株式会社メンバーズ 執行役員 兼 メンバーズデータアドベンチャーカンパニー社長 白井恵里を含む弊社社員が執筆(共著)した書籍『生成AIによる業務効率化と活用事例集 -アイデア創出・商品開発・知識伝承・特許調査、分析・外観検査・品質管理-』が、株式会社技術情報協会から本日発刊されました。

生成AIによる業務効率化と活用事例集-アイデア創出・商品開発・知識伝承・特許調査、分析・外観検査・品質管理-

書籍情報

書名:生成AIによる業務効率化と活用事例集 -アイデア創出・商品開発・知識伝承・特許調査、分析・外観検査・品質管理-
発行:株式会社技術情報協会
定価:88,000円(税込)
サイズ:A4判
ページ数:約500頁
ISBN:978-4-86798-065-1
発刊日:2025年3月31日

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この記事では、データ分析プロジェクトで失敗しがちなパターンとその解決方法を紹介します。

具体的には、以下のことがわかります。


執筆者のご紹介

名前:渡邉
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー エンジニア事業部
主に、データを軸としたプロダクト開発のエンジニアやプロジェクトマネージャーをしています。最近は、生成AIを活用したプロダクト開発をしています。
過去には、機械学習関連の民間資格であるE資格を取得し、現在の開発にも生かされています。資格を取得したことで、より高度なデータ活用が可能になり、非常に有益だったと感じています。

また、「わかりにくいことをわかりやすく伝える」ことをモットーとしています。本記事でも、わかりにくいことをできるだけ明確にお伝えできるよう努めます。

 

目次
01. | データ分析でよくある失敗パターン
   始め方に問題があるパターン:「このデータで何かできないかな?」
   途中に問題があるパターン:「これは難しすぎて結果が出ないから、結果が出やすい課題に取り組もう」
   終わり方に問題があるパターン:「で、この分析結果は何の役に立つの?」
02. | データ分析における失敗談と解決方法
   常に課題ありき
   手元にあるデータはほとんど使い物にならない
   途中で解くべき課題をすり替えてはいけない
   果てしなく続く長いPoCから成果は生まれない
03. | データ分析の手順と意識すべきポイント
   目的の明確化と仮説設定
   データの収集・加工
   データの可視化・施策立案
   効果検証・PDCA

01. | データ分析でよくある失敗パターン

 01-1.始め方に問題があるパターン:「このデータで何かできないかな?」

データ分析プロジェクトの失敗の多くは、この一言から始まっています。データ分析や生成AIプロジェクトが注目される中、焦る気持ちはわかりますが、もしあなたが今取り組んでいるプロジェクトがこの言葉でスタートされている場合、プロジェクトの半分はもう失敗している可能性があります。
データである以上、何かしらの計算をすれば、何かしらの結果は出ます。
しかし、それが実社会で役に立つとは限りません。
このように開始されたプロジェクトは、最終的な着地点を見出せずに延々と続くか、途中で頓挫してしまいます。

常に課題起点で考えることが重要です。

 01-2.途中に問題があるパターン:「これは難しすぎて結果が出ないから、結果が出やすい課題に取り組もう」

このパターンも典型的な失敗例です。
データ分析を担当しているプロジェクトマネージャーやアナリストは、結果を求められるため、結果がすぐに出ない場合、焦りが生じます。課題が難しすぎると、データの入手が困難だったり、そもそも手段が確立していなかったりすることがあります。

時間が限られているため、結果が出ない状況に耐えきれず、解くべき課題をすり替えることがあります。
課題をすり替えると、プロジェクトの根幹が揺らぎ、せっかくの分析やプロダクトが、実社会で役に立たなくなります。

本当に結果が必要であれば、リソースを追加投入するか、今解決が難しいと判断して撤退するのもひとつの手段です。

 01-3.終わり方に問題があるパターン:「で、この分析結果は何の役に立つの?」

たとえデータ分析がうまく進んだとしても、結果が実際に活用されなければ意味がありません。
よくあるのが、データ分析者とその結果を活用する経営者や現場の認識がずれているケースです。あるいは、分析に時間がかかりすぎたために、結果が出る頃には既に不要になっていることもあります。
解くべき課題を明確に設定し、短期間でマイルストーンやゴールを設定することが、実用的なデータ分析を成功させる鍵となります。

 

02. | データ分析における失敗談と解決方法

 02-1.常に課題ありき

データ分析プロジェクトの始まりは、必ず「顧客や社員が何に困っているのか?何があればその困りごとが解決しそうか?」と考える必要があります。
私がプロジェクトに参加する際には必ず「これは誰向けの何を解決するプロダクトですか?」と確認します。

明確に答えられない場合、失敗する可能性が高いため、まずはそこから規定することが重要です。

例えば、一般社員に向けた業務効率化のデータプロダクトを作っているつもりが、実際には管理職向けのデータプロダクトが求められていた、というようなケースはよくあります。
現在取り組んでいるプロジェクトが「誰に向けた、何を解決するプロダクトか?」を改めて問い直してみてください。

 02-2.手元にあるデータはほとんど使い物にならない

「データはあります」と言われることは多いですが、目的なく収集されたデータで最終目的に役立つことは少ないのが現実です。
例えば、業務アプリケーションのログを用いて社員の行動パターンを分析しようとしたケースがありました。
しかし、ログの取り方が不適切で、誰の行動なのか判別できなかったり、特定の社員しか利用しないアプリだったりと、偏ったデータしか存在しませんでした。
結局、全員からデータを取得する手段を確立し直し、分析をやり直しました。このように、目的を明確に定めた上で、適切なデータを取得することが重要です。
また、手元にあるデータを無理に成形して利用する場合、追加コストが発生することも多いです。適切なデータを早期に取得することが、成功への近道になります。特に、季節性のあるデータは年単位で収集が必要なケースも多いため、迅速にデータ取得を開始すべきです。

 02-3.途中で解くべき課題をすり替えてはいけない

プロジェクトが難航すると、課題をすり替えてしまうことがあります。
「今のデータでは解決できないから、別の簡単な課題にアプローチしよう」という考えに陥りがちですが、これは多くの場合、プロジェクトの失敗につながります。簡単に解決できる課題には競合が多く、そもそもデータ分析を必要としない場合が多いため、ビジネス的な価値が低くなってしまいます。
もし、解決することで大きなビジネスインパクトが見込めるなら、データ取得のための投資や人員増強を検討すべきです。逆に、インパクトが薄い課題に対して無理に取り組む場合は、プロジェクトをクローズする決断も必要です。

