基盤を整えても、そこからビジネス価値を生み出せなければ意味がありません。
弊社は、データ領域のプロフェッショナル人材の提供により、お客さまのステージに合ったデータ活用~定着を継続的に支援します。
関連資料:DX×データ活用で組織と事業を推進!
物流業界は現在、「2024年問題」をはじめとする多くの構造的課題に直面しています。2024年4月より施行された働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働が制限され、輸送力不足が深刻化することが予想されています。加えて、ドライバーの高齢化と新規人材の不足による慢性的な人手不足が続いており、EC市場拡大に伴う配送需要の増加が需給ギャップを拡大させています。
さらに燃料費の高騰や物価上昇もコストを押し上げており、従来の非効率な業務フローのままでは企業収益を圧迫しかねません。これらの課題は、単なる現場の工夫ではもはや解決が難しく、構造的な改革が求められています。
また、サプライチェーン全体の透明性や柔軟性の不足も、突発的な需給変動や災害対応の遅れにつながっており、業界全体の競争力を下げる要因となっています。
こうした状況において注目されているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進とデータ活用です。業務の可視化やボトルネックの把握、将来予測といった領域において、データに基づく意思決定と業務の最適化が強く求められています。
たとえば、業務プロセスのどこに時間がかかっているのか、どの配送ルートが非効率なのかといった課題を可視化し、AIやIoT、ロボティクスを使って効率化することで、少ないリソースでも高い生産性を発揮できる体制が整います。
このように、物流業界が持続的に発展していくためには、業務のデジタル化を通じて、より柔軟で強靭なサプライチェーンを構築していくことが不可欠なのです。
物流領域でのデータ活用は、目に見える効果を短期間で生み出せることから、DX推進の初期段階の取り組みとして最適です。ここでは、物流業務における特に効果が表れやすい3つの代表的なメリットを紹介します。
配送リードタイムの短縮は、顧客満足度向上だけでなく、業務効率化や車両稼働率向上にも大きく貢献します。実現の鍵となるのが、過去の配送実績、道路状況、交通量、天候など多様なデータを活用したルート最適化です。AIを活用すれば、曜日や時間帯別の最適ルートを自動で算出することも可能です。
実際に、日本郵便ではAIを用いて配達順序の最適化を行った結果、
- ・配送時間の短縮
- ・燃料消費の削減
- ・誤配の減少
といった成果を実現。新人ドライバーでも熟練者と同等の効率で配送できるようになり、教育負担の軽減にもつながります。
在庫管理の最適化は、欠品による機会損失と過剰在庫によるコスト増の両方を防ぐ重要な施策です。過去の販売実績やシーズン要因、地域ごとの需要傾向などをもとに、AIで需要予測を行い、それに基づいて適正在庫を維持することが可能になります。
たとえば、IoTを活用した在庫センサーによってリアルタイムな在庫情報を収集し、WMS(倉庫管理システム)と連携することで、在庫の過不足を自動検知・自動補充する仕組みも構築できます。これにより、無駄な在庫スペースの削減や在庫回転率の向上が期待され、さらにはキャッシュフローの改善にも寄与します。
物流業務における主要コストである輸送費・人件費・保管費の削減にも、データ活用は大きく寄与します。輸送費については、前述の配送ルート最適化による燃費向上や積載率の向上によって、1回あたりの配送効率が改善します。
人件費については、倉庫作業の自動化やスマートグラスなどの支援ツールを導入することで作業の精度と速度が向上し、少人数でも高い生産性を確保できます。また、作業ログや実績データを収集・分析することで、無駄な動線や重複作業を洗い出し、オペレーション全体の見直しにもつながります。
このように、データ活用は単なる部分最適に留まらず、物流全体の収益構造そのものを変革する力を持っています。企業が持続的に成長するための競争優位性としても、今後ますますその重要性は高まっていくでしょう。
物流におけるデータ活用では、単一のプロセスにとどまらず、サプライチェーン全体を俯瞰して最適化する視点が求められます。原材料の調達から、製造、保管、配送、最終顧客への到着まで、すべての工程をデジタルで連携・統合・最適化することが企業競争力に直結します。
需要予測は、サプライチェーン最適化の出発点です。過去の販売実績データに加え、気象情報、経済指標、プロモーション日程、地域イベントなどの外部要因も取り入れたAI分析により、より高精度な予測が可能になります。
これにより、仕入れや製造計画の最適化、販促戦略との連動が可能となり、需給ギャップによる在庫ロスや欠品を防ぐことができます。また、繁忙期や閑散期の人員配置や輸送リソース確保の計画も立てやすくなり、コストと品質のバランスを取ることができます。
需要予測に基づいた在庫管理は、無駄な在庫を抑えつつ機会損失を防ぐ鍵です。IoT機器を通じて庫内の在庫をリアルタイムで可視化することで、倉庫間の在庫バランス調整や、適正在庫の自動補充が可能になります。
また、ABC分析や回転率評価などのデータ分析を行うことで、商品特性ごとの管理レベルを最適化することも可能です。これにより、保管スペースの有効活用、作業効率の向上、廃棄リスクの軽減といったメリットが得られます。
配送の最終段階では、TMS(輸配送管理システム)や車載デバイスから得られるリアルタイムデータを活用することで、ルート最適化が図れます。たとえば交通渋滞や天候の変化、積載率、配送先の受け入れ可能時間などを加味して、動的に最適ルートを再計算する技術も登場しています。
この最適化により、配送リードタイムの短縮はもちろん、CO2排出量削減、燃料費の削減、ドライバーの拘束時間短縮にもつながり、SDGsやESG対応としても注目されています。配送の効率化は顧客満足度向上に直結するため、物流企業にとっても重要な差別化要素です。
4PL(Fourth Party Logistics)は、3PL(Third Party Logistics)よりも一歩進んだ戦略的アウトソーシングの形態です。3PLが実際の倉庫作業や輸配送を担うのに対し、4PLは物流全体の統括・設計・最適化を担います。
4PL事業者は、WMSやTMSなど複数のITシステム、複数の物流業者(3PL)を統合的に管理し、サプライチェーン全体を横断的に最適化します。企業にとっては、物流を単なる「機能」ではなく「戦略」として設計・運用できるという大きなメリットがあります。
また、物流領域におけるKPI管理、コスト分析、需要予測なども担い、リアルタイムのデータ連携に基づいた迅速な意思決定支援が可能です。企業にとっては自社のコア業務に集中しつつ、専門家による高度な物流戦略の立案・実行を任せられることから、近年注目を集めています。
日本国内では、EC事業者や製造業などを中心に、複雑化するサプライチェーンの管理をアウトソースする形で4PL活用が広がっており、特にDXとの親和性が高いモデルとして今後も成長が期待されています。
このように、サプライチェーン全体を対象としたデータ活用は、単なる部分的な効率化を超え、経営レベルでの意思決定や顧客価値の創出につながります。物流の役割が「コストセンター」から「プロフィットセンター」へと変化しつつある今、データを軸とした最適化戦略の重要性はますます高まっているのです。
物流DXの基盤として、多くの企業で導入が進んでいるのが WMS(倉庫管理システム) と TMS(輸配送管理システム) です。これらのシステムは、業務の標準化・効率化だけでなく、データ活用による現場の可視化と最適化を可能にし、サプライチェーン全体の高度化を支えています。
WMSは、在庫情報や入出庫情報、棚卸し作業など倉庫内の業務を一元的に管理するためのシステムです。バーコードやRFIDと連携させることで、在庫の位置や数量をリアルタイムで把握することが可能になります。
主なメリット:
- ・作業指示のデジタル化による業務効率の向上
- ・人為ミスの削減
- ・作業員の動線・リソース配分のAIによる最適化
- ・作業実績データをもとにした継続的改善
従来の倉庫業務は熟練者の経験に依存しており、属人化によるばらつきが課題でした。しかしWMSの導入により、業務の標準化・品質の均一化が実現し、教育コストや労働環境の改善にもつながります。
TMSは、配送計画の立案から配車、運行管理、配送状況の可視化、実績分析までを一貫して行うことができるシステムです。輸配送に関するデータを集約・分析し、より効率的なルートや積載計画を自動で提案する機能も備えています。
主な機能とメリット:
- ・AIによる最適ルートや積載計画の自動立案
- ・GPSによるリアルタイム配送追跡と到着予測
- ・納品状況の可視化と遅延時の即時対応
- ・配送実績のデータ蓄積によるPDCAの高速化
- ・拘束時間・運転時間の管理による法令対応(2024年問題)
さらに、TMSを導入することでドライバーの負荷軽減や顧客満足度向上にもつながり、持続可能な物流運用を支援します。
WMSとTMSを連携させることで、倉庫内と輸配送の情報がシームレスに結びつき、全体最適化が可能になります。さらに、BIツールやダッシュボードと組み合わせれば、経営層へのレポーティングや意思決定にも有効に活用できます。
物流システムの導入は単なる業務効率化にとどまらず、サプライチェーン全体の可視化・最適化の基盤となるものです。自社に合ったシステムを選定・運用することで、DX推進のスピードと成果を大きく高めることができるでしょう。
最初のステップは、現場や経営レベルでの課題の明確化と仮説設定です。
配送遅延の原因は何か、在庫の偏りはなぜ生じるのかといった現象を、データで検証可能な形に言語化します。
このフェーズでは、現場の声を丁寧に拾いながら、経営層と現場の認識をすり合わせ、解決すべきテーマを明確にすることが重要です。課題の本質が明確になれば、KPI設計や導入すべき技術の方向性も見えてきます。
たとえば、「リードタイムを20%短縮したい」というKPIを掲げた場合、それを実現するには何のデータが必要か、どの工程を改善すべきか、といった仮説を立て、それに基づく検証と施策に展開していきます。
次に、必要なデータを収集・統合し、分析・可視化可能な状態にする「基盤」を整備します。これはDXの心臓部ともいえる重要なプロセスです。
収集対象となるデータは多岐にわたります。社内システム(WMS、TMS、ERPなど)から取得できる定量データに加え、IoT機器やセンサーによるリアルタイムデータ、外部の交通・天候・市場動向データなども組み合わせることで、より精緻な分析が可能になります。
構築にはDWH(データウェアハウス)やデータレイク、ETL(抽出・変換・格納)ツールの導入が求められ、加えてデータの正確性・一貫性・更新頻度の管理体制(データガバナンス)や、アクセス権・情報漏洩対策といったセキュリティ設計も不可欠です。
将来的な拡張性や他システムとの連携性も考慮し、スモールスタートであっても堅牢なデータ基盤を構築することが、後の投資効果を最大化する鍵となります。
データ基盤が整えば、次は実際に分析・活用するためのツールやソリューションの選定です。ここで重要なのは、自社の課題・目的に合致した技術を選ぶことであり、「流行っているから」「高機能だから」だけで導入しないよう注意が必要です。
BIツール(Tableau、Power BI など)によるダッシュボード化、AIによる需要予測・配車最適化、ロボットやスマートグラスによる現場作業支援など、適用範囲は多岐にわたります。クラウドかオンプレミスか、既存システムとの親和性、スキル習得のしやすさなども判断材料となります。
また、PoC(概念実証)を行い、実運用前に「導入効果があるか」「現場が使いこなせるか」を検証することで、リスクを最小限に抑えることができます。この段階で社内教育や操作マニュアルの整備も並行して進めておくと、スムーズな展開につながります。
いきなり全社規模で導入するのではなく、小規模な範囲から始める「スモールスタート」は、DXを定着させるうえで非常に有効な手法です。
たとえば、1拠点の倉庫業務からWMSを導入したり、特定のエリア配送にTMSを適用するなど、限定的な導入により、現場の反応・効果・課題を確認します。ここで得られた成果と学びをもとに、次の対象部署や拠点へと展開していく「横展開」へとつなげます。
また、改善効果の可視化や、現場担当者のフィードバックを積極的に取り入れることで、現場との信頼関係を構築し、現場主導型のDX文化が根付きやすくなります。
さらに、PDCAサイクルを回しながら改善を積み重ねることで、施策の精度と成果の確度を高めることができます。最終的には、スモールスタートを足がかりに企業全体のDX推進につなげていくことが理想です。
このように、明確なステップを踏んでデータ活用を推進することは、単なる一過性の施策ではなく、企業の競争力を持続的に高める基盤づくりでもあります。着実に、そして柔軟に進めることが、物流DX成功の鍵となります。
まとめ
本記事では、物流業界が直面する2024年問題や人手不足、コスト増加といった課題に対し、データ活用を通じたDXの必要性とその進め方を紹介しました。配送リードタイムの短縮、在庫の適正化、コスト削減といった成果を実現するためには、業務の可視化と分析、そして段階的な実行が鍵となります。サプライチェーン全体の最適化や4PLの活用も視野に入れながら、自社にとって最適なDX戦略を描くことが、今後の競争力確保と持続的成長に直結します。まずは自社の課題を洗い出し、できる範囲からデータ活用を始めてみることが、物流DXの第一歩となるでしょう。
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なぜ多くの企業がデータ分析に失敗するのか?成功の鍵とその対策
一般社団法人生成 AI 活用普及協会(GUGA)主催の「GenAI HR Awards 2025」にて、カンパニー社長の白井恵里が一般社団法人 Generative AI Japanの理事として会場審査員を務めます。
【「GenAI HR Awards 2025」概要】
<エントリー概要>
■エントリー対象:各部⾨の要件を満たす企業や教育機関、公共機関
■エントリー費⽤:無料
■エントリー期間:2025年7⽉1⽇(⽕)〜7⽉31⽇(⽊)
■詳細:GenAI HR Awards 2025 公式Webサイト
<会場審査概要>
■開催日時:2025 年 10月 9日(木)12:00-18:00
■会場 :幕張メッセ(NexTech Week 2025【秋】第 6 回 AI・人工知能 EXPO 内)
審査員紹介
白井 恵里(しらい えり)
株式会社メンバーズ 執行役員
兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長
東京大学を卒業後、株式会社メンバーズへ入社。
大手企業のオウンドメディア運用、UXデザイン手法での制作や、デジタル広告の企画運用に従事したのち、2018年11月に社内公募にてメンバーズの子会社(現、社内カンパニー)社長として株式会社メンバーズデータアドベンチャーを立ち上げ。
データアナリスト、データサイエンティスト、データエンジニアなどデータ領域のプロフェッショナルの常駐により企業のデータ活用を支援し、顧客ビジネス成果に貢献するサービスを提供。
2020年10月から株式会社メンバーズ執行役員兼務。現在カンパニーに所属するデータ分析のプロフェッショナルは約150名。
2024年、一般社団法人Generative AI Japan立ち上げに伴い、理事就任。
X @EriShirai
DXを推進する企業にとって「内製化」は避けて通れないテーマです。本記事では、DX内製化のメリット・デメリット、具体的な実践ステップ、成功のための戦略、そして実例を通じて、競争力強化のための道筋を示します。特に、弊社(メンバーズデータアドベンチャー)での社内DX推進の取り組みをベースとした事例を紹介しています。
執筆者のご紹介
名前:山本 和音
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャー サービス開発室
業務内容:データストラテジストとして、データ基盤の開発や生成AIの業務適用に注力。ビッグデータ解析、レポーティング、自動化ツールの開発を担当。最近は生成AIを活用した業務効率化とデータ利活用の新たな可能性を探求中。
▶目次
多くの企業がDXを掲げる一方、「データをどう事業成果に繋げるか」という最も重要な壁に直面しています。データ基盤を整えても、そこからビジネス価値を生み出せなければ意味がありません。
弊社は、データ領域のプロフェッショナル人材の提供により、お客さまのステージに合ったデータ活用~定着を継続的に支援します。
関連資料:DX×データ活用で組織と事業を推進!