 02-4.果てしなく続く長いPoCから成果は生まれない

私が関わったプロジェクトの中には、PoC(概念実証)を始めてから2年が経過したものもありました。
そのプロジェクトでは、立ち上げ時のメンバーはすでにおらず、目的も曖昧なまま、変化するビジネス環境の中で延々と続いていました。人件費だけでも数千万円がかけられていたため、中止する決断ができず、結果も出せない状態でした。
そこで、「誰向けの何を解決するものか?」を再定義し、データ取得を見直し、プロジェクトの期限を明確に設定しました。最終的にはプロジェクトをクローズすることになりましたが、短期間のマイルストーンを設けたことで、経営判断がしやすくなりました。
PoCの成功には、短期間で成果を出す仕組みが不可欠です。私の経験では、2週間以内で完了できないタスクはスコープが大きすぎる可能性があります。
プロジェクトの最終目標を設定したら、まずは2週間で取り組めるアプローチを考えてみてください。すべてを完璧にこなすのは難しいかもしれませんが、役立つものは必ず作れるはずです。
データ取得、分析、アプリケーション化を2週間で試すことで、方向性が正しいのか、それとも軌道修正が必要なのかが明確になります。これにより、プロジェクトの舵取りがスムーズになります。

 

03. | データ分析の手順と意識すべきポイント

 03-1.目的の明確化と仮説設定

繰り返しになりますが、目的を明確にしてください。
誰に向けた、どんな課題を解決するものか、決めましょう。
もちろん、それはPoCという形で検証されることが多いです。
短期間のPoCで、データ分析プロダクトが本当に役に立つのかを検証するため、常に仮説を持って課題にアプローチすることが重要です。

 03-2.データの収集・加工

目的にあったデータを収集するのが肝要です。
すでに存在するデータだけで成果を出せることは稀であるため、データ収集は早めに開始するのが望ましいでしょう。
また、アプリケーションのログやデータベースは、データ分析のために蓄積されたデータではありません。
そのため、データ分析に適した形へ加工することが不可欠です。

 03-3.データの可視化・施策立案

データはそのままでは理解しにくいため、BIツールなどを活用し、統計情報として可視化すると理解しやすくなります。
データに偏りはないか、仮説の立証につながるか、どのような施策が打てるかを確認し、慎重に検討しましょう。

 03-4.効果検証・PDCA

データ分析は、迅速かつ短期間で検証を繰り返すことが重要です。
長期間にわたるPoCでは成果が出にくいため、必ず短いマイルストーンを設定し、効果検証を行いましょう。
データプロダクトであれば、実際にユーザーに使ってもらうことが重要です。 その結果をもとに施策やプロダクトを少しずつ洗練させ、より良いものへと進化させていきます。

 

| まとめ

最後に、データ分析プロジェクトで失敗しないために重要なポイントを再確認します。

あなたのデータ分析プロジェクトが成功するための一助となれば幸いです。

 

 

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▶こちらも要チェック

なぜ多くの企業がデータ分析に失敗するのか?成功の鍵とその対策

 

生成AIの台頭やDX化の浸透により、自社データの活用が注目されています。
データ活用はビジネス成長を加速させる鍵になります。

この記事では、データ活用を専門とするメンバーズデータアドベンチャーカンパニーが、実際の成功事例を交えつつ、データ活用の進め方や注意点を徹底解説します。 少しでもお役に立てれば幸いです。

01.データ活用の基本概念

 01-1.データ活用とは

企業におけるデータ活用とは、日々のビジネス活動で収集したデータを加工・分析し、ビジネス戦略や意思決定に役立てるプロセスです
顧客やユーザーのオンライン化が進む現代では、適切なデータ活用による戦略的な意思決定が重要視されています。

データ分析というよく似た言葉がありますが、これはデータ活用プロセスのひとつに過ぎません。
よくこのような方がいらっしゃいます。
「データ分析をしようとツールを導入したはいいが、うまく意思決定に繋がらない」
これは適切なデータ活用のプロセスを、意図せず無視してしまっている可能性があります。

分析や意思決定に至るまでにも重要なプロセスがいくつもあり、
これらを適切に実行することで、組織や企業が保有しているデータは強力な要素となり得ます。

単なるデータ分析からデータ活用にステップアップするためのノウハウはこちらの記事で詳しく説明しています
▶︎データ可視化はどうして大事なのか? データの単なる分析から、データの活用へステップアップするために

 01-2.データ活用の重要性

データ活用は組織や企業に何をもたらすのでしょうか。
それは正確な現状把握による業務効率の向上と高精度な意思決定、つまり組織全体の長期的なパフォーマンス向上です。具体的には以下の3つが挙げられます。

数値に基づいた効率的な意思決定や議論が可能になると言えます。

 01-3.DXとデータ活用

これまでもデータ活用は重要視されていましたが、近年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の波は、データ活用の必要性をさらに高めています。

経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」では、DX推進がなければ2025年から多額の経済損失が発生すると指摘されており、これを「2025年の崖」と表現しています。さらに、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」(*1)では、DXは次のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

*1 出典:「デジタルガバナンス・コード2.0」(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf(2025年1月30日に利用)

つまり、競争上の優位性を確立することが目的であり、データやデジタル技術は手段でしかありません。
デジタル社会である現代では、このデータとデジタル技術を最大限活用し、変革することが、DXにおいて重要です。
企業が競争上の優位性を確立するためには、今すぐにビッグデータ活用に取り組み、近年のDX化や生成AI技術の進展に乗り遅れない必要があると言えます。

関連記事はこちら
▶︎【2025最新版】2024年の生成AI市場の最新動向と2025年の成功に向けたステップ

02.業界別データ活用事例

メンバーズデータアドベンチャーカンパニーは、お客さまの課題解決に向けて常駐サービスをはじめとした伴走支援を行い、データ活用の推進を図っています。本セクションでは、さまざまな業界での具体的なデータ活用事例を紹介し、その課題と取組内容、得られた成果を紹介します。これらの事例を通じて、データ活用の可能性を感じていただければ幸いです。

 02-1.教育業界

①【株式会社ベネッセコーポレーションさま】オンライン動画学習プラットフォームにおけるデータ分析

常駐メンバーの高度な技術が「Udemy」事業のさらなる成長に貢献

事例について詳しくはこちら
▶︎常駐メンバーの高度な技術が「Udemy」事業のさらなる成長に貢献

ベネッセコーポレーション データソリューション部の部長を務める國吉 啓介氏と弊社データアドベンチャーカンパニー社長 白井 恵里の対談記事
▶︎ベネッセ、メンバーズ、生成AI活用の先駆者が語るデータマネジメントの重要性と未来

②【大手学校法人】ツールの導入やデータ整備による組織的なデータ活用推進

 02-2.飲食業界

③【株式会社丸亀製麺さま】マーケティングの高速化

データのプロがジョインすることでチームの機能が高まり、マーケティングがより高速に。

事例について詳しくはこちら
▶︎データのプロがジョインすることでチームの機能が高まり、マーケティングがより高速に。

④【飲食サービス提供企業】業務工数削減へ貢献する生成AIを活用したナレッジ検索ツールの構築運用

 02-3.小売業界(EC事業)

⑤【EC事業会社】BtoB卸EC事業におけるGTMタグの最適化と管理手法の確立


⑥【EC事業会社】EC消費者購買に関する科学的アプローチでの仮説検証と示唆出し

 02-4.小売業界(アパレル)

⑦【株式会社AOKIホールディングスさま】会社全体がデータに注目する文化作り

データ活用は、AOKIホールディングスの経営をどう変えたのか?

 02-5.IT・ソフトウェア業界

⑧【株式会社トラストバンクさま】分析から、データに関わる組織設計まで支援

分析から、データに関わる組織設計まで支援。


⑨【IT事業会社】ダッシュボードの構築業務の標準化による業務効率化

 02-6.通信・インフラ業界

⑩【KDDI株式会社さま】コロナ禍で増えたWEBにおける利用者データの活用促進

コロナ後の「auでんき」のDXを推進


⑪【大手通信会社】SMS配信フロー改善とマニュアル作成による属人化解消

 02-7.フィンテック業界

⑫ 【株式会社クレディセゾンさま】与信ロジックの精度向上のための機械学習モデル構築

クレディセゾンで活躍 本気のビジネス課題解決にデータのプロフェッショナル人材「常駐サービス」の薦め

⑬【株式会社マネーフォワードさま】パートナーとして金融業界のデータ活用に貢献

マネーフォワードのパートナーとして、金融業界のデータ活用に貢献。

 02-8.金融業界

⑭【ネット銀行事業会社】定期預金獲得増加に向けたアクセス解析

 02-9.メーカー・製造業界

⑮【製造業企業】業務効率化PJのアプリ開発・導入支援

 02-10.スポーツ業界

⑯【スポーツ団体企業】CDPマーケによるデータライフサイクルの仕組み

 02-11.不動産業界

⑰【森ビル株式会社さま】都市OS「ヒルズネットワーク」の構築を推進

都市OS「ヒルズネットワーク」の構築を推進。

 02-12.出版業界

⑱【株式会社集英社さま】PV数を約5倍に伸ばすまでの取り組み

集英社が、データと過ごした1年半。PV数を約5倍に伸ばすまでの取り組みとは

 02-13.モビリティ業界

⑲【GO株式会社さま】タクシーアプリに関するデータの分析

データ領域プロフェッショナル常駐サービスで人材不足を解消し、事業成長の礎をつくる。

 02-14.都市デザイン

⑳【商店組合】フィールド調査で歓楽街の再生課題を可視化

後悔しない、データ分析の外注先


メンバーズデータアドベンチャーカンパニーのロゴ

✔️採用にコストをかけず実現するプロの伴走支援
✔️データ整備から内製化までの一貫サポート

サービスの詳細、支援内容、導入事例は下記ページで公開しています。
▶︎サービス内容:データ領域 プロフェッショナル常駐サービス
▶︎導入事例:導入事例 | メンバーズデータアドベンチャー

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03.データ活用のプロセス

ここまでデータアドベンチャーカンパニーが実際に取り組んできた事例について解説しましたが、これらは全て、データ活用のプロセスの一部もしくはその全てにおける取り組みです。
本セクションでは、一般的に企業のデータ活用はどのようなプロセスを必要とするのか、順番に解説します。

 03-1.目的の明確化と仮説設定

ファーストステップは目的の明確化と仮説設定です。
データ活用において最も重要なステップといっても過言ではありません。目的が不明確なままデータを収集しても、得られるインサイトは限られたものになってしまいます。
したがって、ビジネス上の課題や目標を明確にし、その達成のための仮説を設定することが必要です。たとえば、「売上を10%向上させるためにはどのような施策が有効か?」という具体的な問いを立てることが重要です。この目的と仮説次第で、人材の確保や活用するデータ、分析ツールなど、これからのステップが大きく変わります。

 03-2.データ収集・蓄積

次に、目的に基づいて必要なデータを収集し、蓄積します。具体的には以下のようなデータがあります。

 03-3.データ処理・加工

データを収集し分析に移る前にデータ処理・加工フェーズがあります。収集したデータは、そのままでは使えないことが多いからです。データを分析可能な形に整えるためには、処理や加工が必要です。一般的に使用されるツールには、Excel、Python、R、Tableauなどがあります。これらのツールを使って、データクリーニングやフィルタリングを行い、分析に向けた準備を整えます。

 03-4.データ可視化

データの準備が整えば可視化フェーズに移ります。ダッシュボードを作成し可視化することで、複数の指標を一元管理し、リアルタイムでデータの傾向やパターンを把握可能になります。可視化にはBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを使用します。具体的には、Tableau、Power BI、Looker Studioなどがあり、これらを利用することで直感的にデータを理解できるようになります。

インタラクティブに動くダッシュボードの例

図:実際のダッシュボード(サンプルデータをもとにTableauを用いて作成)


BIツールの使い方について詳しくはこちらで解説しています
▶︎データを可視化!BIツール導入によるデータドリブンの促進

 03-5.データ分析

データの可視化が完了したら、次は具体的な分析を行います。この段階では、設定した仮説を検証し、意思決定に繋がるインサイトを抽出することが重要です。データ活用においては、課題設定からデータ収集、分析、意思決定支援までの一連の流れが不可欠です。必要に応じて、統計的手法や機械学習を活用することで、より深い洞察を得ることができます。

 03-6.効果検証・PDCA

分析結果をもとに意思決定を行った後、その決定が適切であったかどうかを検証します。このプロセスはPDCAサイクルに基づいており、実行した施策の効果を測定し、必要に応じて修正を行います。効果検証を行うことで、次回のデータ活用に向けた改善点が明確になり、持続的な成果を上げることが可能になります。可視化・分析フェーズで使用したダッシュボードは効果検証にも役立ちます。

 03-7.データ活用プロセスの最適化

必要に応じてデータ活用プロセス自体を最適化することも検討しましょう。新たなツールの導入やAI技術の活用は、データ分析の精度や効率を向上させることに繋がります。


データ活用のステップに関連する記事はこちら
▶︎マーケティング×データ活用で事業の成長を最大化!初心者でもわかるステップと実践事例
▶︎
データ活用におけるデータ分析|課題設定からデータ収集と分析、意思決定支援までの進め方
▶︎
アクセス解析とは?実際のデータ活用のステップと実例を紹介します

04.データ活用における課題と解決策

データ活用の推進はビジネスの成功に大きく貢献しますが、必ずしも順調に進むわけではありません。本セクションでは、データ活用におけるよくある課題や失敗例を挙げ、それに対する解決策を紹介します。