DX内製化とは、外部ベンダーに依存せず、企業自らがデジタル技術を活用して業務やサービスを変革する体制を築くことです。これにより迅速な意思決定と柔軟な対応が可能になります。
ベンダーロックインとは、一度導入した外部システムやサービスに依存し、抜け出せなくなる状態です。このような状況では、追加開発や仕様変更にコストや時間がかかるうえ、柔軟な改善ができず、競争環境の変化に対応しきれなくなるリスクも生じます。内製化を進めることにより、技術や運用ノウハウを社内に蓄積し、外部依存から脱却することが競争力の維持・強化に直結します。
- コスト削減:長期的な観点で見ると、内製化によって外注費を大きく削減できます。初期こそ人材育成や環境整備などの投資が必要ですが、一度スキルと仕組みが社内に定着すれば、継続的なアウトソースコストやベンダーとの調整工数も大幅に削減可能です。また、変化への対応スピードも早まり、開発や改善にかかる総コストの最適化が図れます。
- 組織力向上:内製化の過程でチームの自律性と部門間の連携力が高まり、問題解決能力の底上げにつながります。部門を横断した取り組みや、業務を深く理解した上でのシステム設計が可能になるため、現場に即したDXが実現しやすくなります。
- ノウハウ蓄積:外部に依存せず業務改善を進めることで、自社独自の知見やベストプラクティスが蓄積されていきます。これは新規プロジェクトや後進育成にも活用でき、ナレッジとして資産化される点が大きな強みです。
- ベンダーロックイン解消:内製化は、特定のサービスや技術に縛られずに柔軟な技術選定を可能にします。将来的にツールやアーキテクチャを変更したい際にも、技術的負債や切替コストを最小化できます。
- 人材確保:DXを内製で推進するには、専門的なスキルを持つ人材の確保が不可欠です。しかし、データ分析やクラウド技術などの人材は市場でも引く手あまたであり、採用競争が激しいのが現状です。育成にも時間を要するため、中長期的な視点での人材戦略が求められます。
- 品質維持:ベンダーに頼ることで担保されていた品質水準を内製で維持するには、仕組みとガバナンスが必要です。標準化された開発フローやレビュー体制の整備、継続的なスキルアップが求められます。短期間での高品質実現には相応の努力とマネジメントが必要です。
- 初期投資:人材採用・教育、基盤構築、開発環境整備など、内製化には一定の初期投資が必要です。特に体制が整うまでは効率が低く見えることもありますが、長期的な費用対効果や柔軟性を考慮すれば十分に見合う投資といえます。経営層の理解と中期的な視点での評価が重要です。
まず最初に行うべきは、内製化を進める「目的」と「背景」の明確化です。単なるコスト削減だけでなく、業務効率化、スピードの向上、データ活用力の強化など、企業ごとの課題に即した動機付けが必要です。
次に、経営層の合意形成を図るため、目的に基づく仮説を立て、成果目標やKPIを設計します。ここで重要なのは、業務プロセスや組織構造を俯瞰した上で、内製化によってどのような変化が起きるのかを見通すことです。これがプロジェクトの道しるべとなります。
いきなり全社展開を目指すのではなく、小さく始めてスピーディに成果を出す「スモールスタート」が鉄則です。たとえば、社内に散在するExcel業務の自動化、定型レポートのBI化といった、インパクトが大きく実現可能性の高い領域から着手します。
初期フェーズでは、「早く・小さく・効果的に」結果を出し、社内の信頼を得ることが大切です。その上で、得られた成功事例を社内へ展開し、ナレッジとして共有します。これが組織的な内製文化の醸成に寄与します。
内製化とはいえ、すべてを社内で完結する必要はありません。むしろ、初期段階では外部の知見を取り入れた方がスムーズに進むケースも多くあります。
内製化可能な領域と外注すべき領域を明確に分け、無理なく着実に内製化を推進できます。また、現場メンバーへのスキルトランスファーを通じ、将来的に自走可能なチーム体制を構築することも可能です。
最後に欠かせないのが、継続的な効果測定と改善です。定期的にKPIをモニタリングし、成果を可視化することで、経営層への報告や現場のモチベーション維持に役立ちます。
また、PDCAサイクルを回すことで、課題の早期発見と改善が図れ、プロジェクトの品質とスピードを両立できます。単なる一時的な取り組みで終わらせず、「継続的な内製化文化」を企業に根付かせることが重要です。
DX内製化を企業に根付かせるには、「人材」「技術」「組織」という三位一体の戦略が欠かせません。それぞれの視点から、実効性のある取り組みポイントを整理します。
内製化の第一歩は「人材」の確保と育成です。外部ベンダーに頼らず、自社でプロジェクトを遂行できるスキルを持ったメンバーの存在が不可欠です。
まず、データ分析やシステム開発、クラウド、AIなどのスキルを持つ人材を採用するとともに、既存社員への教育・育成体制にも力をいれることが重要です。OJTや社内勉強会、社外研修などを活用し、「学びながら実践する」文化を醸成します。
また、内製化にはマインドも重要です。自ら学び、課題を主体的に解決していく姿勢を持ったメンバーが活躍します。内製化を担う人材が孤立しないように、チーム化してノウハウを共有する体制を整えましょう。
次に必要なのは「技術戦略」です。単なるツール導入ではなく、将来的な拡張性と保守性を見据えた技術選定とアーキテクチャ設計が求められます。
たとえば、ローコード/ノーコードツールやGCP、AWS、Azureなどのクラウド基盤は、コストや開発速度の面で優位です。重要なのは「どの技術を選ぶか」だけでなく、「誰が使えるか」「誰が保守できるか」です。
さらに、セキュリティやガバナンス、データ品質など、運用フェーズを意識した技術設計が必要です。内製化が進むほど、開発の自由度は上がる反面、標準化・ルール化しなければ属人化のリスクが増大します。
最後に重要なのが「組織戦略」です。どれだけ優秀な人材や技術があっても、組織がそれを後押ししなければ内製化は定着しません。
経営層が内製化の意義を理解し、継続的な支援を約束すること。さらに、現場主導の自走を促すための権限委譲と失敗を許容する文化づくりが重要です。
また、横断的な情報共有の仕組み(ナレッジ共有、振り返り、失敗事例の共有など)を整備することで、組織内に内製文化を根付かせることができます。
<背景と課題>
弊社では、社内の人材情報とマーケティング情報が複数のスプレッドシートに散在しており、統一されたデータ管理が行えないという課題を抱えていました。部署ごとに管理が分かれ、情報の整合性を取るのに多大な時間がかかっていたほか、現場からは「全体を俯瞰したい」「更新のたびに連携ミスが起きる」といった声も上がっていました。
<プロジェクトの特徴>
このプロジェクトは、弊社サービス開発室のメンバーのみで構成され、完全に内製で進行された点が最大の特長です。さらに、特定の外部可視化サービスや高額なSaaSに依存することなく、汎用性の高いGoogleCloudと無償・社内リソース中心の技術スタックを用いて構築されました。
<取り組み内容>
以下の構成に基づき、Googleスプレッドシート → GoogleCloud → Looker Studioという一連の流れを自動化し、日々の業務で使えるダッシュボードとして運用可能にしました。
- ・データ収集:Google Apps Scriptによりスプレッドシートの内容を定期収集し、Cloud Storageにアップロード
- ・データ蓄積:Cloud StorageからBigQueryへデータ転送(Data Transfer Service)
- ・データ加工・集計:Cloud Functionsを利用し、業務用途に合わせた整形・マート化を実施
- ・可視化:Looker StudioでグラフやKPIの可視化ダッシュボードを作成
- ・保守と拡張性:Cloud StorageとBigQueryによるバックアップとバージョン管理体制も内製で整備
<成果と効果>
- ・完全内製によるスキル蓄積と属人性の排除:全メンバーが設計から運用まで関わったことで、属人性のないドキュメントとナレッジが社内に蓄積されました。
- ・意思決定スピードの向上:リアルタイムで人材情報やマーケティング状況を確認できる環境を構築。
- ・保守性と汎用性:ツール依存がなく、社内の他業務や他部署にも展開しやすい構成により、高い再利用性を実現。
- ・コスト削減:外注コストゼロ、SaaS利用費不要で年間30%以上の費用削減につながりました。