 04-1.データ活用におけるよくある課題

 04-2.実際にあったデータ活用プロセスにおける失敗

以上のことが挙げられます。データ活用において目的の明確化がどれほど重要であるかがわかる事例です。要件定義の段階で目的や仮説を明らかにし、分析に移る前にビジネスへの理解を深めておく必要があります。

以上のことが挙げられます。データ活用においてデータ分析の手法だけでなく、ツールへの理解も重要であることがわかる事例です。

この時は現地で対応していたスタッフが、扱うQRスキャナを間違えていたことが原因でした。
事前に当日のスタッフの動きまで把握できていれば未然に防げた問題でもありました。

このようにデータ活用を推進しようとしても、そもそもの生データが間違っていることもよくあります。本当にそのデータが正しいのか、信頼性があるのかを事前に確認する必要があります。

05.データ活用を促進する組織組成と人材確保

では、企業のデータ活用を促進させる組織やチームは、どのように組成できるのでしょうか? さらに、組織の組成だけでなく、適切な人材を確保することもデータ活用には欠かせません。このセクションでは、具体的な人材要件、育成や採用の特徴、そして組織の立ち上げについて解説します。

 05-1.データ活用組織の組成

適切なデータ活用組織の組成には、大まかには以下の3つのステップが重要です。

これらのステップを踏み、まずはスモールスタートで始めることをおすすめします。
大規模なプロジェクトではなく、小さな成果を積み重ねることで、現場の理解を深め、データチームの存在価値を認識させることが重要です。
このアプローチにより、徐々に大きな成果へと繋げることが可能となります。

ここでは解説しきれなかったデータ活用組織の組成について、詳しくはこちらで解説しています
▶︎データ分析の前にやるべきこととは?データ利活用で事業上の成果を生むための考え方
▶︎データ活用・DX推進を推進する分析組織の立上げ方法


また、データ活用組織マネジメントについて「若手人材のマネジメント方法大放出!データ人材使いこなしセミナー」にて株式会社トラストバンク(以下トラストバンク)データマネジメントグループマネージャーの町田様へご講演いただきました内容を記事にてお伝えしております
▶︎データ組織のチーム・人材マネジメントの手法を解説

 05-2.データ活用に必要なスキル

では具体的にデータ活用にはどのようなスキルが必要とされているでしょうか。具体的な職種とともに解説します。

PMの育成や調達について詳しくはこちらで解説しています
▶︎データ活用を推進するプロジェクトのPM(プロジェクトマネージャー)の調達方法

*1 出典:「定款」(一般社団法人データサイエンティスト協会)
https://www.datascientist.or.jp/aboutus/statute/(2025年2月14日に利用)

データサイエンス、データサイエンティストの定義についてはこちらで詳しく解説しています
▶︎データサイエンスとは?定義やスキルセットについて解説

 05-3.データ活用人材の採用

データ活用を推進しようとする多くの企業はまず人材の採用を検討するでしょう。
データ活用に必要なスキルセットを持った人材の採用には以下のようなメリットやデメリットがあります。

 05-4.データ活用人材の育成

人材の採用にはリスクがあり、そもそも市場においてデータ活用人材は常に不足している状態が続いています。そのため自社でデータ活用人材を育成するのも1つの手段として検討すべきでしょう。

データ活用人材の採用や育成にはそれぞれメリットやデメリットがあり、組織の状況によって使い分けることが重要です。また、データアドベンチャーカンパニーのような常駐型支援サービスを利用するのも最適な手段の1つと言えます。

市場におけるデータ活用人材の不足度や育成のポイントなど、人材の採用や育成について詳しくはこちらで解説しています
▶︎データ活用人材の育成方法とは?組織の人材不足は育成で解決できる

06.データ活用の最新トレンド

ビジネスの現場では、超急速に成長を続ける生成AIが注目を集めています。中でもLLM(大規模言語モデル)やSLM(小規模言語モデル)を用いた、顧客サポートの自動化、コンテンツ生成、データ分析の補助など、多岐にわたるビジネスシーンでの応用が進んでいます。
しかし、AI活用には一筋縄ではいかない側面もあります。企業が保有するデータをAIに学習させるためには、定性的なデータをAIに理解してもらう必要があるのです。例えば、顧客のフィードバックや製品レビュー、過去の意思決定やその裏にある思考などの数値に表しづらいデータです。これらの定性的なデータを「AIレディ」に整備することが、多くの企業の課題となっています。

LLMについて詳しくはこちらで解説しています
▶︎ビジネスに役立つLLM(大規模言語モデル)とは?ChatGPTや生成AIとの違いも詳しく解説

生成AI活用におけるデータの整備や管理について詳しくはこちらで解説しています
▶︎企業の生成AI活用で成果を出すデータマネジメント

まとめ

データ活用の重要性が高まる中、企業が自社データを効果的に活用することが求められています。
この記事では、14の業界別データ活用事例を通じて、データ活用の基本概念や進め方、注意点を解説しました。教育、飲食、小売、IT、金融、製造などの多様な業界における具体的なデータ活用事例はいかがでしたでしょうか。
データ活用は、今後のビジネス成長に不可欠な要素であるため、ぜひ実践に移していただきたいと思います。

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▶こちらも要チェック

【2025最新版】2024年の生成AI市場の最新動向と2025年の成功に向けたステップ

今回はデータを集約して可視化するBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールの1つであるTableauについて解説します。

本記事でわかること

執筆者のご紹介

まつなが
-所属 株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アナリスト事業部
-メンバーズに新卒入社後にデータについての学習をはじめ、Tableau Data Saberに2024年8月に合格

BIツールがうまくいかない原因、実は「データ」そのものかも

【マネージャー・リーダー向け】"業務に活きる"BIツール活用術-データ分析の全体像-

TableauやPower BIは強力なツールですが、
「元のデータ」が整理されていなければ真価を発揮できません。
✔️綺麗なグラフが作れない」
✔️「分析が次に繋がらない」
といった課題の根本原因と解決策を、
本動画で現役データサイエンティストが体系的に解説します。

 無料で動画を視聴する ⏯ 

01.Tableauとは?

 01-1.Tableauとは

 Tableauとは社内のデータを集約してグラフとして見やすく可視化するBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールの1つです。BI(ビジネス・インテリジェンス)は、データを効率的に収集・整理・可視化し、客観的にビジネスの意思決定を行う仕組みや手法のことです。このBIを実現するためのソフトウェアやシステムのことをBIツールと呼び、TableauはBIツールの中でもトップレベルに導入シェア率が高いことで知られています。

 01-2.複数のTableau製品

Tableauには用途に応じた複数の製品があります。

 01-3.Tableauの料金形態

Tableauの各料金形態を簡潔にまとめた表(参考)
Tableau公式購入ページ:https://buy.tableau.com/ja-jp
Tableau のライセンスタイプ:https://www.tableau.com/ja-jp/pricing/tableau-license-types

 01-4.Tableauと他ツールの比較

02.Tableauは何ができる?

データ分析のサイクルを簡潔に表した図

Tableauでは図のデータ分析サイクルにおけるデータの取得から可視化、分析までを一貫して行うことが可能です。業務上必要な分析の目的を整理し、データの獲得とビジュアライズを行うことで、データから得た分析結果を実際の業務に反映してコスト削減や成果獲得の効率化につなげることができます。

 02-1.直感的な操作でデータを可視化することが可能

Tableauはノーコードかつドラッグアンドドロップを主にした簡易的な操作によって、デザイン性の高いデータのビジュアライゼーションが可能です。Tableauは企業が保有する複雑なデータやビッグデータも直感的にビジュアライズすることができます。

 02-2.予測分析など高度なデータ分析が可能

Tableauは、データに対する高度な分析を行うための機能をいくつか提供しています。例えば、予測分析やトレンド分析、クラスタリングなどが可能で、データの背後にあるパターンや傾向を把握しやすくします。

 02-3.柔軟性が高いダッシュボードの作成が可能

柔軟性の高さはTableauの最大の特徴の1つです。フィルターやスライサーを使うことで、ユーザーが必要な情報に迅速にアクセスできるようカスタマイズすることが可能です。
例えば、以下のダッシュボードでは見たいデータをクリックすることで、その他全てのグラフが連動して動くように設定されています。このようにTableauではインタラクティブなダッシュボード設計が可能です。

インタラクティブに動くダッシュボードの例

図:実際のダッシュボード例(サンプルデータをもとにTableauを用いて作成) 

03.Tableauを使って実際にダッシュボードを作成する

 03-0.全体図

Tableauを用いたダッシュボード作成の全体図

 03-1.要件整理

ダッシュボードの作成時には誰が、いつ、どんな目的で使うのか事前に想定しておくことが重要です。
例えば、部門責任者が閲覧する場合は主に月次単位で担当している事業の総売上や利益額を把握することが目的となるため、月単位で売上と利益額が閲覧できる棒グラフを配置するとよいでしょう。
一方、事業部門の担当者が閲覧する場合は月単位の集計値ではなく、各施策や商品ごとの詳細な売上の推移を確認し売上の増減の原因について理解を深めて業務改善を行うことで、データを活用した事業成果の向上につながります。
ダッシュボード作成において誰がいつどんな内容で使うのかの例をまとめた図

 03-2.データ接続

ダッシュボード作成の要件を決定したのち、必要なデータをTableauに接続します。
Tableauではファイルやデータベースのデータと接続することが可能です。

・DB:Amazon Redshift、Azure SQL Database、Google BigQuery、Snowflakeなど
・ファイル形式:Microsoft Excel、テキスト ファイル、JSON ファイル、空間ファイルなど

 03-3.ダッシュボードの作成

要件定義で決定した内容に沿ってダッシュボードの作成を行います。
ダッシュボード上での各グラフの配置やデザインを決めてグラフの作成を行い、フィルター機能や詳細表示機能、クリックすることで詳細なグラフに変化する機能などを設定します。

04.Tableauを用いたダッシュボード例

Tableauを用いて作成したダッシュボード

図:ダッシュボード例(サンプルデータをもとにTableauを用いて作成)

こちらはTableauで作成したダッシュボードの例です。
主にKPIである売上の目標に対しての達成状況を把握することがこのダッシュボードを閲覧する目的です。
上部のカードには各種KPI数値の今年度と今月の合計と前年比が表示されています。月次で数値報告する場合に参照しやすい形式にしています。
中段のグラフは月次と地域別で目標の達成状況を達成を青、未達を赤で表現しています。目標数値もグレーの棒グラフで売上の背面に表示し、さらに達成率も線グラフで同時に表示しています。
このようにTableauで作成するグラフでは棒グラフと線グラフの組み合わせ、条件でカラーを変更、前年比や差分などの計算した数値を出すなど、グラフデザインの自由度がとても高いです。
分析目的に合わせて幅広い手段で数値の比較、強調、補足が可能です。

05.Tableauを導入するメリット

 05-1.いつでも好きにデータにアクセスできる

導入メリット「いつでも好きにデータにアクセスできる」について簡潔にまとめた図

Tableau Serverでデータを管理することで安全かつ精度の高いデータをもとに分析が可能です。Excelでデータを管理する場合には、データの抽出元やデータの定義や範囲が不明になる可能性がありますが、Tableauでは部署の全員で同一のデータをもとに議論を進めることが可能です。

 05-2.自分でデータを探索できる

Tableau導入メリット「自分でデータ探索できる」について簡潔にまとめた図

Tableauのインタラクション機能を設定すると既存のダッシュボード内で分析が可能です。例えば、売上の低迷に対して地域ごとや月次ごとなど詳細な切り口で低迷の原因を探したり、関係する数値(購入サイトへの訪問者数)の変動の影響を確認するなどの仮説の検証が可能なダッシュボードを作成することができます。

06.Tableauを導入する上での注意点

 06-1.適切なライセンスを取得する

Tableauには「Creator」「Explorer」「Viewer」の3つの主要なライセンスがあります。それぞれのライセンスは異なる機能を持ち、業務のニーズに応じて選定することが重要です。「Creator」はデータの準備、分析、ビジュアライゼーションを行うためのフル機能を備えたライセンスで、データ分析を主に行うユーザー向けです。「Explorer」は、ダッシュボードの作成やカスタマイズを行う中級者向けで、データの可視化や共有が可能です。一方、「Viewer」は、ダッシュボードやレポートの閲覧に特化したライセンスで、データを分析することはできませんが、結果を確認することができます。誤ったライセンス選定は、必要な機能が利用できない、あるいは無駄なコストが発生するリスクを伴います。導入前に各ライセンスの特性を理解し、業務フローやチーム規模に最適なものを選ぶ必要があります。

 06-2.運用コストに注意する

Tableauの導入に際しては、運用コストの把握が欠かせません。データ管理やダッシュボード作成には、専門的な知識や技術が必要となり、ユーザーがツールを効果的に活用できるようになるまでには一定の学習コストが発生します。これには、初期のトレーニングや教材の購入、社内での教育などが含まれます。また、データのインポートや処理にかかる時間、インフラの維持管理、さらにはサポート体制の構築に伴うコストも考慮する必要があります。これらの運用コストを事前に見積もり、適切な予算を確保しておくことで、導入後のスムーズな運用が実現します。また、TableauとLooker Studioを併用するなど複数のBIツールを導入するケースもあります。BIツールを導入する本来の目的を見失わずに、適切な手法を選択しましょう。