<今後の展望>
この仕組みは、現在別部署や他プロジェクトへの横展開が進められており、「社内DXの共通基盤」としての可能性を広げています。今後は、生成AIの活用やより高度な分析機能の内製追加など、さらなる進化を視野に入れています。
まとめ
DXの内製化は、コスト削減やノウハウ蓄積に加え、外部依存からの脱却によって企業の競争力を高めるための有効な手段です。ただしその実現には、人材確保や体制構築など、計画的な取り組みが必要です。本記事で紹介したステップと戦略を参考に、自社に合った内製化の道筋を描き、必要に応じて外部の力も借りながら取り組むことが成功への鍵となるでしょう。
「内製化を進めたいがどこから手を付けてよいか分からない」──そんなお悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。貴社のフェーズやリソース状況に応じて、最適な伴走支援をご提案いたします。
メンバーズデータアドベンチャーでは、こうした内製化の推進を伴走型で支援するサービスをご提供しています。データ活用基盤の構築から、実践的なスキルトランスファーによる人材育成支援まで、貴社の課題に応じた最適な支援体制を構築します。まずはお気軽にご相談ください。
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ベネッセ、メンバーズ、生成AI活用の先駆者が語るデータマネジメントの重要性と未来
部門ごとに情報が分断され、必要なデータがすぐに見つからない。そんな「情報のサイロ化」は、今や多くの企業で深刻な課題です。この記事では、データの利活用をどのように加速させていくのかを、情報の一元化という観点からお伝えします。データの利活用においては、ただデータを用意し分析するだけではなく、活用しやすい環境を整備することも重要な要素です。
執筆者のご紹介
名前:阿曽
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アカウントマネジメント室
普段は主にデータ分析基盤の開発・運用を行っています。最近は、データマネジメントの視点から、メタデータ整備のためのデータカタログシステムの導入にも従事し、分析担当者のデータ利活用をサポートしています。
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多くの企業がDXを掲げる一方、「データをどう事業成果に繋げるか」という最も重要な壁に直面しています。データ基盤を整えても、そこからビジネス価値を生み出せなければ意味がありません。
弊社は、データ領域のプロフェッショナル人材の提供により、お客さまのステージに合ったデータ活用~定着を継続的に支援します。
関連資料:DX×データ活用で組織と事業を推進!
情報のサイロ化とは、組織内の各部門やチームが持っているデータが他部門と共有されていない状態を指します。例えば以下のようなケースでは情報のサイロ化が発生しているといえます。
- ・営業部門が持っている顧客情報をマーケティング部門が把握・アクセスできていない。
- ・データに関する仕様をシステム部門のみが把握しており、実際にデータを活用するユーザー部門がデータを理解するのに時間がかかってしまう。
このような情報のサイロ化は、知っていれば未然に防げたトラブルによって手戻りが発生してしまったり、社内での情報収集に時間がかかってしまったりなど、業務効率の低下につながります。業務効率の低下はそのままプロジェクトの進捗や意思決定を遅らせてしまい、ビジネスへの悪影響を及ぼします。
また、データ活用においても、情報のサイロ化は以下のような理由から障壁となってしまいます。
- ・そもそもどのようなデータがどこにあるかがわからず収集に時間がかかってしまう。
- ・収集されたデータがどのような仕様なのかの解析にも時間がかかる。
- ・データの管理方法がバラバラなため、データを利用するための連携に都度大きな工数がかかってしまう。
情報のサイロ化が起きてしまう要因としては、主に組織構造によるものとシステム設計によるものの2つが挙げられます。
- ・組織構造によるもの
部門間で連携がうまく取れていないと情報のサイロ化が発生しやすくなります。
これは縦割り組織のような構造の中で連携がうまく取れていないケースや、「この部門にお願いしてもきちんと対応してくれない」など部門間の関係性に起因する場合もあります。
- ・システム設計によるもの
各部門が別々のシステムを導入している場合、それらのシステムは各部門に最適化されています。
これによりデータ自体も各部門およびシステム向けにカスタマイズされていることが多く、仕様もバラバラとなり共有することが難しくなってしまいます。
組織の情報を部門やチームを問わず、1箇所に集約・管理する「情報の一元化」を行うことで、これらの課題を解決することが可能です。
情報の一元化とは、全員が同じ場所から同じ情報を利用できるようにすることを指します。これにより組織内での情報の所在が明確になり、サイロ化の防止、業務効率化やデータ利活用の促進につながります。
情報の一元化を行うと、各部門が同じ情報を通じて業務を進められるため、認識齟齬やそれによる手戻りが減少します。共通認識のもと迅速な協働が可能になり、部門間のコミュニケーションの促進も期待できます。
例えば営業、マーケティング、商品開発の部署がリアルタイムに顧客情報を共有することでサービス品質の向上がスムーズに行われるようになります。複数の部門を横断したプロジェクトにおいても情報が1箇所に集約されるため連携体制が強固になり、プロジェクトの成功に大きく貢献します。
情報源が一つに集約されていることで、必要な情報の所在が明確になり、情報探しや確認作業にかかる時間が削減されます。また、一元管理された情報に対して責任を明確化し、定期的にメンテナンスすることで、常に最新かつ正確な情報が共有されるようになります。これにより、古い情報や誤った情報による混乱を防止できます。従来は情報を更新した後、各部門へ展開・共有する手間がありましたが、今後は所定の箇所を更新するだけで済むようになり、メンテナンス負担の軽減も期待できます。
情報の一元化により、部門をまたいだ多角的なデータ分析が可能となります。営業成績・顧客動向・市場データなどを統合し、可視化することでトレンドや課題の早期発見につながり迅速な対応が可能となります。
従来のように情報がサイロ化されていると、各部門からの情報取得に時間がかかり、総合的な判断が難しい状況に陥りがちでしたが、一元化によりそれが解消され、迅速かつ精度の高い意思決定が実現します。
さらに分析するデータそのものに加え、データの使用や分析におけるナレッジも一元化することでデータ分析自体の高度化にもつながります。
情報の一元化は業務効率化や意思決定の迅速化にとても有効である一方、すべてのデータを一元化すればよいというわけではありません。ここではまず一元化すべきデータについてご説明します。
- 意思決定に関わるデータ
経営層や管理職など、複数部門にまたがる関係者が参照する必要があるため、一元化するメリットが大きいデータです。個別管理による重複や齟齬の発生を防ぐことができます。顧客情報、製品仕様、KPI、予算、実績データなどがこれに該当します。
ただし、各事業部ごとに売上データの閲覧範囲の制限が必要な場合もあるため、必要に応じてアクセス権による制御が求められるケースも存在します。
- ナレッジやドキュメント
これらの情報を一元化することで再利用性や学習効果を高め、全社的な業務効率化につながります。マニュアルや社内規定、QAなどがこれに該当します。
一方で以下のような個人的なデータや、秘匿性の高いデータは一元化すべきではないものとして挙げられます。
- 個人のメモや一時的な作業用ファイル
これらのデータを一元化に含めてしまうとノイズが増え、情報の検索性が低下してしまう恐れがあります。下書きメモや個人のTODO、個人用に作成したテーブルなどがこれに該当します。
- プライバシー保護の観点から機密性の高いデータ
限られた人しか閲覧すべきでない情報や、漏洩リスクの高いデータの一元化には慎重さが必要です。一元化する場合は厳格なアクセス権の設計が不可欠です。人事評価、給与情報、顧客の個人情報などが該当します。
- 法的に公開してはいけないデータ
法令や契約上の制約により、社内全体で共有できないデータも存在します。このようなデータは一元化せず、限られた範囲での管理が求められます。顧客との契約情報や法務対応に関する文書などがこれに該当します。