まとめ

Tableauは、データの可視化と分析を簡単に行える強力なツールであり、直感的な操作性や柔軟なダッシュボード作成が特徴です。複数の製品が用意されており、さまざまな業務ニーズに応じたソリューションを提供します。
また、メンバーズデータアドベンチャーカンパニーでは、企業がデータを効果的に活用できるよう、TableauをはじめとしたBIツールの導入や運用を支援します。BIツールやその他データ分析についてお困りごとがあればお気軽にご相談ください。

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BIツール併用でデータ分析を効率化!Tableau×他BIツール併用のメリットとは

データサイエンスとコンピュータサイエンスの発展に伴い、近年スポーツアナリティクスが活発になっています。本記事ではスポーツアナリティクスが活発になった背景と、スポーツ業界におけるデータ分析の具体的な活用事例を共有したいと思います。また、弊社が実施したスポーツ業界の具体的な分析事例も併せてご紹介します。


執筆者のご紹介

加藤洋介
所属:株式会社メンバーズ メンバーズデータアドベンチャーカンパニー アナリスト事業部
常駐による顧客企業のデータ分析支援を行いWebサービスやアプリのユーザー・PVの向上のための意思決定に貢献。現在は大手小売企業に常駐し大規模なデータ基盤のデータマネジメント業務に従事。
経歴:中古自動車のオークション運営会社、健康保険組合の運営支援会社を経て2021年8月にメンバーズ入社。
顧客企業にデータ分析者として常駐し要因分析・効果検証による効果的なコンテンツ制作の意思決定の支援を実施。ただ分析するのではなく、課題や分析の目的を整理して、意思決定を支援するデータ分析をしてきました。
保有資格:データ分析実務スキル検定、OSS-DB Silver、マーケティング・ビジネス実務検定(B級)
過去保有していた資格:日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、JATI-ATI

 

目次
01. | スポーツにおけるデータ分析(スポーツアナリティクス)とは
02. | スポーツアナリティクスが活発になった背景
   データ収集技術の向上
   コンピュータ処理の向上
   MLBにおける成功事例の登場
   サービス提供企業の増加
03. | 競技シーンにおけるデータ分析
   競技シーンにおけるデータ分析の概要
   競技シーンにおけるデータ分析で得られるメリット
04. | 興行運営におけるデータ分析
   興行運営におけるデータ分析の概要
   興行運営におけるデータ分析で得られるメリット
05. | 弊社取り組み事例
   ファン向けの販促やマーケティング施策におけるデータ可視化の非効率性を改善
   ファン会員分析業務の属人化を解消
   パーソナライズされたファンアプローチを可能とする環境を整備
06. | データ分析を取り入れているスポーツの事例
   野球
   バスケットボール


01. | スポーツにおけるデータ分析(スポーツアナリティクス)とは

スポーツチームの運営や競技に関するデータを収集・蓄積して加工・検証などを行い、課題解決や意思決定に活用するための分析をスポーツアナリティクスといいます。
例えばスポーツチームの運営シーンでは観客動員数、スタジアムの混雑状況を予測してスムーズな運営の意思決定に用いることがあります。また競技シーンでは、選手のパフォーマンスの向上や戦術を決めるための分析、また怪我のリスク減少を目的とした分析などがあります。

 

02. | スポーツアナリティクスが活発になった背景

近年、スポーツアナリティクスが活発に行われるようになった背景としては、データ収集技術の向上、コンピュータ処理の向上、成功事例の登場、スポーツアナリティクスに関連するサービスを提供する企業の登場が考えられます。

 02-1.データ収集技術の向上

ボールや選手のトラッキングデータの収集技術が向上してきました。例えば野球ではトラックマンやラプソードなどを使ってボールの回転数や回転方向、投手のリリースの位置など、ボールの細かい情報を収集する技術が向上してきました。また、選手の動作解析はこれまでVICONなど全身にマーカーを付けてマーカーの座標を測定するモーションキャプチャ技術を用いた動作解析システムによって行われていました。しかし、マーカーを用いた動作解析システムは非常に高価で測定場所が限られます。また、マーカーを張り付ける手間や測定中にマーカーがハズレてしまうこともあるため手間がかかります。近年はその課題も解消され、深層学習の技術の進歩によりマーカーをつけることなく(マーカーレスで)動画データから骨格推定を行うことが可能となりました。深層学習を用いた動作解析にはOpenPoseや PoseNetなどを用いて特徴点を抽出する方法があります。これらの技術は、画像の中の人物の骨格を検出し、高い精度で各部位のベクトルから姿勢データを得ることができるため、特別な機材を用いずに選手の姿勢や動きを認識することが可能となります。

 02-2.コンピュータ処理の向上

近年のコンピュータの処理能力・処理速度の向上により、大量のデータをリアルタイムで処理できるようになりました。例えば選手の細かい位置情報などのトラッキングデータを取得するには、大量に早く処理できるコンピュータが必要です。サッカーやバスケットボールなどは選手のトラッキングデータが重要になる場面がありますが、これらを早く処理できるようになり、試合後すぐに何が問題だったのか、次の試合に向けてどうすればよいかといった、戦略面の迅速な評価、改善策の考案ができるようになっています。

 02-3.MLBにおける成功事例の登場

成功事例が業界内で共有されたこともスポーツアナリティクスが活発になった重要な要因です。象徴的な例として、「マネーボール」という映画が挙げられます。マネーボールは、2011年に公開されたアメリカの映画で、実際の出来事に基づいて制作されており、MLBの球団の一つであるアスレチックスのGM(ゼネラルマネージャー)ビリー・ビーンの実話を描いています。ビリー・ビーンは選手の評価を数値データに基づいて行う「セイバーメトリクス」を導入します。彼らは、選手のパフォーマンスを定量的に分析し、見落とされがちな才能を持つ選手を見つけ出すことで、チームを強化しようとします。この映画が流行したことによりセイバーメトリクスを含めたデータ分析を意思決定に活用することの有用性が知れ渡るようになり、データ分析を使うことがMLB各球団の間でも定着するきっかけになりました。現在、MLBは1球ごとのデータをStatcastと呼ばれるシステムに集約しており、MLB全30球団がStatcast の全データを API を通じてデータベースに取り込み、各球団が BigQuery 環境で分析できるようになっています。