一元化を進める際は、データの特性に応じた適切な管理が不可欠です。
社内で広く共有すべき情報がある一方で、機密性の高い情報や法的制約のある情報も存在するため、アクセス権の設計が重要なポイントになります。これにより情報の一元化のメリットを享受しつつ情報公開によるリスクを最小限に抑えることが可能です。
ここでは、情報の一元化によってデータの利活用を促進するためのアプローチについて解説します。
一元化には主に以下の3ステップでの段階的な進め方が効果的です。
- 現状把握と方針の明確化
まず、各部署で扱っているデータについての棚卸を行い、「どのデータが、どこに、どのような形式で存在しているのか」を整理します。複数の部門での利用や重複を確認するとともに、データの用途や分析目的を明確化しましょう。各部門の主要KPIや分析の切り口(部門別、取引先別など)を明確化すると、今後の設計がスムーズになります。
- ツール選定と基盤構築
次に情報を一元管理・共有するためのツールを選定し、データを集約する基盤を構築します。
ステップ1で策定した方針に沿って、ツールを選定しましょう。様々なデータソースから取得したデータを1箇所に集約し、分析用途のデータは、このタイミングで最低限のデータクレンジング(欠損値の補完や単位や型の統一)を行うと、その後の広い活用に効果的です。可視化ツールも統一することで、組織全体で同じ指標に基づいて意思決定を行えるようになります。更新頻度やアクセス権限などの運用ルールについても併せて整備します。
- PDCAを回す
最後に、継続的な活用と改善サイクルを構築します。
まずは、一部の部門からスモールスタートを行うなどして、利用状況の確認や利用者からのフィードバックをもらいましょう。そこで得られた課題を改善するとともに徐々に組織全体に拡大させることで一元化を進めましょう。一度一元化をしたら終わりではなく、データの管理方法や運用ルールの見直しを継続的に実施することで情報の一元化の恩恵を最大限に活かすことができます。
- データの統合のしやすさ
様々なデータソース(CRMシステム、MAツール、データベース、ドキュメント)と連携ができるかどうかは、ツール選びで重要なポイントとなります。複数の部門で分断されているデータの一元化には、柔軟な接続性が求められます。
- スケーラビリティ
現時点のデータ量だけでなく、今後の拡張にも対応できるかを見極めましょう。特に大量データを扱う場合には、クラウド型のデータウェアハウス(例:BigQuery、Snowflakeなど)の活用が効果的です。自動でリソースを拡張でき、パフォーマンスの低下を防げます。
- アクセス制御とセキュリティ
誰がどのデータにアクセス・編集できるかを細かく管理できる機能が必須です。アクセスログの取得やデータの暗号化に加え、社内の認証基盤と連携したSSO(シングルサインオン)対応も重要な検討要素となります。
- 操作性・使いやすさ
情報の一元化は全社的な活用を前提とするため、直感的に操作できるかどうか、学習コストが低いかといった視点も重要です。高機能なツールであっても、現場で使われなければ意味がありません。自社のリテラシーレベルに合ったツールを選ぶことが成功の鍵です。
- コストおよび導入・運用負荷
初期導入にかかる費用や運用コスト(月額課金やユーザー数や処理スペックによる従量課金などの価格体系)が適正かどうかも重要なポイントです。一元化されたデータの管理を社内で行うのか社外に依頼するかも判断が必要になる場合があります。費用対効果を意識して取り組まなければ継続的な取り組みが行えなくなってしまうというリスクがあるのでしっかりと確認しましょう。
- ・課題:複数の事業会社や販売チャネルが存在し、データ基盤への連携フローやデータのフォーマットがバラバラのため一元管理やセキュリティリスクの検知に負担が大きかった。
- ・施策:データレビューの仕組みを策定し、様々なデータに対して統一的なチェック体制を導入。
- ・成果:レビュー結果をもとにしたデータ品質の担保やデータカバナンスの向上を実現した。
- ・課題:社内にデータが散在していたため、顧客ニーズを深く理解することができない状態だった。
- ・施策:社内のデータを一元化し、組み合わせることで顧客ニーズの可視化を行った。
- ・成果:これまで得られなかった顧客ニーズを把握することでマーケティング施策への活用が行えるようになった。
【プレスリリース】データ活用における生成AI導入・活用支援サービスを提供開始 データ抽出・集計・本番移行の作業時間を8割削減

弊社にて、SQLによるデータ抽出・集計・本番移行作業に生成AIを導入したところ、一連の作業にかかる時間が月120時間から月24時間にまで短縮され、作業時間を8割削減できたという結果が出ています。
サービスの提供を通じて、企業のデータ活用における業務効率化と高度化、内製化の実現に向けた支援を加速させていきます。
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まとめ
この記事では、データの利活用を加速させる手段として「情報の一元化」について解説しました。情報のサイロ化は、組織内のデータが部門間で共有されず、業務効率や意思決定に悪影響を及ぼします。社内でのデータ活用をより促進していく環境を整えるために、情報の一元化は効果的な手段となりえます。一元化により、部門間連携が強化され、情報共有のスピードと質が向上し、迅速かつ高度な意思決定が可能になります。顧客情報や製品情報など一元化すべきデータがある一方で、個人情報や機密情報は慎重に扱う必要があります。現状把握、ツール選定、PDCAサイクルの確立を行うことで情報の一元化を実現し、組織の全体の業務効率化だけではなくデータの活用を通して高度な意思決定ができれば大きな成果となるでしょう。
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なぜ多くの企業がデータ分析に失敗するのか?成功の鍵とその対策
近年、マーケティング環境は急速に変化・複雑化しており、企業にとってはデータを活用した迅速な意思決定が不可欠となっています。
こうした背景の中で注目されているのが「BIツール(ビジネス・インテリジェンスツール)」です。
本記事では、マーケティング分野におけるBIツールの導入メリットや活用方法に焦点をあて、施策の効果を最大化するためのポイントを解説します。
執筆者のご紹介
名前:大塚
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アカウントマネジメント室
業務内容:現在製薬会社に常駐し、数十個あるTableauレポートの保守・運用や新規レポート開発業務を担当。
経歴:新卒で株式会社メンバーズに入社後、ディレクターとしてLP設計、メルマガ作成などのマーケティング業務に従事。
2年目半ばにデータアドベンチャーカンパニーへ異動し、BIツールを中心に学習を実施。スポット案件を経て現在の業務に至る。
TableauやPower BIは強力なツールですが、
「元のデータ」が整理されていなければ真価を発揮できません。
✔️「綺麗なグラフが作れない」
✔️「分析が次に繋がらない」
といった課題の根本原因と解決策を、
本動画で現役データサイエンティストが体系的に解説します。
BIとは、「Business Inteligence(ビジネス・インテリジェンス)」の略で、企業や組織が持つ膨大かつ多様なデータを、収集・蓄積・加工・可視化・分析し、データに基づいた意思決定を行うことを指します。
BIツールとは、このプロセスを支援するために活用されるITツールであり、特にデータの可視化やレポーティング、ダッシュボード化に優れています。マーケティング分野においても、施策の効果を定量的に把握し、迅速な改善に繋げるための基盤として、BIツールの重要性が高まっています。
- ・近年のマーケティング環境の変化
近年、市場の環境は激しく変動しています。
主な要因としては、①消費者ニーズの多様化・高度化/②社会構造の変化/③IT技術の進化などがあげられます。
- 消費者ニーズの多様化・高度化
多くの市場において製品やサービスが成熟し、消費者は価格や品質だけでなく自身の感性に合うかどうかなど、従来品に更なる価値を求め、多様化・高度化しています。また、年齢・性別・ライフスタイルはもちろんのこと、特定の消費者の中でも生活の場面ごとにニーズは変化します。
結果として企業間では競争が激化し、価格競争や顧客への対応などにおいてスピード感をもった施策運用と、その結果の可視化・改善がより強く求められています。
- 社会構造の変化
少子高齢化、人口減少、地方格差の拡大、働き方改革、サステナビリティ志向の加速など、社会構造の変化が近年急激に進んでいます。こうした変化の中では、これまでにない課題に直面する機会が増え、こうした変化に柔軟に対応するには、過去の経験だけでなく、データに基づいた予測と即応性が不可欠です。
- IT技術の進化
クラウドやIoTなどの発展により、企業が扱うデータ量は飛躍的に増加しました。
「ビッグデータ」を処理するための様々なツールやサービスの性能も向上しており、現在・過去における顧客の傾向だけではなく、未来の顧客に対する予測も可能です。「ビッグデータ」の活用によるマーケティング戦略の策定や分析が不可欠と言える時代に突入しています。
- ・BIツールの必要性・有用性
前述した通り、近年のマーケティング状況においては、多角的なデータに基づいた、より正確で素早い対応が求められています。
BIツールは、様々なデータを収集・蓄積し、分かりやすく加工・可視化することに長けています。BIツールを用いることで、膨大なデータに基づいた分析プロセスの効率化を実現し、スピード感のある施策運用を可能とします。
BIツールは、社内外のデータを統合・分析し、ビジネス全体の現状把握や意思決定を支援します。過去のデータから「何が起きたか」を分析し、経営戦略に役立てるツールです。
一方、MA(マーケティングオートメーション)ツールは、見込み客の獲得から育成まで、マーケティング活動を自動化・効率化することに特化しています。「誰に、いつ、何を」送るべきかをデータに基づいて判断し、実行するツールです。
簡単に言えば、BIツールは「分析して判断」、MAツールは「分析結果で自動実行」と役割が異なります。
顧客関係システムであるCRMツールやGA4などのアクセス解析ツール、営業関連のSFAツールなど、様々なシステムに散在している顧客関連のデータをBIツールを用いて1か所にまとめることで、より詳細に顧客の動向や興味関心などを分析することができます。
こうすることで、より正確かつ詳細に顧客をセグメンテーションすることができ、各セグメントに合わせたマーケティング施策を実行した際に、顧客体験の向上が見込めます。
例としては、CRMツールが持つ顧客のデモグラフィック情報とアクセス解析ツールが持つサイト上での行動情報を収集し組み合わせることで、顧客の属性と行動パターンの両面からのセグメンテーションが可能になり、顧客ごとの関心や購買意欲に応じたコミュニケーション施策を設計できる、といったことが挙げられます。
BIツールの中には、AIなどを用いた予測分析機能を備えているものも多くあります。こうした機能を用いることで、これまでの傾向から導かれる将来予測を可視化、分析することができます。
また、高度な機能としてBIツールにPythonなどのプログラミング言語を読み込ませることができるものも存在し、機械学習を用いたより複雑で精緻な予測を実行して可視化することも可能です。
こうした機能により、売上の将来予測や顧客のLTV(顧客生涯価値)の算出などが可能となります。
未来を見据えながら事前に様々な戦略や施策を打つことで、マーケティング戦略の成果最大化に寄与します。
BIツール導入の大きなメリットとして、分析業務の簡略化・効率化による意思決定プロセスの迅速化が挙げられます。
BIツールは様々なデータを収集することができ、従来複数の部署によってそれぞれ管理されていたデータをまとめることで、データが必要なときにすぐアクセスできるようになります。
そして、BIツールで可視化された情報は、直感的に現状を把握し、トレンドや異常値といった情報収集を素早く行うことを可能にします。
さらに、可視化したレポートの更新や共有は自動化することができるため、工数の削減や意思決定者への情報共有も即座に行うことができます。
このように、データの収集~分析・意思決定までのプロセスを効率化することで、マーケティングにおけるPDCAの高速化も可能とし、流れの早いマーケティング環境における柔軟な対応に貢献します。
BIツールを活用するにあたっては、まず現状の業務上の課題と目標を整理し、明確にする必要があります。
この部分が曖昧なままでは、適切なBIツールの選定・運用ができず、余分な費用や工数がかかってしまうリスクがあります。
例えば、「BIツールを使ってデータドリブンな戦略策定を行う」といったようなBIツールを使うこと自体が目的化した曖昧な状態のまま導入を進めてしまうと、実際に施策を実行する担当部署へのヒアリングが不十分のままとなってしまい、結果的に課題を解決できなかったり、使われなくなってしまったりといった結末もありえます。
そのため、「〇〇のKPIの確認がいつも遅くなり、次の施策決定に時間がかかってしまうため、この指標をリアルタイムで確認できるようにしたい」といったように、きちんと業務上の課題を定義した上で、BIツールの活用により達成したい目的・目標を設定することが重要です。
BIツールによって得意とする部分はそれぞれ異なります。
そのため、BIツールの選定の際には、前述した目標を明確化することに加えて、予算やユーザーとなる担当者の使いやすさ、活用したいデータが現在どのように管理されているかといった現状をしっかりと把握することが重要です。
例えば、現状のデータが主にExcelなどで管理されており、SharepointなどのOffice製品と接続して可視化を行いたい場合には、同じMicrosoft製品であるPowerBIが第一候補になるでしょう。一方、多様なデータソースに接続しつつ、分かりやすく多彩な表現を行いたい場合には、Tableauが候補となるかもしれません。
それぞれのBIツールの強みや活用方法については、下記でも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
関連:データを可視化!BIツール導入によるデータドリブンの促進
使用したいデータが多岐にわたる場合には、データ基盤の整備も検討することをおすすめします。
BIツール単体でも複数のデータソースからデータを収集することは可能ですが、データソースの種類が多くなるとデータの粒度や定義の違いが出てきてしまい、データの品質を担保することが難しくなります。
そこで、データ基盤を整備して、必要なデータを事前に統合・集約しておくことで、共通の定義の下でデータを扱えるようになり、整合性や品質を担保しやすくなります。
また、必要なデータだけを一元的に管理することで、BIツールのパフォーマンスが安定化するといったメリットもあります。
結果的に分析や意思決定の基盤としての信頼性向上にもつながるので、データ基盤の整備は重要となります。
BIツール活用の初期段階では、いきなり全社展開するのではなく、特定のプロジェクトなどの小規模単位からスタートするのが効果的です。
BIツールを全社や部門全体でいきなり使い始めると、成功事例が確立されていない中での運用となるため、上手く業務と適合せず使われなかったり、費用対効果が見合わなかったりといった結果になりやすいです。
そのため、まずは特定のプロジェクトでスタートし、仮説ベースで設計を行い、細かく検証と改善を繰り返して完成度を高めつつ、小さな成功・成果を積み重ねます。その後培ったノウハウを展開しながら他のプロジェクトや部門にも拡げていく、というプロセスを取ることをお勧めします。
BIツールを用いて可視化するレポートは、誰が見ても分かりやすいものを目指しますが、その構築や活用には、BIツールの操作はもちろんのこと、データの構造やその表現方法について熟知した人材の育成が不可欠となります。
社内全体のリテラシーを向上させたいのであれば、講師となる専門家を招き社内研修を行うことも有効です。
また、特定の担当者を任命してそのスキルを向上させる場合は、外部研修に赴かせたり、書籍や資格取得などを通じたインプットを行い、その後上述したようなスモールスタートでのプロジェクトでアウトプットを行いながら実践的なスキルを養成していくような流れも考えられます。
こうして育成した人材を中心に社内のリテラシーを向上させることで、より自社の環境や文化に寄り添いながら、分析人材を拡充することもできるでしょう。
- ・課題:データ活用における人材と知見の不足により、データ基盤の整備や分析がうまくできていない。