 02-4.サービス提供企業の増加

データ収集技術を含めたスポーツアナリティクスに関連するサービスを提供する企業の登場も、スポーツアナリティクスが活発になった要因の1つです。2010年代まではモーションキャプチャや床反力などを用いて身体の動きの測定や力の推定などは大学などの研究施設くらいしかありませんでした。しかし、近年は、株式会社ネクストベースや株式会社Knowhereなど民間企業においてもモーションキャプチャや床反力系を用いた動作解析システムを含めた計測・コンサルティングサービスが登場してきました。これにより、動作解析のサービスが一般的に普及し始めました。また、動作解析だけでなくトラッキングデータも活用し、投球に関するデータを即時フィードバックできるサービスを提供しているなど、自身のパフォーマンスに関するデータを取得することがより身近になりました。さらに株式会社ユーフォリアが提供するONE TAP SPORTSなど、スポーツ選手のコンディショニングやトレーニングに必要な情報を一括して記録・管理できるサービスが登場し、データを用いて選手の状態を分析をすることができるようになりました。これによりケガの履歴や、練習・試合の運動負荷データの蓄積やモニタリングが可能となり、ケガの傾向の振り返りと適切なトレーニング計画でケガによる離脱を予防できるようになりました。加えて選手のトレーニング負荷やコンディションをもとに、試合に向けた緻密な調整ができるようになりました。

 

03. | 競技シーンにおけるデータ分析

スポーツ業界のデータ分析は大きく二つに分かれます。

 03-1.競技シーンにおけるデータ分析の概要

競技を対象にした分析は、主に選手のパフォーマンス向上を目的にした分析です。選手のパフォーマンス分析では、ウェアラブルデバイスを選手につけることで生理的データ、GPSトラッキングによる選手の移動距離・位置・速度、加速度センサーによる加速度を測定します。また、動作解析システムが整備されている場合や、機械学習エンジニアがいる場合にはマーカーレスに動作解析を行うことも可能で、試合の戦略立案にもデータ分析が用いられます。相手チームや自分のチームの強み弱みをデータ分析により把握することができ、より効果的な戦略を立案しチームのパフォーマンスを向上させるのに役立ちます。


 03-2.競技シーンにおけるデータ分析で得られるメリット

選手のパフォーマンス分析では、ウェアラブルデバイスを選手につけることで生理的データ、GPSトラッキングによる選手の移動距離・位置・速度、加速度センサーによる加速度を測定し選手のパフォーマンスを分析することができます。また、動作解析システムが整備されている場合や、機械学習エンジニアがいる場合には、マーカーレスでの動作解析も可能です。これにより、調子の良い時と悪い時のバッティングフォームを比較し、調子が悪い時と良い時と比較してどのような違いがあるのかを明らかにすることができます。
また、バイオメカニストと協力することで、より良いパフォーマンスを発揮するためのバッティングフォームを考案することができます。

データ分析を活用することで、どのような戦略が効果的なのかを明らかにすることができます。例えば、野球では数年前までは送りバントが得点獲得の手段として重視されていましたが、近年のデータ分析によって必ずしも効果的ではないとされるようになりました。しかし、さらに詳細な分析を行うことで、特定の状況下では送りバントが効果的な戦略となると判明する可能性があります。
また、選手の適切な起用法についても、データ分析を用いることで最適な戦略を立案することが可能です。過去の試合データを分析することで選手ごとの得意・不得意な場面や状況を明らかにし、より適切な起用法を導き出すことができます。

ただし、試合の戦略を立案する際には、データのみに頼ることは避けるべきです。スポーツの結果にはさまざまな要因が複雑に絡み合っており、試合の流れや状況をすべてデータで表すことは困難です。そのため、データ分析と併せて、経験や直感も重要な要素として活用することが望ましいと考えます。

 

04. | 興行運営におけるデータ分析

 04-1.興行運営におけるデータ分析の概要

スポーツの興行運営において、データ分析は不可欠な要素です。スポーツビジネスではファンマーケティングが重要な柱の一つとなりますが、データ分析を活用することで、ファンクラブに入会するファンの特徴を明確にし、より効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。

また、チーム運営においてはスポンサーの獲得も極めて重要です。データ分析を行うことでより適切な企業とのマッチングが可能になり、双方にとってメリットのあるスポンサー契約を締結することができます。


 04-2.興行運営におけるデータ分析で得られるメリット

スポーツビジネスでは、ファンとの強固な関係を築くためのファンマーケティングが不可欠です。一般的なマーケティングではより多くの人にリーチすることを目指しますが、ファンマーケティングでは、ファンクラブ限定イベントなどを通じて熱心なファンのエンゲージメントを高めることが目的となります。
例えば、Bリーグではレギュラーシーズン中に会員限定で試合後の選手サイン会や練習見学会を実施しています。また、NPBではシーズン終了後にファン感謝デーを開催するなど、ファンとの接点を強化する施策が展開されています。

このようなファンマーケティングには、データ分析が欠かせません。代表的な分析手法としてCRM(顧客関係管理)分析があります。CRM分析により、LTV(顧客生涯価値)を明らかにし、リピート購入を促進する施策やプログラムを設計できます。また、顧客の属性や行動に基づいてセグメント分けを行い、それぞれのグループに適したマーケティング施策を展開することも可能です。
さらに、SNSの投稿内容を分析するテキストアナリティクスも有効です。ファンの投稿をすべて手作業で確認するのは現実的ではありませんが、テキストアナリティクスを活用することで、ファンのチームに対する反応や改善点を把握することができます。

スポーツチームの運営において、スポンサーの獲得は重要な収益源の一つです。特に、チケット収入や放映権料が限られている場合、スポンサーからの支援が財政の安定に寄与します。
企業にとってのメリットとしては、試合やイベントを通じて自社ブランドの露出を高められる点が挙げられます。例えば、スポンサー契約を締結することで、チームのユニフォームに企業ロゴを掲載したり、契約発表をSNSでリリースすることで、新たな層にブランドを認知してもらう機会を得ることができます。

スポンサー獲得においても、データ分析は重要な役割を果たします。データを活用することで、スポンサー企業に対して具体的な価値を示し、効果的なターゲットマーケティング戦略を構築できます。
例えば、ファンのデモグラフィックデータ(年齢、性別、家族構成、職業など)、試合観戦履歴、イベント参加履歴、チケットやグッズの購入履歴を分析することで、チームのファン層と相性の良い企業を特定することが可能です。これにより、双方にとって最適なスポンサー契約を締結することができます。

 

05. | 弊社取り組み事例

 05-1. ファン向けの販促やマーケティング施策におけるデータ可視化の非効率性を改善

スポーツ団体のファンに向けた販促や来場マーケティング施策を行っているお客様において、データ可視化の非効率性やスピードが課題となっていました。そこで、分析業務の高速化を実現する運用基盤のPoC導入と効果検証をご支援しました。
既存のBIツールには、Tableau Desktopに関連する2つの主要な課題がありました。