- ・施策:顧客情報を一元化するようなデータ基盤の整備・構築からBIツールによる可視化プロセスの整備を行う。これにより、データ基盤からのリアルタイム連携や既存顧客と新規顧客の行動把握を実現。
- ・成果:短期間でパーソナライズされた顧客アプローチを可能とする環境を整備し、データ活用における一連の流れを仕組み化し、データ活用の加速に貢献。
- ・課題:競合製品の販売データを集計するために、CSVデータをExcel上で毎月集計・分析する作業が発生しており業務負担となっていたほか、その分析の質も不十分なものだった。
- ・施策:集計データを蓄積し自動で整形・加工するデータ基盤の整備とTableau上で多角的な視点での分析を可能とするレポートを作成することによる集計業務の自動化を行う。
- ・成果:今まで負担となっていた集計業務の圧倒的な効率化を実現。分析の質向上やそれに伴うデータドリブンな組織への前進により、マーケット分析や販売にむけた方針策定に大きく貢献。
- ・課題:新規店舗の出店を検討する際、参考となる指標が道路の環境情報のみのため、売上見込みなどの効果算出ができていない。
- ・施策:Tableauを用いて郵便番号別の申し込み実績数を可視化し、出店後の集客見込み数を算出したうえで、成約率・平均成約金額などの予測も可能とした。
- ・成果:新規店舗の検討時に実績と予測データに基づいた状況把握と定量的な判断が可能となった。
まとめ
データの可視化と多角的な分析を通じて、マーケティング戦略の精度とスピードを高めるBIツールは、変化の激しい市場環境において、企業の競争力と持続的成長を支える重要なインフラです。
ただし、その導入は一朝一夕で成功するというものではありません。現状の課題とボトルネックを整理し、明確な目標を設定したうえで、自社の業務に適したツールを選定し、段階的に展開していくことが、成功への近道です。
今後データ利活用の重要性がますます高まっていく中で、適切なBIツールの活用もまたマーケティングをしていく中で“当たり前の基盤”となっていくことでしょう。確かな準備と運用体制の構築を通じて、データドリブンなマーケティングを着実に実現していくことが求められています。
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データを可視化!BIツール導入によるデータドリブンの促進
2025年8月27日(水)~28日(木)に開催される、株式会社アイスマイリー主催『AI博覧会 Summer 2025』にカンパニー社長の白井恵里が登壇します。
登壇概要
【AI博覧会 Summer 2025概要】
■登壇セッション:生成AI活用の展望と、ROIが出る業務実装のポイント
■セッション概要:生成AI・AIがこれからのビジネスにどう関わってくるのか、どのように業務への実装を進めるべきかポイントと事例をご紹介。
■日時:2025年8月28日(木)15:00~15:40
■場所:東京国際フォーラム ホールE
■参加費:無料 ※要参加登録
■詳細:AI博覧会Summer2025
登壇者紹介
白井 恵里(しらい えり)
株式会社メンバーズ 執行役員
兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長
東京大学を卒業後、株式会社メンバーズへ入社。
大手企業のオウンドメディア運用、UXデザイン手法での制作や、デジタル広告の企画運用に従事したのち、2018年11月に社内公募にてメンバーズの子会社(現、社内カンパニー)社長として株式会社メンバーズデータアドベンチャーを立ち上げ。
データアナリスト、データサイエンティスト、データエンジニアなどデータ領域のプロフェッショナルの常駐により企業のデータ活用を支援し、顧客ビジネス成果に貢献するサービスを提供。
2020年10月から株式会社メンバーズ執行役員兼務。現在カンパニーに所属するデータ分析のプロフェッショナルは約150名。
2024年、一般社団法人Generative AI Japan立ち上げに伴い、理事就任。
X @EriShirai
この記事では、企業活動におけるビッグデータを用いたDXがなぜ重要視されているのか、DXとビッグデータの概要も踏まえ、以下のステップで解説します。
- DXとビッグデータの概要
- DX×ビッグデータのメリット
- DX×ビッグデータの成功事例
- DX×ビッグデータ推進のポイント
- DX×ビッグデータの未来
執筆者のご紹介
名前:高田 明志
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アカウントマネジメント室
業務内容:大手通信サービス企業に常駐。スマホアプリの新機能評価の為の分析要件に沿った分析ログの設計、データマートの作成やLooker用可視化クエリ(LookML)の作成。
経歴:独立系SIer企業にて損害保険会社の契約管理システムの保守開発業務に従事。2023年7月よりメンバーズ株式会社に入社。
▶目次
多くの企業がDXを掲げる一方、「データをどう事業成果に繋げるか」という最も重要な壁に直面しています。データ基盤を整えても、そこからビジネス価値を生み出せなければ意味がありません。
弊社は、データ領域のプロフェッショナル人材の提供により、お客さまのステージに合ったデータ活用~定着を継続的に支援します。
関連資料:DX×データ活用で組織と事業を推進!
「DX」とは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、企業がデジタル技術を活用してビジネスモデルやプロセス、文化等を変革することを指します。例えば、従来の紙ベースの業務をデジタル化して業務効率を向上させたり、顧客体験を向上させたりします。DXは、単なるITツールや技術の導入にとどまらず、企業全体の価値を高めるための戦略的な取り組みです。今の時代、競争が激化している中で、DXを進めることは企業の成長にとって不可欠です。
ビッグデータとは、従来のデータベース管理ソフトウェアやデータ処理ツールでは扱うのが難しい、大規模で多様性に富んだデータの集合を指します。具体的には、企業が日常的に生成する取引データ、顧客の行動データ、SNS上の投稿、IoTデバイスからのセンサー情報、さらには動画や音声データなど、多岐にわたります。
データの形式は多様で、行と列で整理された構造化データに加え、テキスト・画像・動画といった非構造化データも含まれます。特に非構造化データは全体の大半を占めており、これを活用するための技術や体制の整備が、企業にとっての新たな課題となっています。
ビッグデータにはVolume(量)、Velocity(速度)、Variety(多様性)、Veracity(正確性)、Value(価値)の5つの特性があると言われています。
- Volume(量): ビッグデータは膨大な量のデータを扱います。これにより、企業はより多くの情報を分析し、意思決定の質を向上させることができます。
- Velocity(速度): データはリアルタイムで生成され、流れています。例えば、SNSの投稿やトランザクションデータは瞬時に生成されるため、迅速な分析が求められます。
- Variety(多様性): ビッグデータは多様なソースから集まります。構造化データ、非構造化データ、半構造化データなど、様々な形式のデータを統合して分析する必要があります。
- Veracity(正確性): ビッグデータの正確性や品質の管理は簡単ではありません。誤ったデータに基づく判断は、企業にとって重大なリスクをもたらすことがあります。
- Value(価値): ビッグデータは分析することで新たな価値を生み出します。顧客のニーズを把握し、マーケティング戦略を最適化することで、ビジネスの成長に貢献します。
ビッグデータを用いたデータドリブン経営の実現により、企業はデータに基づいた迅速かつ正確な意思決定が可能になり、競争優位性を高めることができます。例えば、リアルタイムでの売上や顧客の行動データを分析することで、マーケティングキャンペーンの効果を即座に評価し、戦略を見直すことができます。ある小売業者では、データ分析を活用して在庫管理を最適化し、売れ筋商品を迅速に補充することに成功しました。このように、データに基づく意思決定は、企業の運営効率を向上させるだけでなく、変化する市場環境への迅速な適応を可能にします。