  1. ローカルデータの読み込み、DBテーブルの結合、複雑な計算フィールド/フィルターの使用による処理遅延
  2. 1台のPCに依存する運用が業務の品質に影響を及ぼす。

社内環境がMS-Officeであるため、安価なクラウド分析環境を活用し、複数の社員が同時に業務を遂行できる環境を求めていました。そこで、Power BIの導入を検討しましたが、経験者が不在のため移行作業が進まないという問題がありました。

この課題に対し、弊社からエンジニアが常駐し、移行業務を支援しました。具体的には、以下の取り組みを行いました。

 ・テーブル設計の見直し
 ・計算メジャーの最適化
 ・データマートとPower BI間の可視化データ復元と処理の最適化

結果として、処理速度が向上し、PoCの段階でPower BI導入による業務効率化を証明することができました。

 05-2. ファン会員分析業務の属人化を解消

同じお客様において、分析業務の属人化により業務品質が安定せず、可視化までのプロセスやノウハウが共有されていないという課題がありました。そこで、分析業務の平準化を実現するユースケース作成と運用整備をご支援しました。
主な課題は以下の3点でした。

  1. 既存BIツールの特性による作業の属人化
  2. セキュリティリスクとファイル更新の手間
  3. 分析担当者及び後任者の業務習熟と引き継ぎの難しさ

この課題に対し、弊社エンジニアが常駐し、以下の施策を実施しました。

 ・ファン会員分析のダッシュボード整備
 ・更新データ環境の整備
 ・業務仕様書の作成とお客様担当者への業務トランスファー

その結果、ダッシュボードの運用が民主化され、業務工数の削減を実現しました。また、接続先をクラウドに変更することで、最新のデータファイルが追加されれば更新ボタンを押すだけでPower BIのデータを最新化できるようになり、誰もが容易にダッシュボードを操作できる環境を整備しました。

 05-3. パーソナライズされたファンアプローチを可能とする環境を整備

最後に、スポーツ団体の企業様を支援した事例をご紹介します。ファン育成と顧客体験の最大化を目的としたCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を軸にしたファンマーケティング基盤の構築を支援しました。
このプロジェクトでは、広告効果とリテンション施策の最大化を目指し、基幹DBとMAツールを新たな環境へ移行しました。また、データ活用の加速を目的とし、データライフサイクルの仕組み化を推進しました。

お客様が抱えていた主な課題は以下の3点でした。

  1. データ基盤構築を進める中での人材不足
  2. IT・マーケティング知識の不足
  3. データ活用のサイクルが回っていない

そこで、弊社は顧客のビジネスサイドとベンダー間のハブ人材として、以下のプロジェクトを同時に推進しました。

 ・基幹DB移行
 ・DWH(データウェアハウス)構築
 ・可視化環境の整備

その結果、顧客体験の最大化を見据えたシステムアーキテクチャを実装し、短期間でパーソナライズされたファンアプローチを実現する環境を整備しました。加えて、データライフサイクルの仕組み化を実現し、持続的なデータ活用基盤を構築することができました。

 

06. | データ分析を取り入れているスポーツの事例

データ分析は多くのスポーツにとって欠かせない要素となっており、その活用範囲は今後も拡大していくことが予想されます。ここでは、特にデータ活用が進んでいる野球とバスケットボールを紹介します。

 06-1. 野球

MLBでは、Statcastと呼ばれるシステムを用いて試合データを収集しており、MLBのすべての球団にデータが提供されています。Statcastの導入により、「フライボール革命」と呼ばれる戦術が流行しました。これは、詳細なデータの取得により選手ごとに極端な守備シフトを敷くようになり、内野の頭を超えるような強い打球を狙うことで、ヒットや長打の確率を高めるという考え方に基づいています。これはデータ分析の進展によって生まれた戦略の一例です。

Statcastのデータは「Savant」というサイトで公開されており、APIを通じてデータを取得することも可能です。そのため、Pythonなどのプログラミング言語を活用することで、誰でもMLBのデータを取得し、独自の分析を行うことができます。

日本のプロ野球(NPB)でもデータ分析を導入している球団が増えています。例えば、埼玉西武ライオンズ、福岡ソフトバンクホークス、横浜DeNAベイスターズでは、データ分析を専門に行う組織が設置され、選手のパフォーマンス向上や試合の戦略立案に活用されています。また、他の球団でも、マーケティング施策にデータ分析を活用する事例が増えてきています。


 06-2. バスケットボール

Bリーグにおいても、データ活用が進んでいます。SCS推進チームが、メディカルスタッフによる外傷・障害の発生状況のデータを収集・分析し、選手のケガ予防に役立てています。

また、Bリーグではトライアル段階として「ホークアイ」システムを導入し、トラッキングデータを取得する取り組みが行われています。このデータは、ファンの観戦体験向上や、選手のケガ防止に活用される予定です。

Bリーグに所属する各チームでも、データ活用の事例が増えています。例えば、名古屋ダイヤモンドドルフィンズでは、グッズの購入履歴データを分析し、ファンの好みや推しの選手を予測した上で、個別におすすめのグッズをメルマガで提案しています。

さらに、データ分析の結果から、春日井市や一宮市に住むファンのLTV(顧客生涯価値)が高いことや、小学生の子どもを持つ母親の中でも30代のリピート転換率は低いがLTVは高い傾向にあることを明らかにするなど、データ分析を用いたマーケティング施策が実施されています。

データ分析の進展により、野球やバスケットボールだけでなく、さまざまなスポーツでの活用が進んでいます。今後のデータ分析技術の発展により、スポーツの戦術やファンマーケティングがどのように変化していくのか、引き続き注目されます。

 

| まとめ


本記事では、データサイエンスとコンピュータサイエンスの進展がもたらしたスポーツアナリティクスの活発化の背景と、スポーツアナリティクスが選手のパフォーマンス分析や試合戦略の立案、ファンマーケティング、スポンサー獲得といった多様な側面でどのように役立っているかを具体的に示しました。そして最後に、弊社による実際のスポーツ業界の分析事例を通じて、データアナリティクスが現場でどのように応用され、実践的な成果を上げているのかを紹介しました。

スポーツ業界におけるデータ分析の活用は、競技力の向上やビジネスの成長に貢献することが可能であり、今後もその重要性は一層高まると考えられます。データ分析を通じて得られる洞察は、選手やチーム、ファン、スポンサーにとって新たな価値を生み出す可能性を秘めています。もし、スポーツアナリティクスについてお困りごとがございましたら、弊社メンバーズデータアドベンチャーカンパニーへご相談いただけますと幸いです。弊社の150名ものデータのプロフェッショナルが、高いビジネス貢献思考をもって貴社のデータ活用を支援いたします。

 

 

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