ビッグデータを活用することで、企業は顧客に対してパーソナライズされた体験を提供できるようになります。顧客の購買履歴や嗜好を分析することで、個々のニーズに応じた商品やサービスを提案することが可能です。例えば、あるECサイトでは、ユーザーの閲覧履歴に基づいてレコメンド商品を提示し、クリック率や購買率の向上につなげています。こうした取り組みは、顧客満足度を高めるだけでなく、リピート率や顧客ロイヤルティの向上にも寄与し、LTV(顧客生涯価値)の最大化に直結します。
ビッグデータ分析によって、新たなビジネス機会を創出することができます。企業は市場のトレンドや顧客のニーズを深く理解することで、新規サービスの開発や既存サービスの改善を行い、競合優位性を確立できます。例えば、あるフィンテック企業は、顧客の取引データを分析して新しい金融商品を開発し、従来の金融機関に対抗することに成功しました。このように、ビッグデータを活用することで、企業は市場の変化に迅速に対応し、革新的なサービスを提供することもできます。
業務プロセスの自動化もビッグデータの活用によって促進することができます。例えば、製造業においては、機械の稼働データや生産データをリアルタイムで監視し、異常を早期に検知することで、メンテナンスのタイミングを最適化できます。これにより、ダウンタイムを最小限に抑え、生産効率を向上させることができます。また人事や財務などの管理部門での例として、従業員のパフォーマンスデータを分析することで、適切な人材配置や育成プランを立てることができ、業務の効率化が進みます。さらに、経費データを分析することで、コスト削減の機会を見出し、無駄を排除する施策を実行することも可能です。
- ・課題
- データ分析基盤を利用する際にデータ基盤チームを間に挟むことが多く、データ活用までのリードタイムが長い。
- データ活用需要や事例は高まり続けるも、事業部全体の意思決定をデータドリブンなものとするに至っていない。
- ・施策
- 蓄積したユースケースを分析し、データ分析基盤の見直しと非データ人材がSQLなしにデータ集計・利用を可能にする仕組みを開発する。
- 事業部全体のKGI設計、KPI設計を事業企画部と共同で実施。その内容を元に感度分析、予測モデルを開発し注力指標を特定。予算配分や施策優先度決定に利用できるようにする。
- ・成果
- データ基盤チームのリソースに依存せずデータが利用できるため、関係者全ての工数が削減された。また、この成功事例を元にさらなるセルフ化を進めていく方針が定まった。
- あらゆるアクションが事業部全体のKPIに紐づくため、施策優先度や予測モデルとの差分による実効性の把握が定量データにより評価することができるようになった。
- ・課題
顧客のロイヤルティを可視化したいが定義が定まっていない。データ分析基盤に顧客データや販売データはたまっているがリソース不足により対応できる人材がおらず活用できていない。 - ・施策
RFM分析により既存顧客をスコアリングし5つに分類する。その分類を元に部門責任者と合意形成し、ロイヤルティの定義を明確化する。ダッシュボードを作成し可視化を実現。 - ・成果
クライアント社内で顧客ロイヤルティについて共通認識が生まれ、施策検討の際に活用できるようになった。
DXを推進するためには、まず目的を明確にし、現状の分析と課題の特定をすることが不可欠です。企業は自社の強みや弱みを把握し、どのようなデータを活用することで課題を解決できるのかを考えます。たとえば、売上が伸び悩んでいる企業であれば、顧客の購買データを分析し、施策を見直すことが考えられます。
次に、データ活用戦略を策定します。この段階では、どのデータを収集し、どのように分析するのか、具体的な仮説を設定します。たとえば、「特定の商品のプロモーションを強化することで、売上が10%増加する」という仮説を立てることができます。これにより、データ収集や分析の方向性が定まります。
データを活用するには、まずデータ基盤を構築する必要があります。これには、データの収集方法を検討することが含まれます。社内で生成されるデータ(購入履歴や顧客情報など)だけでなく、外部データ(市場データや競合情報など)も活用することで、より豊富な分析が可能になります。
次に、データを効率的に統合・管理するための基盤が必要です。データウェアハウス(DWH)やデータレイクといった技術を使うことで、大量のデータを一元管理し、分析しやすい状態に整えます。また、データセキュリティ対策も重要です。顧客情報などのセキュリティを確保するために、アクセス制御やデータ暗号化などの対策を講じる必要があります。
データ基盤が整ったら、次はデータ分析に必要なツールやシステムを選定します。ここでは、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールやデータ分析ツールを検討します。これらのツールを使うことで、視覚的にデータを分析し、意思決定をサポートします。
また、クラウドサービスとオンプレミス(自社サーバーでの運用)など、導入形態についても考慮します。クラウドサービスはスケーラビリティが高く、初期投資を抑えられるため、特に中小企業にとって魅力的です。
加えて、導入前にPoC(概念実証)を実施することで、実環境での有効性やリスクを事前に検証し、より安心して導入を進めることができます。
ビッグデータを活用するためには、ツールだけではなく、適切な人材が不可欠で、データサイエンティストやデータエンジニア、データアナリストといった専門職人材を育成することが重要です。これらの人材は、データの分析や解釈を行い、ビジネス上の意思決定に貢献します。
また、データ活用を促進するための組織文化の醸成も必要です。全社員がデータを活用する意識を持ち、データに基づく意思決定を行うことができる環境を整えることが求められます。定期的な研修やワークショップを通じて、データ活用の重要性を理解してもらうことが効果的です。
DXとビッグデータの導入は、一度に全てを行うのではなく、スモールスタートで段階的に進めることが推奨されます。まずは一つの部門や業務から始め、成功体験を積むことで、他の部門への横展開を図ります。たとえば、マーケティング部門でのデータ活用を成功させた後、販売や製造部門に展開することができます。
この段階では、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を取り入れることが重要です。データ活用の成果を定期的に評価し、必要に応じて改善策を講じることで、より効果的な分析を行うことができます。
今後、DXとビッグデータの可能性は、IoT、AI、5Gといった先進技術との連携によってさらに広がっていくと予想されます。たとえば、IoTデバイスがリアルタイムでデータを収集し、さまざまな環境や状況を把握します。これにより、企業は顧客の行動やニーズを的確に捉え、迅速に対応できるようになります。次に、収集されたデータをAIによって解析し、パターンやトレンドを特定することで、迅速かつ精度の高い意思決定が可能になります。AIの分析結果は、マーケティング戦略や製品開発に役立つ情報を提供し、競争力を向上させます。そして、5Gの高速通信により、大量のデータが瞬時に送受信されるため、IoTとAIの連携が一層強化されます。これにより、企業はより多くのデータを活用し、効率的かつ効果的なビジネス運営が可能になります。このように、新たな技術が統合されることで、更なる顧客体験(CX)の向上や新しいビジネスモデルの創出が進むことが期待されます。
まとめ
「DX×ビッグデータ」を推進することは、企業が競争力を高めるために不可欠な要素です。データドリブン経営を実現することで、迅速かつ正確な意思決定が可能になり、顧客体験のパーソナライズや業務の効率化が進みます。DX×ビッグデータの推進するにあたり、ポイントとしては目的の明確化、データ基盤の構築、適切な技術選定、人材育成、スモールスタートによる段階的な導入が挙げられます。今後の未来においては、IoT、AI、5G等の新しい技術との連携により、リアルタイムでのデータ収集と解析が強化され、顧客ニーズに迅速に応える新たなビジネスモデルの創出が期待されています。これらの取り組みにより、企業は持続的な成長を遂げ、変化する市場環境に柔軟に対応できるようになります。
\ データ活用についてのご相談はメンバーズデータアドベンチャーまで /
\ 相談する前に資料を見たいという方はこちら /
▶こちらも要チェック
ベネッセ、メンバーズ、生成AI活用の先駆者が語るデータマネジメントの重要性と未来